ながら聴き用のブルーノート盤
大手リバティーの傘下に入って以降、当時のブルーノートとして、純ジャズ度、モダン・ジャズ度は落とすこと無く、大衆受けする「売れる」ジャズ盤をリリースする様になる。これは、4100番台までは、ほとんど無かったこと。しかし、4200番台も後半になると、大衆受けする「売れる」盤だけを狙った、イージーリスニング志向のジャズ盤を制作する様になる。
Stanley Turrentine『The Look Of Love』(写真左)。1968年4月15日 (#1, 4, 10) と5月2日 (#3, 5, 7-8) 5月13日 (#2, 6, 9) の録音。5月27日にストリングスのオーバーダビング。ブルーノートの4286番。漆黒ファンキーなテナー・レジェンド、スタンリー・タレンタインのリーダー作。ちなみにパーソネルは、以下の通り。
Stanley Turrentine (ts), Jimmy Nottingham, Snooky Young (flh), Benny Powell (b-tb), Jim Buffington (french horn), Hank Jones (p, tracks 3–5, 7, 8 & 10), Duke Pearson (p, track 1; arr, track 1-3 & 5–9), Roland Hanna (p, tracks 2, 6 & 9), Kenny Burrell (g), George Duvivier (b), Grady Tate (ds, tracks 1, 3–5, 7, 8 & 10), Mickey Roker (ds, tracks 2, 6 & 9),Thad Jones (arr, tracks 4 & 10)。
3セッションからの収録で、ピアノやドラムは2人で交代して担当しているが、基本の編成は、テナー・サックス :1, フリューゲルホーン :2, ベース・トロンボーン :1, フレンチホルン :1, ギター :1 以上がフロントで、5管のフロント管にギター。そして、リズム隊に、 ピアノ :1, ベース :1, ドラム :1 で、総勢9名=ノネット編成。アレンジは、ピアソンとサドが分担して担当しているが、聴いていて、その差は微少。そして、ノネット編成の演奏のバックに、後日、ストリングスをオーバーダビングしている。
アルバム全体の音の雰囲気は、イージーリスニング志向のポップなジャズ。いわゆる「イージーリスニング・ジャズ」である。ジャズのリズム&ビートを、ポップで平易な4ビート&8ビートをベースにして、ジャズ臭さを中和して、ポップなイージーリスニング志向のリズム&ビートにしつつ、フロント楽器は、それぞれ、ハードバップ時代の判り易い旋律、判り易いアドリブを展開する。聴き手の「ながら聴き」のニーズにでも合わせたのか、ブルーノートでは、それまでに無かった、完璧なまでの「イージーリスニング・ジャズ」である。
フリューゲルホーン、ベース・トロンボーン、フレンチホルンは伴奏に徹していて、基本はタレンタインのテナーが映える様に仕掛けられたホーン楽器である。そして、この伴奏に徹した管楽器のユニゾン&ハーモニーをベースに、タレンタインは気持ち良く、ポップでファンキーなテナーで、ポップなバカラック曲「The Look Of Love」や「This Guy's In Love With You」、レノン=マッカートニーの「Here, There and Everywhere」、チャップリンの「Smile」などを、明るく朗々とかつ印象的に吹き上げていく。
このアルバムの「イージーリスニング・ジャズ」的な音世界は、1970年代のCTIレーベルの弦入りクロスオーバー&フュージョン・ジャズの先駆け的な音と捉えることも出来るが、CTレーベルの弦入りクロスオーバー&フュージョン・ジャズの方が、面白い事にリズム&ビートがジャジーで、明らかにジャズに軸足を残している。
この筋金入り漆黒ファンキー&アーバンなタレンタインのテナーと、漆黒ファンキー&アーバンなバレルのギターがフロントにいなかったら、この盤、もしかしたら、完璧に「イージーリスニング・ミュージック」に陥っていたかも。タレンタインのテナーとバレルのギターが、辛うじてこの盤を「ジャズ」に留めている。それほど、この盤のアレンジは、売れ筋の「ポップス」的アレンジに偏っている。やはり、ブルーノートに「イージーリスニング・ジャズ」は似合わない。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2024.01.07 更新
・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
記事をアップ。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新
・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
の記事をアップ。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« サル・サルバドールの代表的好盤 | トップページ | クリス・コナー, 傑作の1枚です »




コメント