『Miles Davis In Europe』再聴
一昨日、マイルスの『Seven Steps to Heaven』再聴の記事を書いた訳だが、『Seven Steps to Heaven』を3回、繰り返し聴く中で、アコースティック・マイルスの時代で、マイルス自身のトランペットって、この時期が一番だったなあ、と思い返していた。
マイルスのバンドに、ハービー=ロン=トニーの「黄金のリズム隊」が入って来て、ショーターが遅れて入ってくるまでの約2年間。マイルス単独で想像した、マイルス印のモード・ジャズ。この時のマイルスのトランペットが一番輝いていたのではないか。そんなことをぼんやり思いながら、ついつい次のアルバムに手が伸びる。
『Miles Davis In Europe』(写真左)。1963年7月27日、フランス、ジュアン=レ=パン、ラ・ピネード、アンティーブ国際ジャズ・フェスティバルでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp) George Coleman (ts) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds)。マイルスの「黄金のクインテット」からショーターを引いて、代わりにコールマンがテナーで参加している。
フランスの著名なジャズ評論家・アンドレ・フランシス(André Francis)の、フランス訛りの英語でメンバー紹介から始まる、なかなかお洒落なライヴ盤。冒頭1曲目は「Autumn Leaves」、有名なシャンソンの名曲だが、立派なジャズ・スタンダード曲でもある。
これが、まあ、テーマ部はそれと判るが、アドリブ部に展開する時には、原曲が何だったか、判らない位、自由度の高い、柔軟どの高い、モーダルなアドリブ展開が素晴らしい。とりわけ、マイルスのトランペットは「火を噴くが如く」な、熱気溢れる、迫力あるアドリブを繰り広げる。マイルス流のモーダルなトランペットが輝く様である。
今の耳で聴いても、このマイルスのモーダルなトランペットは、他の追従を許さない、マイルスだけが吹くことの出来る、マイルス・オリジナルなモード・トランペットである。しかも、トランペットが良く鳴っている。テクニックも上々。どこの誰だ、昔、マイルスのトランペットは下手だ、と言い切った輩は・・・(笑)。
逆に、テナーのコールマンは、コルトレーンのフォロワーの域を出ていない。シーツ・オブ・サウンドな吹きっぷりで、モーダルな雰囲気を醸し出しているが、そのモーダルな展開も、コルトレーンのカヴァーの雰囲気。コールマン独自の創造的なフレーズでは無い。まるで、コルトレーンの「影武者」が吹いているよう。でも、彼の名誉の為に言っておくと、決して下手ではない。ハードバップなテナーとしては一流である。
マイルスの創造的な、マイルス独自の「マイルス・オリジナルなモード展開」と、コールマンの旧来の「コルトレーン・カヴァーのモード展開」の対比が、マイルスのトランペットの先進性、創造性、独自性を前面に推し出し、マイルスのトランペットのモーダルな吹奏を映えに映えさせる効果を醸し出している。コールマンのテナーは、マイルスの無くてはならない引き立て役だった感が強い。
ハービー=ロン=トニーの「黄金のリズム隊」は、マイルス・オリジナルのモード・ジャズを効果的にサポートし、引き立てる為のリズム&ビートを繰り出す。いわゆる、マイルス好みの「モード対応リズム隊」である。『Seven Steps to Heaven』セッションで出会った3人。あれから3ヶ月。マイルスの指導よろしく、「黄金のリズム隊」は、堂々とそれぞれの個性を活かした、モーダルなリズム&ビートをバンドに供給している。
このフランスでのライヴ盤では、マイルス・オリジナルのモード・ジャズの充実を感じ取ることができる。手垢のついた感のあるスタンダード曲「Autumn Leaves」「All Of You」「Walkin'」や十八番の「Milestones」が、 モード奏法をベースにした、自由度の高いインプロビゼーションによって、まるで新しく作曲された曲の様に響き渡る。アコ・マイルスの名盤の一枚である。
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