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2026年1月21日 (水曜日)

自らを整えるビル・エヴァンス

ビル・エヴァンスは、彼のジャズ・ピアニストの歴史の中で、節目節目、だいたいがトリオのメンバーが入れ替わった時、恐らく自分を整え直す意味があるんだと思うのだが、ドラムにフィリー・ジョー・ジョーンズ(以降、フィリージョーと略)を自らのトリオに招いて、ビルのホームである、NYのライブハウス、ビレッジ・ヴァンガードのライヴに臨む習慣がある。

Bill Evans『Getting Sentimental』(写真左)。1978年1月15日、NYのビレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Michael Moore (b), Philly Joe Jones (ds)。録音当時は未リリース。実際にリリースされたのは2003年8月。マイルストーン・レーベルからのリリースであった。ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴの私家録音である。

長年、ベースの相棒だったエディ・ゴメスが辞めて、マーク・ジョンソンが加入するまでの時期のライヴ録音。ベースが、マイケル・ムーアというのが珍しい。そして、ファンタジー時代の後半、ドラムを務めたエリオット・ジグムンドもビルの下を離れた、その空席となっていたところに、ドラム担当として、フィリージョーが参加している。

このドラムのフィリージョー。ダイナミックでバッシバッシとバップなドラムを叩きまくるフィリージョーと、耽美的でリリカルな側面を持つビル・エヴァンスのピアノとは「アンマッチ」なのでは、と思うんですが、ビルは意外と元気溌剌に、バップなピアノを弾きまくっている。
 

Bill-evansgetting-sentimental

 
ビルが耽美的でリリカルなバップ・ピアノを奏で始めると、フィリージョーは、意外と繊細で細やかなバップ・ドラミングにチェンジしている。これが意外と見事で、ビルが楽しげに弾き進めているのも理解出来る。フィリージョーのドラミングとビルのピアノは意外と相性が良い、ということを再認識する。

ビルのピアノは相変わらずである。バップなダイナミックな弾き回しもあれば、耽美的でリリカルな弾き回しもある。いわゆる「お馴染み」のビルである。

逝去する2年半ほど前のライヴで、体調は既に悪かったはずだが、このビレバガでのライブ・パフォーマンスは、そんな健康上の障害があるなんて雰囲気は微塵も無い。右手もしっかり回っているし、なにより、このライヴ・パフォーマンスには、よれたり、ミスタッチがあったりという破綻が無い。

ムーアのベースは意外と検討していて、ビル・エヴァンス・トリオの歴代のベーシストと比較しても遜色はない。ビルのピアノの個性を良く理解して、ビルのピアノと対等のインタープレイを仕掛けている。アドリブ部のベースラインのイマージネーションも豊かで、ムーアのベースにとりたてての欠点は無い。大健闘のマイケル・ムーアである。

このライヴ・パフォーマンスの位置づけは、いわゆる、ビルの「浪人時代」、次のピアノ・トリオを立ち上げるまでのリハビリ時期のライヴ音源になる。細かいところにお構いなしのビルのパフォーマンスは清々しい。2年半後に鬼籍に入るとは思えない上質のパフォーマンス。私家録音でちょっと音は悪いが、ビルのピアノを愛でるのに不都合は無い。好ライヴ盤である。
 
 

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