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2026年2月の記事

2026年2月28日 (土曜日)

ロンの”Yellow & Green”に思う

順調にCTIレーベルのカタログの記事化コンプリートに向けた、再聴き&初聴きを進めている。聴いていると感じるんだが、CTIレーベルって、クロスオーバー&フュージョンの老舗レーベル、フュージョンの権化レーベルとして、硬派なジャズ者の方々からは敬遠されているが、どうして、今の耳で聴くと、やっぱり「1970年代のジャズ」をしっかり記録した、優れたレーベルだと思うのだ。

Ron Carter『Yellow & Green』(写真左)。1976年5月の録音。CTIの6064番。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, piccolo-b, cowbell, tambourine), Kenny Barron (p :track 1, 5 & 6), Don Grolnick (p, el-p :track 2 & 4), Hugh McCracken (g, harmonica :tracks 1, 2, 4 & 5), Billy Cobham (ds :tracks 1, 2, 4 & 5), Ben Riley (ds :track 6), Dom Um Romão (per :tracks 2 & 5)。ベースのレジェンド、ロン・カーターのリーダー作。

内容については、簡単に言うと、イージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン盤。内容的に「ソフト&メロウ」というフュージョン・ジャズの雰囲気要素が入ってきている。ケニー・バロンが「アコースティック」鍵盤楽器担当、ドン・グロルニックは「エレクトリック」鍵盤楽器担当、どちらの演奏も、上質な1970年代半ばの、クロスオーバーからフュージョンへの移行期のしっかり記録されている。
 

Ron-carteryellow-green

 
特に、若きケニー・バロンがアコピを担当する楽曲は、1970年代の純ジャズ志向のコンテンポラリー・ジャズとして楽しむ事が出来る。ロンのベースとコブハムのドラムが醸し出す8ビートのジャジーなリズム&ビートに乗ったバロンのアコピは、意外と格別なジャジーな響きを宿している。ソフト&メロウなフュージョンの雰囲気を醸し出しているのは、グロルニックがエレピを担当している楽曲。グロルニックのエレピとマクラッケンのギターがソフト&メロウな響きを醸し出している。

このアコピとエレピのイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョンな演奏の中で、ロンのアルコ弾き、旋律弾きがその雰囲気をちょっと壊している。ロンのベースの旋律弾きに耳がいくのは良いのだが、いかんせん、ベースの旋律弾きは単調で、かつ、この頃のロンのベースは少しピッチを外しているので、その単調さがより目立つ。即興パートでのベース・ソロはまだ我慢出来るんだが、曲のテーマ部のベースでの旋律弾きはちょっと疑問。

ジャズ者の間で、このロンの旋律弾きを問題視する向きが強くあって、この盤は評判は芳しく無い。アルバム全体の雰囲気は、ライトなイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョンで、意外と良好なのだが、ロンの旋律弾きがはいってくると、明らかに聞く側のテンションが落ちる。アルバム全体の雰囲気は、ライトなイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョンとして良好、ロンのベースの旋律弾きをどう聴くか、でこの盤の評価はぶれるだろう。良い雰囲気の盤なのになあ、惜しい。
 
 

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2026年2月27日 (金曜日)

『The Real McCoy』の聴き方

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。当ブログでは、「この曲一曲」を「これ一枚」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。今回は「この一曲」から始まって、結局は「これ一枚」に落ち着いた、マッコイ・タイナーの名盤を聴き直している。

McCoy Tyner『The Real McCoy』(写真左)。1967年4月の録音。ブルーノートの4264番。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Joe Henderson (ts), Ron Carter (b), Elvin Jones (ds)。時代はロック台頭の時代、そして、 1967年7月には、コルトレーンが急逝する激動の時代。タイナーはコルトレーンのバンド配下を辞してでの、ブルーノートでの初リーダー作である。

レココレでの「この1曲」は、アルバムのラスト、5曲目の「Blues on the Corner」を挙げている。ブルーノートのアルバムでは、リーダーが必ず1曲は持ってくるようにと、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの要請に応じた、タイナー自作のブルース。まあ、この『The Real McCoy』に収録された曲は全て、タイナーの自作曲で占められてはいるが。
 

The_real_mccoy

 
ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。迫力満点のモーダル・ピアノが、タイナーのピアノの個性と特徴なんだが、このラストの「Blues on the Corner」でそれが判るかどうか。このちょっと緩やかなテンポのブルースでは、ちょっと判り難いかもしれない。

やはり、冒頭1曲目の「Passion Dance」だろう。エルヴィンのドラムが、激しいリズムの嵐を叩き上げ、タイナーのビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手のビートに乗って、ダイナミックで迫力満点の右手のモーダルな「シーツ・オブ・サウンド」が炸裂する。左手のハンマー打法なビートは、強弱と間を効果的にあしらって、うねるようなモーダルなビートを叩き出す。右手は、タイナー流の「シーツ・オブ・サウンド」で、モーダルに疾走する。

このタイナーのブルーノート初のリーダー作『The Real McCoy』は、やはり、これ1曲というよりかは、この1枚、アルバムを全曲聴いて、速い曲、緩やかな曲、ブルース、バラード、それぞれ、異なった曲想、演奏内容の中で、タイナーの揺るぎない「ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手」を確認し愛でるのが、タイナーのピアノを理解する一番の近道だと僕は思う。
 
 

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2026年2月26日 (木曜日)

『Maiden Voyage』の聴き方

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。しかし、今回は「この一曲を」で、ハービー・ハンコックの「ピアノの個性の一つ」を聴き直している。

Herbie Hancock『Maiden Voyage』(写真左)。1965年3月15日の録音。ブルーノートの4195番。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Freddie Hubbard (tp), George Coleman (ts), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。邦題『処女航海』。マイルス・スクールで、直接、帝王マイルスの薫陶を受けた(ハバードは除く)若き精鋭達で構成されたクインテットの名演集。

この盤は、マイルスの薫陶を受けた若き精鋭達による「モード・ジャズ」の記録である。全ての曲がモード奏法で展開される。ハードバップの演奏とは全く雰囲気、響き、フレーズが全く異なる「モード奏法」が、聴いていてとてもよく判る。しかも、ハービー・ハンコックのピアノによる「モード奏法」が手に取るような内容になっているのだ。
 

Maiden_voyage_3

 
実はこの盤、フロント2管のパフォーマンス、安全運転で化学反応は起きていない。しかし、面白いことに、フロント2管が安全運転な分、バックのリズム・セクションのバッキングの演奏の創造力は素晴らしい。安全運転なフロント・フレーズに相対する様な、創造的でバリエーションに富んだモーダルなフレーズの連発。特に、バッっキングに回った時のハンコックのピアノの創造性と革新性は素晴らしい。

そんな「バッキングに回ったハンコック」の凄みが噴出しているのが、冒頭のタイトル曲「Maiden Voyage(処女航海)」。バックのリズム・セクションの一角に陣取ったハンコックは凄まじい想像性と革新性に富んだモーダルなフレーズを叩き出している。フレーズの音の拡がりと間を活かした、創造的でバリエーションに富んだモーダルなフレーズの連発。この「Maiden Voyage」一曲で、ハンコックのピアノによる「モード奏法」が瞬時に理解出来る。

他のフロント管のモーダルな展開のバッキングに回った時のハンコックは、ハンコックならでは、の個性溢れるモーダルなフレーズを連発する、という不思議な傾向がある。そして、その好例の一つが、この盤の冒頭一曲目の「Maiden Voyage」である。ここで、改めて、この「Maiden Voyage」で判るのは、ハンコックのピアノによる「モード奏法」。ハンコックは多角的なピアニスト。他の個性の理解については、他のアルバムに求める必要がある。
 
 

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2026年2月25日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・314

この盤は、以前から有名盤で、LP時代から、廉価盤で再発されたり、CDの時代になってからも、CTI レーベル爺代のCDリイシューの時には、必ずと言って良いほど、そのタイトル名が挙がる名盤である。

Stanley Turrentine With Milt Jackson『Cherry』(写真左)。1972年5月17–18 & 24日の録音。CTI 6017番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Milt Jackson (vib), Bob James (sc-p, el-pi, arr), Cornell Dupree (g), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds)。

スタンリー・タレンタイン、ミルト・ジャクソン(バグス)、コーネル・デュプリー、ビリー・コブハムという、ファンキー&ソウル・ジャズの強者に、クロスオーバー&フュージョンの仕掛け人、ボブ・ジェームス。今から見れば、レジェンド級の凄いメンバーが大集合である。

極上のクロスオーバー志向のファンキー&ソウル・ジャズである。ファンキー&ソウル・ジャズの強者ジャズマンに、仕掛け人キーボーダー&アレンジャー、当時として、無敵の組みあわせ、パーソネルである。フロントを張る2人、タレンタインとバグスのファンクネスが実にモダン。そこに、R&B思考のファンキー&ソウルフルなデュプリーンのエレギが絡むのだからたまらない。
 

Stanley-turrentine-with-milt-jacksoncher

 
しかも、ボブ・ジェームスのエレピ、ロン・カーターのアタッチメント付きベース、ビリー・コブハムのファンキー千手観音ドラムのトリオが叩き出すリズム&ビート、8ビートのジャズロックなビートが、それまでに無い疾走感を叩き出す。そして、チェンジ・オブ・ペースで、R&B志向のファンキーなビートや、エレクトリックなソウルフルなビートに心地良く変化する。

そんなホットでヒップなクロスオーバー・ビートに乗って、タレンタインが骨太でダンディズム溢れ、ファンクネスだだ漏れ、ソウルフルなテナーを吹きまくり、バグスは、転がる様な流麗ヴァイブを弾きまくり、硬質で透明感のあるファンクネスを撒き散らし、爽快感を醸し出す。

ファンキー&ソウルジャズを展開しているが、手垢の付いた感は皆無、ノスタルジーはどこ吹く風、この盤には、1970年代の上質な純ジャズ志向の、コンテンポラリーなファンキー&ソウルジャズが展開されている。
 
CTIレーベル盤だから、聴き心地優先のイージーリスニング志向のフュージョンでしょ、なんて「聴かず嫌い」はノーサンキュー。この盤の「1970年代の純ジャズ志向」は一聴に値する。1970年代のジャズの名盤の一枚だろう。
 
 

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2026年2月24日 (火曜日)

シャクティの50周年記念ライヴ

シャクティ(Shakti)は1970年代後半に活動した伝説のバンド。ジャズ・ロックとインドの伝統音楽を融合しているとてもユニークなバンドで、クロスオーバー・ギターの第一人者、ジョン・マクラフリンとインドのヴァイオリニスト、L. シャンカールが結成したバンドである。

Shakti『Mind Explosion』(写真左)。2023年のシャクティ50周年記念ライヴツアーでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g, g-syn), Zakir Hussain (tabla, chanda, madal, konokol), Shankar Mahadevan (vo, Konokol), Ganesh Rajagopalan (vln, konokol), Selvaganesh Vinayakaram (kanjira, mridangam, ghatam, konokol)。

シャクティの音世界は「インド音楽+ジャズロックの融合」。現代でいうと「グローバル・ミュージック」。即興演奏を基本としていること、リズム&ビートがジャジー、クロスオーバー・ジャズ・ギターの神様、ジョン・マクラフリンの共同リーダーときているので、わが国では「ジャズ」に分類されている。

誤解を恐れず簡単に言ってしまうと「シタールの音、フレーズが好きだと填まりやすい」音世界である。この音世界が50年前に出現していたとは。ジャズとはなんと裾野の広い音楽ジャンルであることか。
 

Shaktimind-explosion

 
インド音楽の独特の音階フレーズを自家薬籠中のものとして、ジョン・マクラフリンのエレギは、摩訶不思議な、今までに聴いたことの無い、独特の捻れた高速フレーズを紡ぎ上げ、ガーネッシュのバイオリンは、電気増幅され、プログレっぽい国籍不明のグローバルな音を撒き散らす。旋律楽器はこのギターとヴァイオリンのふたつのみ。それでこの厚みと熱気を生み出しているのだ。

リズムは、タブラ。チャンダ、マダラ、カンジーラ、ムリダンガム、ガタムなどのインド民族打楽器を中心として、そこに「コナッコル」が絡んだ、インド民族楽器による、目眩く摩訶不思議な(インド+ロック)なリズム&ビートがたまらない。ちなみに、コナッコル(konokol)は、声を使ってリズムを刻む打楽器の技術(口ドラム)のこと。

1970年代後半に出現した、現代のグローバル・ミュージックの先駆け「シャクティ」。あまりにユニークな音世界なので、わが国では取扱いに困ったのか、マイナーな存在に甘んじている。とにかく、聴いてもらったほうが早いユニークさ。

加えて、クロスオーバー・ジャズ・ギターの神様、ジョン・マクラフリンのギター・テクニックの凄まじさが強く印象に残る。このインド音楽のユニークなフレーズに、事も無げに適応し、ガンガンに弾きまくる。脱帽である。
 
 

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2026年2月23日 (月曜日)

逆説的な ”モンクの個性” の表出

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいるのだが、当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。今回も、「この一曲を」では無く、「このアルバムを」で、セロニアス・モンクのピアノの個性を聴き直している。

Thelonious Monk『Brilliant Corners』(写真左)。1956年10月9日・16日、12月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p, celesta), Sonny Rollins (ts), Ernie Henry (as), Clark Terry (tp), Oscar Pettiford (b, 1–3), Paul Chambers (b,track:5), Max Roach (ds)。

この盤も「この1曲」ではなく「この盤」だろう。確かに、モンクのピアノを体験したいなら、この『Brilliant Corners』は最適の一枚かもしれない。まず、全編に渡って、モンクの独特のフレーズと間、がとても判り易い形で演奏され、録音されている。文句の摩訶不思議な音の飛び方をするフレーズがクッキリ浮かび上がる、摩訶不思議な「間」が実感出来る。確かに、この番、モンクの唯一無二の独特のフレーズの弾き回しと間がガッチリ体験出来る。
 

Brilliant_corners_1

 
しかも、パーソネルを見れば判るか、共演しているジャズマンは皆、一流どころ。そんな一流どころのジャズマン達が、文句のモンクの独特のフレーズと間に完全にはついていけず、戸惑い、萎え、心を立ち直らせながら再チャレンジする。あのロリンズだって青息吐息、必死のパッチである。如何に、モンクの才能が叩き出すフレーズと間が、ユニークで唯一無二で、他の追従を許さないか、が凄く良く判る内容になっているのだ。

モンクの孤高の個性と、それに追従出来ない一流ジャズマン達。そんなパフォーマンスを記録することで、モンクの孤高の個性を表現する、そんな内容のアルバムである。決して、名曲名演による名盤ではない、ということ。モンク自身のパフォーマンスは素晴らしい。しかしこの盤は、モンクの孤高の個性が、それに追従できない一流ジャズマンのパフォーマンスによって、更なる証明がなされる、逆説的なモンクのリーダー作であり、名盤である。

ということで、演奏を表面だけ聴くと、この盤ってなんや、と訝しく思うのは実は正しい。モンクの孤高の個性に追従出来る一流ミュージシャンとしては、テナーのチャーリー・ラウズがいるし、ベースのジョン・オーレがいるし、ドラムのフランキー・ダンロップがいる。これらのサイドマンとの優れた共演はモンクの名盤だし、モンクの孤高の個性を堪能したければ、ソロ・ピアノ盤を選べば良い。ただし、モンクの孤高の個性を愛でる入門盤としては、この『Brilliant Corners』は推薦できる。
 
 

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2026年2月22日 (日曜日)

ECMサウンドの典型のアルバム

ECM1100番台は、ドイツのジャズ・レーベル「ECM Records」が1970年代後半から1980年代にかけてリリースした、カタログ番号が1100〜1199のLPレコードシリーズ。透明感のあるサウンド、欧州的なリリカルな表現、洗練されたニュー・ジャズが多く含まれる時期の作品群である。

Eberhard Weber & Colours『Silent Feet』(写真左)。1977年11月の西ドイツの「Tonstudio」での録音。ECMの1107番。ちなみにパーソネルは、Charlie Mariano (ss, fl), Rainer Brüninghaus (p, syn), Eberhard Weber (b), John Marshall (ds)。ドイツのベース奏者エバーハルト・ウェーバー&カラーズによるアルバム。

1970年代後半から1980年代にかけて、ベーシストのエバーハルト・ウェーバーのサウンドは、ECMレーベル・サウンドの典型だったと思う。この盤では、ロングトーンを強調し、静寂と音の対比を巧みに操る、即興演奏中心、耽美的で印象的な、ECMレーベル独特のニュー・ジャズ・サウンドである。
 

Eberhard-weber-colourssilent-feet

 
音の傾向は「スピリチュアル」。演奏の展開は基本はモード。ファンクネスは皆無。どこかクラシックの要素が見え隠れする。典型的な欧州ジャズのサウンド。澄みきった空気感と繊細な音色。引っかかりの無い、滑らかで流麗なフレーズの連続。ロングトーンを多用しているので、キャッチーなサウンド要素が不足しているが故、音世界自体にかすかな浮遊感とネーチャー感がある。

アグレッシヴなドラム、規律溢れるベース。このリズム隊が演奏全体の雰囲気をコントロールしていく。ウェットなソプラノ・サックスの浮遊感が堪らない、冒頭1曲目の「Seriously Deep」、ブリューニングハウスの透明感豊かなピアノが芳しい2曲目「Silent Feet」。幽玄な空気から一転爽やかスピリチュアルに展開する3曲目「Eyes That Can See In The Dark」など長尺3曲の収録。

思索的で骨太なベースが、この盤の演奏の全てをしっかり支えている。リーダー・ベーシスト、エバーハルト・ウェーバーの面目躍如。そして、リズム隊のパートナー、ドラムのジョン・マーシャルが良い感じ。このリズム隊あっての、ウェーバー風のECMニュー・ジャズ。ロングトーンのフレーズを多用しているので、少し間延びがして賛否両論のアルバムではある。しかし、ECMレーベル独特のニュー・ジャズ・サウンドであることは間違い無い。
 
 

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2026年2月21日 (土曜日)

ランディの内容あるECM盤です。

純ジャズにおいては、欧州系については、ECMレーベルのカタログを追いかけている。ちょっとチェックしてみたら、ECMのEM1001〜1099までの「ECM1000番台」については、明らかに現代音楽の「ジャズでは無い」アルバムを除けば、当ブログでの記事アップがコンプリートした。次は、ECM1101〜1199までのECM1100番台である。

Art Lande『Desert Marauders』(写真左)。1977年6月の録音。ECMの1106番。ちなみにパーソネルは、Art Lande (p), Mark Isham (tp, flh), Bill Douglass (b, fl), Kurt Wortman (ds, perc)。米国出身のピアニスト、アート・ランディの4枚目のリーダー作。プロデューサーは、マンフレート・アイヒャー。

相変わらず、リラックスしたウォームな雰囲気のピアノ。クラシックの様に端正。しかし、それは即興演奏を旨としており、ファンクネス皆無、ピアノのフレーズはジャズの香りが濃厚に漂う。決して重く無い、切迫感皆無、適度にリラックスしたミッド・テンポのシンプルな響きのピアノ。フリーでもなければスピリチュアルでも無い。一言で言うと「ネイチャー(自然)」な響き。
 

Art-landedesert-marauders

 
ランディのピアノは、ファンクネス皆無、一聴するとクラシックの様な、それでいて、仄かなオフビートのタッチ、リラックスしたライトなピアノ・ソロ。キース、バイラークに比べて、アクが無く、素直で流麗なタッチ。素直なピアノがゆえに、単調に陥り易く、聴き進めて行くと、どの曲も同じ様に聴こえてくるのは「ご愛嬌」。演奏スキルは皆、高い。

透明度が高くネーチャーで暖かい響きのランディのピアノ。アイシャムの抒情溢れる印象的なトランペット&フリューゲルホーンが欧州的に響く。より洗練され、思慮深い、ウォームな雰囲気の典型的なECMなニュー・ジャズが展開される。キャッチーな楽曲があれば、この盤、もっと、ジャズ者の方々に受け入れられたと思う。

ECMレコードが持つリリカルな側面が、良い意味で良く出た作品。アート・ランディ、わが国では全く無名のままで、このアルバムについても、ほとんど知られていない。でも、聴けば判る。この盤には、上質な欧州ジャズが詰まっている。さすがECMレコードといったところか。でも、ランディって米国出身のピアニストなんだよな。ECMマジックである。
 
 

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2026年2月20日 (金曜日)

『Waltz for Debby』の聴き方

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいるのだが、アルバムの中の「一曲」だけを聴いて、そのピアニストの個性と特徴を捉えろ、というのは、ちょっと乱暴である。ということで、当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。と昨日、書いた。そして、このアルバムがその最たるもの。

Bill Evans『Waltz for Debby』(写真左)。1961年6月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Scott LaFaro (b), Paul Motian (ds)。NYの老舗ライヴハウス、ヴィレッジ・ヴァンバードでのライヴ録音。兄弟盤に『Sunday at the Village Vanguard』がある。演奏は、存命中のスコット・ラフェロを含めた「伝説のトリオ」である。

このライヴ盤の、レココレの言うこの1曲がタイトル曲の「Waltz for Debby」。この耽美的で流麗でスローなワルツ曲が、ビル・エヴァンスというピアニストの個性と特徴を表している、としているが、これはちょっとなあ。実は、ビルのディスコグラフィーを見渡すと、このライヴ盤だけが、異質な響きを宿している盤だと判る。
 

Bill-evanswaltz-for-debby

 
もともと、ビル・エヴァンスは「バップ・ピアニスト」。「明確なタッチのバップなピアノ」が持ち味で、「耽美的でリリカルで静的なピアノ」が持ち味では無い。この盤での「耽美的でリリカルで静的」な響きが溢れる演奏でも、エヴァンスのタッチは明確で鋭い。決して、響きを重視した耽美的なタッチでは無い。つまり「Waltz for Debby」の一曲だけで、ビルのピアノの個性と特徴を結論付けると、間違ったビルのピアノに対する印象を持ってしまうことになる。

このライヴ盤は、マイルスの下で「ものにした」モード奏法を、バラード曲、スローな曲に限定して、この「伝説のトリオ」で実現した唯一のライヴの記録だと理解している。スローな曲調でのモーダルな演奏とインタープレイ。その最高の成果がこのライヴ盤にある。そして、その基本のビルのピアノは「バップ・ピアノ」。決して「耽美的でリリカルで静的」なピアノでは無い。

『Waltz for Debby』については、エヴァンスのピアノの「耽美的でリリカルで静的」な面がクローズアップされた特異な企画盤とした方が「座りが良い」。つまり、エヴァンスのピアノの個性と特徴の半分を体感したに過ぎない。せめて、ビルのホームグラウンドである「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライヴ盤の諸作を聴いてもらいたい。
 
 

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2026年2月19日 (木曜日)

マルの『Left Alone』の聴き方

レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいるのだが、アルバムの中の「一曲」だけを聴いて、そのピアニストの個性と特徴を捉えろ、というのは、ちょっと乱暴である。ということで、当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。

Mal Waldron『Left Alone』(写真左)。1959年2月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Jackie McLean (as :track 1のみ), Julian Euell (b), Al Dreares (ds)。マル・ウォルドロンのビリー・ホリディ追悼盤。基本はピアノのマルがリーダーのトリオ。1曲目の「Left Alone」のみ、アルト・サックスのジャッキー・マクリーンが客演している。

この盤、冒頭のマクリーンの無きのアルト・サックスが入ったタイトル曲「Left Alone」だけがクローズアップされるばかりの盤だが、案の定、レココレの「この曲のピアノを聴け」でも、この1曲の「Left Alone」を上げている。しかも、解説には、マクリーンの「泣きのアルト」とこの曲が録音された経緯の説明があるばかりで、マルのピアノの個性と特徴については、ほとんど有益なコメントは無い。

だから、アルバムの中の「一曲」だけを聴いて、そのピアニストの個性と特徴を捉えろ、というのは、ちょっと乱暴だって、僕は指摘するんだよなあ。で、話を戻すと、この「Left Alone」は、マルのピアノは伴奏に徹していて、マルはもともと伴奏上手なピアニストではあるが、この「Left Alone」では、それが聴きとれるほどではない。確かに伴奏上手ではあるけれど。
 

Mal-waldronleft-alone

 
マル・ウォルドロンのタッチは硬質で端正。しかし、硬質なタッチの底に、もやっとした黒いブルージーな雰囲気が横たわっている。そして、端正な弾きこなしの端々にラフな指さばきが見え隠れする。この「黒い情感と適度なラフさ」がマルの特徴。このマルのピアニストとしての個性と特徴は、2曲目以降のトリオ演奏を聴けば、それが良く判る。

ブルージーでミッドテンポな、2曲目「Cat Walk」の前奏部分のゴツゴツ感豊かで、ちょっとアブストラクトな、マルのピアノの特徴が溢れている。3曲目の有名なバラード曲「You Don't Know What Love Is」ですら、マルのゴツゴツ感豊かなピアノのフレーズで、パキパキ硬質な黒さが演奏の底に漂う。

4曲目以降「Minor Pulsation」からラストの「Airegin」などは、お得意の速いテンポの曲で、マルの「硬質なタッチ」のピアノが縦横無尽に展開されている。どの曲にも、マルのピアノの特徴である「黒い情感と適度なラフさ」が見え隠れしていて、聴いていてとても興味深い。

クローズアップされ過ぎて、後に巷で有名になってしまった冒頭のタイトル曲以外の2曲目以降の演奏に、マルの特徴的なピアノがぎっしりと詰まっている。この『Left Alone』の2曲目以降にマルのピアノの真骨頂がある。マルのピアノを感じ、マルのピアノを愛でるのであれば、この『Left Alone』の2曲目以降を聴け、である。
 
なお。余談になるが、CDでのラスト・トラックである「The Way He Remembers Billy Holiday」は、マルのインタビューでの談話である。演奏曲ではない。聴いてビックリしないで欲しい。有り体に言うと、これは蛇足だろう。
 
 

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2026年2月18日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・313

クロスオーバー&フュージョン・ジャズにおいては、CTIレーベルのカタログを追いかけているが、純ジャズにおいては、欧州系については、ECMレーベルのカタログを追いかけている。ちょっとチェックしてみたら、ECMのEM1001〜1099までの「ECM1000番台」については、明らかに現代音楽の「ジャズでは無い」アルバムを除けば、この一枚で、当ブログでの記事アップが完了することが判った。

Steve Kuhn『Motility』(写真左)。1977年1月、西ドイツの「トンスタジオ」での録音。ECMの1094番。ちなみにパーソネルは、Steve Kuhn (p), Steve Slagle (ss, as,fl), Harvie Swartz (b), Michael Smith (ds)。米国の耽美的情緒的なピアノニスト、スティーヴ・キューンのアルバム。

ECMレーベルお得意の「ポスト・バップ&ニューエイジ」なジャズのアルバム。チック・コリアとマッコイ・タイナーの中間に位置する、米国ジャズ界には珍しい耽美的情緒的なピアニストと形容されるスティーヴ・キューン。そんなキューンの個性的なピアノが、このアルバムに溢れている。
 

Steve-kuhnmotility

 
美しく流麗で耽美的なピアノが、時々、フリーにアブストラクトにアウトしながら、打ちつける様な激情溢れるタッチを見せながら、ポスト・バップな、情緒的なメロディを奏でつつ、展開していく。ひっかかる様に、つんのめる様にメロディーがアウトしていくところもあるが破綻は無い。しっかり「規律」された不協和音の美しさ。実に欧州的であり、ECM的である。

キューンのソロ・ピアノも良い。7曲目の「A Dance For One」のジャズロック的な雰囲気もなかなか。サックスとの共演での、バッキングに回ったキューンのピアノも良い。3曲目の「Catherine」では、明るめのバラードで、サックスのメロディーが浮き出てくる様は実に良い。切れ味良く、エッジの立ったピアノだが、音の雰囲気は、どこか「明るい」。

ジャケットも秀逸。とてもECMレーベルらしいジャケットで、この盤に詰まっている音世界を、ズバリ表現しているところが素晴らしい。このジャケットも欧州的。キューンは米国出身のピアニストながら、彼のピアノの個性は「欧州的な」ジャズでこそ活きる。そういう意味で、キューンのピアノにはECMレーベルが良く似合う。
 
 
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2026年2月17日 (火曜日)

CTIレーベルの第一弾アルバム

CTIレーベルのアルバム群が、本格的にリイシューされてからというもの、今まで聴いたことが無い盤も出てきて、それはそれは楽しい毎日。クロスオーバー&フュージョン・ジャズもしっかりと守備範囲に入っている、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、現在、CTIレーベルのカタログを基に、CTIレーベルのアルバムの記事のコンプリート化を進めている最中。

『Kathy McCord』(写真左)。邦題「キャシー・マッコード 〜虹のかけ橋」or「レインボー・ライド」。1969年11月18–20 & 24日、12月2日の録音。1970年のリリース。ちなみにパーソネルは、Kathy McCord (vo), Hubert Laws (fl), Paul Harris (p, org), John Hall (g), Harvey Brooks (b), Willis Kelly (ds), Ed Shaughnessy (ds, tabla), Don Sebesky (string and brass arr)。クリード・テイラーが1969年に設立し、クロスオーバー&フュージョン・ジャズで名声を確立するCTIレーベルの第一弾作品である。

米国のシンガー・ソング・ライター、キャシー・マッコードのデビュー盤である。といっても、彼女のリーダー作は2作のみ。女性シンガー・ソング・ライターのアルバムが、CTIレーベルを通じてリリースされたことはとても珍しい。この盤は、クロスオーバー・ジャズにおけるボーカル・アルバムの「珍盤」の一枚だろう。実際、僕はつい最近まで、カタログ上ではその存在は知っていたが、実際に聴いたことが無かった。
 

Kathy-mccord  

 
クリード・テイラーの「経歴に惑わされず音をじっくり聴いて欲しい」との意向で異色のバイオグラフィー無しでのデビューとなったらしい。アルバムの構成は、全10曲中、オリジナルが9曲、カヴァーが1曲。そのカヴァーが、レノン&マッカートニーの「I'm Leaving Home」。アルバム全体を通じて言えることは、この盤、地味ではあるが内容は濃い。CTIサウンドに彩られたジャズロックなバッキングを得て、キャシー・マッコードは魅力的なクールでウォームな歌声で自作曲を唄い上げていく。

冒頭の「Rainbow Ride」など、CTI色豊かなクロスオーバーな穏やかな伴奏をバックにキャシーが唄い上げ、バックバンドのアドリブ部に入ると、エモーショナルなジャズロックに変貌。ジョン・ホールが弾きまくるジャズロック的な展開にビックリ。硬派でダイナミックな展開に思わず聴き惚れてしまう。続くビートルズのカヴァー「I'm Leaving Home」では、アコギの伴奏をメインとしながら、ストリングスやコーラスが幻想的で哀愁感漂うバッキングが良い雰囲気。

キャシーの自作曲は、内省的でメランコリック。どれも良い出来なのだが、いかんせん「地味」。それでも、バックのイージーリスニング志向のクロスオーバー&ジャズロックな演奏がキリッと締まっていて、内容も良く、合わせ技で「聴き心地&聴き甲斐」のある楽曲にまとまっている。このアルバムが、CTIレーベル第一弾。これがCTIレーベルの音作りと言われれば納得。意外と良い内容のアルバムです。
 
 

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2026年2月16日 (月曜日)

硬派クロスオーバーなベンソン

CTIレーベルは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの代表的レーベルである。クロスオーバー&フュージョン・ジャズについては、聴き手の「聴き心地、聴き易さ」を優先した、イージーリスニング志向のアルバムが多く見られるが、中には、純ジャズ志向の、なかなか硬派でメインストリームな盤もあって、これが意外と楽しめる。

George Benson 『Body Talk』(写真左)。1973年7月17–18日の録音。CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、George Benson (g), Earl Klugh (rhythm-g), Harold Mabern (el-p), Ron Carter (ac-b), Gary King (el-b), Jack DeJohnette (ds), Mobutu (perc, congas), Frank Foster (ts), Gerald Chamberlain Dick Griffin (tb), Jon Faddis, John Gatchell, Waymon Reed (tp, flh), Pee Wee Ellis (arr, cond)。

ブルース・フィーリング、ソウル・フィーリングに溢れる、純ジャズ志向のクロスオーバー・ジャズ盤である。演奏全体の構成は、8ビートがメインのエレクトリックなクロスオーバー・ジャズだが、演奏されるジャズの雰囲気は「純ジャズ」。1960年代後半から、エレクトリック楽器の導入が進んだジャズ界の中で、エレクトリック楽器を活用しながらも、演奏内容は硬派な純ジャズという、なかなかの内容のベンソン盤である。
 

George-benson-body-talk

 
とにかく、ベンソンが弾きまくる、弾きまくる。バックには、ハードバップ期から、そして、当時の新進気鋭のジャズマン達が大集合して、8ビートがメインのエレクトリックなクロスオーバー・グルーヴなバッキングを展開するが、そんな充実のバックが霞むほどのベンソンのエレギの弾きっぷり。何かに取り憑かれたように、鬼気迫る、それでいて、どこか余裕のある素晴らしい弾き回しに惚れ惚れする。

ソウル・フィーリング溢れる、R&B志向のクロスオーバーな演奏も良い味を出している。ベンソンのソウル・クロスオーバーな演奏は、ファンクネスを過度に出さず、スマートでライトなファンクネスを撒き散らしながら、ブラス・セクションを絡めながら、R&Bなグルーヴ、モータウン名グルーヴを醸し出しながら、やっぱり「弾きまくる」。このブラス・セクションが「キモ」。R&B、そしてモーダウンには、ブラス・セクションが良く似合う。

全5曲中、4曲がベンソンの作(1曲目「Dance」だけ、エリスとの共作)気合いが入っている。ウエス・モンゴメリーの後継者と目されて脚光を浴びたベンソンではあるが、この盤では、ウエス・モンゴメリーの影響下から抜け出て、ウエスの弾きっぷりを下敷きにしつつ、ベンソンならではのギターの個性を確立させているのが、この盤のパフォーマンスを聴いていて、それが良く判る。純ジャズ志向の良質なエレギである。
 
 

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2026年2月15日 (日曜日)

ロンのフュージョン初期盤です

このところ、ロン・カーターの1970年代のリーダー作を聴き直している。ロンは、1970年代に入って、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの仕掛け人の一人、プロデューサー「クリード・テイラー」と組んで、イージーリスニング志向のクロスオーバー・ジャズから、フュージョン・ジャズをリリースしている。これがまあ「賛否両論」で、評価が割れたまま、今日まできている。

Ron Carter『Anything Goes』(写真左)。1975年6〜7月の録音。Kudoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは以下の通り。フュージョン・ジャズの担い手、強者ミューシャン大集合といった様相のメンバー構成。ファンキー・ジャズ志向フュージョン盤である。プロデュースは「クリード・テイラー」。アレンジャーは「デヴィット・マシューズ」。

Ron Carter (b, piccolo-b), Randy Brecker (tp), Alan Rubin (tp, flh), Barry Rogers (tb), Michael Brecker (ts), Phil Woods, David Sanborn (as), Hubert Laws (fl), Don Grolnick (el-p), Richard Tee (org), Eric Gale (el-g), Steve Gadd (ds, track 1), Jimmy Madison (ds,tracks 2–6), Ralph MacDonald (congas, perc), George Devens, Arthur Jenkins (perc), Patti Austin, Marilyn Jackson, Maeretha Stewart (vo, tracks 1,6), Dave Matthews (arr)。
 

Ron-carteranything-goes
 

ジャズ・ファンクとするまで、ファンクネスとビートの粘りは濃厚では無い。ライトで小粋な「ファンキー・ジャズ」志向のフュージョンである。旋律&アドリブの雰囲気は「ソフト&メロウ」、リズム&ビートは、ライトなR&B志向。特に、ドラムには、スティーヴ・ガッドとジミー・マディソンが、ベースはロン・カーター本人というリズム隊で、明らかに、フュージョン・ジャズ仕様のグルーヴが醸し出されている。

ロンはアコベ、エレベの両方を駆使しながら、旋律弾きソロに、バッキングなベースに大活躍。相変わらず背韻律弾きソロではピッチが少し外れてはいるが、短めのソロでまあまあ我慢しつつ、聴き通すことができる。これが、ピッチがバッチリ合っていたら、この盤、もっと評価は上がっていただろうに。アルバム全体の内容は、上質のダンサフルでソウルフルな、ファンキー・ジャズ志向フュージョン。聴き易さがあって良好。

フュージョン・ジャズ初期の好盤。LP時代の帯紙には「ベースの王者ロン・カーターが、話題のクロスオーバーに挑戦!!」とあり、確かにそんな内容のアルバムではある。ロンはエレベも弾き、ワウワウなどのエフェクトを使用して、時代に乗り遅れまいとしているところが健気というか、生真面目というか。この辺りが、1970年代のロンの評価が「賛否両論」に分かれるところなんだろう。流行を追うもの、超然と我がスタイルを行くもの、この時代のジャズマンは二手に分かれていた。
 
 

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2026年2月14日 (土曜日)

”ベースで旋律を弾く” 難しさ

ベースで旋律(メロディ)を弾くには、高音域(主に7フレット以降)を活用し、ハンマリング、スライド、チョーキングといった装飾技術を用いて、滑らかに「歌う」ように表現するのがコツとのことだが、ジャズにおいて、この「ベースで旋律を弾く」に長けたベーシストは数少ない。

Ron Carter『A Song for You』(写真左)。1978年6月の録音。マイルストーン・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, piccolo-b, arr), Leon Pendarvis (p, track 1), Kenny Barron (p, tracks 2–6), Jay Berliner (g), Jack DeJohnette (ds), Ralph MacDonald (perc)。

ジャズ・ベーシストのレジェンド、ロン・カーターのリーダー作。この盤では、ロンの「ベースで旋律を弾く」テクニックが前面に押し出された、ロンのベースに焦点を合わせたリーダー作。先に言っておくが、この盤の評価、賛否両論だと思う。僕は、ベースで旋律を弾くのは「アリ」だと思っている。特に、ベースの革命児、ジャコ・パストリアスが出現してからは、別に違和感が無い。

しかし、この盤は、ジャコの出現前、ハードバップ時代からのレジェンド・ベーシストの「ベースで旋律を弾く」チャレンジである。というか、チャレンジ手前で止まっているように思う。それを踏まえてのアルバムの内容のご紹介になる。まず、米国のジャズ・ベーシストは、おしなべて「ベースで旋律を弾く」のは苦手。ロンも例外では無い。
 

Ron-cartera-song-for-you  

 
欧州系のベーシストは、クラシックのベース経験が少なからずあるんで、ピッチが合う、テンポが的確、と、ベースという「楽器」を弾く基本が出来ている。基本が出来ている上で「ベースで旋律を弾く」ので鑑賞に耐える。しかし、米国系のベーシストは、まず、ピッチが合っていないことが多く、テンポも遅れがちで雑になる。これが一番の問題点になる。

で、このロンのリーダー作であるが、当時のロンのベースの弱点である「ピッチが合っていない」が、まだ完全に改善されていない。少し、フラットしていて、このピッチが少し外れているのも「味」と、まとめているみたいだが、ちょっと聴いていて気持ちが悪い。テンポは辛うじてキープされているので、テクニック的には、ちょっと「惜しい」ロンの弾きっぷりである。

ただ、演奏自体のアレンジは良好。ベースが「旋律を弾く」ということを大前提としたアレンジは良い。特に、ベースで旋律を弾く、そのもののアレンジはとても良好で、さすがロン・カーターといったところ。タイトル曲のレオン・ラッセルの名曲、カーペンターズのカヴァーで有名な「A Song for You」などは実に良い感じでまとまっている。

ちょっと乱暴な希望なんだが、このロンのアレンジで、この盤のベースを、欧州系のベーシストでやって欲しいな、と。例えば、ペデルセンとか、ムラーツとか、でもどちらも逝去してしまっているので、彼らの後を継ぐ現役ベーシストでやって欲しいなあ、と。「ベースで旋律を弾く」の評価を大きく前進させる成果になる、と思っているんですが・・・。
 
 

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2026年2月13日 (金曜日)

ロンの技術を愛でるトリオ盤

Ron Carter『Third Plane』(写真)。1977年7月13日、米国サンフランシスコでの録音。マイルストーン・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Herbie Hancock (p), Tony Williams (ds)。1970年代後半、アコースティック・純ジャズへの回帰として人気を博したV.S.O.Pクインテットのリズム・セクション(ピアノ・トリオ)の好盤である。

この盤を見ると、聴く前は、大多数のジャズ者の方が「ハービー・ハンコック」のピアノに着目するのだが、もともと、ハービーはトリオ演奏が、あまり得意では無い。冒頭のタイトル曲「Third Plane」のテーマ部から、アドリブ部の前半までは、とにかくぎこちない弾きっぷり。もともと、カリプソっぽいポップな曲はハービーは馴染まないみたいで、ちょっとユーモラスでキャッチーなテーマ部はぎこちない。

それでも、曲の途中から調子を掴んだのか、少し滑らかにアドリブを展開し始めて、2曲目以降は、安定のモーダルなピアノを弾き続けていく。音の重ね方、フレーズの展開のパターンなどは、ハービーの個性がしっかりと出ていて良好。しかし、フロントに立ってのソロはちょっと地味かなあ。良いテクニック、良いフレーズを展開しているんですが、音の跳ね方、響き方がちょっと内向的なところで損をしている。
 

Ron-carterthird-plane

 
一方、リーダーのロンは、この頃のロンの最大の問題点だった「ピッチ」がまあまあ合っていて、安心して聴き進めることができる。電気的なアタッチメントは付けているみたいで、フレーズの伸びの部分が「ブヨーン、ブヨーン」とちょっと気持ち悪いが、ピッチがそこそこ合っているので、鑑賞には耐える。この盤では「ピチカート技法」が冴えていて、ロンはアコベを弾かせたら、屈指のベーシストだということを再認識させてくれる。

このトリオ盤でのトニーのドラムは温和しい。いつもはバンバン叩きまくってフロントを鼓舞しまくるのだが、この盤では神妙にモーダルなリズム&ビートを刻んでいる。意外と抑制されたトニーのドラミングの方が、静かな凄みがあって、僕は気に入っている。温和しめではあるが、要所要所では、しっかりとリズム&ビートを締めて、演奏全体に有効な推進力を供給する。

いわゆる、マイルスの1960年代黄金のクインテットのリズム・セクション、リーダーでベースのロン・カーター、ピアノのハービー・ハンコック、ドラムのトニー・ウィリアムスでのピアノ・トリオ演奏である。リーダーがロンであるがゆえ、このトリオ盤は、まずは、ピアノ・トリオにおけるロンのアコースティック・ベース(アコベ)の技術とセンスを堪能する盤である。
 
 

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2026年2月12日 (木曜日)

ナットのエレなハードバップです

ファンキー・トランペットの元気印「ナット・アダレイ」のCTI盤である。CTI盤なんで、ソフト&メロウなフュージョン盤かと思うんだが、録音年は1968年。フュージョン・ジャズの時代より前の、クロスオーバー・ジャズの初期。で、出てくる音は、エレクトリックなバックを従えたコンテンポラリーな純ジャズ。

Nat Adderley『Calling Out Loud』(写真)。1968年11, 12月の録音。CTIレーベル盤。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cornet), Paul Ingraham (French horn), Seldon Powell, Jerome Richardson, Jerry Dodgion, Richard Henderson (sax), Hubert Laws (fl, piccolo), Don MacCourt (bassoon), George Marge (cl, English horn, sax), Romeo Penque (b-cl), Joe Zawinul (el-p), Ron Carter (b), Leo Morris (ds)。

冒頭の「Biafra」から曲想は、思慮深さとダイナミック差を兼ね備えたハードバップ。バックの演奏がエレクトリック志向。ソフト&メロウなんて無し。イージーリスニング志向なところも無し。

エレクトリックなハードバップな雰囲気が、1960年代後半のクロスオーバー・ジャズの影響をモロ受けた「コンテンポラリーな純ジャズ」的雰囲気を増幅している。このハードバップ・ライクな演奏の雰囲気は、ナット・アダレイのコルネットのパフォーマンスに拠るところが大きい。
 

Nat-adderleycalling-out-loud

 
そして、このハードバップ・ライクな演奏を「コンテンポラリー」な雰囲気を付加しているのが、ジョー・ザヴィヌルのエレクトリック・ピアノ(エレピ)。このザヴィヌルのファンクネス溢れるエレピが、コンテンポラリーな雰囲気を色濃くし、プログレッシヴなファンクネスを付加する。この盤をユニークな存在にしているのは、ザヴィヌルのエレピである。

エレクトリックな雰囲気と言えば、ナットもエレクトリックのコルネットを吹いていて、これが、ザヴィヌルのエレピと絡んで、とてもプログレッシヴな雰囲気を醸し出している。このエレクトリックな雰囲気が、ファンキーを飛び越えて、ソウルフルな雰囲気に昇華している部分など、聴き心地満点。

ビル・フィッシャーの管楽器のアレンジも、プログレッシヴでコンテンポラリーなエレクトリック・ハードバップに、ちょっと柔らかなイージーリスニング志向を付加している様で、なかなか良い雰囲気で効果的。

CTI盤というのが良く無いのか、ほとんど話題に上らないアルバムだが、内容的には、上質のコンテンポラリーでプログレッシヴで、エレクトリック・ハードバップな演奏がなかなかの内容。捨てておくには勿体ない秀作である。
 
 

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2026年2月11日 (水曜日)

ケリーの個性を盤一枚で感じる

昔から、ジャズ・ピアノは、僕の一番得意な楽器。今、レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。ジャズ・ピアノ盤の名盤・好盤の類がズラリ記事に並んでいて、今の耳で、このジャズ・ピアノの名盤・好盤を聴き直すのは、以外と楽しい作業である。

Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。1959年2月19日と3月10日の録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。セクステット編成が2月19日、ピアノ・トリオ編成が3月10日の録音になる。

セクステット編成での2月19日の録音「Kelly Blue」「Keep It Moving」は、Wynton Kelly (p), Nat Adderley (cor), Bobby Jaspar (fl), Benny Golson (ts), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

トリオ編成での3月10日の録音「Softly, as in a Morning Sunrise」「On Green Dolphin Street」「Willow Weep for Me」「Keep It Moving」「Old Clothes」は、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

さて、ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。これは、この盤のトリオ編成の演奏で良く判る。この盤のトリオ演奏でのケリーのピアノは絶好調。ケリーのメイン楽器としてのピアノの個性が手に取るように判る。
 

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一方、ウィントン・ケリーは伴奏上手でも有名で、彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、フロント管をサポートする上で、ボーカルをサポートする上で、効果的に響くのだろう。その「伴奏上手のケリー」は、この盤のセクステット編成の演奏で、じっくり聞けば良く判る。

冒頭のタイトル曲「Kelly Blue」のセクステット演奏の前奏部分が、フロント3管のユニゾン&ハーモニーが、ファンキーだが、どこかダルで、どこか間延びした、ちょっと古い響きがするので、ちょっと聴き始めは戸惑うが、次の有名スタンダード曲「Softly, as in a Morning Sunrise」がトリオ演奏なので、ケリーのピアノが前面に出てくるのでホッとする。後は「On Green Dolphin Street」から「Willow Weep for Me」では、ケリーのスタンダード曲の解釈を感じ取る事ができる。

この盤は、ケリーのピアノを愛でるという切り口では、トリオ編成の演奏をメインに聴くべくアルバムだと思う。伴奏上手なケリーも聴くべき個性だとは思うが、この「伴奏上手」を聴き取るには、ある程度のレベルのステレオ装置が必要となって、気軽にという訳にいかず、なかなか判り難い個性である。

この盤、リヴァーサイドの中でも「ポップでキャッチャーな内容のファンキー・ジャズ盤」として、ジャズ者初心者向けのアルバムとして、よくそのタイトル名が上がる盤。しかし、ファンキー・ジャズとして聴くより、ケリーのピアノの個性がとても良く判る「ウィントン・ケリー入門盤」の一枚だろう。
 
 

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2026年2月10日 (火曜日)

1950年代ジャマルのトリオ演奏

レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」。日本の演奏家も含めて、ジャズ/フュージョンを代表するピアノの名演をまとめて紹介するというものだが、有名な名盤からちょっとマニアックな好盤から、ジャズ・ピアノの個性という切り口でチョイスし紹介している、好感の持てる企画記事である。

『Ahmad Jamal At The Pershing: But Not for Me』(写真左)。1958年1月16日、シカゴの「Pershing Hotel」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。シカゴ在住メンバーで固めた、ラウンジ風ハードバップ・ジャズなピアノ・トリオのライヴ・パフォーマンスの記録。

ジャス・ピアノの代表的名盤といえば、このアルバムは必ず出てくる。ハードバップ時代のトリオ演奏におけるピアノの代表的個性のひとつ。ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。
 

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そんな1950年代ジャマルの小粋なピアノが満載。ライヴ録音なので、適度な緊張感あって、ラウンジ風のピアノ・トリオではあるが(実際、ホテルのラウンジでの録音)、タッチに力強さもあり、音を厳選する中で、印象的なアドリブ・フレーズを小粋に弾き進めている。とても趣味の良い、聴き心地の良いピアノ。端正で崩れが無いので「面白く無い」という向きもあるが、テクニックのレベルも高く、これも、ジャズ・ピアノの代表的な個性のひとつだろう。

今の耳で、じっくり聴き進めてみると、ジャマルのトリオは、ビ・バップのピアノ・トリオのパフォーマンスを下敷きに、弾く音を限りなく厳選し、左手のブロックコードをシンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入れている様に聴こえる。ベースとドラムがリズム・キープに徹しているところも「ビ・バップ」基調だし、少なくとも、このトリオには「インタープレイ」という概念は無い。

上質の、内容のある、ラウンジ風ハードバップ・ジャズなピアノ・トリオだろう。この1950年代ジャマルの、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードを、マイルスは評価した。ジャマルのピアノを伴奏に、トランペットを吹けば、トラペットのフレーズがとりわけ映えるだろう。ジャマルを勧誘したマイルスの気持ちが良く判る。
 
 

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2026年2月 9日 (月曜日)

フュージョン・ジャズ前夜の音

CTIレーベルのアルバムには、プロデュースの方向性として、純ジャス、メインストリーム・ジャズの要素をしっかり弾き継ぐ方向性と、クラシックの要素を取り入れて、イージーリスニング志向とする方向性と、大きく分けてこの2つの方向性があったと理解している。そして、ジョージ・ベンソンは「前者」の範疇に入る。

『Benson & Farrell』(写真左)。1976年1月と3月の録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g), Joe Farrell (fl,ss), Don Grolnick (el-p), Sonny Bravo (ac-p), Eric Gale, Steve Khan (g), Will Lee, Gary King (b), Andy Newmark (ds), Nicky Marrero (perc), Jose Madera (congas), David Matthews (arr, cond)。

フュージョン・ジャズ名盤『Breezin'』前夜、ジョージ・ベンソンのフュージョン・ジャズへの移行を捉えた好盤である。前作の『Good King Bad』で、R&B志向のクロスオーバー・ジャズを確立したベンソンが、「ベンソンが考えるフュージョン・ジャズ」への移行を図っていることが良く判る内容になっていて、フュージョン・ジャズ者には、実に興味深い内容になっている。
 

Benson-farrell
 

フロントのベンソンのギターとファレルのソプラノ・サックスは、そのソロ・パフォーマンスは「純ジャズ」の香りがプンプンする。そして、バックの伴奏が、どこかソフト&メロウな雰囲気漂う、テクニック志向を抑えた、聴き手に訴求する、聴き心地優先のフュージョン・ジャズの演奏スタイルが確立している。

この「純ジャズ」志向のフロントと、「フュージョン・ジャズ」志向のバックとの融合がこの盤の聴きどころ。フュージョン・ジャズは「甘い、緩い、安易」なんて揶揄されていたが、この盤を聴くと判るが、そんな評価はとんでもない。テクニックも優秀、フロント・ソロは硬派でシビア、バックの演奏も高度で聴き心地が良い。これが、フュージョン・ジャズのひとつの「プロトタイプ」であると思っている。

ただ、リリース当時は、賛否両論だったと聞く。確かに、それまでのジャズ盤とは雰囲気が異なる。つまり、「ソフト&メロウな雰囲気漂う、テクニック志向を抑えた、聴き手に訴求する、聴き心地優先の音志向」が、それまでない音世界だったので、旧来のジャズを良しとする向きには「違和感満載」だったのだろう。しかし、今の耳には違和感は無い。フュージョン志向コンテンポラリーなジャズと評価しても良い、硬派でジャズに真摯な内容の「隠れ好盤」だと思う。
 
 

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2026年2月 8日 (日曜日)

R&B志向のジャズ・ファンク

当バーチャル音楽喫茶「松和」では、純ジャズのみならず、クロスオーバー&フュージョン・ジャズもしっかり押さえていて、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの名盤、好盤もこのブログで、いろいろご紹介してきた。

で、である。このところは「CTIレーベル盤」祭り。『ALLTIME COLLECTION』と題した再発シリーズが始まり、やっとCTIレーベルのカタログをほぼ網羅したCD復刻がなされた。それに合わせてレコード・コレクターズ誌でも特集が組まれ、クロスオーバー&フュージョン・ジャズもお気に入りの当ブログでは、絶対に無視出来ない。

George Benson『Good King Bad』(写真左)。1975年7, 10, 12月の録音。1976年、CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは以下の通り。クロスオーバー&フュージョン畑の強者が勢揃い。アレンジは、デヴィッド・マシューズ、指揮はボブ・ジェームス。

George Benson (g, vo), Eric Gale (g), Don Grolnick (clavinet), Bobby Lyle, Roland Hanna, Ronnie Foster (key), Gary King (b), Andy Newmark, teve Gadd, Dennis Davis (ds), Sue Evans (perc), David Friedman (vib), Joe Farrell, Romeo Penque, David Tofani (fl), David Sanborn (as), Michael Brecker, Frank Vicari (ts), Ronnie Cuber (bs), Fred Wesley (tb), Randy Brecker (tp)。
 

George-bensongood-king-bad

 
ソウル・ジャズを越えて、アーバンで洒落たR&B志向のジャズ・ファンクにシフトした、黒いジョージ・ベンソンである。ダンスフロアにさらに合致した、踊れるクロスオーバー・ジャズ。モータウンからのR&Bのグルーヴを見事にジャズに取り込んで、モータウン・クロスオーバー・ジャズとでも名付けても良い様な、上質なR&B志向のジャズ・ファンクがこの盤に溢れている。

ソウルフル&ファンクネスを前面に押し出した音作りになっているので、ベンソンはこれまでの様に、テクニックを前面に押し出した「弾きまくり」のベンソンではなく、R&B志向のグルーヴに心地良く乗った、余裕のあるファンネス溢れる「弾きまくり」のベンソンがこの盤にいる。

ソフト&メロウなフュージョン・ジャズにシフトする直前の、唄って弾きまくるギタリストにシフトする直前の、上質なR&B志向のジャズ・ファンクを確立した感のあるジョージ・ベンソン。ソウル・ジャズを推し進めて、R&B志向のクロスオーバー・ジャズを確立したジョージ・ベンソン。魅力あるアルバムに仕上がっていると思う。好盤です。
 
 

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2026年2月 7日 (土曜日)

”Deodato/Airto”の不思議

1970年代のクロスオーバー/フュージョン・ジャズの有名レーベル「CTI」。1967年、プロデューサーのクリード・テイラー(Creed Taylor)によって創設されたジャズ・レーベル。テイラーは、このCTIレーベルで、ジャズの再びの大衆化を試み、クロスオーバー/フュージョン・ジャズのブームを牽引した。A&Mレコード内に創設された時の正式名称は「Creed Taylor Issue」で、独立後は「Creed Taylor Incorporated」。いずれも、単語の頭文字をとって「CTI」。

『Deodato/Airto In Concert』(写真左)。 1973年4月20日、マジソン・スクエア・ガーデンの「Felt Forum」での録音。デオダートとアイアートのライヴ・パフォーマンスのカップリング盤。パーソネルは、以下の通り。デオダートのパートと、アイアートのパートで分かれる。

デオダートのパート「Do It Again」「Spirit of Summer」「Tropea」のパーソネルは、Eumir Deodato (key), John Tropea (g), Burt Collins, Joe Shepley (tp), Joe Temperley (bs), Garnett Brown (tb), John Giulino (b), Rick Marotta (ds), Rubens Bassini, Gilmore Degap (perc)。

アイアートのパートParana」「Branches」のパーソネルは、Airto Moreira (perc, vo), David Amaro (g), Hugo Fattorusso (p), Flora Purim (vo)。

ここでは、まずはオリジナル・アルバム、いわゆるLP時代の収録曲に限って語りたいのだが、まず、なぜ、こういうカップリング盤を出したのか、理解に苦しむ。デオダートはデオダート、アイアートはアイアートで、フルアルバムでライブ盤を出しても良かったと思うんだが。
 

Deodatoairto-in-concert
 

ただ、デオダートのパートはパートで、アイアートのパートはパートで、それなりに充実した内容のライヴ・パフォーマンスを発揮している。それぞれの音作りの個性がシッカリ出ていて、どちらも、約20分程度の短いライヴ・パフォーマンスになるが、聴いて楽しめる内容にはなっている。

冒頭の「Do It Again」を聴けば、デオダートの特徴的なブラスの重ね方、心地よい個性的なファズのかかったエレキ・ギター。金太郎飴的なストリングス。どう聴いたって、これはデオダートという演奏で、これはこれで楽しい。2曲目の 「Spirit of Summer」もスローでセンチメンタルな演奏とはいえ、あちらこちらに、デオダート節が炸裂している。

3曲目「Parana」では、アイアートのバンド演奏に代わる。この「Parana」は、ワールド・ミュージック志向のクロスオーバー・ジャズで、アイアートの音の個性がハッキリと出ている。このワールド・ミュージック志向という音作りは、この頃はまだ目新しくてこなれていないが、後に、ジャズの定番の音作りの一つとして定着するもの。アイアートは、その先駆け的な音をここで表現している。

続く、LPのB面にあたる、CDでは4曲目の「Toropea」は、デオダートのバンド演奏に戻る。ジョン・トロペイのギターをフィーチャーしたファンクネス芳しい曲で、トロペイのギターが十分に堪能出来る。切れ味の良いブラス/セクションをバックに、トロペイはバリバリ弾きまくる。

ラストの「Branches」は、やはり、ワールド・ミュージック志向の演奏だが、ちょっと不思議な曲で、パーカッション・ソロから始まり、アイアートとフローラのデュオで終わるという、基本はアイアートのパーカッションの個性をメインに据えた演奏だが、ちょっと中途半端かな、と。だが、アイアートの音の個性ははっきり判る。

それぞれ白熱のライヴ・パフォーマンスなので、聴き応えはある。しかし、これだけ白熱したパフォーマンスである。デオダート、アイアートそれぞれ、最低、LP一枚レベルのフルアルバムにして欲しかった。デオダートのパートだけは後に『Deodato – Live At Felt Forum - The 2001 Concert』のタイトルで出ているみたいだが、「Toropea」が見当たらないのは何故だろう。しかも「Skycraper」だけ、アイアートとの共演。何から何まで、不思議な内容のアルバムではある。
 
 

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2026年2月 6日 (金曜日)

CTIのエレなソウル・ジャズ

CTIレーベルのカタログを見つつ、該当のアルバムの有無をチェックしている。A&M 3000シリーズから、CTI 1000シリーズまでの約30枚については、魅力的なイージーリスニング志向の硬派なクロスオーバー・ジャズのアルバムが目白押しで、意外と聴き応えのあるアルバムが沢山ある。

Fats Theus『Black Out』(写真左)。1970年7月16, 22日の録音。CT 1005番。ちなみにパーソネルは、Fats Theus (ts), Grant Green (g), Clarence Palmer, Hilton Felton (org), Chuck Rainey, Jimmy Lewis (b), Idris Muhammad (ds), Eddie Moore (saw)。幻のサックス奏者の1人、ファッツ・テウスが、名ギタリストのグラント・グリーンとのフロントを張った、ゴキゲンなソウル・ジャズ盤。CTI初期のレアな1枚。

リーダーの幻のサックス奏者の1人、ファッツ・テウスが、名ギタリストのグラント・グリーンとのフロントを張った、ゴキゲンなソウル・ファッツ・テウスは米国ルイジアナ出身。最初のキャリアは、プレストン・ラブのバンドに在籍。次に、オルガン奏者のビリー・ラーキンのバンドに参加。その後、ジミー・マクグリフのバンドに加入し、名の知れた存在になって、この本作は、そのジミー・マクグリフ・バンド在籍中に出したリーダー作。
 

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CTIレーベルのアルバムの中では珍しい、ブラス・セクションは、弦オーケストラがいないスモールコンボでの演奏。さらに録音はルディ・ヴァン・ゲルダー。1960年代のよき時代のソウル・ジャズという雰囲気がプンプンする。CTI盤とは言え初期の盤、ソフト&メロウな雰囲気はなく、音としては、クロスオーバーなエレクトリック・ソウル・ジャズといった雰囲気濃厚。

テウスのテナーが、何かアタッチメントを付けているのであろう、エレクトリックでウォームでファンクなテナーを聴かせる。そして、グラント・グリーンが、パキパキで硬質な音質を少しラウンドさせウォームな響きに変えて、テウスとグリーンのフロント2人で、ライトでウォームでメインストリームな「エレクトリック・ソウル・ジャズ」な演奏を聴かせてくれる。

ジャズ・ファンクとまではいかないまでも、この「エレクトリック・ソウル・ジャズ」のライトでちょっとユルユルのグルーヴはこの盤ならではのもの。聴き進めていくうちに「癖になる」。ソウル・ジャズとクロスオーバー・ジャズの融合。殆ど、無名のサックス奏者のリーダー作ですが、適度にユルユルなファンキー・グルーヴが芳しい好盤だと思います。
 
 

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2026年2月 5日 (木曜日)

ブルックリン派のドラミング

お気に入り盤で、結構、昔から聴いているのに、なかなか、当ブログで記事化されなかった盤が結構あることに気がついた。あれ〜、という感じなんだが、このブログ、ホームページ時代から数えると、27年間、運営しているのに、全く迂闊なことであった。今年は、そういう「記事化お蔵入り」盤をしっかり記事化しているのを目標のひとつにしている。

Ralph Peterson Quintet『V』(写真左)。1988年4月19-20日の録音。ちなみにパーソネルは、Ralph Peterson (ds), Terence Blanchard (tp), Steve Wilson (as, ss), Geri Allen (p), Phil Bowler (b)。当時のブルックリン派の代表的ドラマー、ラルフ・ピーターソンの初リーダー作である。

冒頭の「Enemy Within」を聴くと、当時、リアルタイムでジャズを聴いていたアドバンテージが発揮されて、ああこの音はブルックリン派の音やな、と懐かしくなる。従来の4ビートやバップの枠組みに捉われず、ロック、ポップス、電子音楽、現代音楽を融合させた、冷徹かつエモーショナルなサウンドが特徴。ジャズの最大の特徴である「即興性と非類似性」を徹底的に追求したジャズの演奏トレンドである。
 

Ralph-peterson-quintetv
 

演奏力が素晴らしい。変則拍子、変則コードチェンジ、モード、ややフリーな展開で、徹底的に「即興性と非類似性」を追求する。ブルックリン派の正反対のアプローチをしたのが、ウィントン・マルサリスが主宰する「新伝承派」で、これは、60年代のモード・ジャズが一番最高のジャズと定義して、この60年代モード・ジャズを徹底的にシェイプアップして即興性と非類似性」を追求する集団だったが、その真逆を行くのが、ブルックリン派だった。

そんなブルックリン派の代表的な音作り、音の展開がこの盤に詰まっている。特に、トランペットのテレンス・ブランチャードと、ピアノのジェリ・アレンのパフォーマンスが図抜けている。そして、そんなフロントのパフォーマンスを支え、導き、鼓舞するラルフ・ピーターソンのドラミングが、全編に渡って映えに映えている。切れ味良く、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミングは聴いていてスカッとする。

ブルックリン派の音の特性を把握して、それに適合したドラミングをするのは、結構、テクニック的に高いものが要求されるのだが、ピーターソンは何事も無い様に、疾走感溢れる、切れ味の良い、迫力あるドラムを叩きまくる。この盤だけ取ってみれば、ブルックリン派ジャズの特性を抑えた、ブルックリン派の良いところを体感出来る好盤だと思う。
 
 

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2026年2月 4日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・312

メロディーの断片、落ち着きなく変化する音階、濃密な多色和音、予測不能なリズム。自由度の限りなく高いモードからややフリー、ヒルの個性全開。なぜ、この音源が録音当時、お蔵入りしたのか、とんと見当が付かない。リーダーとしての録音順としては6枚目のアルバムになる。そんなヒルの独特の個性が、こなれてメロディアスになり、聴き易くなっている。なのにお蔵入りとは・・・。

Andrew Hill『Andrew!!!』(写真左)。1964年6月25日の録音。ブルーノートの4203番。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), John Gilmore (ts), Bobby Hutcherson (vib), Richard Davis (b), Joe Chambers (ds)。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが見出した「最後の才能」、アンドリュー・ヒルの録音当時、お蔵入り盤である。リリースは4年後、1968年である。

確かに、アルフレッド・ライオンが言う様に、セロニアス・モンクの様に、音が予測不可能な様に飛ぶ。そして、間の取り方、チェンジ・オブ・ペースが定型ではない。つまりは、ジャズの最大の特徴である「即興演奏」の最たるものが、モンクの紡ぎ出すフレーズで、予測不可能な如く、音が飛び、間が複雑に入り、再現性はほぼ無い。即興演奏の究極形である。
 

Andrew-hillandrew

 
そんなモンクの様な予測不可能な「即興演奏」を、ヒルは踏襲しているが、モンクが角が立って、スクエアにカクカクとスイングするが、ヒルは、角が適度にラウンドしていて、意外とメロディアスにスイングする。音が適度に予測不可能名レベルで飛ぶのだが、その飛び方も、モンクに比べて穏やかで優しい。このアルバムを聴くと、ヒルはモンクの影響下から完全に抜け出て、独自のフレーズ作りを確立していることを強く感じる。

ヒルの個性的な音は、意外とメロディアスな面を持ち合わせている分、サイドマンはヒルの音を理解しやすく、ヒルの音に追従しやすくなる。そんなところに、モーダルでフリーでスピリチュアルな、ハッチャーソンのヴァイブと、ギルモアのテナーが絡んでくるのだから堪らない。ハッチャーソンもギルモアも、ヒルの音世界を十分理解して、良い音出しつつ、ヒルの個性的なフレーズに呼応し、絡み、対抗する。

このヒルの音世界一色の、バンド全体が一丸となったパフォーマンスは迫力満点。フロント楽器として、ハッチャーソンのヴァイブ、ギルモアのテナーが好調に「ヒル節」を叩き出す。そして、ヒルはそんなフロントのパフォーマンスを推進力として、さらに先の「ヒル節」を弾きまくる。ヒルの個性全開。良いアルバムです。
 
 

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2026年2月 3日 (火曜日)

ファーマーがジャズ有名曲を演奏

1960年代後半になると、ビートルズの米国上陸からロックの台頭、ソウル・ミュージックの人気上昇、ニュー・ポップスの発展など、聴き手の音楽ジャンルの好みが地殻変動を起こし、ジャズは一気に人気に翳りが出だして、大衆音楽の中での人気は一気に下降していた。

そんな人気の下降の中、大手のレコード会社、例えば、ヴァーヴやコロンビアでは、ジャズのインスト特性を活かして、軽音楽風のイージーリスニング志向のアルバムをプロデュースし、販売するという、安易な売上維持策に出た。ジャズのアーティスティックな面を完全に無視した「暴挙」である。その軽音楽風のイージーリスニング志向のジャズ盤は、実は、この1960年代後半〜1970年代前半に集中している。

『The Art Farmer Quintet Plays the Great Jazz Hits』(写真左)。1967年5月と6月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh, tp), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Walter Booker (b), Mickey Roker (ds)。アート・ファーマー・クインテットがジャズの名曲を演奏するという、途方もなく「ベタ」な企画盤。

とにかく、ジャズの有名曲がズラリと並ぶ(括弧内は作曲者)。9曲目の「Gemini」だけ、演奏メンバーのジミー・ヒースの作で、残りは、全て、ジャズ有名曲。見渡すと、ファンキー・ジャズの有名曲が中心。ところどころ、モンク曲「'Round Midnight」や、変則拍子曲の「Take Five」が混じっているところが惜しい。どうせなら、ファンキー・ジャズの有名曲で固めれば良かったのに・・・。
 
The-art-farmer-quintet-plays-the-great-j  
 
 1.  "Song for My Father" (Horace Silver)
 2.  "'Round Midnight" (Thelonious Monk)
 3.  "Sidewinder" (Lee Morgan)
 4.  "Moanin'" (Bobby Timmons)
 5.  "Watermelon Man" (Herbie Hancock)
 6.  "Mercy, Mercy, Mercy" (Joe Zawinul)
 7.  "I Remember Clifford" (Benny Golson)
 8.  "Take Five" (Paul Desmond)
 9.  "Gemini" (Jimmy Heath)
10. "The 'In' Crowd" (Billy Page)

恐らく、この収録された曲名を見たら、硬派なジャズ者の皆さんは敬遠するだろうが、聴いてみるとそんなには悪く無いと思う。こんな有名曲の連続、ジャジーなリズムに乗せた軽音楽風の大衆向けインスト盤でしょ、と思うんだが、まず、アート・ファーマーのフリューゲルホーンとトランペットの、哀愁感を帯びたウォームで切れ味の良い音とフレーズが良い。これだけでも「聴く価値」あり。

リズム・セクションは、単純なリズム&ビートを刻み続けることは無く、おかずを入れたり、チェンジ・オブ・ペースしたり、細かくリズム&ビートを変化させていて、有名曲がずらりと並ぶ、一見、飽きが来そうな展開を、きっりと飽きさせず、意外と全編、演奏に引きつけさせる工夫を施している。

確かに、対峙して聴き込む様な、アーティスティックな側面に乏しい盤ではあるが、ジャズの有名曲をズラリ並べているので、ジャズ者の僕達にとっては耳慣れている曲であり、アレンジにちょっと捻りを入れているので、ちょっと違った雰囲気のジャズ有名曲が楽しめる。「ながら聴き」に特化するに最適のファンキー・ジャズの企画盤だと思う。
 
 

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2026年2月 2日 (月曜日)

ファーマーのハッピーな好盤です

2月に入って、そろそろ「立春」。暦の上では「これ以上寒くなることはない」。冬来たりなば、春遠からじ、というが、まだまだ寒さ、冷えは続く2月。ジャズ盤の鑑賞は、暖房のしっかり入った部屋で、冬寒の外の風景を見ながらの、ちょっと内省的な鑑賞スタイルになったりする。

Art farmer Quintet『The Time and the Place』(写真左)。1967年2月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Walter Booker (b), Mickey Roker (ds)。もともとライブ・アルバムとして扱われていたが、実際にはスタジオで録音され、観客の拍手やざわめきはオーバーダビングされた「擬似ライヴ盤」。確かに、観客の拍手などは人工的な感じがする。

決して、有名盤でも無いし、エヴァーグリーンな名盤でも無い。それでも、この盤は、ソウルフルでハッピーな演奏が特徴のファンキー・ジャズの好盤だと僕は思う。演奏自体がシンプルなハードバップ〜ファンキー・ジャズで占められていて、それでいて、懐古趣味的雰囲気は全く無い。どちらかといえば、1967年という録音年の先、1970年代のハードバップを志向している様な雰囲気で、古さは全く感じ無い。
 

Art-farmer-quintetthe-time-and-the-place

 
ジャズ・ロック「The Time and the Place」、ボサノヴァ「One for Juan」、カリプソ「Nino's Scene」と、さすが、ハードバップの多様化を経ての1960年代後半の録音。バラエティーに富んだ曲想、演奏志向で、聴き手として、とても良い変化を付けた演奏の数々が「イケてます」。

フロントの相棒のヒースのテナーも趣味良く快調、ピアノのウォルトンが率いる、ブッカーのベース、ローカーのドラムの1960年代ハードバップ志向のリズム・セクションも、シャープで小粋なリズム&ビートを供給する。このリズム・セクションの叩き出すリズム&ビートも懐古趣味のかけらもない。1960年代後半のトレンドど真ん中のリズム&ビートが洒落てます。

ジャズ盤紹介には、まず上がって来ないアルバムで、ライブ仕様にするため、無理矢理加えた聴衆の拍手のわざとらしさが、このアルバムの評価を下げているようですが、アート・ファーマー・カルテット自体の演奏としては良好なもので、ジャズ者初心者からベテランまで、どのレベルのジャズ者の方々も、それぞれの感覚で楽しめる好盤だと思います。
 
 

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2026年2月 1日 (日曜日)

ベンソンの ”with Strings”盤

軽音楽風のイージーリスニング志向のストリングス・アレンジ。頼りないバックではあるが、フロントで弾きまくるジョージ・ベンソンのギターは申し分無い。中途半端な軽音楽風アレンジなど「どこ吹く風」、まったく気にしない様に、ベンソン節のソウルフルでジャズファンクなギターを弾きまくる。そんな不思議な盤である。

George Benson『Goodies』(写真左)。1968年11月の録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g,vo), Paul Griffin (p), Chuck Rainey, Bob Cranshaw (b), Leo Morris, Jimmy Johnson, Jr. (ds), Clark Terry (tp), Arthur Clarke, George Marge (ts,fl), Garnett Brown (tb), Buddy Lucas (haca) 他。

ここに、弦として、The Winston Collymore Strings がバックに入る。アレンジは、ホレス・オット。女性ソウル・コーラスグループ、スウィート・インスピレーションズが参加。ジョージ・ベンソンのウィズ・ストリングス盤の位置づけのアルバムだが、内容としては、スタンダードあり、ポップスあり、R&B志向あり、ジャズファンク志向あり、音の志向はごった煮のとりとめの無い内容ではある。
 

George-bensongoodies

 
特に弦のアレンジが中途半端で、当時のジャズ・ギタリストの雄、ジョージ・ベンソンがフロントで弾くことを前提としたストリングス・アレンジとは思えない、単純な軽音楽風のイージーリスニング志向のストリングス・アレンジ。とても「ジャズ」に軸足を残したバックのストリングスで、これにはちょっと戸惑う。

ウエス・モンゴメリーに捧げたベンソンのオリジナル曲「I Remember Wes」、女性SSWの代表格キャロル・キングのカヴァー「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」や、ホレス・シルヴァーの名曲、ジャズ・スタンダード曲の「Song For My Father」などを、ベンソンは情感タップリに、ソウルフルに弾きまくる。

この盤は、ジョージ・ベンソンのウィズ・ストリングス盤というよりは、バックの演奏は気にせずに、ジョージ・ベンソンのギターを堪能する、そんな「ながら聴き」に適したアルバムだと思う。ベンソンのファン=ベンソン者の方々には一聴をお勧めするが、ギターがフロントの優れたウィズ・ストリングス盤を期待する向きには、ウエス・モンゴメリーのウィズ・ストリングス盤をお勧めしたい。
 
 

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    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
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