ビル・エヴァンズの異色盤・2
ビル・エヴァンスのディスコグラフィーを順に確認していくと、「なんだ、このアルバムは」という異色盤、というか、ゲテモノ盤らしき「パチモン盤」に出くわす。それでも、ビル・エヴァンスのディスコグラフィーをコンプリートしたいという「ビル・エヴァンス者」としては、避けては通れない。まずは、実際に自分の耳で聴いてみることが大事である。
『Bill Evans Plays the Theme from "The VIPs" and Other Great Songs』(写真左)。1963年5月6日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), そして、名称不明のオーケストラとコーラス、クラウス・オガーマンのアレンジ&指揮。意図的に商業的な目的の為に制作された、当時の映画やテレビのテーマ曲や人気のスタンダード曲をエヴァンス自身の解釈で演奏した企画盤である。
一言で言うと「イージーリスニング音楽」。どう聴いてもジャズではない。旋律楽器として、ビル・エヴァンスのピアノがフロント楽器の位置付けだが、ジャズでよくある「ピアノ・トリオ+オーケストラ」という、ジャズのバンドとオーケストラのコラボでは無く、豪華なストリングス・セクションと軽いパーカッションによる、よりコマーシャルでイージーリスニング的な編成での演奏である。
ストリングス・アレンジについては、なんとかオーケストラ・ジャズに留めたいという意図は感じられなくも無いが、あまりに甘く、あまりにムーディーな側面が強調されており、ジャジーな雰囲気は微塵も感じられないアレンジになってしまっている。
収録曲は全12曲。メインは、1960年代半ばの映画のサウンドトラックやテレビ音楽から選ばれており、タイトル通り、ミクローシュ・ローザが作曲した1963年の映画『ザ・VIPズ』のタイトル・トラックを始めとして、リン・マレーの『ミスター・ノヴァク』やエルマー・バーンスタインの『ザ・ケアテイカーズ』のテーマ曲などが含まれている。
ジャズ・スタンダード曲も幾曲か収録されていて、「Days of Wine and Roses」や「On Green Dolphin Street」「Laura」では、ビル・エヴァンスの新しい解釈を聴くことが出来る。もっとも、この新解釈は、イージーリスニング志向のもので、ビル・エヴァンス独特の和音の活用よりも、シングルトーンの聴き易さを最優先した解釈ではある。
ビル・エヴァンスのピアノはそれなりに、その個性と実力を発揮した内容にはなっているが、いかんせん、アルバム全体の音志向としては、ジャズとしての音作りより、ポップスな親しみやすさを優先したアレンジになっているので、ジャズのアルバムとしては評価し難い。
ただし、イージーリスニング志向のピアノの弾き回しについては優れたものがあり、エヴァンスのピアノの応用力、適応力の高さを感じ取る事は出来る。とにかく、この盤、ビル・エヴァンスのディスコグラフィー上、最大の異色盤であることは間違い無い。
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