マルの秀作『The Quest』です。
フロントに、ドルフィーのアルト・サックスと、アーヴィンのテナー・サックスの2管。リズム・リズム・セクションは、リーダーでピアノ担当のマルに、ベースにチェロのロン、ウッドベースにベンジャミンの「ダブル・ベース」、そして、ドラムにパーシップというセクステット編成。
Mal Waldron『The Quest』(写真左)。1961年6月27日の録音。New Jazz (Prestige)からのリリース。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Eric Dolphy (as, b-cl), Booker Ervin (ts), Ron Carter (cello), Joe Benjamin (b), Charlie Persip (ds)。ハードバップとアヴァンギャルドの中間に位置するユニークなパフォーマンスが個性際立つ好盤である。
マルのリーダー作という扱いではあるが、まず耳がいくのはドルフィーのアルト・サックス&クラリネット。この人のアルト・サックスは嫌が応にも、アドリブを2〜3フレーズ聴けば、もう「ドルフィー」と直ぐに判るくらい、個性的で特徴的な吹奏。この盤、ドルフィーのリーダー作扱いでリイシューされたことだってあるくらい(写真右)。
ただ、この人の吹奏ではフリーでは無い。他のジャズマンと同じフレーズを絶対に吹かない、他のジャズマンと全く異なるフレーズを吹くことを旨として、アドリブ対応している様に僕には感じる。
当然、そのフレーズはアブストラクトに傾くが、ちゃんと聴くと、必ず、ドルフィーなりの法則というか、マナーというか、吹き回しの理屈がある様に感じる。ただ、ドルフィーはモードではない。モーダルな吹奏もあるが、彼はモードだけを彼のパフォーマンスの拠り所としている訳では無い様なのだ。これが彼のユニークなところであり、唯一無二なところ。
ドルフィーのフロントの相棒、アーヴィンのテナーも検討している。ドルフィー独特の吹き回しに、アーヴィンは堂々モードで対抗している様で、これが、ドルフィーを際立たせ、逆に、アーヴィンを際立たせる。アーヴィンのモードに照らし併せてドルフィーはモード・オンリーでは無いということが判り、ドルフィーの個性的な吹奏と比較すると、アーヴィンのテナーの吹奏がモードに準拠していることに、しっかりと気が付くのだ。
そんなフロント管の2人を支え鼓舞するマルの「黒い情感と適度なラフさ」が個性のピアノが、フロント2管の吹奏イメージに相性バッチリなのだ。硬質なややパルシヴなタッチでフロント2管を鼓舞し、ややアフストラクトに傾くが、決してフリーに走らない、伝統の範囲にギリギリ留まる「適度なラフさ」が、ドルフィーの唯一無二はアドリブ・フレーズに合致する。アーヴィンのモーダルなフレーズに合致する。これが、この盤の「キモ」の一つ。
ベース担当の二人、ロンはチェロでソロ・パートに対応し、ベンジャミンはアコベで演奏全体のリズム&ビートを支える。パーシップのドラムの大健闘。フロント2管のモードとアヴァンギャルド、マルのピアノの「適度なラフさ」によく対応し、的確に追従し、リズム&ビートの正しき方向をフロント2管とマルのピアノに指し示すような、示唆に富むドラミングに感心する。
マルのリーダーとしての「サウンド・コーディネート」力に感心する。やはり、このアルバムはマルのリーダー作が相応しい。この盤のそれぞれの演奏を追っていると、マルのピアノが演奏全体をリードし、サポートする雰囲気がそこはかとなく漂って来る。このマルのピアノのリーダーシップがあったからこそ、ドルフィーとアーヴィンは心おきなく、自らのアドリブ・波フォーマンスに集中出来たのだろう。秀作です。
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