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2025年10月 1日 (水曜日)

ミラーの未発表ソロ・ピアノ盤

マルグリュー・ミラーは、1955年8月、米国ミシシッピー州生まれ、2013年5月に脳卒中にて急逝。57歳だった。彼のピアノは、ラムゼイ・ルイス、そしてオスカー・ピーターソンの影響を受け、ダイナミックでスインギーな演奏と疾走感のある指回し、堅実かつ成熟した、ハード・バッパーなピアノ。フレーズはファンキーで流麗で力感溢れ、繊細な表現にも優れた、オールマイティーなパフォーマンスが特徴。

Mulgrew Miller『Solo in Barcelona』(写真左)。2004年2月2日、スペインのバルセロナでの録音。ちなみにパーソネルは、Mulgrew Miller (p) のみ。マルグリュー・ミラーのソロ・ピアノ盤である。ミラーのピアノの個性が如実に判る、優れた内容の未発表ソロ・ピアノ盤である。

マルグリュー・ミラーは、1980年代以降のポスト・バップ・シーンにおける最重要ピアニストの一人。1980年半ば以降の「純ジャズ復古」の時代の中では、ウィントン・マルサリス率いる「新伝承派」の括りに入っていたが、ミラーのピアノは、単純な1960年代のモード・ジャズの焼き直し、ステップアップでは無い。彼のオリジナリティーを織り込んだ、ミラー独自のモード・ジャズを自家薬籠中のものにしている。
 

Mulgrew-millersolo-in-barcelona 

 
このライヴ盤は、ミラーにとってはユニークな内容で、モーダルな演奏手法をほとんど使わずに、ハード・バッパーなパフォーマンスをメインに、ソロ・ピアノを弾き回している。ただし、音の重ね方とかフレーズの響きは、ハードバップ時代には全く無いもので、明らかに、ポスト・バップな、21世紀のネオ・ハードバップな響きがする。ファンキーな弾き回しなど、いかにも、ミラー自身がリラックスして楽しんで演奏する様子が伝わってくる。

ディジー・ガレスピーのバップ曲「Tour De Force」から始まり、アントニオ・カルロス・ジョビンのボッサ曲「O Grande Amor」、はたまた、エロール・ガーナーの名曲バラード「Misty」、そして、コール・ポーターの「I Love You」をはじめとする「It Never Entered My Mind」「Milestones」「Woody'n You」「Just Squeeze Me」などの有名スタンダード曲などを、途中、ミラーの自作曲を織り交ぜながら、小粋なアレンジで弾き進めていく。

全く小難しくなく、ジャズの良さ、楽しさがダイレクトに伝わってくるミラーの弾き回し。アレンジ良し、即興演奏の弾き回しが魅力的で、ファンキーな弾き回しなどは聴いていて楽しい。ミラーのピアノの良さが本当に良く判るソロ・ピアノ盤。難しいことを考えず、気軽に聴いてもらいたい、ピアノ・ソロ盤の名盤の1枚だと思います。
 
 

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