1968年のマイルス再聴・その2
1968年から1971年のジャズは、ソウル・ジャズなアレンジ、R&B志向の音作り&ビート、聴き手に訴求するイージーリスニングな味付けがメイン。これはこれでジャズ、と認めてはいるが、ジャズの本質である「即興演奏」は二の次、丁々発止とした、手に汗握る様な「インタープレイ」は無い。とにかく「聴き心地」優先。ブルーノートの4300番台がズバリそのど真ん中で、カタログ順に聴き進めていて、ちょっと辛くなってきた。
1968年から1971年のジャズって、皆、そんな「売らんが為」のジャズばかりだったのか。例えば、マイルスはどうだったのか、ビル・エヴァンスはどうだったのか。ちょっと聴き直して、再確認したくなった。昨日から、先ずはマイルス・デイヴィス。1968年のマイルスをもう一度、聴き直してみた。
Miles Davis『Filles De Kilimanjaro』(写真左)。邦題『キリマンジャロの娘』。1968年6月のセッションのパーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b), Tony Williams (ds)。「Petits Machins (Little Stuff) 」「Tout De Suite」「Filles De Kilimanjaro」の3曲が演奏されている。
そして、1968年9月のセッション。パーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Chick Corea (el-p), Dave Holland (b), Tony Williams (ds)。黄金のクインテットから、Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b)が抜けて、チックとホランドに代わっている。 「Mademoiselle Mabry」「Frelon Brun」の2曲が演奏されている。
エレ・マイルスの2枚目。前作で「電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用」によるメインストリームなエレ・ジャズを標榜したマイルス。このアルバムでは、それを完成・確立させている。まず、前作と同じメンバーで、その「電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用」でのメインストリームなエレ・ジャズによる、限りなく自由度の高いモード・ジャズを確立させている。「Petits Machins (Little Stuff) 」「Tout De Suite」「Filles De Kilimanjaro」の3曲である。
そして、黄金のクインテットから、Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b)が抜けて、チックとホランドに代わって、「Mademoiselle Mabry」「Frelon Brun」の2曲が演奏されている。面白いのは、アルバムの中で、黄金のクインテットの演奏と混在させて収録されていること。この「電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用」によるメインストリームなエレ・ジャズが、黄金のクインテットの専売特許でないことを表現している様に見える。
この盤は、マイルスによる「電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用」でのメインストリームなエレ・ジャズによる、限りなく自由度の高いモード・ジャズの確立の記録である。売らんが為のアレンジ、音作りなんて微塵も無い。ただただ自らが「メインストリームなジャズ」と信じるアレンジと音作り。妥協の無いストイックでシビアな音作り。マイルスのジャズマンとしての矜持をビンビンに感じる。
これが、1968年のマイルスの音世界。商業主義とは全く無縁。マイルスはマイルス、我が道を行く。頼もしいこと限りなし。こぞって商業主義に走っている様なジャズの世界で、「真のジャズ、ジャズの正しき姿」を体現しているジャズマンがいる。この1968年のマイルスを聴き直していて、何だか嬉しくなった。この「真のジャズ」を体現するマナー。現代のジャズにも、しっかりと弾き継がれている。
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