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2026年3月の記事

2026年3月31日 (火曜日)

Side-Eyeプロジェクト第2弾

パット・メセニーは、今年71歳。盟友ライル・メイズが2020年に亡くなって、パット・メセニー・グループの活動は停止した。ソロ活動のみに集中して現在に至る。2021年リリースの『Side-Eye NYC(V1.IV)』は、久しぶりに「PMGサウンドに通じるパット」らしい内容で、聴いていてワクワクした。

Pat Metheny『Side-Eye III+』(写真左)。2026年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g, syn), Chris Fishman (p, key, org), Daryl Johns (b), Joe Dyson (ds) 以上が、パーマネント・グループ、そして、ゲストに、Brandee Younger (harp), Luis Conte (perc), Vincent Peirani (accordion)。気鋭の若手アーティストを迎えるSide-Eyeプロジェクト待望の第2弾。

良い感じだ。往年のパット・メセニー・グループ(以降PMGと略)のファンの僕としては、満足のSide-Eyeプロジェクトの第2弾である。スタジオ録音としては6年振り。第1弾の『Side-Eye NYC(V1.IV)』以降、アコースティック・ギターがメインの静的、耽美的な「趣味的作品」が続いたので、もう「PMG」サウンドは無いのか、やはり、メイズがいないと駄目なのか、と思っていたので、このアルバムのリリースは嬉しい限り。
 

Pat-methenysideeye-iii  

 
何度も書くが、「PMG」サウンドの復活である。第1弾の『Side-Eye NYC(V1.IV)』はライヴ録音だったので、躍動感が半端なかったが、今回はスタジオ録音。じっくり作り込まれた感がビンビンにする、「今」のPMGサウンドが、この盤に溢れている。やっぱり、メセニーのギター・シンセは良いなあ。このギター・シンセを聴くだけで、頭の中は多幸感で溢れます(笑)。

サウンド的には、往年のPMGサウンドよりも幅が広がっていてグッド。4曲目の「Urban and Western」では、オルガンが良い味を出していて、ゴスペルチックな雰囲気が充満する。2曲目の「Don't Look Down」では、パーカッションが大活躍。今まで無い激しいパーカッション。躍動感半端ない。

フォーキーでネーチャーな、従来のPMGサウンドに、ゴスペルなどのアメリカン・ルーツ、打楽器の多用によるアフリカン・ルーツ。パットの考える「PMG」サウンドは、ワールドワイド志向に拡がりを見せている様に感じる。まだまだ、深化していくのではないか。このアルバムには、PMGサウンドの「今」が詰まっている。
 
 

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2026年3月30日 (月曜日)

ブラジルとクロスーバーの融合

アイアート・モレイラは、ブラジル出身のドラマ−&パーカッション奏者。1941年8月5日生まれ。未だ現役である。ャズシンガーのフローラ・プリムと結婚しており、娘のダイアナ・モレイラも歌手。

1960年代後半にブラジルのアンサンブル、クアルテート・ノヴォのメンバーとして名を馳せる。その後、米国に移住し、マイルス・デイヴィス、リターン・トゥ・フォーエヴァー、ウェザー・リポート、サンタナらと、クロスオーバー&フュージョン・ジャズのシーンで活躍した。

Airto Moreira『Fingers』(写真左)。1973年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Airto Moreira (ds, perc, vo), Hugo Fattoruso (key, harmonica, vo), David Amaro (ac-g, el-g), Ringo Thielmann (b, vo), Jorge Osvaldo Fattoruso (ds, vo), Flora Purim (perc, vo)。CTIレーベルでのデビュー盤『Free』(1972年)に続く、CTIレーベルでの第2弾リーダー作になる。

内容的には、ブラジリアン・クロスオーバー・ジャズ。アルバムを覆う、躍動的でテンションの高い「サンバ・グルーヴ」が特徴的。「純ジャズ命」の硬派なジャズ者の方々からすると、全く認めたくない内容のブラジリアン・クロスオーバー。とても、ブラジル&南米色の強い、いかにもアイアートの音志向らしいアルバムである。人気のサンバ曲「Tombo In 7/4」のオリジナルの収録盤としてお馴染みの1枚である。
 

Airto-moreirafingers

 
キーボード、ベース、ドラム&パーカッションといった、リズム・セクションは、ウルグアイのフュージョン・グループOPAのメンバーを連れてきている。米国ジャズマンが演奏するブラジリアン・ミュージックより、違和感無く、自然に溶け込んでいる様に思わず納得する。サンバのリズムやフレーズの適合がとてもスムーズで違和感が無い。

当然、リズム&ビートは、リーダーのアイアート・モレイラがリードしていて、特にアイアートのドラミングは特徴的。ブラジル・ミュージック的ドラミングとでも形容しようか。じっくりと聴き耳を立てて聴いてみると、その個性とユニークさが良く判る。このアイアートのドラミングが、アルバム全体のブラジリアン・クロスーバーな雰囲気を牽引している。

ギターのデヴィッド・アマロは、米国カリフォルニア州出身のギタリストだが、まるでブラジル生まれのようにギターを演奏する希有な存在。ジャズ、ロック、ブラジル音楽を融合させたサウンドとスタイルを確立したギタリストの1人であり、この盤でも、アマロのギターが要所要所で効いている。

3曲目の「メリー・ゴーランド」とか5曲目の「パラナ」などは、ブラジリアン・クロスオーバー・ジャズの名演。ブラジリアン・ミュージックと、クロスオーバー・ジャズが良い方向で融合していて、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤として、その内容は聴きどころ満載。とても、CTIレーベルらしいアルバムでもある。
 
 

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2026年3月29日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・319

ドニー・マッキャスリン。どっかで聞いたことがある名前だが、どこだっけ、と調べたら、デヴィッド・ボウイの遺作『★(ブラックスター)』で重要な役割(音楽監督だっと記憶している)を果たしたことで広く知られたテナー・マンだった。そうだそうだ、ということで、そんなマッキャスリンの新作である。

Donny McCaslin『Lullaby For The Lost』(写真左)。December , 2024年12月18,19日の録音。ちなみにパーソネルは、Donny McCaslin (ts), Ben Monder (g), Jason Lindner (key), Jonathan Maron (b), Zach Danziger, Nate Wood (ds)。ダブル・ドラムでリズム&ビートを増強した、変則セクステット編成。

どこか、後期エレクトリック・マイルスを彷彿とさせる、ロック畑では、ニール・ヤングやレディオヘッドを彷彿とさせる、タイトで切れ味の良い、パルシヴなリズム&ビートを効かし、重低音ベースが唸りを上げて、独特のグルーヴを生み出し、ダンサフルで疾走感溢れるリズム・セクションに乗って、マッキャスリンのテナーが飛翔する。

静的な叙情的な展開の部分は、ネーチャーでフォーキーな響きのテナーが叙情的に感傷的に優しく響く。この落差が堪らない。
 

Donny-mccaslinlullaby-for-the-lost

 
まるで、1970年代のプログレッシヴ・ロックを聴くようでもあり、ついつい、このマッキャスリンの音世界に引きずり込まれていく。どこか、スクラッチの響きも漂い、ここは1980年代のエレ・ハンコックを想起する。シンセ・ドラムを駆使したり、とにかく、音作りがユニークかつ斬新。

マッキャスリンのテナーは唄うが如くテナーを吹く。バックのリズム・セクションが紡ぎ出すユニークかつ斬新なビートとグルーヴに乗って、マッキャスリンのテナーが自由に多彩に吹きまくる。マッキャスリンのテナーの素性の良さとテクニックの高さ、唄う様に吹き上げる個性、それぞれがとても良く判る内容に、パフォーマンスになっていて聴き応え十分。

ギターのベン・モンダーも要所要所で良い仕事している。プログレっぽいエレギの響きはジャズに新しい響きを付加している。このファズの効いたエレギもこの盤での好要素だろう。

現代のニュー・ジャズ。コンテンポラリーなエレ・ジャズとして、この盤は良い出来。まさに、ユニークの極み。ジャズはまだまだ深化している。
 
 

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2026年3月28日 (土曜日)

復帰後8枚目、好調ジョーダン

NY時代、不遇だった哀愁のピアニスト、デューク・ジョーダン。1962年の『East and West of Jazz』以降、1960年代半ばにはニューヨークでタクシー運転手をしていた時期もあった。1973年の『Brooklyn Brothers』でカムバック。1973年北欧のスティープルチェイスに移籍し、『Flight to Denmark』で完全復活を果たし、この盤は、11年のブランクを経て復帰後、8枚目のリーダー・アルバムになる。

Duke Jordan『Misty Thursday』(写真左)。June 30, 1975年6月30日、NYCでの録音。 SteepleChaseレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Chuck Wayne (g), Sam Jones (b), Roy Haynes (ds)。ピアノ・トリオにギター入りのカルテット編成。

ギターにチャック・ウェインが参加している。チャック・ウェインは、1940年代に頭角を現し、ビバップ・スタイルで演奏した初期のジャズギタリストの一人。ちょっと録音バランスが悪くて、ギターの音が大きく録音されているが、ジョーダンのバップ・スタイルのピアノとの相性が良く、そんなに五月蠅いとは感じ無い。
 

Duke-jordanmisty-thursday

 
ジョーダンのピアノは好調を維持している。ジョーダンのピアノは「オン・ビート」。頭拍子、頭打ちでのフレーズの弾き回しである。バックのリズム隊はオフ・ビート。フロントのピアノはオン・ビート。この状態で哀愁感溢れるフレーズをキメまくるので、嫌が応にも、ジョーダンのフレーズが印象に残る。フレーズがビートに埋もれず、前に出るのだ。

そのリズム隊、サム・ジョーンズのベース、ロイ・ヘインズのドラムが実に良い味を出している。このリズム隊のパフォーマンスが、ジョーダンのピアノを映えに映えさせている。実はこのリーダー作から、北欧の老舗レーベル、スティープル・チェイスの録音でありながら、ジョーダンはNY録音に切り替えている。そのせいで、リズム隊も総替え。NY在住のリズム隊で以降録音しているのだが、これが当たるのだから面白い。

スティープルチェイスでのジョーダンのリーダー作は外れが無い。ジョーダンのピアノも好調で、どのリーダー作を聴いても、出来にバラツキが無いのは立派。1980年代からのキース・ジャレットのスタンダーズがウケるのであれば、1970年代のスティープルチェイスのジョーダンも、もっとウケても良いと思うのだが。如何だろう。
 
 

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2026年3月27日 (金曜日)

ショパン・カヴァー曲のベスト盤

基本は、クラシックとジャズの融合。ショパンの曲をジャズ化するというのだから大胆な、と思ったんだが、こうやって、ベスト・アルバムとして、人気ショパン・カバー曲を集めて、一気に聴き通してみると、ショパンの曲って、ワルツを含めて、ジャズ化にフィットしている感じが強くする。

European Jazz Trio『Best of Chopin』(写真左)。2010年、日本での企画編集。ちなみにパーソネルは、Marc van Roon (p), Frans van Geest (b), Roy Dackus (ds)。ショパン生誕200周年(2010年)を記念してリリースされた、ヨーロピアン・ジャズ・トリオ(EJT)の人気ショパン・カヴァー曲を集めたベスト・アルバムである。

ショパンの曲は、もちろん、ピアノ曲なんで、テーマ部を弾きこなすには、それなりの高いテクニックが要求される。しかし、そこは、欧州系ジャズ・ピアノ・トリオである。楽器担当は大多数が、何らかの形でクラシックを経験しているので、テクニックの高さは維持しているので、なかなかの弾きこなしになっていて、聴き応えがあるから安心だ。
 

European-jazz-triobest-of-chopin  

 
このEJTのショパン曲のカヴァーについては、どの曲もアレンジが秀逸。原曲のテーマ部の印象的な旋律を残しつつ、ジャズ化し、その曲のコード進行を借りて、アドリブ部に突入する。アドリブもショパン曲のフレーズのトーンを外すこと無く、テーマ部からアドリブ部に移行しても、演奏のトーンに違和感が生じないのは立派。

例えば、12曲目の「Prelude No.7 in A major (Op.28-7)〜プレリュード 第7番」は、出だしのフレーズを聴けば、ああ、これは「太田胃散」のCMのBGMだ(笑)と判るし、続く「CHANSON DE L'ADIEU」は、昔「101回目のプロポーズ」に良く出てきた(笑)「別れの曲」と直ぐに判る。が、どちらも、アドリブ部が秀逸。クラシック曲のジャズ・カヴァーとしては「大成功」の部類。全くのジャズのアドリブ展開である。

欧州ジャズの響きを色濃く反映し、クラシックとジャズの融合をスムーズに実現している。ピアノ・トリオ演奏としても、その内容は充実していて、ショパン曲のカヴァー集と知らずに聴いても、このトリオ演奏は秀逸。トリオが一体となった、典雅なバップ演奏はレベルが高い。MJTの個性をしっかり確認することが出来る、上質な「人気ショパン・カヴァー曲を集めたベスト盤」である。
 
 

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2026年3月26日 (木曜日)

この盤にも”一本取られた感”満載

ランディ・ウエストン(Randy Weston)は、ニューヨーク出身のピアニスト。1926年生まれ、2018年9月、92歳で鬼籍に入っている。デューク・エリントンやセロニアス・モンクの影響を色濃く感じるタッチの強さと不思議なフレーズの飛び方。そして、作曲の才にもつながる美しいメロディーラインが個性の、硬派なバップ・ピアニストだった。

Randy Weston『Blue Moses』(写真左)。1972年3ー4月の録音。ちなみにパーソンネルは、Randy Weston (el-p), Freddie Hubbard (tp), Grover Washington, Jr. (ts), Hubert Laws (fl),David Horowitz (syn), Ron Carter, Vishnu Bill Wood (b), Billy Cobham (ds), Phil Kraus, Airto Moreira, Azzedin Weston (perc), Madame Meddah (vo), Don Sebesky (arr, cond)。ここに、重厚なブラス・セクションが加わる。

CTIレコード、ドン・セベスキーのアレンジ、クリード・テイラーのプロデュース、そして、ビッグバンド・サウンド。これは、もう甘々のゴージャスなビッグバンド仕様のフュージョンだろう、と高をくくっても仕方の無い組合せ。それが、である。冒頭の長尺の「Ifrane」を聴けば「あら、ビックリ」。硬派な正統派なエレクトロニック・ビッグサウンドが炸裂する。うへ〜とひれ伏してしまう(笑)。
 

Randy-westonblue-moses

 
まず、硬派なバップ・ピアニストだったウェストンのエレピが良い味を出している。コンテンポラリーなエレクトリック・ジャズな雰囲気を色濃くしているのは、このウェストンのエレピの音色。よく聴くと、確かに、バップなピアノのマナーで、エレピを弾き倒しているのが判る。さすがウェストン、エレピを弾く時も、自分の弾き方の個性を全く失っていない。

そして、ハバードがトランペットをド派手に吹きまくる。目立ちたがり屋の真骨頂(笑)。しかし、そんなハバードを凌駕する、ど迫力でドライブ感抜群、力感溢れる硬派で正統派なテナーを吹きまくるのが、グローヴァー・ワシントン・ジュニアその人。最初、聴いていて、誰だ、この凄いテナーを吹きまくるのは、と思ってパーソネルを見たら、ワシントン・ジュニア。あのフュージョン・テナーの第一人者のワシントン・ジュニア。やはり、素性確かなテナー・マンだったのだ。

どこか、全体にアフリカンな響きが漂う、正当派なビッグバンド仕様のクロスオーバー・コンテンポラリー・ジャズ。この盤は一年前、初めて聴いて「目から鱗」。わが国では相当マイナーな存在だが、恐らく、この盤、CTI盤だからだろう。昨日も書いたが、この盤も、1970年代の硬派なジャズ盤としても良い内容。ほんと、CTI盤って、時々、こういうことがあるから隅に置けない。
 
 

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2026年3月25日 (水曜日)

この盤には”一本取られた感”満載

一言で言うと、上質のクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズ。CTI盤だからと、甘々のイージーリスニング志向のフュージョン。ジャズでしょ、と思うなかれ。スタンリー・タレンタインも甘々なフュージョンに身をやつしたか、と思うなかれ。聴いてみると判るが、上質のコンテンポラリー・ジャズが展開されているから爽快である。

Stanley Turrentine『Don't Mess with Mister T』(写真左)。1973年3月, 7月の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Bob James (ac-p, el-p, arr, cond), Harold Mabern (el-p), Richard Tee (org), Idris Muhammad, Billy Cobham (ds), Rubens Bassini (perc), Ron Carter (b), Eric Gale (g)。ここに、Randy Brecker (tp), John Frosk (flh), Alan Raph (b-tb), Pepper Adams (bs), Jerry Dodgion (as), Joe Farrell (ts)のブラスセクションとストリングスが入る。

まず、リーダーのスタンリー・タレンタインのテナー・サックスであるが、これが硬派でダンディズム溢れる、ファンキーでソウルフルな正統派テナーで、ばりばりに吹きまくっているから堪らない。ソフト&メロウなんて、どこにも無い。力感溢れるファンキーでソウルフルなテナーが各曲に響き渡り、その吹奏こそが、この盤を上質のクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズに仕立て上げている、大きな要素である。
 

Stanley-turrentinedont-mess-with-mister-  

 
ボブ・ジェームスのアレンジとアコースティック・ピアノが実に「効いている」。ジャジーにファンキーにコンテンポラリーにアレンジされたエレ・ジャズで、ロンのベースも、ムハンマド&コブハムのドラムもジャジーに効いていて、この盤の演奏の数々は、決して、イージーリスニング志向のフュージョン・ジャズなんかでは無い。しっかり、ジャズしている。

ティーのオルガンも良い感じ。エリック・ゲイルのギターも良い感じ。ファンキー&ブルージー、ソウルフルな雰囲気をこれでもかと増幅する。後の伝説のフュージョン・グループ「スタッフ」のメンバーの二人。R&Bなグルーヴ感が半端ない。そうそう、ボブ・ジェームスとハロルド・メイバーンのエレクトリック・ピアノも良い味を出している。

聴く前は、ブラス・セクションとストリングスの存在がちょっと不安だが、ソウルフルでブルージー。これはアレンジの勝利。この盤のブラス・セクションとストリングスのアレンジはとても良い。ボブ・ジェームスの面目躍如。

ずっと昔にこの盤は聴いたことがあったが、その演奏内容については「忘却の彼方」。今回、改めて聴き直して、ちょっとビックリ。なんと、とってもジャジーでファンキーでソウルフルな、上質のクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズが展開されている。1970年代の硬派なジャズ盤としても良い内容。CTI盤って、時々、こういうことがあるから隅に置けない。
 
 

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ジャズ喫茶で流したい・318

ジュリアン・ラージ。数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリストである。音の志向は、現代のコンテンポラリーなジャズ・ギターで、過去のレジェンド級のコンテンポラリーなジャズ・ギタリストのスタイルを踏襲しつつ、他のジャンルのエレギの音も積極的に融合して、ワン・アンド・オンリーな個性を確立している。

Julian Lage『Scenes From Above』(写真左)。 2026年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、Julian Lage (g), John Medeski (p, Hammond B3 org), Jorge Roeder (b), Kenny Wollesen (ds, perc), Patrick Warren (p, Chamberlin, dulcitone, strings, bells, perc)。ブルーノートから5枚目のリーダー作になる。2年振りとなる待望の新作リリースである。

静的でクールでフォーキー、どこかアメリカン・ルーツ音楽を彷彿とさせるフレーズ。これぞ、ジュリアン・ラージという音。惚れ惚れする。そして、そのラージのギターを、メデスキのオルガンが更に魅力的に前面に浮き出させている。冒頭の「Opal」で、そんなラージの音世界が露わになる。2曲目「Red Elm」で、リズム&ビートが効き始め、動的で能動的なインタープレイが展開されるが、それでも、どこか、静的でクールでフォーキー。
 

Julian-lagescenes-from-above  

 
3曲目「Talking Drum」で、今回、初参入のメデスキのオルガンが大活躍。ラージのギターとメデスキのオルガンとのユニゾン&ハーモニー、チェイス、インタープレイが展開される。これが、印象的でアグレッシヴで情緒的な名演なのだ。ギターとオルガンの効果的過ぎる共演。オルガンの導入は大成功。どこかニュー・ジャズ的雰囲気名ラージの音世界に、どっぷりとジャジーな雰囲気を注入する。

パーカッションの活躍も聴きのがせない。続く4曲目の「Havens」は、パーカッションが大活躍。メデスキのオルガンと相まって、ラージーのギターに、ネオ・ハードバップな躍動感を植え付ける。しかも洒落ていて粋な、切れ味の良いパーカッションの音は実に効果的。

前半の4曲を聴くと、今回のラージの音世界が如何なるものかが良く判る。今回のオルガンの入った新カルテット編成は良好。5曲目の「Night Shade」などは、静的にクールに始まり、曲が進むにつれ高揚感が増しつつ、ゴスペルやブルースな、そして、フォーキーな音が交差し、カルテットのインタープレイは濃厚。どこか哀愁感が漂う音の拡がりもグッド。これは、もうヘビロテ盤になりそうだ。しみじみ聴き入ってしまう。
 
 

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2026年3月23日 (月曜日)

デューク&ホッジスの不思議盤

Duke Ellington & Johnny Hodges『Side By Side』(写真左)。このアルバムは、ジャズ界の巨匠デューク・エリントンと、彼の楽団のスター・アルト・サックス奏者であるジョニー・ホッジスによる1959年発表の好盤。

パーソネルは、と言うと、この盤、ちょっと複雑な事情を抱えている。全9曲中、3曲だけが、デューク・エリントンがピアノを担当、残りは、ビリー・ストレイホーンがピアノを担当している。

ちなみに、1959年2月26日の録音分、1曲目「Stompy Jones」、2曲目「Squeeze Me」、4曲目「Going Up」のパーソネルは、Duke Ellington (p), Johnny Hodges (as), Harry "Sweets" Edison (tp), Les Spann (fl, g), Al Hall (b), Jo Jones (ds)。

その他の曲、1958年8月14日の録音分、3曲目「Big Shoe」、5曲目以降「Just a Memory」「Let's Fall in Love」「Ruint」「Bend One」「You Need to Rock」のパーソネルは、Johnny Hodges (as), Roy Eldridge (tp), Lawrence Brown (tb), Ben Webster (ts), Billy Strayhorn (p), Wendell Marshall (b), Jo Jones (ds)。

確かに、冒頭の「Stompy Jones」の出だしのピアノを聴けば、あ、これはデューク・エリントンかも、と思う。硬質でパーカッシヴなタッチ、バラードでの流麗でリリカルな弾き回し。独特なマイナーでブルージーな響き、そして、心地よく響き左手の低音。続く「Squeeze Me」も、あ、これは、エリントンだか、と思う。そこはかとなく、自己主張するエリントン。さすが、バンド・リーダーの面目躍如ではある。
 

Duke-ellington-johnny-hodgesside-by-side

 
しかし、である。3曲目の「Big Shoe」のピアノを聴くと、あれ、ちょっと違うぞ、と思う。エリントンにしては、優しく温和。フロントを徹底的に引き立てる「伴奏上手」。もう一人の主役、テナーのジョニー・ホッジスは、こちらの方が、のびのびとアルト・サックスを鳴らしているような印象を受ける。これは、5曲目「Just a Memory」以降は同じイメージ。このピアノは、ビリー・ストレイホーンである。

2回聞き直すと、その差が分かる。1曲目「Stompy Jones」、2曲目「Squeeze Me」、4曲目「Going Up」と、その他の曲での「ピアノの違い」。デューク・エリントンとビリー・ストレイホーン。

もう一人の主役、アルト・サックスのジョニー・ホッジスが、バックのピアノがエリントンだろうが、ストレイホーンだろうが、お構いなしに、絶好調のアルト・サックスを聴かせてくれるので、アルバム全体の統一感は辛うじて維持されている。オールド・スタイルではあるが、切れ味抜群、大らかな展開、印象的なラウド・ブロウ。ホッジスのアルト・サックスの良いところが、全編に渡って記録されている。

不思議なアルバムである。この盤は、ジョニー・ホッジスの単独名義で出すべきアルバムでは無かったか。客演のピアノに「デューク・エリントン」と「ビリー・ストレイホーン」を連名で置けば良かった様な気がする。

なぜ、ジョニー・ホッジスとデューク・エリントンの連名リーダーにしたのか。ヴァーヴ・レコードの総帥プロデューサー、ノーマン・グランツの売らんが為の策略だったのかもしれない。
 
 

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2026年3月22日 (日曜日)

ガボール・ザボのCTI第一弾

Gabor Szabo(ガボール・ザボ)のギター。ガボール・ザボって1936年生まれのハンガリー出身のギタリスト。ジプシー特有のフィーリングのプレイが特徴。不思議なギターである。

従来のスタンダードな、ジャズ・ギターの音色がしないし、展開やフレーズも、従来のジャズ・ギターの伝統を全く引き継いでいない。どう聴いても「ジャジー」では無いギター。ちょっとマイナーな響きが特徴。このマイナーな哀愁たっぷりなギターを捉えて、ガボール・ザボのギターをあからさまに「ジプシー・ギター」と形容する人もいる。

Gábor Szabó『Mizrab』(写真左)。1972年12月の録音。CTI 6026番。ちなみにパーソネルは、Gábor Szabó (g), Hubert Laws (fl, piccolo), Bob James (el-p, arr, cond), Ron Carter (b, arco-b), Billy Cobham (ds, on trak;1,3), Jack DeJohnette (ds, on2,4,5), Ralph MacDonald (perc)以上が主要バンドメンバー。そして、バックにオーケストラが入る。

アレンジと指揮を「クロスオーバー&フュージョン・ジャズの仕掛け人」ボブ・ジェームスが担当している。このボブ・ジェームスのアレンジ、ちょっとミステリアスで、エキゾチックなアレンジが、見事にザボの「ジプシー・ギター」を前面に押し出している。
 

Gabor-szabomizrab

 
CTIレコードからの第一弾。さすが、CTIの総帥プロデューサー、クリード・テイラー。イージーリスニング志向のクロスオーバー・ジャズの中で、優れたアレンジをベースに、ガボール・ザボのジプシー特有のフィーリング溢れる、怪しげで哀愁たっぷりの摩訶不思議なギターを印象付け、映えに映えさせる。ボブ・ジェームスのアレンジと指揮のたまもの。

インパルス時代は、どうにも、このザボの摩訶不思議なギターを上手く扱えず、時には、レノン&マッカートニーの「イエスタディ」のカバーなどをさせて、完全に、プロデュースの迷走状態。不思議な内容のギター・アルバムは多々制作したが、どれも決め手に欠ける、未完成のものだった印象は拭えなかった。

しかし、このCTIレコード第一弾のは、このザボの摩訶不思議なギターを上手く扱い、ザボのギターの個性と特徴をしっかりと前面に押し出すことに成功している。

この盤には、ザボのギターの個性と特徴がアルバム全体に渡って、散りばめられている。ジプシーと言えば「欧州」の響き。適正にアレンジされたオーケストラと、ザボのギターとの相性が良いことも見抜いてのプロデュースは見事である。
 
 

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2026年3月21日 (土曜日)

1966年のマクリーン・その2

録音年月日、録音場所を見ると、昨日、当ブログでご紹介した『Dr. Jackle』と同一日、同一場所のライヴ音源になる。記録を見てみると、『Dr. Jackle』の収録曲からの流れで、この『Tune Up』の収録曲になっているみたい。記録によると、1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ音源は全11曲。そのうち、前半5曲が『Dr. Jackle』に、後半6曲が『Tune Up』に収録されている。

Jackie McLean『Tune Up』(写真左)。1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、SteepleChase Recordsから1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), LaMont Johnson (p), Scotty Holt (b), Billy Higgins (ds)。

つまり、『Dr. Jackle』と、この『Tune Up』を併せて、1966年のジャキー・マクリーンのライヴ・パフォーマンスが体験出来るということ。こちらのパフォーマンスも、マクリーン流のモード・ジャズをガンガンに展開している。限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード。マクリーンの考える「限りなくフリーに近いモード」。マクリーンのオリジナルである。
 

Jackie-mcleantune-up

 
雰囲気的には、エリック・ドルフィーのパフォーマンスに類似性がある。ドルフィーは、フレーズが、セロニアス・モンクのピアノの様に「飛んだり跳ねたり」するが、マクリーンは流麗。しかし、二人とも、それぞれなりに「人が吹かないフレーズ」を吹きまくる。決して「フリー」ではない。あくまで、秩序があり、統制がとれた、クールで熱い吹奏である。

バックのリズム・セクションが、オーネットのバンド・メンバーというのも興味深い。オーネットのバンド・メンバーを借りてきているのであれば、オーネット流のフリーな吹奏を踏襲するのでは、と思いきや、マクリーンはそうなならない。あくまで、マクリーン流の「限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード」なフレーズを吹きまくる。

こういうところに、マクリーンの矜持を感じる。決して、人後に落ちない、あくまで、その時代その時代のジャズの演奏トレンドをいち早く押さえつつ、オリジナルな自分の個性的な吹奏を追求する。進化するアルト・サックス奏者、マクリーンの面目躍如的なライヴ・パフォーマンスがこの盤にも記録されている。録音が少し悪いが気にならない。マクリーンのパフォーマンスが圧倒的である。
 
 

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2026年3月20日 (金曜日)

1966年のマクリーンのライヴ盤

北欧の老舗ジャズ・レーベルである「スティープルチェイス・レコード」からのリリースなので、ホームグラウンドのコペンハーゲンの「カフェ・モンマルトル」のライヴ録音かとおもいきや、1966年、米国ボルチモアでのライヴ録音である。恐らく、ライヴ音源をスティープルチェイスが買い取って、録音から13年後の1979年にリリースしたものと思われる。

Jackie McLean『Dr. Jackle』(写真左)。1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ録音。SteepleChase Recordsから1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), LaMont Johnson (p), Scotty Holt (b), Billy Higgins (ds)。進化するアルト・サックスの雄、ジャキー・マクリーンがフロント1管のワンホーン・カルテットである。

つまり、このライヴ盤では、1960年代半ば辺りの、進化するアルト・サックス奏者、ジャキー・マクリーンのパフォーマンスが聴ける貴重なライヴ音源ではある。1960年代半ば辺りのマクリーンと言えば、ブルーノートでのスタジオ録音『Consequence』(1965年12月3日録音)、『New and Old Gospel』(1967年3月24日録音)の間、確かに、マクリーンのディスコグラフィーからすると、1966年の録音がごっそり抜けている。そういう意味で、このスティープルチェイスのリリースは意味があったことになる。
 

Jackie-mcleandr-jackle

 
ここでのマクリーンは、マクリーン流のモード・ジャズをガンガンに展開している。限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード。コルトレーンのようだ、という形容する人がいるが、これは違う。聴いていると、エリック・ドルフィーが浮かぶ。ドルフィーほど、飛んだり跳ねたりしない。マクリーンは流れる様な、人が吹かないフレーズを連発する。この人が吹かないフレーズを吹くところは、ドルフィーとよく似ている様に感じる。

バックのトリオはオーネットのバンド・メンバー。限りなくフリーに近いモーダルな展開にしっかり適応している様は見事。マクリーンのフレーズの個性をしっかり捉えて、マクリーンのフレーズ展開にしっかり追従するリズム&ビートはなかなかのもの。その適応力はレギュラー・バンドと言っても良い位である

マクリーンと言えば、初期はプレスティッジ、1959年からはブルーノートで、このプレスティッジ&ブルーノートーという印象が強いが、1970年代は、スティープルチェイスの時代。北欧コペンハーゲンの「モンマルトル」でのライヴ音源をはじめ、欧州ナイズされた「進化するマクリーン」が聴ける。このライヴ盤は、その前触れ的位置づけの米国録音のライブ音源である。ひたむきなマクリーンが恰好良い。
 
 

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2026年3月19日 (木曜日)

”マクリーンとジェンキンス” です

フレーズの作り方は「うり二つ」。マクリーンは、トレードマークの「ちょっとピッチがフラットした」伸びのある吹奏、ジェンキンスは、端正で明朗で伸びのある吹奏。「ぼうっと聴いているとどちらがどちらかわからなる」との声もあるが、マクリーンのアルト・サックスは、そんな「癖」があるので、暫く聴いていると、聴き分けることが出来る。

Jackie Mclean & John Jenkins『Alto Madness』(写真左)。1957年5月3日の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean, John Jenkins (as), Wade Legge (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。当時の人気アルト・サックス奏者のジャキー・マクリーンと地味な存在に甘んじていたジョン・ジェンキンスの双頭リーダー&フロントの佳作である。

どちらにしても、素性確かなアルト・サックス奏者の2人である。この盤でのパフォーマンスは、ジャズの楽しさ、ハードバップの楽しさが蔓延している。冒頭のタイトル曲「Alto Madness」、マクリーンのソロから始まって、ジェンキンスが続く。そして、チェイスが繰り広げられ、和やかなエールの交換という感じだろうか。聴いていて楽しくなる。
 

Jackie-mclean-john-jenkinsalto-madness

 
4曲目「Easy Living」は、美しいスタンダード・バラード。マクリーン、ジェンキンスともに、それぞれのアルト・サックスの個性をしっかり踏まえて、吹き上げていく様は感動的。特に、マクリーンはバラードを吹かせたら味わい深い。「ちょっとピッチがフラットした」伸びのある吹奏が、どこか切ない哀愁感を醸し出して、ついつい、しみじみと聴き込んでしまう。

バックのリズム&ビートを司る、ウェイド・レッジのピアノ、ダグ・ワトキンスのベース、アート・テイラーのドラムのリズム・セクションが、フロント2管をしっかり支え、しっかり鼓舞している。特に、早逝してしまった、ワトキンスの野太いソリッドなベースラインには、思わずグッとくる。テイラーの職人芸的ドラミングも聞き物。

まるで兄弟の様なアルト・サックスの、マクリーンとジェンキンス。マクリーンは、この後、数年のうちに個性を増していった一方、ジェンキンスは完全に表舞台から姿を消した。マクリーンは「進化の人」で、ジャズのその時、その時の演奏トレンドに果敢に挑戦し、自家薬籠中のものとした。ジェンキンスはと言えば、その個性「端正で明朗で伸びのある吹奏」では、ジャズ界に生き残れなかった。なんだか、身につまされる想いに駆られる。
 
 

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2026年3月18日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・317

ライヴ盤としての前作『Footprints Live!』は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点であった。ショーターの自作曲の、ショーターのアレンジによる、ショーターを振り返る為のライヴ盤だった。

前作のスタジオ録音盤『Alegria』は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点を示した『Footprints Live!』の音世界に、ワールド・ミュージックの音要素を織り込んだ、コンテンポラリーな純ジャズ的内容になっていた。

Wayne Shorter『Beyond the Sound Barrier』(写真左)。北米、ヨーロッパ、アジアを巡るツアー中の、2002年11月から2004年4月にかけてのライヴ録音。2005年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss, ts,arr), Danilo Pérez (ac-p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)、以上が「Footprints Quartet」。ツアー中のライヴ録音なので、基本的にゲストは無い。「Footprints Quartet」の4人だけのガチのライヴ・パフォーマンスが記録されている。

で、この『Beyond the Sound Barrier』は、これからのショーター・ミュージックの志向を示唆している様な内容になっている様に感じる。それまで、時々、顔を出していた「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」が無い。このライヴではショーターは地球人ジャズ・ミュージシャンとのみ、交信している。変に捻れたところが無く、ポジティヴで健康的なショーターのフレーズの数々が印象深い。
 

Wayne-shorterbeyond-the-sound-barrier

 
今の耳で振り返ると、上質の、当時、最高峰レベルの、現代の「ネオ・ハードバップ」志向の音世界なのが判る、ネオ・モードをベースに、フリーに、アブストラクトに、スピリチュアルに、変化しまくるカルテットのサウンド。明らかに、サウンド全体をリードしているのは、ショーターのサックスなのだが、ショーターの指し示す方向に、クイックにサウンドを変化させる、バックの3人、リズム・セクションのトリオの演奏力が凄まじい。

ショーターがそれまで、音志向として採用してきた「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」、「ワールド・ミュージックの音要素」が無い。質実剛健なネオ・ハードバップな、ネオ・モードのサウンドが、真剣勝負なライヴ演奏として展開される。

強いて言えば、ウェザー・リポートのデビュー盤『Weather Report』、セカンド盤の『I Sing The Body Electric』、そして『Live in Japan』あたりの、「コンテンポラリーでモーダルなエレ・ジャズ」を、アコースティックに焼き直したような音世界に、フリー、アブストラクト、スピリチュアルな音要素を加えた「ネオ・ハードバップ」なサウンドである。

ただ、不思議なのは、このライヴ盤で、これからのショーター・ミュージックの志向を示唆している様な内容になっている様にも関わらず、この後、8年間、この「Footprints Quartet」は、スタジオ盤もライヴ盤もリリースしなかったこと。

2013年に突如「Footprints Quartet」のライヴ盤『Without a Net』をリリースして、我々を驚かせた。この8年間のブランクについては今のところ不明。この佳作盤『Beyond the Sound Barrier』の位置づけが曖昧になってしまったのは残念だった。
 
 

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2026年3月17日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・316

ウェイン・ショーターは、ジャズの歴史において非常に重要なサックス奏者・作曲家であるが、その活動期間の長さの割にリーダー・アルバムの発表ペースが比較的控えめであるため、「寡作」と評されることがしばしば。しかし、21世紀に入ってすぐ、フットプリンツ・カルテットの出現はセンセーショナルであり、ショーターはまだまだ現役、トップランナーだ、と再認識した記憶がある。

Wayne Shorter『Alegria』(写真左)。2003年の作品。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss, ts,arr), Danilo Pérez (ac-p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)。以上が「Footprints Quartet」。ゲストとして、目立ったものとしては、Brad Mehldau (ac-p), Terri Lyne Carrington (ds), Alex Acuña (perc), Chris Potter (b-cl, ts) 等々。ショーター率いる、フットプリンツ・カルテットの2枚目のアルバムで、スタジオ録音盤。

「Orbits」on "Miles Smiles",「Capricorn 2」on "Water Babies ",「Angola」on "The Soothsayer” など、1960年代のショーターの有名曲の再演が聴きもの。「Orbits」などは、完全かつ準オーケストラ的に再解釈した演奏になっていて興味深い。他の曲も含めて、明らかに「深化」している。どう聴いたって「懐古趣味」の欠片もない。
 

Wayne-shorteralegria

 
「She Moves Through the Fair」は、アイルランド民謡の翻案。「Vendiendo Alegria」は、1930年代のフラメンコ曲。「12th Century Carol」は、中世のクリスマス・キャロル。軽快で優雅なリズム、複雑な対位法、そしてアフリカの力強いエネルギーに満ちた楽曲が随所に散りばめられている。

そう、このフットプリンツ・カルテットのスタジオ録音盤は、どこか「ワールド・ミュージック」の要素をところどころに織り込んできていて、前のライヴ盤「フットプリンツ・ライブ!」での、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点を示した「音世界」に、ワールド・ミュージックの音要素を織り込んだ、コンテンポラリーな純ジャズ的内容になっている。

ショーターのサックスは見事の一言。その高いレベルのテクニック、創造的なアドリブ、速いフレーズも、ゆったりとしたフレーズも揺らぐこと無く、ふらつくこと無く、しっかとした吹奏で魅力的で個性的なフレーズを紡ぎ上げていく。力強くも無駄のないロペスのピアノ、印象的なリズム&ビートを叩き出すブレイドのドラム。力強い演奏の底を支えるパティトゥッチのベース。バックの演奏も一級品。21世紀の「深化した」ショーターのスタジオ録音盤として、傑作の一枚だろう。
 
 

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2026年3月12日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・315

ウェイン・ショーターが亡くなったのが 2023年3月2日。まだ3年しか経っていない。が、ショーターの亡くなった時点での喪失感は半端なかった。そんなショーターの音楽の変遷を俯瞰するのは楽しい。ショーター・ミュージックは「金太郎飴」とする向きもあるが、とんでもない。ショーター・ミュージックは「経年深化」していたと僕は思う。

Wayne Shorter『Footprints Live!』(写真左)。2001年7月14, 20, 24日の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts, ss), Danilo Perez (p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)。ウェイン・ショーターが2002年にヴァーヴ・レコードからリリースしたライブ・アルバム。ショーターが自身の名義でリリースした初の公式ライブ・アルバムである。

録音日:2001年7月14日は、イタリアのペルージャで開催された ウンブリア・ジャズ・フェスティバルでのライヴ。録音日:2001年7月20日、スペイン、 ビトリア=ガステイス・ジャズ・フェスティバルでのライヴ。録音日:2001年7月24日、フランス、マルセイユの ジャルダン・パレ・ロンシャンでのライヴ。

収録曲を見渡せば、1960年代の代表曲をメインにピックアップした、ショーター自身の活動の足跡を振り返る様な内容。マイルスの『Bitches Brew』収録の「Sanctuary」のショーターの自演から始まる展開は、この「Sanctuary」は、マイルスの傑作アルバムの中の一曲だったが、実は、ショーター・ミュージックの真髄の一曲だったことを教えてくれる。
 

Wayne-shorterfootprints-live  

 
続く「Masquelero」では、ショーターと、ピアノのペレスの相性の良さが実に良く判る。ショーターのサックスの存在感は抜群なのだが、ショーターが吹けば、ペレスが応じる。演奏全体が、ペレスのピアノに導かれるように徐々に高まっていく激しさ。ショーター・ミュージックの「うねりと捻れ」が懐かしくも新しい。

「Valse Triste」は、1965年のアルバム「The Soothsayer」で初めて演奏したシベリウスの曲をアレンジした曲。軽妙なワルツ曲で、ショーターに追従するピアノ、オールド・スタイルな爽快ドラミング、演奏全体の底をガッチリ支えるベース。この「フットプリンツ・バンド」の優秀性が良く判る演奏。4人編成、カルテットの演奏なのに、出てくる音は分厚い。

と、冒頭3曲だけでも、このアルバムには、ショーター・ミュージックの優れどころが満載。1960年代の代表曲をメインにピックアップしているので、懐古趣味と取られ、ショーター・ミュージックの優れどころは1960年代とされると片腹痛い。アレンジ、奏法、アドリブ・フレーズ、どれをとっても、2001年の旬の「音」である。ショーター自作曲を選んでいるのは「素材」に過ぎないことが良く判る。

このライヴ盤は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点である。ショーターの自作曲の、ショーターのアレンジによる、ショーターを振り返る為の『Footprints Live!』。ショーター・ミュージックを体験する上で、このライヴ盤は外せない。 
 
 

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2026年3月11日 (水曜日)

ジョンスコ&ホランドのデュオ

最近のジャズもちゃんと聴いている。ジャズの「今」もしっかり把握しておかないと、過去の名盤の現代に与える影響というのが判り難くなる、と感じている。

コロナ禍の折、どっと新盤のリリースが減少して、もう駄目か、なんて悲観したもんだが、コロナ禍が明けて、順調に新盤のリリース数もコロナ禍前に戻って、新人、旧人、それぞれ、内容のある新盤をリリースしてくれているのは心強い限りだ。

John Scofield & Dave Holland『Memories of Home』(写真左)。2024年8月の録音。ECM盤。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Dave Holland (b)。現代におけるジャズの巨匠的位置づけの二人、ギタリストのジョン・スコフィールドとベーシストのデイヴ・ホランドのデュオ演奏である。

まず、マイルス・バンド経験者の、革新的なプレイを信条としてきた二人が、しっぽり耽美的静的なデュオ演奏を、ECMレコードの下で録音しリリースする。しかも、ECMレコードお得意のニュー・ジャズな雰囲気は皆無。至極真っ当な、純ジャズ志向のデュオ演奏である。ECMレコードも懐が深くなったなあ、と感心する。
 

John-scofield-dave-hollandmemories-of-ho

 
さすが、現代におけるジャズの巨匠的位置づけの二人。デュオ演奏の「肝」である「ダイアローグ」「アドリブ」「余白と間」をバッチリ抑えた、味わい深く、耽美的でクール、静謐でセンシティヴな。極上のデュオ演奏が粛々と展開される。楽器の音も凄く良い音出している。ジョンスコのギター、ホランドのベース。極上である。

ジョンスコは、いつものジョンスコらしい音で、ジョンスコらしいフレーズを繰り出し、素晴らしい。ホランドもフレーズを自由に弾き回している様で、基本的に演奏のベースラインは、しっかり押さえているという神業を披露していて見事。長年の付き合いの中で、お互いがお互いの音を熟知しているからこそ出来る至芸。

二人のデュオは意外な感じだが、コロナ禍の頃、2020年に、もともとツアーを予定したが中止、2021年にやっとツアーを敢行、2024年には2度目のツアーを控えており、レコーディングのアイデアが生まれたそうだ。満を持してのデュオ演奏だったみたい。

2人のデュオは、ウォームで切れ味良く革新的で創造的。現時点ですでに「未来のデュオ名盤」のパフォーマンスに、ついつい繰り返し耳を傾ける。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2026年3月10日 (火曜日)

アーティステックなCTI盤です。

CTIレーベルは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの中心となったレーベル。総帥プロデューサー、クリード・テイラーの下、意欲的&挑戦的なニュー・ジャズから、硬派でメインストリームなクロスオーバー・ジャズ、イージーリスニング志向のフュージョン・ジャズまで、1970年代のジャズのトレンドを網羅したレーベルである。

Hubert Laws『Live At Carnegie Hall』(写真左)。1973年1月12日の録音。CTI 6025番。ちなみにパーソネルは、Hubert Laws (fl), Bob James (el-p), Gene Bertoncini (g), Ron Carter (b), Billy Cobham, Freddie Waits (ds), Dave Friedman (vib), Dave Miller (bassoon), Don Sebesky (arr)。ジャズ・フルート奏者の雄、ヒューバート・ロウズのカーネギー・ホールでのライヴである。

カーネギー・ホールでのライヴということを意識したのだろうか。アカデミックかつ、アーティスティックなクロスオーバー・ジャズが展開される。これがCTIレーベルからリリースされたサウンドか、と初めて聞いた時は、LPのレーベルを秘密の喫茶店のレコードプレイヤーまで見に行ったくらいだ。

CTIレーベルは、時々、こんな硬派でメインストリームな、内容のあるクロスオーバー・ジャズをリリースする。この盤もそうで、ヒューバート・ロウズという、ジャズ・フルートの代表格の演奏が前面に押し出され、アーティスティックなアレンジに乗ったクロスオーバー・ジャズが展開される。
 
Hubert-lawslive-at-carnegie-hall
 
演奏曲からしてアーティスティック。チック・コリアの「Windows」とジェイムス・テイラーの「Fire and Rain」のメドレー、そしてバッハの「パッサカリア ハ短調」。ジャズとクラシックの間を効果的に行き来するジャズ・フルート奏者、ヒューバート・ロウズの個性と特徴が良く判る演奏曲のチョイスである。

ドン・セベスキーのアレンジが優れている。収録された難曲、ジャズの即興演奏とオーケストラの洗練さを融合させるのに難度の高い秀曲を、セベスキーは、ロウズのフルートの演奏表現をベースに、ジャズの即興演奏、ロックのリズム、オーケストラのテクスチャを効果的に融合させている。このアレンジが、ロウズのフルートを引き立て、アーティステックなクロスオーバー・ジャズを実現させている。

バックのミュージシャンの演奏も白眉。ロウズのフルート、セベスキーのアレンジを十分に理解し、極上のクロスオーバー・サウンドで、このアーティステックなクロスオーバー・ジャズを、更にその高みに引き上げている。

CTIレーベルなんて、甘々のフュージョン・ジャズばかりなんでしょ、なんて、聴かず嫌いで敬遠していると、1970年代ジャズのトレンドと特徴の半分を聴き逃すことになる。まあ、1970年代ジャズなんて、聴くに及ばず、とするなら、いざ仕方なし。でも、1970年代ジャズを理解する上で、CTIレーベルのカタログは避けて通れないと僕は思う。
 
 

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2026年3月 9日 (月曜日)

シフリン節満載のジャズ・オケ盤

ラロ・シフリンは、アルゼンチンの作曲家、ピアニスト、指揮者。1950年代からディジー・ガレスピーの音楽監督を務め、1960年代、ヴァーヴ・レコードでの豪快なホーン・アレンジは印象に残る。ただ。シフリンはジャズのフィールドよりは、映画音楽のフィールドでの成果の方が有名である。

Lalo Schifrin『Towering toccata』(写真左)。1976年10, 12月の録音。CTI 5003番。ちなみにパーソネルは、Lalo Schifrin (p, key, arr, cond), Burt Collins, John Frosk, John Gatchell (tp), Urbie Green (tb), Joe Farrell, Jeremy Steig (fl), Gerry Niewood (as), David Tofani, Lou Marini (ts, fl), Ronnie Cuber (bs), Clark Spangler (key), Eric Gale, John Tropea (g), Will Lee (b), Steve Gadd (ds)。

映画音楽の巨匠で知られるラロ・シフリン。この盤は、自身の作や有名曲のカバーを合わせた映画音楽のジャズ・オーケストラ化をメインに構成されている。アレンジは全曲ラロ・シフリンが担当。いわゆる「シフリン節」が随所に織り込まれていて、アルバムとしては統一感がある。
 

Lalo-schifrintowering-toccata

 
パーソネルを見渡せば判るが、ジャズ・オーケストラのメンバーは、それぞれCTIのハウス・ミュージシャン総動員といった面持ち。一流ミュージシャンばかりなので、当然、その演奏のレベルは高い。ジャズ・オーケストラのアルバムとして、イージーリスニング志向のものとしては良好である。

冒頭のタイトル曲「Towering toccata」は、バッハの「トッカータとフーガ・ニ短調」をディスコ・タッチのジャズ・ファンクにアレンジしていて「粋」。有名な原曲のフレーズのお陰もあるが、粋なジャズ・オケなアレンジで、イージーリスニング・ジャズとして良い感じな演奏になっている。

この冒頭の一曲の「ディスコ・フレイバー漂う、クールでヒップなジャズ・ファンク」な雰囲気をメインに、アルバム全編、なかなか「粋」な、シフリン節溢れる、ジャズ・オーケストラの演奏が詰まっている。ながら聴きに適したジャズ・オーケストラ作品として、僕は意外と愛聴している。
 
 

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2026年3月 8日 (日曜日)

デュークのピアノを愛でる名盤

昨日のブログで「当然、デューク・エリントンという偉大な「ピアニスト」を愛でる「これ一枚」ではないことは明瞭。デュークのピアノの個性を愛でるには、もっと好適なアルバムが沢山ある」と書いた。では、そのアルバムとは何か、ということになる。デュークのピアノの個性を愛でる好盤とはいかなるものか、である。

Duke Ellington『Money Jungle』(写真左)。1962年9月17日の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Charles Mingus (b), Max Roach (ds)。エリントンを師と敬愛するミンガスと、エリントンの下で叩きたかったローチ。そんなエリントンを尊敬する2人がリズム隊についた、エリントンのトリオ盤である。

このアルバムは、ジャズ盤入門本でよくそのタイトル名が挙がる名盤である。その理由を明確に記した評論文が無いのが不思議なのだが、この盤は、明らかに、ピアニスト、デューク・エリントンの個性と特徴が明確に判る名盤である。

硬質でパーカッシヴなタッチ、バラードでの流麗でリリカルな弾き回し。独特なマイナーでブルージーな響き、そして、心地よく響き左手の低音。デュークの様なジャズ・ピアノは他に無い。ジャズの歴史の中で唯一無二である。そんなエリントンのピアノの個性と特徴がこのトリオ盤に詰まっている。
 

Moneyjunglejpg

 
エリントン名義のトリオ盤である。エリントン作の曲で占められる。この盤では、明らかにベースのミンガス、ドラムのローチが、エリントンを敬愛し、エリントンのピアノの個性と特徴を良く理解し、ピアノの音をよく聴いて、バックで真剣にサポートしている様が伝わってくる。エリントンのピアノは当時として実に「プログレッシヴ」。ハードバップ時代のピアノの展開とは異なる、新しい響きを宿したピアノには思わず脱帽。

とにかくユニークなデュークのピアノ。それまでの、そして、それからの他のジャズ・ピアノには全く類似の無い、唯一無二のデュークのピアノの個性。そんなデュークのピアノには、やはりデューク作のオリジナル曲が良く似合う。

象徴的な展開としては「ミンガスがベース弦をはじき、ローチがポリリズムで音楽を盛り上げ、エリントンがパーッカッシヴなタッチで、非常に不協和なコードを奏でる」。曲によっては3者の演奏に対する温度差を感じることはあっても、全ての曲は水準を遙かに越えている。特に、硬質でパーカッシヴなタッチ、流麗でリリカルな弾き回し、そして独特な不協和なコードのエリントン、そのエリントンのピアノをがっちりサポートし、エリントンのピアノを引き立てる様は圧巻である。

デュークのピアノの個性がビンビンに伝わってくる名盤。このピアノ・トリオ盤は、デュークの、デュークによる、デュークの為のピアノ・トリオ盤。デュークのピアノをフィーチャーし、デュークのピアノが神々しく聴こえてきて、デュークのピアノを愛でることの出来る名盤である。
 
 

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2026年3月 7日 (土曜日)

デュークには ”困ったちゃん” 盤

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を、当ブログでは、「この曲一曲」を「これ一枚」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。で、今回のピアニストは「デューク・エリントン」。あの、ビッグバンドの最高峰、エリントン楽団の総帥、ジャズの楽聖。

『Duke Ellington & John Coltrane』(写真左)。1962年9月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), John Coltrane (ts :all but track 3, ss :track 3), Aaron Bell (b :tracks 1, 4–5, 7), Jimmy Garrison (b :tracks 2–3, 6), Elvin Jones (ds :tracks 1–3, 6), Sam Woodyard (ds :tracks 4–5, 7)。

タイトルは、デューク・エリントンとジョン・コルトレーンが並列で並んでいるんで、デュオ演奏かなと思うんだが、コルトレーンのサックスがフロント一管のカルテット編成。しかも、ベースとドラムが微妙に入れ替わる奇妙なパーソネル。プロデューサーは、かの有名なボブ・シールなんだが、一体、何を考えたんだか。

冒頭の「In a Sentimental Mood」が、アルバム全体の雰囲気を決定付けるものなんだが、これがまあ(笑)。フロントのコルトレーンのテナーに、エリントンのピアノ、ベルのベース、そして、エルヴィンのドラム。この演奏では、とにかく、コルトレーンとエルヴィンが「うるさい」。当時のコルトレーン・カルテットの演奏の雰囲気をそのまま、持ち込んでいる。エリントンのピアノを全く聴いていない様に感じる。失礼極まりない2人(笑)。

デューク・エリントンは、ジャズ・ピアニストとしても超一流で、そのピアノは、ジャズ・ピアノの歴史の中でも、とびきり「個性的」。硬質でパーカッシヴなタッチ、バラードでの流麗でリリカルな弾き回し。独特なマイナーでブルージーな響き、そして、心地よく響き左手の低音。デュークの様なジャズ・ピアノは他に無い。ジャズの歴史の中で唯一無二である。
 

Duke_coltrane_13
 

しかし、である。コルトレーンがフロント一管、エルヴィンがドラム、加えて、ベースのギャリソンが加わったセッションでは、このデュークのピアノの個性を、コルトレーン、エルヴィン、ギャリソンが「潰している」もしくは「無視している」様に感じるくらい、デュークのピアノを聴いていない様な演奏になっている。特にコルトレーンとエルヴィンの唯我独尊ぶりにはちょっと驚くくらい。しかし、デュークは悠然と余裕綽々に自分のピアノを弾き進める。凄みを感じる。

さすが、ベースがベル、ドラムがウッドヤードというエリントン楽団出身のリズム隊に変わると、さすがに、デュークのピアノの個性をしっかり理解していて、デュークのピアノの音をよく聴き、その「間」の取り方、独特なマイナーでブルージーなフレーズにしっかり追従し、デュークのピアノを引き立てる。

そこにコルトレーンがフロントに入ると、コルトレーンが戸惑っているのか、唯我独尊な吹きっぷりを修正して、エリントン楽団のリズム隊のトーンに合わせようとするのだが、完全にはいかない。途中でまた唯我独尊な吹きっぷりに戻ったり、エリントン楽団のトーンに戻ったり。意外とコルトレーンは不器用なんだなあ、と微笑ましく思ったり、なんだかなあと呆れたり(笑)。

ずばり言うと、この盤、デュークのピアノの個性を愛でるに不足、コルトレーンの個性を愛でるのにも不足、デュークとコルトレーンのビッグネーム同士のセッションでの「化学反応」を期待すると肩透かしを食らう、困ったチャンなアルバムだと僕は感じている。当然、デューク・エリントンという偉大な「ピアニスト」を愛でる「これ一枚」ではないことは明瞭。デュークのピアノの個性を愛でるには、もっと好適なアルバムが沢山ある。
 
 

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2026年3月 6日 (金曜日)

ジム・ホールの ”ベルリン”名盤

このところ、ジャズの「エヴァーグリーンな」名盤・好盤が再リマスタリングされてリイシューされている。CDが普及していく過程で、CD化する際にリマスタリングする時に何か問題があって、CD化したにも関わらず、音質が良くない名盤・好盤が散見されたのは残念なことだった。

それから、21世紀に入って、デジタル録音・記録の技術が飛躍的に進歩し、リマスタリングをやり直して再リイシューする名盤・好盤が出てくる様になった。当然、ウエルカムである。

Jim Hall『It's Nice to Be with You: Jim Hall in Berlin』(写真左)。1969年6月27&28日、西ドイツ、ベルリンの「Teldec Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Jim Hall (g), Jimmy Woode (b), Daniel Humair (ds)。燻し銀ギタリストのジム・ホールlが、1969年の欧州ツアー中に録音し、 MPSレーベルからリリースしたアルバム。

シングル・トーンで味のあるフレーズ。地味なようで、ツボを押さえたアドリブ。アドリブ・フレーズは、意外とプログレッシブで展開に思わず聴き耳を立ててしまう。そんな、玄人の玄人による玄人の為のギター、それが、ジム・ホールのギター。

そんなジム・ホールのギターの良さをしっかり記録した好盤がこの『It's Nice to Be with You』。最初、このアルバムを聴いたのはLP時代。初めて聴いたときは、なんだか地味でパッとしない、音も籠もった様な温和しいギターで「なんだ、このギターは、たいしたことないな」なんて思ってしまった。
 
Jim_hall_in_berlin_  
 
が、CDリイシューされた時、地味でパッとしない、音も籠もった様な温和しいギターに聴こえるが、これはそもそも録音が悪いんじゃないか、加えて、マスタリングが悪いんじゃないか、と思い始めた。もう一度、リマスタリングして、再リイシューされないかしら、と思っていたら、やっと「出た」。

今回の、再リイシューされた、再リマスタリングされた音源でしっかり耳を傾けると、そのフレーズは実にエグい。当時として「プログレッシヴ」という形容がピッタリな、純ジャズ志向の正統派ジャズ・ギターだということに気付く。しかも聴けば聴くほどに「深みとコク」が出てくる。そして、どこかブルージーでファンキーな雰囲気が漂う。

冒頭の「Up, Up and Away」を聴けば、音質が向上したことが判る。明らかに躍動感が増したし、トリオの楽器の音の分離が良くなった。最良とまではいかないが、干渉に耐える音質になったのは確か。熱い熱いギターがスピーカーから流れてくる。ジム・ホールのプログレッシヴでオフェンシヴなギターが明確になる。

ベースのウッドもドラムスのヒューマイヤーはマイナーな存在。ベルリン界隈のローカル・ミュージシャンなんだが、音質が改善されて、この2人、なかなか健闘していることが良く判る。図太いベースライン、繊細でかつダイナミックで多彩なドラミング。このバックの2人が、ホールのギターアドリブを盛り上げ、映えに映えさせる。

今回の再リマスタリングのお陰で、まずまず鑑賞に耐える音質になったと思う。喜ばしいこと。でも、これ以上の音質向上は望めない様な、音に「改善のノリしろ」が少ない様な音。恐らく、MPSの録音自体が良く無かったのだろうか。それもして、ジム・ホールのギターはプログレッシヴ。パット・メセニーが敬愛するのも良く判る。
 
 

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2026年3月 5日 (木曜日)

ウェスの『In The Beginning』

このウェス・モンゴメリーの未発表音源集は、1949年から1958年にかけての、6弦ギターの名手ウェス・モンゴメリーが南インディアナで技を磨いていた形成期にあたる時期の録音を収録している。

Wes Montgomery『In The Beginning』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Alonzo "Pookie" Johnson, Gene Morris (ts), Doug Duke, Jack Coker, Mel Rhyne, Richie Crabtree (p), Buddy Montgomery (p, vib), John Dale, Monk Montgomery, Roy Johnson (b), Earl "Fox" Walker, Paul Parker, Sonny Johnson (ds), Debbie Andrews, Sonny Parker (vo)。

1949年から1958年にかけて新たに発見されたライブとスタジオ録音の26トラックのコレクション。とまあ、様々なウェス初期の音源がてんこ盛りなんだが、どの曲を聴いてみても、ウエスのギターのテクニック、個性は、完成の域に達していたことがよく判る。ウェスのパフォーマンスに関してはバラツキが無い。凄いなあ、と感心することしきり。

ディスク1の1曲目から数えて17曲目までは、ウェスの弟バディが所有していた録音。そのうちの13トラック(1曲目から13曲目まで)が、インディアナポリスの「ザ・ターフ・クラブ」における1958年8月と11月の演奏。続く14曲目が同じくインディアナポリスにあるウェスの姉妹アーヴィーナ・モンゴメリーの自宅で1956年9月に行われたジャム・セッション、そして残る15曲目から17曲目までが1958年11月に収録された同市「ミサイル・ラウンジ」での演奏。
 

Wes-montgomeryin-the-beginning

 
1958年8月と11月のインディアナポリスの「ザ・ターフ・クラブ」、1958年8月と11月の同じくインディアナポリスの「ミサイル・ラウンジ」での演奏は、ラフな演奏ではあるが、熱気に溢れ、ウェスは弾きまくり。良質でテクニック確かなバップ・ギターが炸裂している。

続く5曲は、1955年6月15日にウェスがニューヨークのスタジオにて、クインシー・ジョーンズのプロデュースの下エピック・レーベルのために録音したもの。。「Love For Sale」以外、4曲は初出とのこと。で、この5曲なんだが、出来がとても良い。初出の「Leila」「Blues」「Undecided」「Far Wes、など、どうしてお蔵入りになったのか、とんと見当がつかない。

その他、インディアナポリスで共に演奏していたサックス奏者プーキー・ジョンソンも参加した、くつろいだウェスのプレイが光る1957年シカゴの「C&C ミュージック・ラウンジ」にて演奏された"All The Things You Are”。

1949年当時ウェスが所属していたライオネル・ハンプトン・バンドの同僚でテナー奏者のジーン・モリス名義でカリフォルニア州フレズノにあった「スパイア・レコード」に残したSP盤2枚分4曲のうち3曲を収録。

ウェスは、1968年、45歳にて早逝しているので、主だった活動期間は、リヴァーサイド・レコードで『The Wes Montgomery Trio』を録音した1959年から、A&Mレコードでの『Road Song』を録音した1968年まで。リーダー音源は限られている。こういった未発表音源のリリースはウエルカム。今回も、ウェスの「The Incredible Jazz Guitar(驚異のジャズギター)」を、良い感じで楽しませてもらった。
 
 

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2026年3月 4日 (水曜日)

CTIフュージョンのプロトタイプ

1971年の録音でありながら、クロスオーバーを飛び越えて、フュージョン志向のCTIサウンド。イージーリスニング志向のオーケストラ入りの「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズである。メインのバンドは、錚々たるメンバーが大集合。名前だけ見たら、メインストリームな純ジャズをやるのか、なんて思っちゃう(笑)。

Freddie Hubbard『First Light』(写真左)。1971年9月14–16日の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp, flh), Richard Wyands (p), George Benson (g), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds), Airto Moreira (perc), Phil Kraus (vib), Hubert Laws (fl), Don Sebesky (arr)。以上がメインのバンド。ここに、オーケストラがバックに入る。

フレディ・ハバードのトランペットがフロント一管。緩やかなフレーズで全編を流している。無難に吹き上げてはいるが、テクニック的にイマイチのところも少しあって、聴き心地は良いが、ここにハバードを置いた意味があまり判らないのは残念。ハバードは、バイタルにバリバリ吹きまくる姿が良く似合う。
 

Freddie-hubbardfirst-light  

 
ピアノにワイアンド、ギターにベンソン、ベースにロン、ドラムのディジョネット、パーカッションにアイアートと錚々たるバックを配しているのだが、それが感じられないのが惜しい。それぞれの一流ジャズマンの個性が全く感じられないアレンジ&プロデュースはちょっと勿体ない気がする。

アレンジはドン・セベスキー。後のフュージョン・ジャズにおけるオーケストラ・アレンジを先取りしているのはさすがだが、今の耳で聴くと、やはり「古い」。イージーリスニング志向のフュージョン・ジャズなんで、やはり、もう少し、ジャジーに攻めて欲しかったのが正直なところ。

聴き流し&ながら聴きには良い感じに、ハバードの緩やかで伸びやかなフレーズが全編に渡って充満している。ソフト&メロウというか、スイートなイージーリスニング志向のCTIフュージョンのプロトタイプ的位置づけのサウンド。ちょっと辛口にはなったが、1970年代のイージーリスニング志向のフュージョン・ジャズとして、内容的には及第点。
 
 

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2026年3月 3日 (火曜日)

モンゴメリー・ブラザーズは良い

モンゴメリー・ブラザーズは、ウェス・モンゴメリー (ギター)、バディ・モンゴメリー (ピアノ、ビブラフォン)、モンク・モンゴメリー (ベース) の兄弟からなる米国のジャズ・ユニット。活動期間は、1950年代後半から1960年代前半。実力のあるユニットだったが、売上と人気いう面では恵まれた方では無かった。

『George Shearing and the Montgomery Brothers』(写真左)。 1961年10月、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、George Shearing (p), Buddy Montgomery (vib), Wes Montgomery (g), Monk Montgomery (b), Walter Perkins (ds), Armando Peraza (bongos, conga), Ricardo Chimelis (bongos, conga, timbales)。

スイング・ピアノの雄、ジョージ・シアリングとモンゴメリー・ブラザースとの共演。当時、ストリングス入りなど、イージーリスニング志向のアルバムばかり制作させられていたシアリングが熱望して実現したセッションの記録らしい。久々の純ジャズのセッションで、シアリングは溌剌とスインギーなピアノを弾いている。

バックを司るモンゴメリー・ブラザースも、ライトで趣味の良いバッキングを繰り広げていて、やはり、さすがに、ウエス・モンゴメリーのギターによるバッキングは味がある。時折、見せるソロもシアリングのピアノに合わせてなのか、スイング風のアドリブ・フレーズを弾き上げていく様は「粋」である。
 

George-shearing-and-the-montgomery-broth  

 
『The Montgomery Brothers in Canada』(写真右)。1961年9月16日、カナダのバンクーバーの「The Cellar」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Buddy Montgomery (vib), Wes Montgomery (g), Monk Montgomery (b), Paul Humphrey (ds)。モンゴメリー・ブラザース+ドラマーのピアノレス、ギター入りのカルテット編成。

モンゴメリー・ブラザースのラストアルバムになる。モンゴメリー・ブラザースの良さを十分に感じさせてくれるライヴ音源で、聴いていて「ジャズっていいなあ、モンゴメリー・ブラザースっていいなあ」と感じさせてくれる小粋な演奏の数々。

典型的なバップは演奏なんだが、どこか洒落た小粋な節回しで洗練された雰囲気が良い。相変わらず、ウエスは好調、バディのヴァイブもモンクのベースを良い感じのパフォーマンス。ハンフリーのドラムも堅実で、モンゴメリー・ブラザース、良いジャズ・ユニットだったと実感する。

この記事で、モンゴメリー・ブラザースの現在、音源入手できるアルバムについては、当ブログの記事化が完了。ウエス・モンゴメリー単体としても、あと一枚を残すのみとなった。しかし、ウエス・モンゴメリーが参加する盤に駄盤無し、ということを改めて感じさせてくれる、モンゴメリー・ブラザースの諸作であった。
 
 

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2026年3月 2日 (月曜日)

ピーターソンの真髄を捉えた名盤

MPSレコードの「ピーターソン盤」については、「Exclusively for My Friends」シリーズが、まず、真っ先に聴かれるべき、オスカー・ピーターソン率いるピアノ・トリオの名演が詰まっている。ピーターソンの弾き回しがダントツに映えまくる。ピーターソンのジャズ・ピアノの真髄を感じ取ることが出来る、圧巻のシリーズ。

Oscar Peterson『Girl Talk』(写真左)。1965年後半, 1966年11月, 1967年11月, 1968年4月の録音。ピーターソンの「Exclusively for My Friends」シリーズの第二弾。「E.f.m.f. 2」と並記されることもある。ちなみにパーソネルは、録音が4年に渡り、4回に分かれて録音されているので、ちょっと複雑。

まず、Oscar Peterson (p) は、リーダーでもあり、5つの曲全てを担当。Ray Brown (b) は、5曲目「Robbins' Nest」、Sam Jones (b) は、1曲目「On a Clear Day」, 2曲目「I'm in the Mood for Love」、3曲目「Girl Talk」を担当。Louis Hayes (ds) は、2曲目「I'm In The Mood For Love」と5曲目「Robbin's Nest」を、Bobby Durham (ds) は、1曲目「On a Clear Dayと, 3曲目「Girl Talk」を担当している。

① Oscar Peterson (p), Sam Jones (b), Bobby Durham (ds)
1曲目「On a Clear Day」と, 3曲目「Girl Talk」
② Oscar Peterson (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)
2曲目「I'm In The Mood For Love」
③ Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Louis Hayes (ds)
5曲目「Robbin's Nest」
 

Oscar-petersongirl-talk

 
以上、3つのセッション・メンバーの組みあわせ。ちなみに、4曲目の「Medley: "I Concentrate on You"〜"Moon River」は、Oscar Peterson (p) のソロ・パフォーマンス。このソロ・ピアノも極上。

アルバムに収録されている演奏は、「Exclusively for My Friends」シリーズの第一作目『Action』と同じ雰囲気だが、第一作目より、クールで落ち着いている。収録された5曲ともスタンダード曲。ホットな演奏も、バラード調の演奏も、ピーターソンのピアノは、かかることなく、上っ滑りすることなく、堅実に高速フレーズを弾きまくる。

1曲目「On a Clear Day」と、5曲目「Robbin's Nest」を比較すると判るが、Sam Jones (b), Bobby Durham (ds) のトリオ演奏の方が、ダイナミズムとフレーズのフレッシュさが勝る。以降、このピーターソン、ジョーンズ、ダーハムのトリオがパーマネント化していく。

「Exclusively for My Friends」シリーズ、そのいずれもが、ドイツのレーベルMPSのオーナーであるHans Georg Brunner-Schwer(ハンス・ゲオルク・ブルナーシュワー)の自宅スタジオでの録音。コマーシャルな側面を一切そぎ落とした、ピーターソンのピアノの真髄をアーティステックに捉えた名録音。ジャズ・ピアノの凄さの一面が体感出来る素晴らしいシリーズである。
 
 

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2026年3月 1日 (日曜日)

MPSオスカーの名刺代わり盤

ジャズ・ピアノは得意ジャンル。実際に若い頃、8年間、クラシック・ピアノを習ってたこともあって、ピアノのテクニックのこととか、歴史のこととか、人より判るところもあって、ジャズ・ピアノが一番、理解しやすい。そして、そのテクニックと歌心とスイング感について、一番バランスの取れたお気に入りのピアニストが、オスカー・ピーターソン。

Oscar Peterson『Action』(写真左)。1963年3月、1964年4月、西ドイツの「Hans Georg Brunner-Schwer Studio」での録音。MPSレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds)。ピーターソンの「Exclusively for My Friends」シリーズの第一弾。「E.f.m.f. 1」と並記されることもある。

凄まじいばかりの、目眩くオスカー・ピーターソン弾きまくりの世界である。即興ピアノの神様、アート・テイタムばりの高テクニック、高速フレーズも難なくこなす流麗かつダイナミックな右手。回る右手に推進力を与える、切れ味良く、スイング感抜群の力感溢れる左手。そして、バラード演奏に顕著な、洒脱に溢れんばかりの歌心。ピーターソンのピアノの個性と特徴の全てがこのアルバムに詰まっている。
 

Oscar-petersonaction  

 
ピーターソンのピアノの特徴のひとつに「クラシックからの影響が僅少」であるということ。いわゆる「ザ・ジャズ・ピアノ」という雰囲気で、ジャズ・ピアノ、ここに極まれり、という感じの、絶対的なパフォーマンスがこの盤に詰まっている。ただ、あまりに真剣にパフォーマンスしているので、ジャズ者初心者の方々には、ちょっと重いかもしれない。

トリオ演奏なのだが、この「E.f.m.f.」第一弾は、ベースはレイ・ブラウン、ドラムはエド・シグペンのヴァーヴ時代からの継承になっている。しかし、ヴァーヴ時代よりもダイナミックでメリハリがついていて、ピーターソンとガッチリ組んだインタープレイの嵐が心地良い。冒頭、コールポーターの「At Long Last Love」から、ラストの「Like Someone In Love」まで、スタンダード曲をメインに、珠玉のトリオ演奏が繰り広げられる。

MPSレコードの「ピーターソン盤」については、「Exclusively for My Friends」シリーズの一部がリイシューされなかったり、廃盤になったりして、全容がそろわなかったのだが、やっと昨年、サブスク中心にMPSレコードの「ピーターソン盤」が出揃った。今まで、後手後手に回っていた、MPSレコードの「ピーターソン盤」を一気に記事にしていく。そんなチャンス到来である。
 
 

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