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2025年10月 8日 (水曜日)

Pat Metheny『MoonDial』です

パット・メセニーは、今年71歳。盟友ライル・メイズが2020年に亡くなって、パット・メセニー・グループの活動は停止した。ソロ活動のみに集中して現在に至る。2021年リリースの『Side-Eye NYC(V1.IV)』は、久しぶりに「PMGサウンドに通じるパット」らしい内容で、聴いていてワクワクした。

が、その後が続かない。どうしたのか、と思っていたら、2023年6月、突如、パットのフルアコ・エレギのソロ・パフォーマンスのコンピレーション盤『Dream Box』が出た。これは、コンピレーション盤なので、厳密に言えば「新作」とは言い難い。と思っていたら、2024年7月、純粋新作のソロ・アルバムがリリースされた。

Pat Metheny『MoonDial』(写真左)。2024年の作品。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g) のみ。このアルバムは、楽器製作者リンダ・マンザーが製作した、特注のナイロン弦バリトン・ギターを使用した、ソロ・ギター・アルバムである。

枯れた味わいの内省的なソロ・ギター・アルバムである。耽美的でリリカル、内省的で静謐なナイロン弦バリトン・ギターのソロ・パフォーマンスが、淡々と弾き継がれていく。内省的であるが故、静かな部屋で「ゆとり」や「癒し」を求める向きには良いが、ビートやグルーヴといった「音の刺激」を求める向きには、ちょっとしんどい内容。

この盤でのメセニーのソロ・パフォーマンスは、リズム&ビートが、ギターのフレーズに埋もれているので、即興演奏ではあるが、ジャジーな雰囲気、いわゆる、旧来のモダン・ジャズな雰囲気は皆無。
 

Pat-methenymoondial

 
例えて言えば、ECMレコードの「ニュー・ジャズ」の音世界。キースのソロ・ピアノ以上に、ジャズ感が希薄なので、この盤をジャズと捉えることについては、賛否両論だるう。

6曲のメセニー・オリジナル。スタンダード曲については、マット・デニス「Everything Happens to Me」〜レナード・バーンスタイン「Somewhere」のメドレーと、マット・デニス「Angel Eyes」。チック・コリア作「Youre Everything」のカヴァー、1950年代の映画『アパッチ』からのサントラ主題歌「My Love and I」に、ビートルズ「Here, There and Everywhere」のカヴァー、と選曲はバラエティーに富んでいて、聴いていて楽しい。

このアルバムに収録されたソロ・パフォーマンスは、どれもが素晴らしいが、特に、ビートルズの「Here, There and Everywhere」をカヴァーは、原曲の解釈、アレンジが秀逸で、パットの特注のナイロン弦バリトン・ギターが映えに映える、なかなかに素晴らしい出来に仕上がっている。

ここ2〜3作のメセニーのソロ・パフォーマンスは、基本的に「耽美的でリリカル、内省的で静謐」。純ジャズとは言いがたい内容ではある。即興演奏メインのニュー・ジャズ的雰囲気ではあるが、メセニーのソロ・パフォーマンスとしては申し分無い。

ダイナミックでフォーキーでワールドミュージック的なグループ・サウンドは「パット・メセニー・グループ」の担当なのだが、盟友ライル・メイズが2020年に亡くなって以降、ほぼ活動停止状態なのが不満。パット・メセニー・グループはどうなったのか。メセニーはまだまだ老け込む歳ではない。
 
 

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