« 2026年4月 | トップページ | 2026年6月 »

2026年5月の記事

2026年5月31日 (日曜日)

1970年の骨太なポスト・バップ

ジョン・コルトレーンの黄金のカルテットを支えたエルヴィン・ジョーンズが、1970年代の幕開けに提示したポリリズミックで豪快なポスト・バップの佳作。編成を見ると、当時の流行を感じるが、ピアニストをあえて入れず、フランク・フォスターとジョージ・コールマンの強力なサックス2本をフロント2管として、フロント管のインプロの自由度を広げている。

Elvin Jones『Coalition』(写真左)。1970年7月17日「Van Gelder, Englewood Cliffs, NJ」での録音。ブルーノートの4361番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), George Coleman (ts), Frank Foster (ts, b-cl), Wilbur Little (b), Candido Camero (conga, tambourine)。

ピアノの和音に縛られないため、自由でスピリチュアルなインプロが展開される、とされた、当時のポスト・バップの演奏における「編成のトレンド」を感じて、思わず苦笑い。ピアノレスであれば良い、ということではないんだけどなあ(笑)。

エルヴィンは特定の固定バンドを模索している過渡期で、この盤は、チャレンジ、若しくは実験の雰囲気がある。タイトルの「Coalition(連携・合同)」による化学反応を期待したのかもしれない。カウント・ベイシー楽団などで活躍した、当時、ベテランのフランク・フォスターと、マイルス・デイヴィス・クインテット出身の若手中堅のジョージ・コールマン、二人の世代の違うサックス奏者をコラボさせている。
 

Elvin-jonescoalition

 
エルヴィンの「アンビデクストラス(両利き)」な超絶ドラミングに徹している。右手でシンバルのキープをしながら、左手・左足(ハイハットやタム)で全く別の複雑な3連符のアクセントを叩き出す、コルトレーン時代に培ったポリリズムが完全に独立・進化している。

ここにキャンディド・カメロのコンガが加わり、エルヴィンをリズムをキープする役目から解放する。エルヴィンは「ドラムセット全体を使って対話(メロディを叩く)する」ような、より自由で凄まじい手数を繰り出して、第3のフロント楽器として、フロント2管のフォスターとコールマンのテナーに絡みまくる。

このドラムがフロントの一部となって、他のフロント楽器と絡むところがユニーク。エルヴィンの超絶技巧なテクニックだからこそ、これが出来る。

そして、絡まれた2管フロントであるが、ジョージ・コールマンの「正確無比なテクニックと、都会的でキレのあるハードバップ・スタイル」と、フランク・フォスター:の「太くブルース感あふれるトーンで、アーシー(大地っぽさ)やスピリチュアルなアプローチ」との音のコントラスト、時に美しくハモり、時に激しくバトルする姿は興味深い。

が、ポスト・バップとしての、限りなく自由度の高いモード時々フリーという演奏内容としては、今一歩ということろか。エルヴィンの自由度の高いドラミングが参入しての、3つのフロント楽器の、限りなくフリーに近いモーダルなインタープレイについては、発展途上というところか。今一歩の成熟を期待する、チャレンジブルな内容であることは事実。1970年の骨太なポスト・バップの一枚。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

 ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

  ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

 ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
  の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月30日 (土曜日)

ルーさんのジャズ・ファンク好盤

1960年代後半からドナルドソンが精力的に取り組んでいた、ソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク路線のアルバムの中で、最もポップでイージーリスニング志向なアルバム。

後のフュージョン・ジャズのイージーリスニング志向盤と比べても、引けを取らない内容である。あまりに、ポップでイージーリスニング志向なので、硬派な純ジャズ者の方々からは毛嫌いされる傾向にあるが、後年のレア・グルーヴやヒップホップのサンプリング・ソースとしても非常に高く評価されている。

Lou Donaldson『Pretty Things』(写真左)。1970年1月9日、6月12日の録音。ブルーノートの4359番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (varitone-as, vo), Blue Mitchell (tp), Lonnie Smith (org, track 1), Leon Spencer (org, tracks 2–6), Melvin Sparks (g, track 1), Ted Dunbar (g, tracks 2–6), Jimmy Lewis (el-b, track 1), Idris Muhammad (ds)。

冒頭、パティ・ペイジなどの歌唱で有名な往年の名曲「Tennessee Waltz」を、ゆるゆるのブルース・ロック調のキャッチーなビートでのカバーが出てくるので面食らう。あまりに俗っぽくて、あまりにイージーなカバーなので、これはなあ、と思うんだが、じっくり聴いていると、演奏するメンバーが、ハードバップ後期から活躍する一流どころなので、意外と演奏自体は充実している。なので、演奏途中で飽きることは無い。
 

Lou-donaldsonpretty-things

 
逆に、こんなにポピュラーで俗っぽい曲をテーマに据えても、アドリブ部に入ると、上質な純ジャズ調のアドリブが展開されるからたまらない。この「上質な純ジャズ調のアドリブ展開」が、後のフュージョン・ジャズに欠けていくところなので、このルーさんの「テネシー・ワルツ」のカバー演奏は隅に置けない。

5曲目の「Pot Belly」の8分に渡る、イージーリスニング志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクな演奏が象徴的。イドリス・ムハマッドによる、タイトで重いドラム・ブレイクから始まり、ヴァリトーン・サックスのソウルフルな音色、ファンキーでパーカッシヴなオルガン、重低音溢れるジャズ・ファンクなエレベのライン。その独特な、ちょっとダルでサイケな部分が見え隠れする音世界は、ジャズ・ファンクの名演のひとつだろう。
 
ラストの「Love」は、ナット・キング・コールなどの歌唱で世界的に大ヒットしたポップ・ナンバー「L-O-V-E」のカバー。ハッピーで爽快なグルーヴ、メインストリーム志向のアドリブ展開、ブルー・ミッチェルのトランペットもブラスの響きがブリブリ輝いている。テッド・ダンバーの「ヘタウマ」ファンキーなエレギが、演奏全体のグルーヴ感を煽っている。

ルーさんのアルト・サックスは全編に渡って絶好調。当時流行していた電子エフェクターを通した「ヴァリトーン(Varitone)」サックスも演奏しており、よりディープで太いファンク・サウンドを響かせていて良好。ポップでイージーリスニング志向なアルバムだが、意外とメインストリームしていて、聴き応えがある。好盤。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

 ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

  ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

 ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
  の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月29日 (金曜日)

サイケなジャズ・ファンク盤です

マクダフが1969年から1971年にかけてブルーノートに残した4枚のアルバムのうち、最後の作品。ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク、そしてサイケデリック・ジャズな要素がほどよく融合した、実験的な演奏内容がユニーク。そして、更にユニークなのが、楽曲提供とアレンジを、ハードバップ時代の変わり種ジャズマンの一人、チューバ奏者のレイ・ドレイパーが担当している。

Brother Jack McDuff『Who Knows What Tomorrow's Gonna Bring』(写真左)。1970年12月1–3日、ブルーノートの4358番。ちなみにパーソネルは、Brother Jack McDuff (org), Randy Brecker, Olu Dara (tp), Dick Griffin, John Pierson (tb), Paul Griffin (p), Joe Beck (g), Tony Levin (el-b), Donald McDonald (ds), Mike Mainieri (perc), Ray Draper (perc, vo, tuba, arr)。

全編に渡って、ポップ色豊かな、ライトで明るいジャズ・ファンクが展開され、その中で、怪しげなサイケデリック・ジャズな要素が忍ばされていたり、オルガンの弾きっぷりは、ジャズというよりは、ロックな響きと乾いた音色が大半を占めていたり、一風変わったファンクネスを伴いながら、スペーシーなポップ・ロックな音世界がユニーク。
 

Brother-jack-mcduffwho-knows-what-tomorr
 
ジョー・ベックのエレギは、R&B志向+サイケデリック色なエレギで、ジャズ・ファンクというよりは、ファンク・ロック風の乾いたオフビートの粘らないファンクネスを前提としたエレギで、これはこれで、やっぱりユニーク。後にピーター・ガブリエル・バンドやキング・クリムゾン等で活動するトニー・レヴィンが、ジャズ・ファンクなベース・フレーズを弾きまくっているのもユニーク。

楽器の定位が浮遊するような不思議な音響ミックスがユニークで、従来のコッテコテなソウル・ジャズ(コテコテのオルガン+サックス+ギター)とは一線を画する。この浮遊感がサイケデリックな雰囲気に直結している。バックのサウンドには、サックスなどの木管楽器を一切排除し、トランペット、トロンボーン、チューバという金管楽器(ブラス)のみを配置して、アルバム全体に独特の「泥臭さ」と「重量感」を与えている。

なんか聴いていて、どこか「隅に置けない」好盤。従来のコッテコテなソウル・ジャズではない、サイケデリックな、ポップでロックで、どこか明るいジャズ・ファンクという雰囲気がとにかくユニーク。特にラストの「Wank's Thang」は、そんな雰囲気の代表的演奏だと感じていて、どこかディスコ調が漂う、マイルドでメロウなグルーヴが芳しい、マクダフのどこか哀愁あるオルガン・プレイが心地良い。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

 ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

  ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

 ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
  の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月28日 (木曜日)

レア・グルーヴなキャンディド

キューバのジャズパーカッショニスト、カンディド・カメロのリーダー作。“千の指を持つ男(Thousand Finger Man)”と称された彼が、アフロ・キューバンの強烈なリズムと、当時のアメリカのソウル・ジャズ、ファンクの要素をスタイリッシュに融合させたレア・グルーヴの、後のフュージョン・ファンクを先取りした名盤である。

Candido『Beautiful』(写真左)。1970年10月20 & 27日の録音。ブルーノートの4357番。ちなみにパーソネルは、Candido Camero (conga, bongos), Bernie Glow, Pat Russo (tp), Alan Raph (tb), Joe Grimm (ss, bs), Frank Anderson (p, org), David Spinozza (g), Jerry Jemmott, Richard Davis (el-b), Herbie Lovelle (ds), Joe Cain (arr)。

ファンク系のフュージョン・ジャズの音作りと同傾向の「ジャズの即興演奏よりもダンスやグルーヴに重きを置く」音作りで、ファンキーなオルガン、エレキベース、そしてキャンディドの躍動感あふれるコンガが絡み合うソウル・ジャズ志向、ラテン・ファンク志向のエレ・ジャズ。後のフュージョン・ジャズの要素満載である。

キャンディドのパーカッションは勿論のこと、アフロ・キューバン・リズムの重鎮であるキャンディドを支える、ニューヨークのトップクラスのスタジオ・ミュージシャンたちによるタイトでハイレベルな演奏が素晴らしい。ファンキーなカッティングギター、うねるエレベのグルーヴなライン、パーカッションと完璧にシンクロする重厚なドラムが、キャンディドのパーカッションを逆に映えに映えさせている。
 

Candidobeautiful  

 
ジョー・ケインのプロデュース&アレンジが抜群。ソウル・ジャズ志向、ラテン・ファンク志向のフュージョン・ファンクな音作りを小粋にお洒落にグルーヴにやっている。オリジナル曲だけでなく当時流行していたポップスやR&Bのカバーも含まれていて、このアレンジも優秀。

2曲目「Tic Tac Toe」は、Booker T. & the M.G.'sの名曲をカバーした、タイトなリズムのファンキーナンバー。初めて聴くと、この演奏は、1970年代後半のフュージョン全盛時代の優れたフュージョン・ファンクな演奏と錯覚するくらいの充実した、グルーヴィーなジャズ・ファンク・チューン。

3曲目の「Hey, Western Union Man」は、ジェリー・バトラーのR&Bヒット曲のカバー。洗練されたフィラデルフィア・ソウルと、アフロ・キューバンの熱いダイナミズムが見事にクロスオーバーした、アルバム随一のファンキー・トラック。分厚いホーン・アンサンブルとコンガの掛け合い、スピノザのカッティングギター、ジェモットによる重厚な「イカした低音」のエレベ。

キャンディドが主役でありながら、ソロで目立つのでは無く、「強力なニューヨークのバックバンドのキーマン」として、アンサンブルのグルーヴを、パーカッションで増幅させる役割に徹している。これが、このアルバムを「レア・グルーヴの名盤」化しているのだ。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

 ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

  ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

 ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
  の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月27日 (水曜日)

コルトレーンの様なオーネット

本作は、オーネット・コールマンが、同性代のフリー・ジャズなサックス奏者、デューイ・レッドマンと、ジョン・コルトレーンの伝説のカルテットを支えた鉄壁のリズム隊と組んだ、ユニークな内容のフリー・ジャズ盤である。オーネットのアルト・サックス&トランペットとデューイのテナー・サックスがフロント2管のピアノレス・カルテット。

Ornette Coleman『Love Call』(写真左)。1968年4月29日、5月7日の録音。1971年2月のリリース。ブルーノートの4356番。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as, tp), Dewey Redman (ts), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds)。フリー・ジャズ盤。同時期に録音されたアルバム『New York Is Now!』の姉妹作。

オーネットの個性的でエキセントリックなアルト・サックス&トランペットの演奏と、オーネット旧知のテナーサックス奏者デューイのコルトレーン・ライクでフリーキーなテナー・サックスの絶妙な2管の絡み合いが、この盤の聴きどころ。ピアノレス・カルテットなので、オーネットとデューイのアドリブ展開については、コードの束縛を受けないが故、自由度が高い。
 
しかし、聴いていて面白いのは、オーネットは自分だけに通じる展開で、無手勝流のフレーズを吹きまくるのだが、デューイは、コルトレーンのフリーな吹奏を理路整然と再構築して判り易くして、このオーネットの無手勝流のフレーズに絡みまくる。すると、今度は攻守を交代して、デューイのコルトレーンのフリーな吹奏を理路整然と再構築して判り易くしたテナーに、オーネットがコルトレーン・ライクなフリーな吹奏になって絡みまくるのだ。
 
Ornette-colemanlove-call  
 
この後者の「デューイのコルトレーンのフリーな吹奏を理路整然と再構築して判り易くしたテナーに、オーネットがコルトレーン・ライクなフリーな吹奏になって絡みまくる」ところがユニーク。オーネットが、コルトレーンの様なフリー・インプロビゼーションを展開するのだ。俺だってコルトレーンの様に吹けるんだぜ、と言いたいのか、ついつい、デューイのブロウに引き込まれてしまったのか。
 
フリー・ジャズとしての吹奏という切り口だけで評価すると、明らかにデューイの方がフリー・ジャズらしい。オーネットはあくまでも「オーネット・オンリー」。しかし、当時、演奏トレンドの一部を席巻したフリー・ジャズな吹奏という点では、オーネットは、オーネットの感性で無手勝流に展開するが故、フォロワーがいない分、割を食っている。

オーネットが、いち早くフリー・ジャズを提唱していながら、フリー・ジャズの第一人者にならなかった理由の一つがこの盤に潜んでいる様に思う。デューイのフリーなブロウは判り易いが、オーネットのフリーなブロウは、予測が付かない分、理解難易度が高い。僕は、このアルバムでは、デューイのブロウのバリエーションの豊かさに感心したくらいだ。

この盤では、コルトレーン・フォロワーのレッドマン、ギャリソン、エルヴィンは、オーネットの考えるフリー・ジャズに全く染まらなかった。逆に、コルトレーンにはこういうフリー・ジャズをやって欲しかったという、レッドマン、ギャリソン、エルヴィンらの想いに、オーネットが寄り添い過ぎて、「オーネットが演奏するコルトレーンのフリー・ジャズ」になってしまった。そんな雰囲気がするのがこのアルバムだと僕は解釈している。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

 ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

  ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

 ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
  の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月26日 (火曜日)

スタイグのスピリチュアルな音

ジャズ・フルートの概念を覆す革新的な奏法と、ヘヴィでファンキーなグルーヴが融合した、スタイグのキャリアを代表する傑作の一枚。コルトレーンが標榜した、エモーショナルでフリーキーな吹奏による「スピリチュアル」なジャズを踏襲した雰囲気の「スタイグの考えるスピリチュアル・ジャズ」の音世界が、この盤に蔓延している。

Jeremy Steig『Wayfaring Stranger』(写真)。1970年2月11日、NYの「A&R Studios」での録音。ブルーノートの4354番。ちなみにパーソネルは、Jeremy Steig (fl), Eddie Gómez (b), Sam Brown (g :track 3), Don Alias (ds, perc :tracks 1–4)。ジャズ・フルートの鬼才、ジェレミー・スタイグの6枚目のリーダー作になる。ピアノやキーボードをあえて排除した「コードレス」な変則カルテット編成。

スタイグは、フルートを吹きながら同時に声を出す「ハミング奏法(マルチフォニック)」や、激しいタンギング、オーバードライブ気味のブレス音など、特殊奏法を駆使している。クラシック的な美しさとは無縁な、ロックやブルースにも通じる野生的なトーンが特徴。この野性的なトーンが、スピリチュアルな雰囲気を増幅している。

スタイグのジャズ・フルートの概念を覆す革新的な奏法での、フリーキーでスピリチュアルな展開を阻害しない、ピアノやキーボードをあえて排除した「コードレス」な変則カルテット編成。そして、フルートの「避けられない音の細さ」を阻害しないフルート一本のフロント。管楽器などを入れたフロント複数管編成にしたら、フルートの細い音が飛んでしまう。
 

Jeremy-steigwayfaring-stranger  

 
LP時代のA面の「In The Beginning」「Mint Tea」「Wayfaring Stranger」の3曲は、スタイグの考えるフリーキーでスピリチュアルなジャズ・ファンクと伝統の再解釈(アメリカの伝統的なフォーク・民謡を、スタイグ独自の視点で再解釈を。そして、LP時代のB面、「Waves」「All Is One」「Space」の3曲は、エディ・ゴメスとの濃密な対話。このアルバムは、緻密に分けられた2つの表情を持っていることが分かる。

エディ・ゴメスのベース、ドン・アライアスのドラム&パーカッションのリズム&ビートが凄まじい。この2人のリズム隊があるからこそ、ふろんとのスタイグは安心して、フリー&スピリチュアルな、ジャズ・フルートの概念を覆す革新的な奏法でのフルートを吹きまくることができる。

また、本作ではスタイグのフルートが何層にも重なって聴こえる場面があるが、これは当時の最先端技術であるマルチ・トラック(多重録音)を活用し、彼自身が演奏を重ねて独特のサイケデリックな音響空間を作り出している。管楽器とフロントを分け合うと、フルートの音が負ける。といって、フルート一本だと如何にもフロントの音が細くなる。その難点をこのフツーとの多重録音でカバーしている。

そういう意味で、この盤は、ブルーノートの4300番台には珍しい、純ジャズ志向の、当時のトレンディな演奏形態であるフリー&スピリチュアル・ジャズを志向したプロデュース&アレンジがしっかりとなされた、メインストリーム志向の純ジャズなアルバムに仕上がっている。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

 ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

  ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

 ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
  の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月25日 (月曜日)

コナーズの奇跡的に美しい一瞬

ビル・コナーズ(Bill Connors)。1949年、米国ロス生まれで、今年で76歳、チック・コリアの第2期Return to Foreverの最初のギタリストというイメージが強い。『Hymn of the Seventh Galaxy』でのロック寄りの流麗でクロスオーバーなエレギが印象的だった。

だが、1975年、ECMから初リーダー作『Theme to the Gaurdian』をリリースした時には、全編アコースティック・ギターでの、内省的でリリカルで耽美的な、まさしく、ECMらしい内省的で空間美に溢れた「典型的なECMサウンド」を前提とした、フラメンコやクラシックの要素を孕んだダークかつ繊細なギタリストに変貌していた。

Bill Connors『Of Mist and Melting』(写真)。1977年12月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1120番。ちなみにパーソネルは、Bill Connors (g), Jan Garbarek (ts), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。そんな、米国出身のギタリスト兼作曲家ビル・コナーズの2枚目のリーダー作になる。

パーソネルが凄い。当時のECMレーベルを代表する「スーパーグループ」とも言える最高峰のカルテット構成で録音されている。北欧を代表するECMのハウス・サックス奏者、ヤン・ガルバレク、ベースのゲイリー・ピーコックと、ドラムのジャック・ディジョネットは、のちにキース・ジャレットの伝説的な「スタンダーズ・トリオ」を形成する最強のリズム隊である。
 

Bill-connorsof-mist-and-melting
 

リーダーのコナーズのフラメンコやクラシックの要素を孕んだダークかつ繊細なギターと、ガルバレクの透明感がありつつも情熱的なサックスのブローとが、美しいコントラスト。コナーズとガルバレクは、先日ご紹介した、ガルバレクの傑作『Places』にゲスト参加したことで意気投合して、このアルバムでの共演となったとのこと。

コナーズは「このECM時代はクラシック(ナイロン弦)ギターに異常なほど没頭していた」と回想している。完璧なフィンガー・ピッキングによる室内楽的なダイナミクスが特徴で、音楽的には、冷徹で理知的な北欧の「静寂(Cool)」と、フリージャズやフラメンコに近いアグレッシブな「情熱(Hot)」が絶妙にブレンドされている。

しかし、このアルバムにおいては、コナーズのリーダー作であるのも関わらず、ガルバレクのサックスの存在感が圧倒的。ガルバレクの独自のサックスの音色が非常に目立つ(笑)。最初、聴いた時は、このアルバムは「ガルバレクのリーダー作」と勘違いしたくらいだ。確かに、主役であるはずのコナーズのアコギや、ピーコックのベースの音が控えめで、ミキシングにちょっと問題を抱えていた様にも感じる。

それでも、このアルバムは、素晴らしい透明感と3次元的な空間表現、コナーズのアコギとガルバレクの、耽美的で躍動的なコントラスト、ピーコックとディジョネットの卓越したインタープレイを前提とした、内省的で空間美に溢れた「典型的なECMサウンド」を展開した好盤として評価されて良い。コナーズのアコギの「奇跡的に美しい一瞬を切り取った一枚」でもある。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

 ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

  ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

 ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
  の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月24日 (日曜日)

サウンドで空間や風景を描くこと

ガルバレクの音で静謐な風景を描き出す独自のスタイルが明快に出たリーダー作。内省的で広大なサウンド・スペースが、いかにもECMジャズらしい。ガルバレクはノルウェーの出身。ガルバレクのサックスの音は明らかに「北欧」的。しかし、ユニークなのは、北欧ジャズお決まりの「音程と節回し」が希薄。音の質は明らかに「北欧」なのだが、音程と節回しは、明らかに「ガルバレクのオリジナル」。

 Jan Garbarek『Places』(写真左)。1977年12月、オスロの「Talent Studio」にての録音。ECMの1118番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ts, ss, as), John Taylor (p, org), Bill Connors (g), Jack DeJohnette (ds)。ECMレーベルのハウス・サックス奏者、ヤン・ガルバレクのリーダー作。ベースレスという特異なカルテット編成。

ジョン・テイラーのオルガンの扱いがこれまたユニーク。米国ジャズでは聴いたことがない、教会音楽を思わせるオルガンのドローン(持続音)。これは確実に教会のオルガン・サウンドが基であろう、ファンクネスが希薄で、敬虔でリリジョン的な音は、独特で北欧的なサウンド効果を生む。

このジョン・テイラーのオルガンのドローン(持続音)をバックに、静謐でリリカルでクリスタルな、力感溢れ切れ味抜群のガルバレクのサックスが飛翔する。そして、ファンクネス皆無なクラッシック的な響きが個性のビル・コナーズのアコースティック・ギターが耽美的で躍動的なサウンドを展開する。
 

Jan-garbarekplaces

 
そんなフロントの3人を支え、鼓舞し、リードするのは、ジャック・ディジョネットのドラミング。ディジョネットのドランミングは、ファンクネスをそぎ落とした、パルシヴで躍動感溢れ、繊細でダイナミックな、途方もなくポリリズミック名ドラミング。緩急自在、硬軟自在、変幻自在なドラミングは、ガルバレクの静謐でリリカルでクリスタルな、力感溢れ切れ味抜群のガルバレクのサックスとの相性抜群。

ビル・コナーズのアコーティック・ギターも神妙に、ディジョネットのポリリズムに追従する。パルシヴなドラミングと、教会音楽を思わせるオルガンのドローン(持続音)の好対照なリズム&ビートの融合が、ベースレスと相まって、この盤に独特の浮遊感をもたらしている。そして、その浮遊感が、ガルバレクの「音で空間や風景を描くこと」というサウンド・ウメージの実現に多大な貢献をしている。

2曲目の「Entering」の欧州フォーキーな音世界は完全にECMオリジナル。ファンクネス皆無なクリスタルで凛とした欧州フォーキーな音世界に、ガルバレクのサックスとコナーズのギターの音色が良く似合う。まるで、北欧の「森と大地」を想起する、その透明度の高いフォーキーな音世界は、他のジャズ・レーベルの音には無い響き。コナーズのアコギの音が、そのフォーキーさをより濃厚なものにしている。

ジャケットもECMらしいジャケットでとても良好。ガルバレクの音楽性をそのまま視覚化したような、北欧の荒涼とした、しかし息をのむほど美しい自然の風景写真が使われているのが印象的。これほど、アルバムの中の音世界と合致したイメージのジャケットのアートワークも珍しい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
★ AORの風に吹かれて 

 ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

  ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

 ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
  の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月23日 (土曜日)

ECMバートン・サウンドの転換点

1978年当時のゲイリー・バートンのバンドとしては、ユニークな編成になっている。それまでは、フロントのパートナーとして、ギタリスト(パット・メセニーやジョン・スコフィールド)を採用してきたが、このアルバムでは、日本出身のトランペッターであるタイガー大越を抜擢している。ギターの代わりにトランペットが入ったことで、従来のバートン・クァルテットとは異なるサウンドが生まれている。

Gary Burton『Times Square』(写真左)。1978年1月、NYでの録音。ECMの1111番。ちなみにパーソネルは、ary Burton (vib), Tiger Okoshi (tp), Steve Swallow (b), Roy Haynes (ds)。ゲイリー・バートンのヴィブラフォン、タイガー大越のトランペットがフロントのカルテット編成。

ベースとドラムのリズム隊がユニーク。ジャズ界のレジェンド・ドラマーであるロイ・ヘインズと、バートンの長年の盟友であるベーシスト、スティーヴ・スワロウによる、実に豪華な、実に当時のジャズのスタンダードな、どこか米国ジャズ的な強靱なグルーヴが、ECMレーベルのサウンドからするとユニーク。

アタック感の強いタフでエネルギッシュな推進力については、ロイ・ヘインズのドラミングに依るところが大きい。このレジェンド・ドラマーの叩き出すリズム&ビートが、この盤の演奏全体に「タフでエネルギッシュな推進力」を与えていることが判る。
 

Gary-burtontimes-square

 
加えて、タイガー大越のトランペットも米国ジャズ的な音。このヘインズとタイガー大越の参加が、バートンのバンドに、米国的なサウンド要素「トランペットの鋭く都会的なファンキーさ」を付加して、欧州ジャズ+米国ジャズな、グローバルなジャズ・サウンドを創出している。

この「ギターの代わりにトランペット」という大胆な方針転換によって、それまでの「クールで浮遊感のあるモダンなサウンド」が、ECMレーベルらしい透明感のある耽美的なサウンドに加え、アタック感の強いタフでエネルギッシュな推進力、そうどこか米国ジャズ的な躍動感が付加された、グローバルなポストバップ&ニュージャズな演奏内容になっている。

バートンのヴァイブは変わらない。従来通りのピアノのように、どこまでも滑らかでクリスタルな4本マレット奏法。その音色は濁りがなく、水晶(クリスタル)のようにどこまでもクリア。ピアノのように複雑なコード(和音)とメロディを同時に、しかも超高速で弾きまくる。

バートンのヴァイブはそのままに、アルバムタイトルの通り、ニューヨークの「タイムズ・スクエア」の喧騒やエネルギーを、そのままECMの耽美的で洗練されたサウンドに持ち込んだような、バートンの作品群の中でも最もパワフルでファンキーな一枚になっている。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月22日 (金曜日)

アーバンなファンクネスとソウル

ジェームス・ブラウン風の泥臭いファンク、ストリート感溢れるジャズ、そしてアフリカ的なリズムを、彼の代名詞であるハモンドオルガン(B-3型)のカラフルな音色で包み込んだ、アーバンなファンクネスとソウルに満ちた内容である。

Lonnie Smith『Drives』(写真左)。1970年1月2日の録音。Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jerseyでの録音。ブルーノートの4351番。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), Dave Hubbard (ts), Ronnie Cuber (bs), Larry McGee (g), Joe Dukes (ds)。

ジャズ・オルガン奏者ロニー・スミス(Dr. Lonnie Smith)のソウル・ジャズ/ファンク・ジャズの佳作。アーバンでウォーム、ソウルフルかつエモーショナルなグルーヴが蔓延している。オリジナル盤は全5曲で構成されており、ジャズのスタンダードから当時のR&B/ポップスのカバーまで幅広く収録されている。

1.Twenty-Five Miles(エドウィン・スターのファンク・ナンバー)
2.Spinning Wheel(ブラッド・スウェット&ティアーズの大ヒット曲)
3.Seven Steps to Heaven(マイルス・デイヴィスの名演曲をアレンジ)
4.Psychedelic Pi(ロニー・スミス自身のオリジナル楽曲)
5.Who's Afraid of Virginia Woolf?(ジミー・スミスの名演で知られる佳曲)
 

Lonnie-smithdrives

 
ロニー・スミスのオルガンをメインに、デイヴ・ハバードのテナーとロニー・キューバ―のバリサクの2管に加えてラリー・マギーのギター、ノリの良いタイトなドラムはマクダフ・バンドのジョー・デュークス。ジャズ・シーンを見渡した時、ロニー・スミス以外、あまり名の通ったメンバーでは無いが、出てくるグルーヴ感は一流。

ロニー・キューバーが奏でるバリトンサックスの太い低音ラインが、ロニーの操るフットペダル(足鍵盤)によるベースラインと効果的に絡み合い、ロック曲やファンク曲にも引けを取らない、小粋でヘビーなグルーヴを生み出している。

晴れ渡る青空のもと、当時の最新型高級車(1970年型リンカーン・コンチネンタル)のサンルーフから美女と共に顔を出すロニーの姿を捉えたジャケットは、「車の中で窓全開で聴くのに最高の音楽」というアルバムのコンセプトとのこと。

そういう意味では、このアルバムも商業主義に傾いた、売らんが為のイージーリスニング志向のオルガン・ジャズということになる。ただし、そこはブルーノート。演奏内容は及第点以上、アレンジもポップでファンキーで良好。アルバムの演奏自体のクオリティは高いと言える。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月21日 (木曜日)

ECMでないと作れない音世界

ECMレーベルでないと作れない、リリース出来ない音世界。オープニングのタイトル曲「Patience」の抽象性は、ほとんど「現代音楽」の世界。無調でノン・ビートの世界。パフォーマンスは「即興演奏とフリーなインタープレイ」。欧州のニュー・ジャズ独特の、現代音楽との融合+「即興演奏とフリーなインタープレイ」の音がこの盤に蔓延している。

Tom Van Der Geld and Children at Play『Patience』(写真左)。May 1977年5月、Tonstudioでの録音。ECMの1113番。ちなみにパーソネルは、Tom van der Geld (vib, perc), Roger Jannotta(ss, bs, fl oboe, b-cl), Kent Carte (b), Bill Elgart (ds, perc)。ボストン出身のジャズヴィブラフォン奏者Tom Van Der Geldの初リーダー作。

即興演奏とフリーなイ現代音楽志向のインタープレイ。この個性的な音世界で、この盤の音世界は「ジャズ」の範疇に軸足を置いている。欧州ジャズの音であるが故、ファンクネスは皆無。しかし、どこかクラシックの理路整然とした構築美を忍ばせたフリーな演奏は聴き応え十分。激情のままに吹きまくる嘶きの様なフリー・ジャズよりも、よっほどスリリングである。
 

Tom-van-der-geld-and-children-at-playpat  

 
本作はピアノを排除した「ピアノレス・カルテット」の編成で録音されており、楽器の音と音の間の「隙間」が非常に美しく活かされている。クリスタルのように透明でクールな、美しいヴァイブの響きと、その「隙間」を活かした独特のアンサンブルも見事。

ベースのケント・カーターとドラムのビル・エルガートによるリズム隊は、単にリズムをキープするだけでなく、フロントの2人と対話するように抽象的かつスリリングなインタープレイを展開する。ノン・ビートを基本に、インタープレイのフリーなインプロビゼーションの中で紡ぎ出されるリズム・キープ。高度な即興演奏の展開。

トム・ヴァン・ダー・ゲルドが奏でる、透明感あふれる美しいヴァイブと、マルチリード奏者ロジャー・ジャノッタの多彩な管楽器の音の伸びを活かした、空間的な広がりとそれに伴う静寂が醸し出されている。まさに、ECMレーベル独特の音世界であり、欧州のニュー・ジャズの音世界である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月20日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・323

マクグリフのオルガンの個性満載。洗練されたブルース感覚、ゴスペルなど教会音楽の取り込み、抜群のタイム感が生み出す泥臭いグルーヴがマクグリフのオルガンの個性。彼独特のアーシー名音色、左手と足鍵盤による強烈なウォーキング・ベース、独特の「間」とパーカッシブな打鍵、そして、ドローバー(音色調整レバー)の見事なコントロール。マクグリフのオルガンは、その響き、音色、弾き回し、どれをとっても独特の個性。

Jimmy McGriff『Electric Funk』(写真左)。1969年9月、NYでの録音。ブルーノートの4350番。ちなみにパーソネルは、Jimmy McGriff (el-org), Blue Mitchell (tp), Stanley Turrentine (ts), Horace Ott (el-p, arr), Unknown (g), Chuck Rainey (el-b), Bernard Purdie (ds)。ギターが誰だか判らないセプテット編成。

ソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクな演奏ではあるが、こってこてファンキーなグルーヴに乗って疾走するマクグリフのオルガンは、それまでの4ビート中心のハードバップではない、ジャズ志向のアレンジによる、8ビートの「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックそのものである。なので、それまでのブルーノート4300番台のオルガン・ジャズ盤が陥り易かった、イージーリスニング志向のラウンジ風のオルガン・ジャズからは脱却している。
 

Jimmy-mcgriffelectric-funk

 
従来のメンストリーム系のモダン・ジャズとは全く異なるリズム&ビートを底に忍ばせている。ドラムの**バーナード・パーディーとベースのチャック・レイニーという、R&B/ソウル界屈指の黄金コンビがリズム&ビートを支えているところが、この盤の、8ビートのジャズ志向のアレンジによる、「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックな雰囲気、を確実なものにしている。特にエレベの弾き出すベースラインはエグい。

ホレス・オットがアレンジするエネルギッシュなホーン・セクションの存在も大きい。「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックの音世界を、より濃いものにしている。凄まじいファンク・グルーヴでカヴァーした、当時の大ヒットロックバンド、ブラッド・スウェット&ティアーズのヒット曲「Spinning Wheel」も、オットのアレンジに負うところが大きい。

このアルバムは、従来の4ビート&スインギーな純ジャズとは、一線を画すものではあるが、当時のソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクの最大の成果の一つ。マクグリフのディスコグラフィーの中でも最高傑作の1つとして良いだろう。コッテコテでスマートで泥臭い、オルガン・グルーヴが全編にわたって炸裂している。ジャズ志向のアレンジによる、8ビートの「オルガンで唄う」R&B=ソウル・ミュージックとして聴けば違和感は全く無い。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月19日 (火曜日)

4300番台の純ジャズ志向な盤

リーダーはドラム担当のエルヴィン・ジョーンズ。ジョージ・コールマンとジョー・ファレル、ペッパー・アダムスがフロント3管のピアノレス、パーカッション入りセクステット編成。どちらかと言えば、ハードバップ寄りのメンバー編成だが、出てくる音は「ポスト・バップ」。典型的なモード・ジャズである。エルヴィンが敬愛するコルトレーンにやって欲しかったであろう、理路整然としたモード・ジャズである。

Elvin Jones『Poly-Currents』(写真左)。 September 26, 1969年9月26日、Van Gelder, Englewood Cliffs, NJでの録音。ブルーノートの4331番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Fred Tompkins (fl :5), George Coleman (ts :1–4), Joe Farrell (ts, English horn, fl), Pepper Adams (bs :1–3), Wilbur Little (b), Candido Camero (congas :1–3)。

理路整然としたモード・ジャズではあるが、エルヴィンのリーダー作がゆえ、エルヴィンのポリリズミックな超人的ドラミングが基本、フィーチャーされている。演奏全体の雰囲気は明らかに「ポスト・バップ」。ただ、エルヴィンのドラミングをフィーチャーしているので、フロント3管のパフォーマンスは二の次、の様な、ちょっと未成熟で、ちょっととりとめのないアレンジなのが惜しい。
 

Elvin-jonespolycurrents

 
キューバ出身のパーカッション奏者キャンディド・カメロが参加。ドラムとコンガが激しく絡み合うことで、アルバムのタイトル(Poly-Currents=多層的な流れ)通りの、アフロ・カリビアン的な躍動感のあるグルーヴを生み出している。このドラムとパーカッションが絡む独特のグルーヴを損なわない為にピアノレスなんだろう。ここに、ピアノが打楽器として参加したら、折角の個性的なグルーヴが損なわれる。

冒頭「Agenda」は、アルバムの方向性を決定づける14分に及ぶ大作。冒頭からエルヴィンの重厚なドラムとキャンディドのコンガが火花を散らす様は見事。3曲目の「Mr. Jones」は、ケイコ・ジョーンズ(エルヴィンの妻でありマネージャー)の作曲。ポスト・バップの力強いグルーヴを持った、ストレート・アヘッドな名演。この曲でのフロント3管のパフォーマンスは、モーダルの響き芳しいパフォーマンスで聴き甲斐がある。

大手レコード会社の傘下に入って、売らんが為の「商業主義」に走った様なアレンジのアルバムが多い、ブルーノート4300番台の中で、このアルバムは、硬派でストレート・アヘッドで純ジャズ志向のアルバムとして、従来のブルーノートの矜持を反映した好盤だとは思う。アレンジがもう少し煮詰まっておれば、もっと凄いアルバムになっていただろうと、ちょっとだけ惜しい気持ちにさせる好盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

2026年5月18日 (月曜日)

「ジャッキー&ロイ」の異色作

ジャッキー&ロイは、ジャス・ボーカルのデュオ。スインギーで軽快でポップなスタイルがメイン。しかし、このアルバムは、クロスオーバー・ジャズ志向のモーダルな演奏、ボーカルを基本とした「ポスト・バップ」な、実にジャズとして、アーティステックな内容を追求した、デュオ・ボーカルのアルバムになっている。これは、他にほどんと類を見ない。

Jackie Cain & Roy Kral『A Wilder Alias』(写真左)。1973年12月の録音。CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie Cain (vo), Roy Kral (vo, el-p arr), Roy Pennington (vib), Joe Farrell (ts, ss), Hubert Laws (fl), Harvie Swartz (b), Steve Gadd (ds)。いわゆる「ジャッキー&ロイ」の異色作である。

最もアヴァンギャルドで実験的な「異色作」。エレクトリック・ジャズをベースとしたスピリチュアル・ジャズ、そして、プログレッシヴなクロスオーバー・ジャズをベースとしたジャズ・ボーカルのチャレンジしている。加えて、米国ジャズっぽくない、欧州ジャズにも通じる浮遊感のある心地よいサウンドが耳に新しい。
 

Jackie-cain-roy-krala-wilder-alias   

 
そして、最大の特徴は、「声」を楽器として扱った、歌詞のない世界。実際の「歌詞」があるのは2曲目の「Niki's Song」のみ。それ以外の楽曲はすべて歌詞を持たない「スキャット(ワードレス・ヴォーカル)」で歌われている。この「声」を楽器として扱う「スキャット」で、クロスオーバー・ジャズ志向のモーダルなフレーズを唄い上げていく。

バック・バンドの演奏もふるっている。まず、ガッドのドラミングに耳を奪われる。正確無比でファンキーなドラムブレイク、さらに変拍子やラテンビートへの適応は素晴らしいの一言。限りなく自由度の高いモーダルな、ファレルのサックスとロウズのフルートが、ジャッキー&ロイのスキャットとスリリングに絡み合い、絶妙なインタープレイを繰り広げる。これがまあ「聴いたことがない」インプロの響き。「声」の楽器があまりにユニーク。

このアルバムの名義は「Jackie & Roy」という親しみやすいユニット名ではなく、あえて「Jackie Cain & Roy Kral」と本名をフルネームでクレジットした点も含め、これまでのポップなイメージを離れて、アーティステックな内容を追求したシリアスなアルバムを作る、という二人の強い意志と矜持を感じる。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

2026年5月17日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・322

テリエ・リピダルのパフォーマンスの個性濃厚な音世界が広がる。北欧の冷涼で霧がかった空気感を体現したような、独特のサスティーンの響きと浮遊感を持つクロスオーバー&フュージョン・ジャズ。ECMレーベルの音独特の深いエコーのかかったギターの響き。北欧流ポスト・エレ・マイルス的な内容。クロスオーバー&フュージョン志向のエレ・ジャズの名盤である。

Terje Rypdal『Waves』(写真左)。1977年9月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1110番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g, syn, RMI keyboard computer), Palle Mikkelborg (tp, tack piano, RMI keyboard computer, ring modulator), Sveinung Hovensjø (6&4 string el-b), Jon Christensen (ds, perc)。ECMレーベルから発表した通算7枚目のスタジオ・アルバムである。

リピダルの音の美学がこのアルバムに結実している。ボリューム・ペダルを駆使したエコーの効いたギター・サウンドが実に幻想的に響き渡る。トランペットをはじめ様々な楽器を操るパレ・ミッケルボルグが参加が、リピダルの音世界に素晴らしい彩りを添えている。
 

Terje-rypdalwaves

 
ミッケルボルグが操るシンセサイザーや管楽器が重厚かつ幻想的なレイヤーを作り上げている。リング・モジュレーターをはじめとするエフェクターを駆使したエレクトリックな管楽器サウンドが、リピダルのギター・サウンドと共鳴して、幻想的な音世界を濃厚なものにしている。その音世界のボトムを支える、スヴェイヌン・ホヴェンショのうねる変則ベースラインの存在もこの盤のユニーク性に拍車をかける。

当時としては先進的だったアナログなリズムボックス(リズムマシン)のチープで高速なパターンが導入されているのが特徴的。そこに、ヨン・クリステンセンの生々しく繊細なドラムが絡み合うという、極めてユニークなポリリズム的アプローチが試みられている。これが今までのジャズっぽく無いリズム&ビートの正体。これも、リピダル独特の音世界をより幻想的にしている。

シンセサイザーによるアンビエント&ニューエイジ的な静寂と、ロックのダイナミズムをシームレスに融合させる独自のスタイルを確立させている。音の雰囲気は、ECMレーベルにおける「欧州プログレッシヴ・ロック」とでも形容しようか。ECMレーベルにはちょっとばかし似使わないジャズ・ロック&エレ・ジャズな音世界ではある。ECMの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーって、もしかしたら「プログレ・ファン」なのかもしれない(笑)。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

2026年5月16日 (土曜日)

米国と欧州の接近の”今”を感じる

2023年晩秋、ニューヨークの名門クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのレジデンス(ライヴ)期間中に、ニュージャージーの歴史的なヴァン・ゲルダー・スタジオにてレコーディング。ECMレーベルにしては珍しいスタジオ選択。ここでも、ECMレーベルの「米国ジャズへの接近」「グローバル・ジャズへの裾野拡大」を感じる。

Joe Lovano & Marcin Wasilewski Trio『Homage』(写真左)。2023年11月18日、米国ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのヴァン・ゲルダー・スタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Lovano (ts, tarogato, gong), Marcin Wasilewski (p), Slawomir Kurkiewicz (b), Michal Miskiewicz (ds)。ECM Recordsから、2025年4月25日のリリース。

このアルバムでは、ECMレーベルの音の「今」の一端を感じる事が出来る。ジョー・ロヴァーノは米国のサックス奏者。圧倒的な極太のダークトーン、伝統とアヴァンギャルドの融合がロヴァーノのサックスの個性なのだが、出てくる音の響きは当然「米国的」。

しかし、ロヴァーノは、ECMレーベルでの録音の時は、ECMの音のカラーに合わせて、音数を絞り、空間の響きを大切にした「静かでスピリチュアルな祈り」のようなパフォーマンスを展開する。米国的な「音の質」で、ECMレーベルライクな「音」を紡ぎ出す。いわゆる「米国ジャズの欧州ジャズへの接近」である。これが、聴いていて興味深く、最近のロバーノのECM盤を聴く最大の楽しみになっている。
 

Joe-lovano-marcin-wasilewski-triohomage  
 

マルチン・ボシレフスキ・トリオは、ポーランドが世界に誇る、現代最高峰のピアノ・トリオの一つ。このトリオの音楽性は「ヨーロッパ・ジャズの極み」とされる、静寂とリリシズム、ダークで、深く、スピリチュアルな表現力が個性。加えて、ユニークなのは、ジャンルを超えた「ポップ・センス」。ポップ・ロックの楽曲を、原曲の良さを活かしつつ、完全に自分たちのディープなジャズの世界観に染め上げるのに長けている。

ジョー・ロヴァーノの「豪快で太いアメリカン・サックス」と、マルチン・ボシレフスキ・トリオの「繊細で透明感のあるヨーロピアン・ピアノ」が出会い、化学反応を起こして、叙情的な美しさをベースにしつつ、本作ではより自由で広がりのある「インプロヴィゼーション」と、メンバー間のスリリングな「インタープレイ」を展開している。

ロヴァーノの音数を絞り、空間の響きを大切にした「静かでスピリチュアルな祈り」のようなパフォーマンスが、マルチン・ボシレフスキ・トリオの静寂とリリシズム、ダークで、深く、スピリチュアルなリズム・セクションをバックに、ECMレーベルの独特の「限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした音世界」に染め上げられ、朗々と叙情的に展開されていく。

マルチン・トリオ本来の美しくポップなメロディ・ラインをあえて少し崩し、欧州的な音の響きを米国的に少しチューニングし、ロヴァーノが得意とする「自由に流れるような即興演奏」や「大胆な音の掛け合いによるインタープレイ」に軸足を置いた、非常にスリリングで冒険的な内容になっている。まさに、ECMレーベルの「今」を感じることができる好盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

2026年5月15日 (金曜日)

ジャズ・ファンク3部作の最終盤

この盤の雰囲気、リズム&ビートからして、純粋なジャズとは言い難い。しかし、エレクトリック楽器やファンクのリズムを導入しつつも、ジャズの即興演奏に重きをおいたアレンジは、クロスオーバー・ジャズとしてのジャズ・ファンクとして聴けば違和感は無い。「ダンサフル、ファンクネス満載、グルーヴ感満載」で、後のレア・グルーヴ御用達盤である。

Joe Farrell『Canned Funk』(写真左)。1974年11-12月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, bs, fl), Herb Bushler (b), Joe Beck (g), Jimmy Madison (ds), Ray Mantilla (conga, perc)。ジョー・ファレルのCTIレーベルでの最後のリーダー作。ジャケットのぶっ飛んだデザインも強烈なインパクト。ファレルの考えるジャズ・ファンクの完成形。

冒頭のタイトル曲「Canned Funk」から、ファレルの考えるジャズ・ファンク全開。ファレルのサックスは、メインストリーム・ジャズ志向の正当派な吹きっぷりなんだが、バックのリズム&ビーとがエグい。ファンク度満点。そして、ベックのエレギがこれまたエグい。ベックの弾き出すファンクネスは半端無い。そして、ファレルとベックのユニゾン&ハーモニーから滴り落ちるファンクネスがこれまたエグい。
 

Joe-farrellcanned-funk

 
また、この盤でのグルーヴ感は特別で、当時CTIレーベルに多かった「スタジオで上品に作り込まれたフュージョン」とは一線を画した、当時のファレルのレギュラー・バンドによるライヴさながらの一発録りが、生々しいグルーヴ感を醸し出している。ファレルの正統派サックスとフルートが映えに映える録音は見事なもの。

この盤でも、ジョー・ベックのエレギの存在が大きく、ファンキーなカッティングから、ロック調の激しい歪み系ソロまで縦横無尽に弾きまくっている。そして、ベースのハーブ・バシュラーも、エフェクターを駆使したエレクトリック・ベースで強烈なうねりを創り出している。ジミー・マディソンのドラム、レイ・マンティーリャのパーカッションの「太鼓隊」の叩き出すグルーヴも半端ない。

3曲目の「Suite Martinique」などは、プログレッシブ・ロックやラテンジャズにアプローチした複雑な構成で、クロスオーバー・ジャズとしての面目躍如的な演奏。1作目"Penny Arcade" 、2作目 "Upon This Rock" 、3作目 "Canned Funk" の「ファレルの考えるジャズ・ファンク」シリーズの最終作。クロスオーバー・ジャズ志向のジャズ・ファンク盤としての佳作である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

2026年5月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・321

ジャズを聴き始めた頃から、ディー・ディー・ブリッジウォーター(以降「ディーディー」)のボーカルがお気に入りである。圧倒的なスキャット能力と即興性、ドラマチックな表現力と声量、多彩なジャンルを内包するスタイル、圧倒的なエネルギーと迫力。伝統的なジャズの技術と圧倒的なエンターテインメント性を融合させたボーカルスタイルは、リアルタイムでずっと愛聴してきた。

Dee Dee Bridgewater and Bill Charlap『Elemental』(写真左)。2025年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Dee Dee Bridgewater (vo, produce), Bill Charlap (p)。現代の女性ジャズ・ボーカリストの重鎮、ディー・ディー・ブリッジウォーターと、現代のネオ・バップなピアニスト、ビル・チャーラップとのデュオ・コラボレーション盤。久し振りにディーディーの個性を聴いた。

2019年から始まった2人のライブ活動、とある。この盤は、2019年から始まった二人のデュオ・コラボレーションの集大成の様なアルバムなんだろう。ピアノだけを伴奏にジャズ・ボーカルを唄い上げる。これって、簡単そうに見えて、ボーカルからしてもピアノからしても、意外と難しいのだが、この二人は濃密な一体感、打てば響く共鳴感、お互いがお互いを高め合う相互な化学反応が、収録された音から醸し出されていて、思わず引き込まれる。
 

Dee-dee-bridgewater-and-bill-charlapelem

 
ディーディーのボーカルは相変わらず見事である。ディーディーのボーカルの個性が溢れんばかりに伝わってくる。「原曲のメロディ」に立ち返る、彼女ならではの円熟の表現。深みを増した「低音域」とダイナミクス。そして、伴奏がピアノだけというところから、人声を「打楽器や管楽器」に変える圧倒的な技術を聴かせてくれている。

そして、現代のネオ・バップなピアニスト、ビル・チャーラップの歌伴ピアノが絶品。チャーラップは明確なバップ・ピアノで、ディーディーの圧倒的なエネルギーと迫力のあるボーカルに相対し、ディーディーのボーカルをがっちりとサポートし、ガッツリと鼓舞する。彼女の熱くダイナミックなボーカルが、チャーラップの繊細で端正なバップ・ピアノと合わさることで、極上の緊張感と調和を生み出している。

ディーディーの感情と芸術性のすべてが剥き出しになった素晴らしい内容のアルバム。チャーラップの歌伴としてのバップ・ピアノの優秀性が露わになった素晴らしい内容のアルバム。「お互いが主役であり伴奏者である」という対等な対話、そして一瞬の隙もない緊張感と遊び心の共存。これ、近年のボーカルの優秀盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月13日 (水曜日)

ホランドの優れたベース・ソロ盤

楽器のソロ演奏を前提としたジャズも沢山ある。が、難度の高いのが弦楽器のソロ。特にコード弾きができない楽器、例えば「ウッドベース」などは、ジャズのソロ楽器としての扱いは難度が高い。特にリズム&コードの正確な維持が難しく、管楽器やピアノの様に、流麗な唄うが如くのメロディ演奏が、ベースの弾き方として難度が高い。

Dave Holland『Emerald Tears』(写真左)。1977年8月、オスロの「Talent Studio」での録音。ECMの1109番。ちなみにパーソネルは、David Holland (b) 一人だけ。英国出身のジャズ・ベーシストであるデイヴ・ホランドのウッドベースだけの完全ソロ・アルバムである。

多重録音を一切行わず、ベース1本のみで独自の空間表現や緻密な即興演奏を展開している。凄まじいほどのテクニックの優秀さ。ウッドベースの胴鳴り、弦鳴りが生々しい、素晴らしいピチカート。正確なビート感。アドリブ・フレーズの溢れんばかりの歌心。ウッドベースがこれだけの表現力を持っていることに、聴いていて、ただただ唖然とする。
 

Dave-hollandemerald-tears 

 
全6曲。聴き始めると、ウッドベース一本のソロということを忘れてしまう。ソリッド名低音のうねりと持続音との対話。規則性のある即興と自由度溢れ限りなきフリーな即興との対比。弓で引くアルコ奏法の正確さと歌心。絶妙な「間」を活かしたメロディックなフレーズ展開。驚異的な速弾き(ダブルタイム)。由美でボディを叩くドラミング奏法。高音のハーモニクス。

クラシックに比肩する、ウッドベース演奏のレベルの高さに聴いていて「唖然」とする。何より、ホランドのウッドベースの素晴らしさは、ベースのピッチ(音程)がバッチリ合っていること。フレットレスのウッドベースは、ピッチを合わすのが難しい。しかし、ホランドのベースはピッチがバッチリ合っている。合っているからこそ、アルコ奏法、ドラミング奏法、驚異的な速弾き、高音のハーモニクスが映えに映えるのだ。

この盤、ウッドベースのジャズのソロ演奏として、屈指の名盤だと思う。ベースのソロ盤とは、聴く側として、非常に特殊なんだが、このホランド盤は一聴に値する。ジャズ喫茶でリクエストすると、周りが眉をひそめられたりするが、是非、自室で、それもまずまずのステレオ装置で聴いて欲しい。生々しい雨ウッドベースの音に思わず引き込まれること請け合いです。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月12日 (火曜日)

1968年のマイルス再聴・その2

1968年から1971年のジャズは、ソウル・ジャズなアレンジ、R&B志向の音作り&ビート、聴き手に訴求するイージーリスニングな味付けがメイン。これはこれでジャズ、と認めてはいるが、ジャズの本質である「即興演奏」は二の次、丁々発止とした、手に汗握る様な「インタープレイ」は無い。とにかく「聴き心地」優先。ブルーノートの4300番台がズバリそのど真ん中で、カタログ順に聴き進めていて、ちょっと辛くなってきた。

1968年から1971年のジャズって、皆、そんな「売らんが為」のジャズばかりだったのか。例えば、マイルスはどうだったのか、ビル・エヴァンスはどうだったのか。ちょっと聴き直して、再確認したくなった。昨日から、先ずはマイルス・デイヴィス。1968年のマイルスをもう一度、聴き直してみた。

Miles Davis『Filles De Kilimanjaro』(写真左)。邦題『キリマンジャロの娘』。1968年6月のセッションのパーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b), Tony Williams (ds)。「Petits Machins (Little Stuff) 」「Tout De Suite」「Filles De Kilimanjaro」の3曲が演奏されている。

そして、1968年9月のセッション。パーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Chick Corea (el-p), Dave Holland (b), Tony Williams (ds)。黄金のクインテットから、Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b)が抜けて、チックとホランドに代わっている。 「Mademoiselle Mabry」「Frelon Brun」の2曲が演奏されている。
 

Filles_de_kilimanjaro_2

 
エレ・マイルスの2枚目。前作で「電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用」によるメインストリームなエレ・ジャズを標榜したマイルス。このアルバムでは、それを完成・確立させている。まず、前作と同じメンバーで、その「電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用」でのメインストリームなエレ・ジャズによる、限りなく自由度の高いモード・ジャズを確立させている。「Petits Machins (Little Stuff) 」「Tout De Suite」「Filles De Kilimanjaro」の3曲である。

そして、黄金のクインテットから、Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b)が抜けて、チックとホランドに代わって、「Mademoiselle Mabry」「Frelon Brun」の2曲が演奏されている。面白いのは、アルバムの中で、黄金のクインテットの演奏と混在させて収録されていること。この「電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用」によるメインストリームなエレ・ジャズが、黄金のクインテットの専売特許でないことを表現している様に見える。

この盤は、マイルスによる「電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用」でのメインストリームなエレ・ジャズによる、限りなく自由度の高いモード・ジャズの確立の記録である。売らんが為のアレンジ、音作りなんて微塵も無い。ただただ自らが「メインストリームなジャズ」と信じるアレンジと音作り。妥協の無いストイックでシビアな音作り。マイルスのジャズマンとしての矜持をビンビンに感じる。

これが、1968年のマイルスの音世界。商業主義とは全く無縁。マイルスはマイルス、我が道を行く。頼もしいこと限りなし。こぞって商業主義に走っている様なジャズの世界で、「真のジャズ、ジャズの正しき姿」を体現しているジャズマンがいる。この1968年のマイルスを聴き直していて、何だか嬉しくなった。この「真のジャズ」を体現するマナー。現代のジャズにも、しっかりと弾き継がれている。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月11日 (月曜日)

1968年のマイルスを聴き直す

このところ、ブルーノートの4300番台をカタログ順に聴き直していて、このブログにまだ記事にしていないアルバムを集中聴きしているのだが、どれもが、そんな時代だったのだろう、売らんが為のアレンジ、音作りになっていて、聴き進めるにつけ、食傷気味になってきた。

どのアルバムも、1968年から1971年の録音がメイン。ソウル・ジャズなアレンジ、R&B志向の音作り&ビート、聴き手に訴求するイージーリスニングな味付け。これはこれでジャズ、と認めてはいるが、ジャズの本質である「即興演奏」は二の次、丁々発止とした、手に汗握る様な「インタープレイ」は無い。とにかく「聴き心地」優先。ちょっと辛くなってきた。

MIles Davis『Miles in The Sky』(写真)。1968年1月16日、5月15–17日の録音。パーソネルは、Miles Davis (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), George Benson (g), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。マイルスが初めて電気楽器を導入したアルバム。つまりは、エレ・マイルス発祥のアルバムである。

では、1968年の録音って、例えば、マイルスだったら、どのアルバムになるのか。ぱっと出てきたのが『Miles in The Sky』。エレ・マイルス発祥の記念すべきスタジオ録音盤なんだが、電気楽器の大々的導入でジャズの幅を広げたが、リズム&ビートの面でも、8ビートと変則拍子の標準採用という「スインギーな4ビートの訣別」によっても、ジャズの幅を大きく広げている。
 

Miles_in_the_sky_1

 
演奏を聴く。フロントは、マイルスのトランペット、ショーターのテナー、ベンソンのエレギ。切れ味良くほど良く尖った「即興演奏&インタープレイ」が怒濤の様に耳に迫り、疾走する。実にアーティスティックな演奏で、ジャズが「音楽芸術」の1ジャンルであることを思い出させてくれる。我々は「正当なジャズを演奏している」という矜持をバリバリ感じる。

売らんが為のアレンジ、音作りなんて微塵も無い。ただただ自らが「メインストリームなジャズ」と信じるアレンジと音作り。ストイックでシビアな音作りなんだが、ジャズ者の我々の耳には、ガッツリと訴求する。イージーリスニング志向なんてどこにも無い。ゴツゴツとした手応えのある、ジャジーなパフォーマンスの応酬。

8ビートと変則拍子の標準採用したリズム・セクションもエグい。トニーが喜々として、8ビートと変則拍子を高速ポリリズミックに叩きまくる。フェンダー・ローズとガッチリ組み合い、ジャズ・ファンクなエレ・ビートを叩き出そうと苦闘するハンコック。8ビートと変則拍子のベースラインを難なく紡ぎ出すロン。このリズム・セクションだからこそ、純正な「エレ・マイルス」をスタートすることが出来た。

これが、1968年のマイルスの音世界。どこか安堵する自分がいる。電気楽器&8ビートと変則拍子の標準採用の中で、限りなく自由度の高い「即興演奏」が基本のモード・ジャズを展開する。これが、マイルスのジャズの可能性の広げ方。これは21世紀になった今でも、ジャズの世界では「基本中の基本」。フリーもスピリチュアルも、このマイルスの広げたジャズの中に収斂されていった。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月10日 (日曜日)

ジャズ・ファンクを走るファレル

CTIレーベルに来て、正統派クロスオーバー・ジャズなアルバムを制作してきたジョー・ファレル。よりファンキーな路線へと舵を切ったCTI第4作目が『Penny Arcade』。そして、CTI第5作目である。より骨太でロック色の強いフュージョン・サウンドへの傾倒が色濃い、ジャズ・ロック/ジャズ・ファンクの好盤である。

Joe Farrell『Upon This Rock』(写真左)。1973年10月, 1974年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, fl), Joe Beck (g), Herb Bushler (b), Jimmy Madison (ds)。ゲストに、Steve Gadd (ds, on "I Won't Be Back"), Herbie Hancock (p, on "I Won't Be Back"), Don Alias (conga, on "I Won't Be Back")。全4曲で構成され、ジャズの即興性とロックのダイナミズムが高度に融合したクロスオーバー・ジャズである。

1作目"Penny Arcade" 、2作目 "Upon This Rock" 、3作目 "Canned Funk" の三作品は、ギターにジョー・ベックを入れてかなりファンク色の強い演奏をしている。その2作目である。この作品の実質的な「共同リーダー」とも称されるギタリスト、ジョー・ベックの存在感が非常に大きいのが特徴。ジョー・ベックのファンキー・エレギを抜きにして、この盤は語れない。
 

Joe-farrellupon-this-rock

 
1曲目「Weathervane」は、挨拶代わりの1曲。ファレルとジョー・ベックによる高速のユニゾン・フレーズが印象的な、マハヴィシュヌ・オーケストラを彷彿とさせる緊張感あふれるジャズ・ロック。3曲目のタイトル曲「Upon This Rock」が、強烈な、このアルバムのハイライト。強靱なドラム・ブレイクで幕が開き、ファレルの力強いテナー・サックスとジョー・ベックの歪んだギターのユニゾン&インタープレイが凄まじい。

2曲目の「I Won't Be Back」だけが、他の3曲と雰囲気、音が違う。それもそのはず、この曲については、前作『Penny Arcade』と同じセッションで録音された曲。ハービー・ハンコックとスティーヴ・ガッドが参加しており、ラテン調の軽快なリズムに乗せた優雅なファレルのフルート・ソロが楽しめる。後のフュージョン・サウンドを先取りした様な、アーバンでメロウでファンキーなサウンドは意外と癖になる。

ラストの「Seven Seas」は、ジャズ・ファンク・チューン。ファレルのテナーもベックのエレギも、どっぷりジャズ・ファンク。ファンキーな路線へと舵を切ったファレルの最終到達点の様な演奏。全4曲を聴いて、ファレルの目指したもの、それは、ジャズとロックの融合によるクロスーオーバーなジャズ・ファンク。これはこれで、ちゃんとした成果を上げていると僕は思う。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月 9日 (土曜日)

ジャズ・ファンクのファレルです

チック・コリア率いる第1期リターン・トゥ・フォーエヴァーのメンバーとしても知られるサックス&フルート奏者のジョー・ファレル。それまで、CTIレーベルに来て、正統派クロスオーバー・ジャズなアルバムを制作してきたが、この盤は、よりファンキーな路線へと舵を切ったCTI第4作目。

Joe Farrell『Penny Arcade』(写真左)。1973年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, fl, piccolo), Joe Beck (g), Herbie Hancock (p), Herb Bushler (b), Steve Gadd (ds), Don Alias (conga)。ジョー・ファレルが伝統的なジャズからジャズ・ファンク〜ジャズ・ロックへと転換した、エポックメイキングな作品。

冒頭のタイトル曲「Penny Arcade」から、ジャズ・ファンク全開。ジョー・ベックのギターリフが完璧にジャズ・ファンクしていて、演奏全体にファンクネス蔓延。続くスティーヴィー・ワンダーのカバー曲「Too High」は、もともと曲自体が、R&Bの名曲なんで、冒頭から、どっぷりジャズ・ファンク。
 

Joe-farrellpenny-arcade

 
13分を超える白熱のジャム。ファレルはソプラノ・サックスで、複雑なメロディを自在に吹きこなし、とてもエモーショナルな吹き回し。そのファレルのソプラノ・サックスに、ハービー・ハンコックが、原曲のクラビネットをエレピ(フェンダー・ローズ)に置き換え、うねるようなソロで絡みに絡む。このスティーヴィー曲のカバーでのハンコックのエレピのソロは絶品である。

続く「Hurricane Jane」では、7/4拍子という変拍子ながら、スティーヴ・ガッドの強烈なドラミングがエグい。そこに、ハンコックのエレピが、ジャズ・ファンクよろしく、どっぷりファンキーに絡んで、その上でファレルがファンクにモーダルにサックスを吹きまくる。この雰囲気って、どこか、ハンコックのジャズ・ファンクの歴史的名盤『Head Hunters』を想起する。

ラス前の「Cloud Cream」と。ラストの「Geo Blue」は、アーバンでメロウな雰囲気のムーディーな演奏で、ジャズ・ファンクというよりは、これこそフュージョン・ジャズである。最後の2曲が、それまでの圧倒的な「ジャズ・ファンク大会」な雰囲気をクールダウンさせているところで、ちょっと損をしている。それでも、この盤、当時のジャズ・ファンクの好盤としてお勧めである。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月 8日 (金曜日)

サンタナとアリスとのコラボ

この作品は、サンタナがインドの導師シュリ・チンモイに師事し「デヴァディップ(Devadip)」という霊名を受けた時期に制作されている。ジョン・コルトレーンの妻であり、自らも優れたピアニスト・ハープ奏者であるアリス(霊名トゥリヤ)との共演は、サンタナのキャリアにおいて最も瞑想的で、ジャズの即興演奏に深く踏み込んだものとなっている。

Carlos Santana,Alice Coltrane『Illuminations』(写真)。邦題「啓示」。1974年の作品。ちなみにパーソネルは、以下の通り。スピリチュアル・ロックの雄、カルロス・サンタナと、スピリチュアル・ジャズの歌姫、アリス・コルトレーンとのコラボレーション盤である。

Alice Coltrane (p, harp, Wurlitzer electric organ), Carlos Santana (el-g), Dave Holland, James Bond (b), Jack DeJohnette (ds, perc), Tom Coster (el-p, Hammond B-3 organ), Jules Broussard (ss, alto-fl), Phil Brown (tanpura), Armando Peraza (ds, congas), Phil Ford (tablas)。ここに、アリス・コルトレーンがアレンジ&指揮を担当するストリングス・セクションがバックに入る。

アリスによる壮大なストリングス・アレンジとハープ、サンタナの官能的なギターが溶け合い、東洋的な響きと宇宙的な広がりを持っている。アルバムは、シュリ・チンモイによる短いモノローグから始まり、瞑想的な前半から激しい即興演奏の後半へと展開する。そう、この冒頭の「Guru Sri Chinmoy Aphorism(スリ・チンモイの教え」の1分11秒に怯んではいけない(笑)。
 

Carlos-santanaalice-coltraneillumination

 
オーケストラによる「静」。前半の「Angel of Air」や「Angel of Water」では、アリスが編曲・指揮した壮大なストリングス・オーケストラが導入されている。サンタナのギターは音数が極めて少なく、フィードバック音やサステインを活かしたアンビエントな響きで、背景のハープや弦楽器と溶け合っている。

フリージャズの「動」。 中盤の「Angel of Sunlight」は約14分に及ぶ大作で、ジャック・ディジョネットの激しいドラミングとデイヴ・ホランドのベースが牽引する、ジョン・コルトレーン後期のスタイルに近いアグレッシブなフリージャズを展開されていて見事。

この瞑想的な「静」と、フリージャズ的な「動」の対比が鮮明なのが、この盤の個性だろう。ウーリッツァー・オルガンの音色も特徴的。アリス・コルトレーンがピアノやハープだけでなく、歪んだ音色のオルガンを弾くことで、宇宙的な広がりを加えている。サンタナのエレギは、「弾かない」勇気とロングサステイン、クリーンと歪みの使い分け、フィードバックを「楽器」として操り、スピリチュアルな「叫び」を表現する。

当時の商業的な成功には恵まれなかったが、現在では「スピリチュアル・ジャズの隠れた名盤」として高く評価されている。サンタナの2面性、ラテン・ロックとスピリチュアル・ロック、このスピリチュアル・ロックの個性が、アリス・コルトレーン独特のスピリチュアル・ジャズと融合して、唯一無二の、他に類を見ない、ロックとジャズが融合した「スピリチュアル・ジャズ」を生み出している。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月 7日 (木曜日)

アリスのスピリチュアルを見直す

アリス・コルトレーンが、インパルスからワーナー・ブラザース・レコードへ移籍した第一弾として1976年に発表した、スピリチュアル・ジャズの金字塔的作品である。オーケストラからトリオまで多彩な編成で、アリス・コルトレーン独自のスピリチュアル・ジャズを創出している。

Alice Coltrane『Eternity』(写真左)。邦題「永遠なる愛」。1975年8月13日〜10月15日の録音。ちなみにパーソネルは、核となるリズム・セクションは、Alice Coltrane (org, harp, el-p, tambura), Charlie Haden (b), Ben Riley (ds), Armando Peraza (congas)。主なゲストは、Hubert Laws (fl), Jerome Richardson(ss, alto-fl, Ernie Watts (english-horn), Oscar Brashear (tp), George Bohanon(tb)など。

演奏のアレンジが彼女独特なところがあって、スピリチュアル・ジャズとは言っても、精神性を楽器の吹き上げ、嘶きに託すような、一種、社会性を孕んだ、フリー・ジャズの延長線上のスピリチュアル・ジャズではなく、精神面を前面に押し出した、精神性を楽器それぞれの響きに託す、そんな一種、宗教性を孕んだ、限りなく自由度の高いモード・ジャズの延長線上にある、精神性の高いスピリチュアル・ジャズである。

振り返ってみると、アリスの様な精神性、宗教性の高いスピリチュアル・ジャズは、他に無かった様な気がする。

音の傾向からすると、ECMレコードの「ニュー・ジャズ」に親和性が高いが、アリスのスピリチュアル・ジャズは、ブラック・ミュージックの音要素が濃い。ECMのスピリチュアル・ジャズは、欧州のレーベルだけ合って、ブラック・ミュージックの音要素は皆無。音の裏に潜む宗教性についても、アリスはあくまで「米国」、ECMはあくまで「欧州」である。
 

Alice-coltraneeternity

 
このアルバムには、そんなアリス・コルトレーン印のスピリチュアル・ジャズの代表的演奏がギッシリ詰まっている。亡き夫ジョン・コルトレーンへの愛を捧げた作品とされ、ハープ、オルガン、さらにはインドの伝統楽器やストリングスを駆使した壮大なサウンドが特徴。ハープやオルガンを演奏するだけでなく、管弦楽団を含む大規模な編成を指揮した野心作で、アレンジも演奏もそのレベルは高く、アリスのスピリチュアル・ジャズの代表作の一枚と言って良いと思う。

印象的な曲としては、4曲目の「Om Supreme」では、6人の男女混声合唱団が加わり、ヒンドゥー教の聖歌(バジャン)をテーマにした幻想的なサウンドを創出、ラストの6曲目「Spring Rounds」は、ストラヴィンスキーの『春の祭典』を引用した曲で、大規模なブラス・セクションとストリングス(バイオリン、ヴィオラ、チェロなど計12名以上)が導入されていて、壮大なスピリチュアル・ジャズが展開されている。

本作が録音された1975年から1976年にかけて、アリスは生涯最大の転換期を迎えており、「俗世を離れ、ヒンドゥー教の修行者(スワミ)として生きる」という啓示のもと、宗教家として「出家」を果たしている。この宗教家としての「出家」が、今までのフリー・ジャズ的展開の中に潜んでいた「宗教性」が、より具体的で崇高な「祈り」の形として表出した結果が、このアルバムに色濃く反映されている様に思う。

今まで、どうも、ジョン・コルトレーンと演奏を共にしていた頃のスピリチュアル・ジャズの印象が、自分の頭の中に色濃く残っていて、今まで、アリスのスピリチュアル・ジャズはちょっと敬遠していたのだが、今回、このアルバムをひょんなことから聴いてみて、最初の印象が「これ、プログレッシヴ・ロックに近いやん」。

精神性、宗教性が色濃く、基本的にブラック・ミュージックとジャズに軸足をしっかり残してはいるが、基本的に統制の取れた、しっかりとコントロールされたスピリチュアル・ジャズだと思う。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月 6日 (水曜日)

スピリチュアル+ブラジリアン

ブルーノートの4300番台のアルバムらしいアルバムである。ファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアニストだったデューク・ピアソンが、突如、ボサノヴァとコーラス・アンサンブルが融合を融合した、摩訶不思議な、ポップでスピリチュアルなリーダー作をリリースしている。

Duke Pearson『How Insensitive』(写真左)。1969年4月11,14日、5月5日の録音。ブルーノートの4344番。ちなみにパーソネルは以下の通り。ピアニストであり、プロデューサーとして後期ブルーノートを支えたピアソンが、スピリチュアル・ジャズとブラジリアン・ジャズへの傾倒を反映させた作品。

4月11,14日の録音 (tracks 1 & 3–5) は、 Duke Pearson (p, el-p, arr), Al Gafa (g), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds), Airto Moreira (perc), Andy Bey (lead vo), The New York Group Singers' Big Band。

5月5日の録音 (tracks 7, 9 & 10)は、Duke Pearson (p, el-p, arr), Bebeto Jose Souza (b), Dorio Ferreira (g, perc), Flora Purim (lead vo),

初リリース時、LP時代の収録曲は、収録曲は、A面がコーラスを主体としたスピリチュアル・ジャズ、B面がブラジリアン・ジャズという構成に分かれている。どういう意図でこういう収録形態になったのか、思わず首を捻ってしまう。

4月11,14日の録音 (tracks 1 & 3–5) では、17名の男女混声合唱団(ニューヨーク・グループ・シンガーズ・ビッグ・バンド)を起用し、幻想的で透明感のある、スピリチュアルなサウンドを作り上げている。
 

Duke-pearsonhow-insensitive  

 
冒頭の「Stella by Starlight」がその最たる例で、出だしは、ファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアノソロが、ハードップ時代の良き雰囲気を醸し出すが、いきなり17名の男女混声合唱団のコーラスが出てきて、はっきり言って「戸惑う」。バックのピアソンのバップ・ピアノがとても良いフレーズを叩き出しているので余計に、である。

この「17名の男女混声合唱団」のコーラスが、ファンキー&ソウルフルではあるが、コーラスの雰囲気は「ポップ」。上質でポップな混声合唱には、どこか敬虔な響きが漂って、ところどころゴスペルチックで、まるでポップな賛美歌を聴いている様な面持ち。しかし、この「17名の男女混声合唱団」のコーラスの必然性が全く理解できない。

ポップなゴスペルチックな男女混成合唱がメインなのか、リーダーのピアソンを始めとする純ジャズにポップなゴスペルチックな男女混成合唱が彩りを添えているのか、聴き方の力点の置き方が難しいアルバムになっている。賛美歌的な響き、ゴスペルチックな響きを前面のに押し出し、スピリチュアル・ジャズの側面を前面に押し出そうとしているのは理解出来るのだが。

5月5日の録音 (tracks 7, 9 & 10)では、7曲目の「Sandalia Dela」のコッテコテのボサノバ・ジャズには、更に「戸惑う」。フローラ・プリムのボサノバチックな歌唱が前面に押し出されている。8曲目「My Love Waits (O Meu Amor Espera)」以降「Tears (Razao De Viva)」「Lamento」もゴスペル・ジャズ。

ピアソンのファンクネス漂うシンプルで、どこか趣味の良い「地味」なバップ・ピアノをメインとするジャジーな演奏に、ポップでファンキーでゴスペルチックな「17名の男女混声合唱団」のコーラスが絡む、意外とスピリチュアル・ジャズ的側面は軽くてポップな、摩訶不思議な雰囲気のスピリチュアル&ボサノバ・ジャズとして良いのでは、と思う。ピアソンのピアノだけ取りあげれば、これはこれで申し分無いんだけどなあ。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月 5日 (火曜日)

ボーカル入りのハッチャーソン

ハッチャーソンのヴァイブはハードバップなヴァイブでは無い。ハッチャーソンのヴァイブは「新主流派」のヴァイブである。モーダルであり、フリーであり、アーティステックである。ハッチャーソンは意外と硬派なミュージシャンで、この「新主流派のジャズ・ヴァイブ」のスタイルを生涯貫き通した。が、このアルバムで、とんでもない寄り道をする。

Bobby Hutcherson『Now!』(写真左)。1969年10月3日 (#2–3)、11月5日(#1, 4–5) の録音。ちなみにパーソネルは、以下のとおり。2004年のCDリイシュー時、1977年8月13日の録音がボートラとして4曲追加されているが、今回は、オリジナルの5曲に絞ってのみ、この記事をまとめている。

1969年10月3日 (#2–3)は、Bobby Hutcherson (vib, marimba), Harold Land (ts), Kenny Barron (p), Wally Richardson (g), Herbie Lewis (b), Joe Chambers (ds), Candido Camero (congas), Gene McDaniels (lead vocals), Hilda Harris, Albertine M. Robinson, Christine Spencer (backing vocals)。

1969年11月5日(#1, 4–5) はBobby Hutcherson (vib), Harold Land (ts), Stanley Cowell (p, el-p), Wally Richardson (g), Herbie Lewis (b), Joe Chambers (ds), Candido Camero (congas, bongo), Gene McDaniels (lead vocals), Eileen Gilbert, Christine Spencer, Maeretha Stewart (backing vocals)。

このアルバムの最大の特徴は、ハッチャーソンのリーダー作として初めてボーカル(合唱)を全面的に取り入れたこと。というか、それまでの「新主流派」ヴァイブの雄、モード&フリーなヴァイブを誇ったハッチャーソンが、いきなりボーカルを取り入れた。
 

Bobby-hutchersonnow

 
それは、冒頭の「Slow Change」の出だしから始まる。いきなり、男性ボーカルが、それも、ソウルフルな、R&Bなボーカルが入って、ゴスペルな女声コーラスがバックで唄う。

しかし、バックの演奏はと耳を傾けると、ハッチャーソンのヴァイブ以下、ハロルド・ランドのテナーなど、かなり硬派は新主流派ジャズをやっている。モード、時々フリーなアドリブ部の展開は水準以上の優れた演奏。

それを思うと、そもそも、このアルバムにボーカルが必要だったのか、と思ってしまう。歌詞の内容は、社会的メッセージがメインで、当時のアフリカ系アメリカ人の権利意識や精神的連帯を反映していて、かなり直接的なアジテーションで、ジャズには向かないと僕は思う。

ボーカルが入ったお陰で、当時、流行中のスピリチュアル・ジャズな雰囲気や、サイケデリック・ジャズな音要素が吹かされてはいるが、ここまで、場違いなボーカルを充てられると、このアルバムをどう聴いてよいのかが判らなくなる。ただ、ラテン・パーカッションやファンキーな要素を融合させた「レア・グルーヴ」的な側面も持っているので、そちらの方面に興味が強いジャズ者の方々には興味深い内容になるだろう。

ただ4曲目の「The Creators」だけは、ハロルド・ランドのテナーとハッチャーソンのヴァイブ、スタンリー・カウエルのエレピが大活躍、モーダルでスピリチュアルな整然とした即興演奏的な展開で、ゴスペルチックな呪術的な女性コーラスと相まって、スピリチュアルなモード・ジャズの演奏として、抜群の成果を上げている。この1曲だけは聴き逃せない。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月 4日 (月曜日)

69年のカウント・ベイシー楽団

1969年のカウント・ベイシー楽団の演奏である。ジャズ人気は曲がり角を迎え、演奏内容もフリー、スピリチュアル、クロスオーバー、そして、電気楽器での演奏が混ざって、混迷の度合いを深めつつある時代。そんな時代に、このアルバムは、ドイツのジャズ専門レーベルMPSレーベルの創設者ハンス・ゲオルク・ブルーナー=シュヴェアの強い要望により制作されたものとのこと。

Count Basie and His Orchestra『Basic Basie』(写真左)。1969年10月20日の録音。 MPSレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Count Basie (p), Oscar Brashear, Gene Coe, Sonny Cohn, Waymon Reed (tp), Frank Hooks, Grover Mitchell, Mel Wanzo (tb), Bill Hughes (b-tb), Marshal Royal, Bobby Plater (as), Eric Dixon, Eddie "Lockjaw" Davis (ts), Charlie Fowlkes (bs), Freddie Green (g), Norman Keenan (b), Harold Jones (ds), Chico O'Farrill (arr)。

このアルバムは、ベイシー楽団の黄金時代を支えたスタープレイヤーたちが去った後、新たな布陣で「ベイシー・スタイル」の真髄であるシンプルかつ強力なスウィングを追求した作品となっている。1曲が約2〜3分と短くまとめられた12曲のスタンダード・ナンバーで構成されており、無駄を削ぎ落とした「機能美」とも言えるアンサンブルが特徴で、とても聴き易く、親しみ易い内容となっている。
 

Count-basie-and-his-orchestrabasic-basie  

 
タイトルの通り、ベイシー・スタイルの「基本(Basic)」に立ち返り、装飾を排した純粋なスウィングを追求しているところが良い。ベイシー楽団初心者にも判り易く、ベイシー楽団の個性と特徴が良く理解出来る内容になっている。しかも、それまでは、ピアニストとして前面に出ることを控えていたベイシー本人が、通常よりも長くピアノ・ソロを披露しているところもこのアルバムの大きな特徴である。

演奏を追って聴いていて、やはり、アレンジが良いのだろう。アフロ・キューバン・ジャズの大家チコ・オファリルが、ベイシー独特の「間」と「スウィング感」を完璧に理解したアレンジを施していて、これがこのアルバムの成功につながっている。それと、ドラマーの交代が良い効果を生んでいる。 長年連れ添ったソニー・ペインに代わり、より正確で抑制の効いたドラマー、ハロルド・ジョーンズが加入したことで、バンドに新たな規律が生まれ、軽快さを備える様になっている。

4曲目「Red Roses for a Blue Lady」、続く「Moonglow」、8曲目の「Sweet Lorraine」、9曲目「Ain't Misbehavin'」、11曲目「As Long as I Live」などでベイシーのピアノが堪能できる。1950年代の黄金期(ニュー・ベイシー時代)と1970年代以降のパブロ・レーベル期を繋ぐ「円熟味を増した隠れた傑作」として評価出来る好盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月 3日 (日曜日)

ライオネル・ハンプトン健在

1982年と言えば、フュージョン・ジャズが全盛期を越えて、下降線を辿り始めた頃。それでも、その人気はまだまだ維持されていて、純ジャズ、ましてや、スイング・ジャズの入り込む余地は無かった。が、フージョン・ジャズの全盛のアンダーグラウンドで、純ジャズは生き存えていた。そして、このライヴ・アルバムでは、スイング・ジャズもしっかりと継承されていたことが確認出来る。

Lionel Hampton And His Orchestra『Made In Japan』(写真左)。1982年6月1日は新宿厚生年金会館、6月3日は渋谷公会堂でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。スイング・ヴァイブの雄、ライオネル・ハンプトン率いるジャズ・オーケストラの東京のおけるライヴ録音。

Lionel Hampton (vib), John Colliainni (p), Todd Coolman (b), Duffy Jackson (ds), Sam Turner (perc)。以下はブラス・セクション、Glen Wilson, Yoshi Malta, Paul Jeffrey, Ricky Ford, Tom Chapin (sax), Trombone – Charles Stephens, Chris Gulhaugen, John Gordon (tb), Trumpet – Barry Ries, John Marshall, Johnny Walker, Vince Cutro (tp)。

ハンプトンの十八番である「Air Mail Special」や、ハンプトンおなじみのメドレー「Stardust - Moonglow」、フレディ・ハバード作曲の難曲「Jodo」を高速テンポで演じ切ったり、素晴らしいパフォーマンスがてんこ盛り。
 

Lionel-hampton-and-his-orchestramade-in-

 
それほどまでに内容の濃い、ライオネル・ハンプトンのヴァイブを始めとするスイング・ジャズの名演の数々がこのライヴ盤に記録されている。さらに素晴らしいのは、パーソネルを見渡すと、若手実力派を揃えたビッグバンドを率いていること。当時若手だった リッキー・フォード や、日本を代表するサックス奏者の MALTA(ヨシ・マルタ)、トム・チェイピンらが参加している。

当時70代半ばだったハンプトンであるが、その演奏は驚くほどパワフル。一糸乱れぬビッグバンドのアンサンブルと相まって、素晴らしいパフォーマンスを披露している。

若手実力派を揃えたビッグバンドということもあって、伝統的なスイングだけに留まらず、ハードバップやモードなど、当時として、モダンなジャズの感覚も反映されていて、懐古趣味などどこ吹く風、当時として、現代的でモダンなスイング志向のビッグバンドの音が実に良い。

単なる「ベテランの来日記念盤」を超えた、単なる来日記念公演という「お祭り騒ぎ」に留まらない、スイング志向の、モダンな感覚を融合させたビッグバンド・ジャズの傑作として評価して良い内容。かつてハンプトン率いるオーケストラが世界中を席巻した「スウィングの力」が、衰え知らずなことを証明した好ライヴ盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月 2日 (土曜日)

エリスとグリーンのギター共演

演奏の雰囲気・演奏のトレンドは「スイング」。スウィング・ジャズの真髄を楽しめる好盤。カウント・ベイシー楽団の象徴であるフレディ・グリーンが、楽団を離れてリーダー格として録音に参加、スインギーでブルージーな職人ギタリストのハーブ・エリスと共演、エリスとグリーンの2台のギタリストがフロントのクインテット編成。

Herb Ellis & Freddie Green 『Rhythm Willie』(写真左)。1975年1月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Herb Ellis (g), Freddie Green (g), Ross Tompkins (p), Ray Brown (b), Jake Hanna (ds)。ギタリストのハーブ・エリス(Herb Ellis)とフレディ・グリーン(Freddie Green)による共演アルバム。

とりわけ、カウントベイシー楽団のリズムギタリストとして活躍、生涯にわたってリズムマンに徹した、フレディ・グリーンの堅実でスウィング感溢れるバッキング(4つ刻みのリズムギター)が、ハーブ・エリスの流麗なソロを完璧にサポートしている展開には、うっとりと聴き惚れるほど。小粋でスインギーな二人の職人芸的ギターが堪らない。
 

Herb-ellis-freddie-green-rhythm-willie

 
とにかく、まずは、グリーンのリズム・ギターが素晴らしい。さすが、アルバム・リーダーの一翼を担ってるだけに、フレディ・グリーンのリズム・ギターの「聴きどころ」が満載。フロントに管が無い、ピアノがロング・ソロを取らないということから、グリーンリズム・ギターの詳細が確実に聴きとれるところが、とにかく堪らない。

もう一人のリーダー、ハーブ・エリスのギターも良い。ここでのエリスは、東海岸のアーバンな雰囲気とも、西海岸のシャープな雰囲気とも離れた、出身地のテキサスなイメージの、「中西部的」な素朴な味わいのフレーズを叩き出している。これが、カンザス・シティ・スタイルのグリーンのリズム・ギターにバッチリで、もう長年、パートナーとしてやっている様な、濃厚な親密感溢れるギターがこの盤の目玉だ。

グリーンが遺した数少ないベイシー楽団を離れてのセッションの一つ。フュージョン全盛期にあえてストレートなスウィング・ジャズを追求したセッション。コンコード・レコードには、こういった、フュージョン全盛期にリリースされた、優れた内容の純ジャズ盤が多々あるのだが、なぜか積極的に聴かれることが少ない。この『Rhythm Willie』は、今一度、再評価すべき、1970年代の純ジャズの隠れ好盤の一枚である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年5月 1日 (金曜日)

ジャパン・ミーツ・ジャズの一枚

このアルバムの副題は「ジャパン・ミーツ・ジャズ」で、独のMPS(SABA)レコードの「ジャズ・ミーツ・ザ・ワールド」シリーズの一作である。いわゆる「和洋折衷ジャズ’の好盤。3人の琴奏者(白根きぬ子、野坂恵子、宮本幸子)を加え、日本の伝統楽器である「琴」を本格的にジャズへ取り入れた斬新な構成が特徴。

白木秀雄『Sakura, Sakura』(写真左)。1965年11月1日、ベルリンでの録音。MPS(SABA)レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Hideo Shiraki (ds), Terumasa Hino (tp), Takeru Muraoka (ts, fl), Yuzuru Sera (p), Hachiro Kurita (b), Keiko Nosaka (koto : A1, A3, B1, B3), Kinuko Shurane (koto ; 曲: A1, A3, B1, B3), Sachiko Miyamoto (b-koto : 曲: A1, B1, B3)。

英語表記では「Hideo Shiraki Quintet + 3 Koto Girls」とある。フロント2管に、日野皓正のトランペット、村岡 建のテナー&フルート、リズム隊に、世良譲のピアノ、栗田八郎のベース、白木秀雄のドラム。この白木がリーダーのクインテットに、琴奏者が3人入った、オクテット編成。「琴」が前面的に入った、わが国のジャズ独特の、和楽器「琴」と洋楽器の融合、メインストリーム志向のクロスオーバー・ジャズである。
 

Sakura-sakura

 
琴を単なる「和の飾り」としてではなく、モダン・ジャズのアンサンブルに深く組み込んでいて、「琴」をジャズ楽器の一つとして扱ったアレンジは特筆に値する。: 琴の「間(ま)」を活かしつつ、4ビートの上で琴が即興演奏を繰り広げる展開は、当時のジャズ界でも類を見ない実験性を保っている。八城一夫による編曲が素晴らしい。良く書けている。フルートを尺八の代替として、似せた音色で吹くのもユニーク。

演奏の基本は「モード・ジャズ」。冒頭の「さくらさくら」を聴けば良く判る。琴のアルペジオから始まり、次第に熱を帯びるモーダルな展開。2曲目の「よさこい節」は、日本の土着的なリズムをジャズのグルーヴに上手く変換。4曲目の白木オリジナルの「祭りの幻想」は新アレンジ。日本の祭囃子のリズムとジャズの融合がユニーク。そして、5曲目「Alone, Alone and Alone」は日野のオリジナル曲。この曲では琴を省いた白木クインテットだけの演奏になる。

単なる和風ジャズの枠を超え、当時の世界のジャズシーンに対する「日本からの回答」とも言える歴史的一枚で、米国の日本贔屓のジャズ者には堪えられない内容ではないだろうか。和楽器を活用しているとはいえ、しっかりとジャズしているところは大いに評価しても良い。ただし、琴が参加する必然性については「疑問」に感じるのは否めない。そういう意味で、この盤は普遍的なジャズ盤では無く、企画盤であり実験作なんだろう。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

« 2026年4月 | トップページ | 2026年6月 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー