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2025年10月12日 (日曜日)

フリー・ジャズな”ソウル・ジャズ”

とにかく、聴き始めてビックリ、椅子から転げ落ちる。オルガン・ジャズに代表されるノリの良いソウル・ジャズを想起していたら、絶対に怪我をします(笑)。確かに、マクリーンは正統派ハードバップから、モードに染まり、フリーにチャレンジする「挑戦し変化するジャズマン」でしたが、ここで、いきなり、フリー・ジャズを持ってくるとは。恐れ入りました。脱帽です。

Jackie McLean『’Bout Soul』(写真左)。1967年9月8日の録音。ブルーノートの4284番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Woody Shaw (tp), Grachan Moncur III (tb), Lamont Johnson (p), Scott Holt (b), Rashied Ali (ds), Barbara Simmons (recitation)。マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーンの3管フロントのセクステット編成。そして、なんと、そこに女性の朗読が付く。

タイトルが直訳すると「ソウルについて」なので、しかも、ジャケットの妙齢の黒人女性ときてるので、このアルバム、聴く前は、マクリーン流の直球勝負の硬派なソウル・ジャズかと思いきや、冒頭、ゴスペル的雰囲気で、女性の朗読「ソウルソウルソウル・・・」が出てきてビックリ。もしかして、ゴスペルチックな「ラップ」メインのジャズかと身構えたら、高速パルシヴ・ドラミングに乗って、ドバ〜っと、フリー・ジャズへなだれ込んでいく。

アルバムの内容としては、1960年代後半のジャズのスタイル(ソウル、アヴァンギャルド、フリー、モードなど)が混在した実験的な作品。
 

Jackie-mcleanbout-soul

 
特に、アルバムの冒頭には、バーバラ・シモンズによる「ソウル」の意味を語る詩の朗読が収録されているところが象徴的。つまり、ソウル・ジャズといえば「魂の叫び」、よって、メインは「フリー&アヴァンギャルド」ジャズで、スピリチュアルに攻めるのが筋だろう、という感じなんだろうな、と。

フリー&アヴァンギャルドがメインとくれば、フロント楽器の力量が問われる訳だが、フロントは、マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーン、と、フリー&アヴァンギャルドをやらせて一流、ハードバップ&モードをやらせても一流の申し分無いフロント3管なので、モードから入って、いきなりフリー&アヴァンギャルドに流れ込む展開も、安心して、彼らの音に身を任せることができる。リズム隊もラシッド・アリのパルシヴなドラミングが「肝」で安定感がある。

ソウル・ジャズみたいなタイトルだが、実は中身はフリー&アヴァンギャルドがメイン、という問題作で、ジャズ者の方々の間でも好き嫌いが分かれる思う。でも、不思議と聴き易いフリー&アヴァンギャルドで、これはフレーズのところどころにモーダルなフレーズやソウルフルなフレーズが見え隠れするからだろう。この辺りが、マクリーンのフリー&アヴァンギャルド・ジャズの面白いところ。

そう言えば、マクリーンのノリの良い、大衆に受けするソウル・ジャズなんて聴いたことがなかったなあ。ということで、この時代での、フリー&アヴァンギャルドがメインのソウル・ジャズ、というのはマクリーンの「必然」だったのだろう。
 
 

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