ウィルソンのラウンジ・ジャズ
この作品は、ピアニストであるジャック・ウィルソンがブルーノートに残した3枚目にして最後のリーダー作。純ジャズというよりも、当時のポップスのヒット曲を取り入れたラウンジ風・ポップ・ジャズに近い作風。全面的にストリングスがバックに入り、アレンジは聴き易さ優先。イージーリスニング志向が強烈な、ラウンジ・ジャズである。
Jack Wilson『Song For My Daughter』(写真左)。1968年9,12月 と 1969年4,6月、Liberty Studios, Los Angeles, CA, での録音。ブルーノートの4328番。ちなみにパーソネルは以下の通り。録音が4セッションに渡るので、パーソネルも複雑である。録音場所もロスアンゼルス。ルディ・バン・ゲルダーは関与していない。
Jack Wilson (p), Stan Levey (vib, shaker :tracks 1, 3 & 8), Victor Feldman (vib, timpani :tracks 2, 4 & 7), Tommy Vig (vib :track 10), John Gray (g, tracks 1, 3 & 8), Howard Roberts (g, tracks 2, 4, 7 & 10), Ray Brown (b :tracks 1, 3, 8 & 10), Ike Issacs (b :track 5 & 9), Andrew Simpkins (b :tracks 2, 4 & 7), Donald Bailey (ds :tracks 5, 9 & 10), Varney Barlow (ds :tracks 1, 3 & 8), Jimmie Smith (ds :tracks 2, 4 & 7), Billy Byers (arr, cond :tracks 1–4 & 6–9), ここにストリングスが入る。
ブルーノートでのデビュー盤では「西海岸の明るい光の中、アーバンで爽快なジャズ」を演奏していて、2枚目のリーダー作では「ファンキー&ソウル・ジャズ」に転身し、遂には、この3枚目のリーダー作で「イージーリスニング志向のラウンジ風・ポップ・ジャズ」に転身する。いわゆる、売らんが為の「明らかに聴き手に迎合した、売れ筋を意識した、ライトで聴き易いジャズ」が、この盤を席巻している。
ジャック・ウィルソンのピアノは変わらない。ウィルソンのピアノ、しっかりセルフ・コントロールされたソウルフルな響きのファンキー&ソウルフルなピアノが聴けるのだが、アレンジが、確実に「イージーリスニング志向のラウンジ風・ポップ・ジャズ」に凝り固まっているので、このウィルソンのピアノがバックの演奏に埋もれてしまっている。
ただ、不思議なのは、ラストの「Soft Summer Rain」。硬派で上質なメインストリーム志向のファンキー&ソウル・ジャズが展開される。しかも、ストリングス無し。静的で耽美的な、クールでソウルフルなウィルソンのピアノが流麗。途中からテンポアップし、上質なファンキー&モーダルなピアノが疾走する。演奏のパーソネルは、Jack Wilson (p), Howard Roberts (g), Tommy Vig (vib), Ray Brown (b), Donald Bailey (ds)。この曲だけ、往年のブルーノート・ジャズの矜持が甦っている。
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