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2025年10月の記事

2025年10月31日 (金曜日)

BNのイージーリスニング盤です

硬派な老舗ジャズ・レーベルのブルーノート。4200番台も後半になると、大衆受けする「売れる」盤だけを狙った、イージーリスニング志向のジャズ盤を制作する様になる。とにかく「聴き心地」優先、ジャズのアーティスティックな面を封印し、ポップ度を高める為に、ジャジーなリズム&ビートを活用し、ストリングスをオーバーダビングする。ほとんど、イージーリスニングなアルバムも制作していた。

Stanley Turrentine『Always Something There』(写真左)。1968年10月の録音。ブルーノートの4298番。ちなみにパーソネルは以下の通り。フレンチ・ホルン入り小ビッグバンド編成。ここに、ストリングスをオーバーダビングしている。ただし、波ー祖ネルを見渡すと、ジェローム・リチャードソン、サド&ハンク・ジョーンズ、ケニー・バレル、ハービー・ハンコック、メル・ルイス、ミッキー・ローカーなど、当時のメインストリーム系の一流ジャズマンが多く参加している。

Stanley Turrentine (ts), Burt Collins (flh), Jimmy Cleveland (tb), Jerry Dodgion (as, fl, cl), Jerome Richardson (ts, fl cl), Thad Jones (tp, arr), Kenny Burrell (g), Barry Galbraith (g, tracks 2, 10), Hank Jones (p, tracks 2, 3, 5-8, 10), Herbie Hancock (p, tracks 1, 4, 9), Bob Cranshaw (b), Mel Lewis (ds, tracks 1, 2, 4, 9 & 10), Mickey Roker (ds, tracks 3, 5-8), Dick Berg, Jim Buffington, Brooks Tillotson (French horn)。
 

Stanley-turrentinealways-something-there

 
しかし、冒頭の「(There's) Always Something There to Remind Me」から、あ〜遂に、ブルーノート・レーベルも、ここまで俗っぽくなってしまったか、と苦笑いする。軽快なブラスのユニゾン&ハーモニー、小洒落たポップなビッグバンド・サウンド、途中、ストリングスがオーバーダビングされて、もう、これは、ジャズなリズム&ビートをベースにした「イージーリスニング音楽」。

演奏自体は、当時のメインストリーム系の一流ジャズマンが多く参加しているんで、カッチリとまとまっているし、楽器の響きも良い。でも、いかんせんアレンジがポップで俗っぽい。アレンジは誰か、と確認したら、サド・ジョーンズ。意外。サドもこんな俗っぽいポップでライトなビッグバンド・アレンジをするんだ、と変に感心する。

レノン&マッカートニーの「Hey Jude」「The Fool on the Hill」、ドアーズの「Light My Fire」など、ロックのヒット曲のカヴァーが入っていたり、フィフス・ディメンションの「Stoned Soul Picnic」が入っていたり、とにかく、一般大衆の訴求する、大衆受け狙いのイージーリスニング盤である。ただし、オーバーダビングされたストリングス以外のジャズマンの演奏はしっかりしているので、聴き心地は良い。ながら聴きのジャズ盤としては良い内容かもしれない。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2025年10月30日 (木曜日)

管入りスミスの置き土産音源

ブルーノートのお抱えオルガニストだったジミー・スミス。1962年、さらなる好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくことを、ライオンは一切止めることは無く、喜んで送り出したくらいだそう。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音を残していった。この盤は、その「置き土産」音源のひとつ。

Jimmy Smith『Plain Talk』(写真左)。1960年3月22日の録音。ブルーノートの4296番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Blue Mitchell (tp), Jackie McLean (as), Ike Quebec (ts), Quentin Warren (g). Donald Bailey (ds)。ブルーノートの4269番『Open House』と同一日録音で、リリースは1968年4月。ジミー・スミスの「ブルーノートへの置き土産」音源のひとつ。

この盤は、『Open House』と同じ編成で、スミスのギター・トリオ(スミスのオルガンに、ウォーレンのギター、ベイリーのドラム)に、ミッチェルのトランペット、マクリーンのアルト・サックス、ケベックのテナー・サックスの管楽器が入ったセクステット編成。演奏の内容は、『Open House』と同様で、スミスのオルガンは、ダイナミズムを封印した、流麗でシンプルで優しい弾き回し。
 

Jimmy-smithplain-talk

 
フロントを引き立て、鼓舞しつつ、自らも素晴らしいバッキングを聴かせる、裏方に徹したジミー・スミスのオルガンは、実に印象的。優れたソリストは、優れた伴奏者でもある。モダン・ジャズでの定説だが、この盤でのジミー・スミスのオルガンは、その例に漏れない優れたバッキング。

フロント管を引き立てつつ、自らのアピールも忘れないのが、オルガンの神様、ジミー・スミスの真骨頂。しかし、この盤では、ダイナミックなグイグイ前に出る、アグレッシヴな弾き回しを封印し、流麗でシンプルで優しい弾き回し。それに呼応するように、ブルー・ミッチェルのトランペット、ジャッキー・マクリーンのアルト・サックス、アイク・ケベックのテナー・サックスが順番にソロを取るのだが、これがまた流麗でシンプルで優しいソロ・パフォーマンスを聴かせてくれるのだ。

このジミー・スミスの「ブルーノートへの置き土産」音源は、ヴァーヴに移籍したずっと後の6年後、ブルーノートがリヴァティ社に買収され、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが引退した後にリリースされているが、この盤のプロデュースは、アルフレッド・ライオン。往年のブルーノートらしい音、ブルーノートらしい録音で、安心して聴くことが出来る。内容的にも申し分無い。好盤です。
 
 

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2025年10月29日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・303

スコット・ハミルトン(Scott Hamilton)。1954年9月12日生まれ。今年で71歳。米国ロードアイランド州出身。1976年にニューヨークに移り、1977年に初リーダー作『Scott Hamilton Is a Good Wind Who Is Blowing Us No Ill』(Concord Jazz)でメジャー・デビュー。ジャズ・サックスが、皆「コルトレーン」スタイルを踏襲する中、オーソドックスな吹奏スタイルを守り通し、現在では、オールド・スタイル・テナーのレジェンド。

Scott Hamilton『Looking Back』(写真左)。2024年1月14 -16日、スウェーデンでの録音。ちなみにパーソネルは、Scott Hamilton (ts), Jan Lundgren (p), Hans Backenroth (b), Kristian Leth (ds)。『Danish Ballads & More』『Classic』に続く、モダンジャズ全盛期にもかかわらずオーソドックスなスタイルを守り通す、硬派なテナー奏者、スコット・ハミルトンが、ヤン・ラングレン率いる「北欧ピアノ・トリオ」をバックにした好盤。

ヤン・ラングレン (スウェーデン), ハンス・バッケンルート (スウェーデン), クリスチャン・レト (デンマーク) の北欧のピアノ・トリオ、ヤン・ラングレン・トリオをバックに、スコット・ハミルトンが、朗々と悠然とテナー・サックスを吹き上げていく。これがまあ「絶品」なのだ。透明度の高い、耽美的でリリカルな、北欧ジャズのピアノ・トリオの音世界に、ハミルトンのテナーがバッチリ合う。
 

Scott-hamiltonlooking-back

 
ゆったりとした、朗々と吹き上げていくテナーだが、これ自体がテクニックの塊。フレーズの音に変な揺らぎが無く、ピッチがずれることはない。ロングトーンにも音の揺らぎが無い。これ、凄いテクニック。このテクニックに裏打ちされているからこそ、ハミルトンのバラード・プレイは映えに映えるのだ。加えて、音が心地良い塩梅に「太い」。マイルドだが芯の入った音は、歌心と説得力・訴求力抜群。加えて、スイング感、ドライブ感も抜群なのだから、申し分無い。

冒頭、あの有名ミュージカル映画・マイ・フェア・レディの挿入曲「I’ve Grown Accustomed to Her Face」から始まり、マイルスの演奏でも知られるレオ・ドリーブの歌曲「The Maids of Cadiz」続く、トミー・フラナガン作の隠れ名曲「Beyond the Bluebird」、スコット・ハミルトンの自作の佳曲「Big Tate」、そして、ホーギー・カーマイケルの名曲「Rockin’ Chair」と、ここまで聴き続けると、もう、ハミルトンのオールド・スタイル・テナーの魅力にどっぷりと填まっている。

今年71歳のハミルトン。オールド・スタイルのテナーは健在。というか、オールド・スタイルのテナーの魅力が増幅されている。選曲も良い、アレンジも良いのだろうが、バックに北欧の強力なピアノ・トリオを配した、というのも、ハミルトンのオールド・スタイルなテナーが映えに映える、大きな理由だろう。聴けば聴くほど、味わいが深くなる、現代のネオ・ハードバップの秀作である。
 
 

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2025年10月28日 (火曜日)

ソウルフルなジャズ・オルガン

ライトでポップで小洒落たソウル・ジャズである。こってこてジャジーな雰囲気は無く、どちらかと言えば、イージーリスニング志向、クロスオーバー・ジャズ志向の聴き易く、判り易いソウル・ジャズである。こってこてファンキーに、バンバン前へ出るオルガンでは無く、アンサンブルの中で、ソウル・ジャズ志向のオルガンをさり気なく響かせる様な、グループ・サウンズ重視のオルガンである。

Reuben Wilson『On Broadway』(写真左)。1968年10月4日の録音。ブルーノートの4295番。ちなみにパーソネルは、Reuben Wilson (org), Trevor Lawrence (ts), Malcolm Riddick (g), Tommy Derrick (ds)。1960年代のブルーノートが送り出した最後のオルガン奏者、ファンキー&ソウル・ジャズ志向のオルガン奏者、ルーベン・ウィルソンのデビュー盤。

ダンサブルかつファンキー&ソウルフルなプレイが身上のオルガンである。ジャズ色濃厚のテンション高く切れ味の良い純ジャズ志向なオルガンとは正反対の、ライトでポップで適度に緩く明るいオルガン。深刻感は全く無い。あっけらかんとした、小洒落たフレーズが心地良く、聴き流して心地良い、この時代特有の、一般聴衆にもしっかり訴求する判り易いオルガンである。
 

Reuben-wilsonon-broadway

 
パーソネルを見渡しても、それまでのハードバップからジャズの多様化まで、いわゆる1950年代から1960年代前半までのハードバップ時代に活躍したメンバーの名前は無い。メンバーそれぞれ、ソウル・ジャズ志向、それもR&Bの音の色づけに長けたメンバーで構成されているみたいで、例えば、サックスのトレヴァー・ローレンスはマーヴィン・ゲイとの共演などで、ソウル・ミュージックの世界ではお馴染みのサックス奏者である。

タイトル曲「On Broadway」は、ドゥーワップ・グループ、ドリフターズの大ヒット曲で、後にジョージ・ベンソンがリバイバル・ヒットさせたソウルフルな名曲。この名曲を、ライトにポップに、聴き易く判り易いアレンジで、ソウルフルに演奏していく。さりげなくソウルフルに響く、ウィルソンの軽快なオルガンが良い感じで鳴っている。

ルーベン・ウィルソンは、ソウル・ジャズ志向が色濃いオルガン奏者。米国オクラホマ州で1935年4月に生まれる・2023年5月、ニューヨークで肺癌のため88歳で逝去している。リーダー作は生涯で20枚以上、活動時期は、1968年から2011年まで、43年と長かった。しかし、我が国ではマイナーな存在に甘んじている。しかし、この初リーダー作は、小粋で良く出来たソウルフルなオルガン・ジャズ盤。良いアルバムだと思います。
 
 

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2025年10月27日 (月曜日)

清水靖晃『案山子』を再聴する

1980年代の和フュージョンは聴いていて面白い。1970年代は、米国フュージョンのフォロー的音作りからスタートしたが、1980年を迎える頃には、米国フュージョンとは違う、明らかな、和フュージョン独特の個性を発揮し始める。シンセサイザーの多用、テクノ&ニューウェーヴとの融合、希薄なファンクネス。今一度、再聴に値する、個性的なアルバムが多くリリースされている。

清水靖晃『案山子』(写真左)。1982年10月の録音。ちなみにパーソネルは、清水靖晃 (sax, cl, ds, perc, vo), 笹路正徳 (key), 土方隆行 (g), 渡辺モリオ (b), 山木秀夫 (ds), 以上、マライア・メンバー。ゲストとして、スペクトラムの兼崎順一 (tp) 等が参加。1980年代、独特の深化を遂げた「和フュージョン」の傑作の一枚。

2ヶ月後に完成するマライアの傑作『うたたかの日々』(ここをクリック)のプロトタイプ的な内容。ジャズ、フュージョン、ハード・ロック、プログレッシブ・ロック、テクノ、ニューウェーヴといった要素を融合した、我が国独特の「和フュージョン・ジャズ」志向な傑作。マライアの音世界に比べて、ニューウェーヴ&テクノ志向が強く出ている。
 

Photo_20251027191201

 
最初、聴いた時は、テクノ・ポップか、YMOか、と思った。聴き進めて行くと、高橋ユキヒロ的な音世界が広がり、続いて、細野晴臣流人力ループ風ミニマルな音世界が出てきて、即興演奏風のパートでは、欧州のニュー・ジャズ志向のスピリチュアルな音世界が広がる。縦ノリ均一ビートは、やはり、テクノの影響が大。

6曲目「夢では」の、ニュー・ジャズ風の縦ノリ均一ビートに乗った、スピリチュアルでフリーな展開はジャジー&エレクトロ。途中、ボーカルが入ってくると、たちまち、その音世界は「ジャジーなニューウェーヴ&テクノ志向」に変換していく。それでも、管楽器のユニゾン&ハーモニーはジャジー。テープ操作によるギミックも小気味良く、和フュージョンならではの「融合音楽」の成果がこの1曲に詰まっている。

全くもって、摩訶不思議な音世界である。恐らく、和フュージョンだけかもしれない。ジャズ、フュージョン、ハード・ロック、プログレッシブ・ロック、テクノ、ニューウェーヴといった要素を融合した音世界。和フュージョンならではの音楽成果。音楽ジャンルを全く気にせず、「良い音楽」として、再評価したい、清水靖晃『案山子』である。
 
 
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2025年10月26日 (日曜日)

野力奏一『Noriki』を再び聴く

日本のフュージョン・ジャズは、決して、米国のフュージョン・ジャズのフォローでは無かった。米国フュージョンのエッセンスを取り込みつつ、独自の深化を遂げている。ファンクネスの希薄さ、純ジャズ・テイストの折り込み、クロスオーバー・ジャズ志向の継承。AORとの融合。米国フュージョン・ジャズに無い、独特の個性で、日本のフュージョン・ジャズは深化し続けている。

野力奏一『Noriki』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、野力奏一 (key), 酒井春雄 (sax), 田附透,中井浩二 (el-g), 久末隆二 (el-b), 今泉正義 (ds)。ゲストミュージシャンとして、数原晋 (tp), 平内保夫 (tb), 斉藤ノブ (perc), イブ, 国分友里恵 (vo)。

本多俊之&バーニング・ウェイブ、山下達郎ツアーへの参加、阿川泰子、伊藤君子、チャリート等、数多くのアーティストのアルバムにピアニスト、アレンジャーとして参加で名を馳せた、野力奏一の初リーダー作。

明らかに、日本のフュージョン・ジャズらしい音世界。日本のフュージョン・ジャズの個性である「ファンクネスの希薄さ、純ジャズ・テイストの折り込み、クロスオーバー・ジャズ志向の継承、AORとの融合」がしっかりと反映されている。当然、演奏テクニックのレベルは高く、レベルの高い演奏は、カラッとした「爽快感」を醸し出している。
 

Noriki  
 

収録されたどの曲も良い曲ばかり、そんな好曲に恵まれて、野力奏一の軽快なピアノが唄いまくっている。とにかく、歌心満点でテクニカル、爽快に疾走する野力のピアノは聴き応え抜群。

酒井のサックスも、そんな野力のピアノに触発されたのか、ブリリアントに唄いまくっている。久末&今泉のリズム隊も、タイトで堅実で爽やか。クロスオーバー・ジャズの志向を弾き継いで、AORなソフト&メロウを溶け込ませている。

冒頭の「You Need Me」は歌モノ、格好良いフュージョン・ソウル。3曲目「Black Duck」は、スラップ・ベースが炸裂するファンキー・ブギー。4曲目「Cozy's Melody」は極上のAOR志向のアーバンな雰囲気が芳しいインスト・ナンバー。そして、ラス前「Do What You Do」は、ソフト&メロウなフュージョン・ブギー、歌モノ「Do What You Do」。和フュージョン独特の雰囲気を宿したナンバーが目白押し。

この野力奏一『Noriki』は、日本のフュージョン、いわゆる「和フュージョン」の深化の完成形の一つを音にした、和フュージョンの秀作の一枚である。なかなかCDリイシューされなかったが、昨年11月、やっと、CDリイシューが実現、現在では、ストリーミング・サイトでも、気軽に聴くことが出来る様になった。良い時代になったものである。
 
 

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2025年10月25日 (土曜日)

BNのスピリチュアル盤の秀作

4200番台も終盤にきて、いよいよ、売上最優先、大衆に訴求するイージーリスニング・ジャズに手を染め出したブルーノート。

大手のリバティーに買収され、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンも引退し、いよいよ、ジャズの歴史の、ジャズのトレンドの番人の様な存在だったブルーノートも終わりかな、と思っていたら、こんな硬派な純ジャズ志向のアルバムを出したりするから、隅に置けない。

『Eddie Gale's Ghetto Music』(写真左)。ブルーノートの4294番。1968年9月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Gale (tp, kalimba, steel drum, bird whistle), Russell Lyle (ts, fl), Jo Ann Gale Stevens (g, vo), James "Tokio" Reid, Judah Samuel (b), Richard Hackett, Thomas Holman (ds)。ここに、11声の合唱団が加わる。

米国のトランペット奏者、エディ・ゲイルのデビュー作になる。エディ・ゲイルは、セシル・テイラーとの共演、サン・ラ・オーケストラでのフリージャズでの活動で知られたトランペット奏者。ゲイルの基本的な演奏スタイルは、フリー&スピリチュアル。

このアルバムに詰まっているジャズは、1960年代の新しいジャズとゴスペル、ソウル、ブルースをシームレスに融合、フリー・ジャズ、R&B、ワールド・ミュージック的要素が混在する驚異のスピリチュアル・ジャズ。しかし、非常に聴きやすい作品で、旋律、メロディー、ハーモニーはしっかりと保たれている。
 

Eddie-gales-ghetto-music

 
フロント管の相方にラッセル・ライルのサックス&フルートを従えた2管フロント。加えて、ダブル・ベースにダブル・ドラム、そして11声のバックコーラスを配した、迫力のスピリチュアル・ジャズである。

無勝手流の、自由気ままに吹きまくるフリーな吹奏は無く、洗練されたポリリズムと分厚いコーラスをバックに、現代音楽的なフリーな響きとスピリチュアルな響きが全体を支配する。

「Fulton Street」では、アフリカの民族音楽とラテンジャズの美しい旋律が見え隠れ、「A Walk with Thee」は行進曲のテンポで書かれたスピリチュアル・ジャズ。リズム&ビートは互いに対位法で叩きまくり、フロントラインは東洋的なハーモニー感覚を通して伸びやかなメロディーラインを奏でる。

最後の「The Coming of Gwilu」は、ジャマイカンなカリン場の音色、アーケストラ風の高揚するボーカル、ポリリズミックなリズム&ビートで、新しいスピリチュアル・ジャズの響きを表現している。

米国の都市部でアフリカン・アメリカンの貧困層が形成する「ゲットー(Ghetto)社会」をテーマとしている「政治的意図」を明確にしたアルバムだが、小難しいところは微塵も無い。

そんな「Ghetto Music」をコンセプトにブラック・パワーを表現している異色盤である。しかし、ブルーノートのカタログの中でも最も知られていないアルバムの一つでもある。ただし、内容は良い。1960年代後半のスピリチュアル・ジャズの秀作の一枚だろう。
 
 

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2025年10月24日 (金曜日)

オルガン好きには堪らない好盤

ブルーノートの4200番台のアルバムの「落ち穂拾い」を進めている。まだ、当ブログに記事として上がっていないアルバムを順に聴き直し、その記事化を進めている。そして、4200番台コンプリートまで、あと6枚というところまで、こぎ着けた。しかし、4200番台は後半、終わりあたりでは、ブルーノートらしからぬ、売上大前提のアルバムもあったりして、気が抜けない。しかし、この盤は違う。

Lonnie Smith『Think!』(写真左)。1968年7月23日の録音。ブルーノートの4290番。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), Lee Morgan (tp), David Newman (ts, fl), Melvin Sparks (g), Marion Booker Jr. (ds), Norberto Apellaniz, Willie Bivens (conga :tracks 2 & 5), Henry "Pucho" Brown (timbales :tracks 2 & 5)。ロニー・スミスのブルーノート・レーベルからリリースした2枚目のリーダー作になる。

よく整った内容のオルガン・ジャズ。ファンキー・ジャズとソウル・ジャズの間を取った様な、「いいとこ取り」のアレンジ、音作りで、これが成功している。ファンキーに偏ると「古さ」を感じさせ、ソウルに偏ると「俗っぽさ」が前に出る。その「悪いところ」を、ファンキーとソウルの間を取って、モーダルな展開の味付けをすることで、アーティスティックな側面を補強する。なかなか、良く出来た音作りである。
 

Lonnie-smiththink

 
オルガン・ジャズだから、ファンキー&ソウルフルで、俗っぽいジャズなんだろう、という先入観は捨てた方が良い。このロニー・スミスの『Think!』は、ジャズとして、メインストリーム志向であり、温故知新なアレンジを優先して、正統派な、そして、意外と硬派なオルガン・ジャズを展開している。これが、1968年という時代、そして、大手リバティー社に買収された以降のブルーノートからのリリースだというから、二度びっくりである。

ただ、モーガンのトランペット、ニューマンのテナー、スパークスのギターの3フロント楽器のクインテット編成なので、音的にはグループ・サウンズ優先。3フロント楽器にもふんだんにソロ・パフォーマンスのスペースを与え、伴奏に徹するロニー・スミスは、実は「伴奏上手」なのが良く判る。聴いていると判るが、3フロント楽器は、それぞれ、気持ちよさそうに、ソロ・パフォーマンスを繰り広げている。ロニー・スミスが「伴奏上手」だからだろう。

当時のアレサ・フランクリンのヒット曲「Think」をカヴァーしていたり(タイトル曲ですね)、「The Call Of The Wild」の様な躍動的なファンキー・ラテン・チューンや「「Slouchin'」の様な、ムーディーでラテン・テイストのソウル・ジャズがあったり、売れ線を狙った選曲もあるが、どれもが、メインストリーム志向で、温故知新で良好なアレンジを施して、正統派で硬派なオルガン・ジャズとなっているので、全く気にならない。オルガン・ジャズの好盤です。
 
 

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2025年10月23日 (木曜日)

シンセサイザーのフュージョン

日本のフュージョン・ジャズは、米国とも欧州とも違う、全く、独自の独特の深化を遂げたと思っている。まず、ビートが独特で、ファンクネスはほぼ皆無。ジャズ・ファンクをやっても、ビートは乾いていて粘りは無い。テクニックは優秀。特にキーボードの使い方が秀逸で、シンセサイザーの使い方は世界的に見ても群を抜いていると思う。

Logic System『Venus』(写真左)。1981年の作品。YMOの4人目のメンバーとも言えるシンセサイザーのプログラマー、松武秀樹によるユニットの2作目。フュージョン・ジャズを想起させる様な「縦ノリ・スインギー」な音世界が特徴。これをアナログ・シンセサイザーで演奏しまくる。圧巻のシンセサイザー・フュージョンである。

ロジック・システム(Logic System)とは、当時、イエロー・マジック・オーケストラのマニピュレーター、松武秀樹が結成した音楽ユニット。一般的には「テクノ・ポップ」のジャンルになっているが、演奏を聴いてみると、冬至のフュージョン・ジャズ・インストルメンタルとテクノ・ポップの融合の様な音世界。どこか、欧州のシンセサイザー・ミュージックを彷彿とさせる、幽玄で神秘的で、どこかクラシックの香りがする、端正な音世界。
 

Logic-systemvenus

 
元来ジャズ好きだった松武秀樹である。作曲者に、トッド・ラングレンズ・ユートピアの一員だったロジャー・パウエルや、米国フュージョン畑のドン・グルージンなどを迎えて、シンセサイザーで演奏表現するフュージョン・ジャズ〜AOR演奏集。ユニークなところでは、当時のニューミュージックの人気グループだったオフコースの「I Love You」のカヴァーまでやっている。

当時は、シンセサイザーで作ったフュージョン〜AORな演奏、ということだけが話題になって、シンセサイザーはここまで出来る、とか、ビートに人間味が無い、とか、音に歌心が無い、とか、そんなシンセサイザーを使った演奏に対しての評価に終始していた。演奏自体の音楽性とか、音作りに対する深掘りとか、本質的な評価は無かったが、今の耳で聴くと、これは、シンセサイザーで作ったフュージョン〜AORな演奏として、十分「アリ」。

シンセサイザーの特性を全面的に活かした、恐らく、我が国でないと為し得なかった、シンセサイザーによるフュージョン・ジャズであり、テクノ・ポップとジャズの融合の音世界なんだと、この盤を聴き直して、改めて感動した。ペーター佐藤によるイラストがジャケット含めアートワークの全面にフィーチャーされているのもグッド。我が国独特のフュージョンとして再評価したい。
 
 

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2025年10月22日 (水曜日)

三宅純の和フュージョン名盤

しかし、素晴らしいリイシューである。とにかく懐かしい。1983年の和フュージョンの名盤である。当時「ジャズ・トランペットの貴公子」ともてはやされた三宅純。日野皓正の一番弟子というだけあって、三宅のトランペットは日野皓正のフォロワーの音。師匠より、エッジが丸くて滑らかなところ、フレーズの作りがポップなところが、三宅のトランペットの個性。

Jun Miyake『June Night Love』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、三宅純 (tp, flh), 清水靖晃 (ts), 宮本大路 (ss, ts), 野力奏一(key), 内田浩誠(ac-p, el-p), 秋山一将, 北島健二, 是方博邦 (el-g), 高水健司(el-b), 河原秀夫(ac-b), 日野元彦, 村上秀一 (ds), イヴ (cho) 他。我が国の当時のフュージョン畑の強者が大集結。日野皓正の一番弟子、三宅純のデビュー盤である。

冒頭の「A thoughtful touch」から、タイトで硬派で和フュージョンらしい、極上のフュージョン・ジャズが展開される。1970年代の正統派フュージョンな音作り。決してブラコンに交わらず、決してダンサフルを追求しない。オフビートの8ビートがメインなのに、ファンクネスは限りなく希薄。テクニック優秀。テクニックだけ捉えれば、当時のウェザー・リポートや、チック・コリア・エレクトリック・バンドと引けを取らない。
 

Jun-miyakejune-night-love

 
2曲目の「Could it be real?」などは、和フュージョンの特徴が良く判る演奏で、基本はジャズ・ファンクな演奏なんだが、粘りのあるファンク・ビートは皆無。乾いたファンク・ビートで、切れ味良くカラッとしていて、どちらかと言えば、デジタルチックなビート。テクニックは優秀、歌心もある。1970年代のフュージョン・ジャズの良いところをそのままキープして、和フュージョンの個性を織り込んだ、そんな演奏の数々。

そして、この盤の演奏の面白いところは、曲が進むにつれ、ソフト&メロウなフュージョン色がだんだん薄れていき、ストレート・アヘッドな、メインストリーム志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズになっていくところ。ラスト3曲辺りは、エレクトリックでコンテンポラリーな純ジャズといったイメージになっていて、聴き応えがある。素姓確かな硬派なメインストリーム・ジャズ。和フュージョンの懐の深さが窺い知れる。

アンディ・ウォーホル出演のTV-CMに使用されたことで一世を風靡した「Could it be real?」を収録している(2曲目)。1983年から約1年間放送されていたTDKビデオテープのCM。三宅純が音楽を手がけたビデオ/カセットテープのCMは、今も名作として語り継がれている。しかし、当時の和フュージョンのレベル、相当に高い。今回、この盤、聴き直して、改めて感心した。
 
 

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2025年10月21日 (火曜日)

80年代和フュージョンの個性

我が国のフュージョン・ジャズ、いわゆる「和フュージョン」は、1980年代以降、独特な深化を遂げてきた。R&Bに接近し、ブラコンと融合して、ジャズから離れて行った米国フュージョンとも違う。ジャズロックとプログレの境界が曖昧で、ジャズロックが志向が強まるとフュージョン、その反対はプログレという英国フュージョンとも違う。1980年代の和フュージョンは、テクノとニューウェーヴ、そして、日本の土着音楽との融合が特徴的だった。

MARIAH『うたかたの日々』(写真左)。1983年の作品。ちなみにパーソネルは、清水靖晃 (sax), 笹路正徳 (key), 土方隆行 (g), 渡辺モリオ (b), 山木秀夫 (ds), 村川ジミー聡 (vo) 以上、マライア。和フュージョン・バンド「マライア」のラスト・アルバムである。

MARIAH(マライア)とは。サックス奏者・清水靖晃を中心にスタジオ・ミュージシャンが集まり、1979年、マライア・プロジェクトとして始動。1980年、アルバム『YENトリックス』でデビュー。1983年のアルバム『うたかたの日々』を最後に解散した。ジャズ、フュージョン、ハード・ロック、プログレッシブ・ロック、テクノ、ニューウェーヴといった要素を融合した、フュージョン・ジャズ志向なバンド。
 

Mariah 
 

基本的にフュージョン(融合)志向の音作りだが、和フュージョンとして、他の国のフュージョン・ジャズに無い、独特の「特性」を保有している。まず、融合対象となる音楽ジャンルが、米国、英国とは全く異なる。フュージョン(融合)のメインは、テクノであり、ニューウェーヴであり、日本の土着音楽。YMO、そして、高橋ユキヒロの音世界をジャズロック風にリコンパイルした様なフレーズが度々出てきて、思わずニンマリする。

融合の礎に「ジャズ・ロック+プログレ」を置き、その上にテクノ・ミュージック、ニューウェーヴ、日本の土着音楽の音要素を、フュージョン・ジャズ志向なフレーズで展開する。米国フュージョンの様な、ファンクネス、いわゆるR&B志向、ブラコン志向な音が全く無い。そして、英国フュージョンの様な、プログレ色を前面に押し出すことも無い。ジャズロックとテクノとニューウェーヴの融合がメインという、我が国独特のフュージョン・ジャズの音世界。

当然、演奏力は高く無いとそれが出来ない。このマライアというバンドの演奏力は「半端ない」。色々と難しいことをやっているのだが、それを微塵も感じさせない。普通に普段通りに演奏を進めて行く。これが実にクール。リズム&ビートの根っこは「ジャズロック」なので、この音世界は、和フュージョン・ジャズ特有の音世界と解釈している。しかし、今の耳で聴いても、実にユニークで、実にクールで、実にエキサイティングである。
 
 

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2025年10月20日 (月曜日)

BNの「オーネットの不思議盤」

オーネットは、コンテンポラリー・レコードでの『Something Else!!!!』から始まり、アトランティック・レコードに移籍して『The Shape of Jazz to Come』をリリース、その後、5枚のリーダー作をリリースした後、突然、1966年に、コロンビア・レコードから『Chappaqua Suite』を突然リリース。そして、1966年から1971年にかけて、3枚のリーダー作をブルーノートからリリースしている。そんな3枚の中の一枚がこの盤。

Ornette Coleman『New York Is Now!』(写真左)。1968年4月29日、5月7日の録音。ブルーノートの4287番。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as, vln, tp), Mel Fuhrman (vo), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds), Dewey Redman (ts)。

オーネットのブルーノートからの2枚目のリーダー作になるが、オーネットが、元コルトレーン・カルテットのリズム隊、ギャリソンのベース、エルヴィンのドラムと組んだ、「不思議で面白い内容」のモード&フリー・ジャズ盤。

プロデューサーが、設立者&総帥プロデューサーであったアルフレッド・ライオンでは無く、後を引き着いたフランシス・ウルフなのが象徴的。オーネットがどうやって、この音のコンセプトを提案したのか、若しくは了解したのかは判らないが、オーネットのリーダー作の中では、異質な、ちょっと不思議な盤である。

「あれをやっちゃ駄目、これをやっちゃ駄目は、ジャズの自由度を狭める。なんでもかんでもやってみよう」というのが、真のジャズである」というのがオーネットの考え方なんだろうが、前作では、当時10歳の息子デナード・コールマンをドラマーに採用するという「暴挙」でちょっとスベったので、このアルバムでは、リズム隊を完全強化している。なんと、元コルトレーン・カルテットのリズム隊を持って来て、そこで「オーネットの考えるフリー・ジャズ」を展開する、という寸法。
 

Ornette-colemannew-york-is-now

 
加えて、コルトレーン・フォロワーの第一人者の1人、デューイ・レッドマンのテナーを持って来て、老舗ジャズ・レーベルのブルーノートで、「オーネットの考えるフリー・ジャズ」をやろうとしたら、どこか、モーダルな響きのするフリー・ジャズというか、限りなくフリーに近いモード・ジャズ風の演奏に落ち着いてしまった、そんな偶然性を感じる、このアルバムの内容である。

このアルバムには、1950年代の「オーネットに対する新鮮な驚き」は無い。音は明らかにオーネットの音。冒頭の「The Garden of Souls」の最初の自由度の高いフレーズを聴いただけでオーネットと判る音世界なんだが、フリーな即興演奏を求めているにも関わらず、どこか理路整然とした、完全即興では無い、限りなく自由度の高い、オーネット流のモーダルなジャズが展開されている様なイメージ。

どう聴いても、オーネットの考えるフリー・ジャズは伝わってこなくて、レッドマン参加の影響も大きかったのか、この盤では「オーネットの考えるコルトレーンのフリー・ジャズ」を追求している様に感じる。逆に、そう解釈した方が判り易い、上質かつ真摯な「オーネットの考えるコルトレーンのフリー・ジャズ」を、オーネットは、やっているように聴こえる。

フリー・ジャズ系のサックス奏者としての成熟、円熟をみたオーネットのリーダー作。モード時々フリーなジャズで、フリーな部分はオーネット流のフリー・ジャズの響きはするが、演奏全体の雰囲気は限りなく自由度の高い、オーネット流モード・ジャズ風。そういう意味で、このオーネットのブルーノート第二弾は「不思議で面白い内容」のモード&フリー・ジャズ盤に仕上がっている。

つまりは、コルトレーン・フォロワーのレッドマン、ギャリソン、エルヴィンは、オーネットの考えるフリー・ジャズに染まらなかった、逆に、オーネットが、コルトレーンにはこういうフリー・ジャズをやって欲しかったという、レッドマン、ギャリソン、エルヴィンらの想いにオーネットが寄り添った、「オーネットの考えるコルトレーンのフリー・ジャズ」、そんな雰囲気がするのがこのアルバム。解釈が悩ましい異色盤です。
 
 

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2025年10月19日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・302

フランク・ロソリーノは、ケントン楽団、ライトハウス・オールスターズなどで活躍した実力派トロンボーン奏者。テクニック優秀、豪快で端正で破綻が無い。フレーズの歌心満点。そして、ロソリーノのソロは結構、自由度が高い。凄まじいテクニックで自由度の高いアドリブを繰り広げる。そんなロソリーノのソロが映え、個性が良く判る、ロソニーノのトロンボーンを知る上で、真っ先に聴きたいのがこのアルバムである。

Frank Rosolino『I Play Trombone』(写真左)。1956年5月、ハリウッドでの録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Frank Rosolino (tb), Sonny Clark (p), Wilfred Middlebrooks (b), Stan Levey (ds)。

西海岸を代表するジャズ・トロンボーンの名手、フランク・ロソリーノが、ソニー・クラーク(以降、ソニクラ)を含むトリオをリズム・セクションに従えた、ロソニーノのトロンボーン1管の、いわゆつ「ワン・ホーン・カルテット」。

それほど、この盤は、ロソニーノの個性と実力を知る上での重要作&代表作である。まず、トロンボーン1管のワンホーン・カルテットである。ワンホーンが「こけたら」終わりである。しかも、演奏難度の高いトロンボーンである。しかし、ロソニーノはそんなこと気にすること微塵も無いか如く、テクニック優秀、端正で破綻が無い、自由度が高い。凄まじいテクニックで自由度の高いパフォーマンスを繰り広げていく。圧巻である。
 

Frank-rosolinoi-play-trombone

 
収録曲については「I May Be Wrong (But I Think You're Wonderful)」「The Things We Did Last Summer」「Flamingo」のスタンダード曲3曲と、ソニー・ロリンズ作「Doxy」、ここまでのスタンダード4曲のロソニーノは、ミュートを活用したりの「抑制の美」。逆に、ロソリーノ作の「Frieda」「My Delux」、2作の自作曲のロソリーノは、パワフルに豪快に、凄まじいテクニックで自由度の高いアドリブ吹きまくる。

「My Delux」を除きテンポはミッドテンポ。これは「速いフレーズが不得手」というトロンボーンという楽器の性格上、仕方のないこと。それでも、トロンボーンとして驚くほど速くて正確な、そして、トロンボーンの音の特性を活かした、大らかでほのぼのした演奏は、ロソリーノならではのもの。

バックのリズム・セクションも聴きもの。西海岸における、ソニクラの「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」の、タッチは強くて深く、独特な打鍵のタイミング、そして、テクニックは端正という、ソニクラの伴奏上手な、サポート上手なグルーヴィーなピアノを堪能することが出来る。レヴィーのシャープなドラミング、ミルドブルックスの堅実ベースも良い出来。

ジャズ・トロンボーンと言えば、我が国は東海岸ジャズ偏重だったが故、J.J.ジョンソン、カーティス・フラー以上、な状態だったが、1980年代、西海岸ジャズの音源が、我が国でも紹介されるようになって、このフランク・ロソニーノのトロンボーンが’注目される様になった、と記憶する。特に、このベツレヘム・レーベルでのこのリーダー作がリイシューされて以降だろう。良いアルバムです。
 
 

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2025年10月18日 (土曜日)

『ウィーン・コンサート 2016』

キース・ジャレットは、2016年の欧米8都市ピアノソロツアーの後、2017年2月15日ニューヨーク・カーネギーホールでのソロコンサートを最後に活動を休止し、ニュージャージー州の自宅で穏やかに暮らしている。今回は、キースが80歳の誕生日を迎えたことを記念し、最後の欧州ソロ・ツアーからの未発表ライヴ音源がリリースされた。今年の6月のことである。

Keith Jarrett『New Vienna』(写真左)。邦題『ウィーン・コンサート 2016』。2016年7月9日、ウィーンの「Goldener Saal, Musikverein」(学友協会黄金大ホール)でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p) のみ。ソロ・ピアノによる(現時点での)最後の欧州ツアー中、オーストリアのウィーンでのコンサートの模様を収めた未発表ライヴ音源である。

同じ欧州ツアーからは7月3日の『ブダペスト・コンサート』,7月6日の『ボルドー・コンサート』が先行リリースされているので、その流れに続くものになる。また、ウィーンでのライヴ録音としては、1991年にウィーン国立歌劇場で録音された『Vienna Concert』をリリースしている。ただし、内容的には因果関係は全く無い。
 

Keith-jarrettnew-vienna

 
このアルバムには9曲の即興演奏と1曲のスタンダード「Somewhere Over The Rainbow(虹の彼方に)」が収録されている。このソロ・ピアノ演奏では、キースのソロ・ピアノの歴史を感じることが出来る様な、バリエーション豊かな内容になっていて、キース者の我々にとっては、ノスタルジーを感じつつ、じっくりと楽しめる内容になっている。

冒頭のワンフレーズから「キースの音」。端正で歯切れ良く明晰なタッチで、最初は、硬派に不協和音とアブストラクトな幾何学的フレーズで「一発かます」。現代音楽寄りで実験色の濃いアプローチが哲学的であり、ビター・スイートなバラード表現もいかにもキースらしい。パルシヴでリズミカルなグルーヴがニュー・エイジっぽくもあり、一転、耽美派ロマンティストの極みのマイルドな展開もあり。ウィーンで、ゴスペル・フォーキーな節回しが出てくるのは嬉しい限り。

全10曲70分弱、コンパクトにまとまった、キースのソロ・ピアノの「ショーケース」の様な内容に、思わず聴き入り、思わずリピートしてしまう。ラストの定番曲「Somewhere Over The Rainbow(虹の彼方に)」が儚くも美しい。このライヴ盤については、例の「唸り声」も少なく、優しさと穏やかさが全体を覆うライヴ・パフォーマンスはいつ聴いても、何度聴いても良い。キース者には必須アイテム。好盤です。
 
 

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2025年10月17日 (金曜日)

ミッチェルの ”時代の先取り盤”

硬派な老舗ジャズ・レーベルのブルーノート。4200番台も後半になると、大衆受けする「売れる」盤だけを狙った、イージーリスニング志向のジャズ盤を制作する様になる。とにかく「聴き心地」優先、ジャズのアーティスティックな面を封印し、ポップ度を高める為に、ジャジーなリズム&ビートを活用する。しかし、そんな中に、突然変異的な、後のフュージョン・ジャズを、CTIサウンドを先取りした様なアルバムがあるからビックリする。

Blue Mitchell『Heads Up!』(写真左)。1967年11月17日の録音。ブルーノートの4272番。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell, Burt Collins (tp), Jerry Dodgion (fl, as), Junior Cook (ts), Pepper Adams (bs), Julian Priester (tb), McCoy Tyner (p), Gene Taylor (b), Al Foster (ds) and Jimmy Heath :1–2, Melba Liston :5, Duke Pearson :4, 6), Don Pickett :4 (arr)。

ミッチェル、コリンズのダブル・トランペット、ドッジオンのアルト・サックス、クックのテナー・サックス、ペッパー・アダムスのバリサク、プリースターのトロンボーンの変則6管フロント、タイナー + テイラー + フォスターのリズム隊。総勢9人、ノネット編成である。とにかく、音が厚くて、賑やか。しかし、アレンジがしっかりしているので、とっちらかった感じは無い。
 

Blue-mitchellheads-up

 
冒頭「Heads Up! Feet Down!」は、明るく軽快な、ちょっとミッドテンポのジャズロック。2曲目の「Togetherness」から、イーリスニング志向に展開するのだが、演奏の基本は「ジャズ」。エッジの立ったジャズのリズム&ビートをソフト&メロウにした、まるで、1970年代のフュージョン・ジャズを先取りした様な演奏が続く。ミッドテンポ中心の旋律の流れ優先の、まるで「CTIレーベル」の音作り。プロデューサーはクリード・テイラーかと思った(笑)。

ブルー・ミッチェルのトランペットが歌心満点で、唄うが如くトランペットを吹くミッチェルの面目躍如。他のフロント管のメンバー、コリンズ、ドッジオン、クック、アダムス、プリースター、それぞれも唄うが如く、管楽器を吹き上げる。この歌心溢れるフロント6管が、ソフト&メロウなフュージョン志向の音世界を現出しているのだ。収録されたどの曲も、旋律の響きがとてもメロウで美しい。

ソフト&メロウなフュージョンは実はアレンジが命。そういう意味では、このミッチェル盤、アレンジを4人が分担担当しているのだが、どのアレンジも優れていて統一感がある「優れもの」。冒頭に、このミッチェル盤、1967年としては驚きな、後のフュージョン・ジャズを、CTIサウンドを先取りした様な内容に思わず、聴き入ってしまう。ながら聴きのジャズ盤にも最適。気軽に気楽に聴ける好盤です。しかし、ジャケは何とかならんかなあ(笑)。
 
 

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2025年10月16日 (木曜日)

BNのR&B志向のソウル・ジャズ

軽快ファンキーなピアノ・トリオとジャズ・オーケストラとの共演なので、こってこてのイージーリスニング・ジャズかと思いきや、こってこてのソウル・ジャズ。それも、どっぷりR&B志向の、こってこてのソウル・ジャズに仕上がっている。

The Three Sounds and The Oliver Nelson Orchestra『Coldwater Flat』(写真左)。1968年4月10–12日、ハリウッドでの録音。ブルーノートの4285番。ちなみにパーソネルは、以下の通り。ブルーノートのお抱えピアノ・トリオのブルー・サウンズと、オリヴァー・ネルソン率いるジャズ・オーケストラとの共演盤である。

Gene Harris (p, org), Andrew Simpkins (b), Donald Bailey (ds), 以上, The Three Sounds。Oliver Nelson (arr), Bobby Bryant, Conte Candoli, Buddy Childers, Freddy Hill, Melvin Moore (tp), Lou Blackburn, Milt Bernhart, Billy Byers, Pete Myers (tb), Ernie Tack (b-tb), Anthony Ortega, Frank Strozier (as), Plas Johnson, Jay Migliori, Tom Scott (ts), Bill Green (bs), Lou Singer (timpani), Ken Watson (perc), 以上, The Oliver Nelson Orchestra。

スリー・サウンズの音は、もともと、1967年、ブルーノートにカムバックした時のアルバム『Vibrations』(ここをクリック)で、ソウル・ジャズ志向になっていたが、この盤では、そのソウル・ジャズ志向に拍車がかかって、R&Bの音要素をばっちり取り込んでいるので、恥ずかしいくらいの、こってこてなソウル・ジャズ盤に仕上がっている。但し、よく見たら、録音場所はハリウッド。スタジオも、ヴァン=ゲルダーのスタジオでは無い。つまり、この盤の録音は、従来の「ブルーノートの音」とは異なるところにある。
 

The-three-soundscoldwater-flat

 
オリヴァー・ネルソン率いるジャズ・オーケストラ自体が、ネルソンのアレンジに乗って、こってこてR&B志向のソウルフルなジャズオケになっているので、まず、このジャズオケのソウルフルなR&B志向の音が、この盤の「キモ」になっている。冒頭のクインシー・ジョーンズ作の「Lonely Bottles」の前奏から、こってこてソウルフル。ジャズオケもピアノ・トリオも、俗っぽい位にソウルフル。

聴き進めると、R&Bのリズム&ビートがメインなのが判る。そんなR&B志向にどっぷり浸かりながら、当時のポップ曲「"The Look of Love」「Georgia(我が心のジョージア)」「Last Train to Clarksville(恋の終列車)」などを、ばりばりソウルフルに快演する。主役のスリー・サウンズも、負けずにソウルフルなピアノ・トリオ演奏を展開する。ジャズオケとピアノ・トリオとの、ソウル・ジャズの相乗効果。

但し、この盤の弱点は、このR&B志向のこってこてソウルフルなジャズオケが前面に出すぎていて、主役のスリー・サウンズのピアノ・トリオを食ってしまっているところ。これは録音バランスの問題だと思うんだが、何とかならなかったのだろうか。それとも、当時、大衆受けの良い、R&Bのリズム&ビートとグルーヴを浮き立たせるために、わざとこのバランスにしたのだろうか。

ブルーノートの4200番台も後半に来ると、硬派でメインストリーム志向のモードや、フリー&アヴァンギャルドなジャズがあるかと思えば、明らかに一般大衆向けのイージーリスニング・ジャズや、この盤の様な、R&B志向のソウル・ジャズがあったりで、ジャズ盤の内容についての「振れ幅」が大きくなっている。これが4200番台後半の面白いところでもあり、悩ましいところでもある。
 
 

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2025年10月15日 (水曜日)

クリス・コナー, 傑作の1枚です

ベツレヘム・レーベル。カタログを見渡すと、ジャズ・ボーカルのアルバムが散見される、というか、資料によると、全カタログの4分の1がジャズ・ボーカルのアルバムとのこと。つまりは「ジャズ・ボーカルの宝庫」。女性ボーカルのラインナップも充実していて、クリス・コナーを擁しているところなどは、「ボーカルに強いベツレヘム」の面目躍如。今日はそんなクリス・コナーの好盤の1枚をご紹介。

Chris Connor『Chris - The Rich Sound Of Chris Connor』(写真)。1953年12月 (#2- 4), 1954年8月 (#1, 5- 8), 1955年4月 (#9- 12) の3セッションの寄せ集め。当時の未発表曲の寄せ集めである。が、内容は充実している。

ちなみにパーソネルは、 Sy Oliver And His Orchestra (#2- 4), The Ellis Larkins Trio (#1, 5, 6), そして、#9- 12が、J.J. Johnson (tb), Herbie Mann (fl), Joe Puma (g), Ralph Sharon (p: cond), Milt Hinton (b), Osie Johnson (ds)。

ベツレヘムのクリス・コナーの1枚。彼女の一番の特徴はそのクールな歌唱。それまでの「オールド・スタイル」の女性ボーカルでは無く、ストレートでスマートな、聴き心地の良いボーカルにある。そして、歌が上手い、巧みである。抜群の表現力とテクニック。

そういう歌手には、往々にして「歌心に欠ける」という欠点がついて回るのだが、クリスは歌心抜群。声の質も「軽いハスキー・ヴォイス」で、ベトつかず、適度にドライ。
 

Chris-the-rich-sound-of-chris-connor

 
そんなモダンな女性ボーカルが、このアルバムに詰まっている。初期ベツレヘム時代の傑作。ジャズ・スタンダード曲中心の好盤。冒頭の「All About Ronnie」から「Lush Life」「From This Moment On」「In Other Words (Fly Me to the Moon)」など、ナポリ民謡「Come Back To Sorrento」(帰れソレントへ)はユニークな選曲。クリスがクールに見事に唄い上げていく。「軽いハスキー・ヴォイス」がライトにしみじみ染みわたる。

特に、スタンダード曲の歌唱に、クリス・コナーの個性とテクニックが浮き彫りになる。まず、俗っぽくない。正統なジャズ・ボーカルの雰囲気を踏襲していて、洗練されていて典雅。そして、リズム&ビートへの「ノリ」が抜群。スインギーかつ、グルーヴィー。「軽いハスキー・ヴォイス」に、しっとり色気も漂わせた、ストレートでスマートな、聴き心地の良いボーカルが大活躍。

収録された12曲とも、他のアルバムに収録されたセッションの未発表曲を集めたものだが、もともと、収録されたそれぞれのセッションが、クリス・コナー初期の名セッションばかりなので、捨て曲は無し。

ちなみに、ベツレヘムからのリリース当初のタイトルは『Chris』で、クリス・コナーがアトランティックに移籍して、出したアルバムが、同じ『Chris』。ベツレヘムは混同を避ける為にタイトルを『The Rich Sound Of Chris Connor』に変更しているみたいです。なにはともあれ、この盤もクリス・コナーの傑作の1枚。良いボーカル盤です。
 
 

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2025年10月14日 (火曜日)

ながら聴き用のブルーノート盤

大手リバティーの傘下に入って以降、当時のブルーノートとして、純ジャズ度、モダン・ジャズ度は落とすこと無く、大衆受けする「売れる」ジャズ盤をリリースする様になる。これは、4100番台までは、ほとんど無かったこと。しかし、4200番台も後半になると、大衆受けする「売れる」盤だけを狙った、イージーリスニング志向のジャズ盤を制作する様になる。

Stanley Turrentine『The Look Of Love』(写真左)。1968年4月15日 (#1, 4, 10) と5月2日 (#3, 5, 7-8) 5月13日 (#2, 6, 9) の録音。5月27日にストリングスのオーバーダビング。ブルーノートの4286番。漆黒ファンキーなテナー・レジェンド、スタンリー・タレンタインのリーダー作。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Stanley Turrentine (ts), Jimmy Nottingham, Snooky Young (flh), Benny Powell (b-tb), Jim Buffington (french horn), Hank Jones (p, tracks 3–5, 7, 8 & 10), Duke Pearson (p, track 1; arr, track 1-3 & 5–9), Roland Hanna (p, tracks 2, 6 & 9), Kenny Burrell (g), George Duvivier (b), Grady Tate (ds, tracks 1, 3–5, 7, 8 & 10), Mickey Roker (ds, tracks 2, 6 & 9),Thad Jones (arr, tracks 4 & 10)。

3セッションからの収録で、ピアノやドラムは2人で交代して担当しているが、基本の編成は、テナー・サックス :1, フリューゲルホーン :2, ベース・トロンボーン :1, フレンチホルン :1, ギター :1 以上がフロントで、5管のフロント管にギター。そして、リズム隊に、 ピアノ :1, ベース :1, ドラム :1 で、総勢9名=ノネット編成。アレンジは、ピアソンとサドが分担して担当しているが、聴いていて、その差は微少。そして、ノネット編成の演奏のバックに、後日、ストリングスをオーバーダビングしている。
 

Stanley-turrentinethe-look-of-love

 
アルバム全体の音の雰囲気は、イージーリスニング志向のポップなジャズ。いわゆる「イージーリスニング・ジャズ」である。ジャズのリズム&ビートを、ポップで平易な4ビート&8ビートをベースにして、ジャズ臭さを中和して、ポップなイージーリスニング志向のリズム&ビートにしつつ、フロント楽器は、それぞれ、ハードバップ時代の判り易い旋律、判り易いアドリブを展開する。聴き手の「ながら聴き」のニーズにでも合わせたのか、ブルーノートでは、それまでに無かった、完璧なまでの「イージーリスニング・ジャズ」である。

フリューゲルホーン、ベース・トロンボーン、フレンチホルンは伴奏に徹していて、基本はタレンタインのテナーが映える様に仕掛けられたホーン楽器である。そして、この伴奏に徹した管楽器のユニゾン&ハーモニーをベースに、タレンタインは気持ち良く、ポップでファンキーなテナーで、ポップなバカラック曲「The Look Of Love」や「This Guy's In Love With You」、レノン=マッカートニーの「Here, There and Everywhere」、チャップリンの「Smile」などを、明るく朗々とかつ印象的に吹き上げていく。

このアルバムの「イージーリスニング・ジャズ」的な音世界は、1970年代のCTIレーベルの弦入りクロスオーバー&フュージョン・ジャズの先駆け的な音と捉えることも出来るが、CTレーベルの弦入りクロスオーバー&フュージョン・ジャズの方が、面白い事にリズム&ビートがジャジーで、明らかにジャズに軸足を残している。

この筋金入り漆黒ファンキー&アーバンなタレンタインのテナーと、漆黒ファンキー&アーバンなバレルのギターがフロントにいなかったら、この盤、もしかしたら、完璧に「イージーリスニング・ミュージック」に陥っていたかも。タレンタインのテナーとバレルのギターが、辛うじてこの盤を「ジャズ」に留めている。それほど、この盤のアレンジは、売れ筋の「ポップス」的アレンジに偏っている。やはり、ブルーノートに「イージーリスニング・ジャズ」は似合わない。
 
 

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2025年10月13日 (月曜日)

サル・サルバドールの代表的好盤

映画「真夏の夜のジャズ」でもお馴染み、チャーリー・クリスチャン直系のギタリスト、サル・サルバドール、と言うが、我が国では、かなりマイナーな存在。

リーダー作も、1953年から1963年までの10年で9枚。1978年から1989年の間に5枚。計14枚のリーダー作しかリリースしていないのと、半数はマイナーなレーベルからのリリースなので、マイナーな存在なのも仕方の無いことかもしれない。

Sal Salvador『Frivolous Sal』(写真左)。1956年2月の録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Sal Salvador (g), Eddie Costa (p, vib), George Roumanis (b), Jimmy Campbell (ds)。映画「真夏の夜のジャズ」でもお馴染み、チャーリークリスチャン直系のギタリスト、サル・サルバドールがリーダーのカルテット編成。

さて、サル・サルバドールは、チャーリー・クリスチャン直系の、ウェストコースト派白人ギタリスト。サルバドールのギターの音の雰囲気は、アーバンでミッドナイトな雰囲気の、漆黒ジャジーでブルージーなギター。当時のジャズ・ギターとして、かなり個性的な音色。この個性的な音色のサルバドールのギターは、十分にフロントを張れるもの。
 
まだギタリストがリーダー作を出すことが珍しかった時代に、フロントを張ることのできる、力感溢れる、ソリッドで音の芯が太いギターでリーダーを務めるサルバドールは、現代に通じる、モダン・ジャズ・ギターの先駆的存在。
 

Sal-salvadorfrivolous-sal

 
このアルバムでも、そんなクリスチャンの「アーバンでミッドナイトな雰囲気の、漆黒ジャジーでブルージーな」ギターが大活躍。聴き応え満点のパフォーマンスを披露している。

スタンダード曲「All The Things You Are」「I'll Remember April」では、そんなチャーリークリスチャン直系のバップ・ギターがダイナミックに展開される。テクニックは確か、爽快感抜群。ウエストコースト・ジャズのほど良くアレンジされた端正なリズム隊をバックに、漆黒ジャジーでブルージーなギターが疾走する。

バックはエディ・コスタがピアノを担当する、端正でバップなリズム・セクション。このリズム・セクションの安定したパフォーマンスが、サルバドールの上質なバップ・ギターの弾き回しを引き出している。コスタの硬質なピアノが、サルバドールの漆黒ジャジーでブルージーなギターに合う。相性抜群である。

ベツレヘム・レーベルには、こういった米国ウエストコースト・ジャズのアルバムも多数リリースされていて、加えて、個性的なのは、西海岸ジャズ志向の演奏の中に、このサルバドールのギター盤の様に、まるで東海岸ジャズの様な「漆黒ジャジーでブルージーな」音作りがされている点。

米国の東西を股に掛け、東海岸ジャズ、西海岸ジャズ双方に対して、拘り無い音作りが個性のベツレヘム・レーベル。このサルバドールのアルバムはそんなベツレヘムの個性が反映された好盤です。どっちつかず、というなかれ。これが、ベツレヘム・レーベルの個性の一つです。
 
 

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2025年10月12日 (日曜日)

フリー・ジャズな”ソウル・ジャズ”

とにかく、聴き始めてビックリ、椅子から転げ落ちる。オルガン・ジャズに代表されるノリの良いソウル・ジャズを想起していたら、絶対に怪我をします(笑)。確かに、マクリーンは正統派ハードバップから、モードに染まり、フリーにチャレンジする「挑戦し変化するジャズマン」でしたが、ここで、いきなり、フリー・ジャズを持ってくるとは。恐れ入りました。脱帽です。

Jackie McLean『’Bout Soul』(写真左)。1967年9月8日の録音。ブルーノートの4284番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Woody Shaw (tp), Grachan Moncur III (tb), Lamont Johnson (p), Scott Holt (b), Rashied Ali (ds), Barbara Simmons (recitation)。マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーンの3管フロントのセクステット編成。そして、なんと、そこに女性の朗読が付く。

タイトルが直訳すると「ソウルについて」なので、しかも、ジャケットの妙齢の黒人女性ときてるので、このアルバム、聴く前は、マクリーン流の直球勝負の硬派なソウル・ジャズかと思いきや、冒頭、ゴスペル的雰囲気で、女性の朗読「ソウルソウルソウル・・・」が出てきてビックリ。もしかして、ゴスペルチックな「ラップ」メインのジャズかと身構えたら、高速パルシヴ・ドラミングに乗って、ドバ〜っと、フリー・ジャズへなだれ込んでいく。

アルバムの内容としては、1960年代後半のジャズのスタイル(ソウル、アヴァンギャルド、フリー、モードなど)が混在した実験的な作品。
 

Jackie-mcleanbout-soul

 
特に、アルバムの冒頭には、バーバラ・シモンズによる「ソウル」の意味を語る詩の朗読が収録されているところが象徴的。つまり、ソウル・ジャズといえば「魂の叫び」、よって、メインは「フリー&アヴァンギャルド」ジャズで、スピリチュアルに攻めるのが筋だろう、という感じなんだろうな、と。

フリー&アヴァンギャルドがメインとくれば、フロント楽器の力量が問われる訳だが、フロントは、マクリーンのアルト・サックス、ショウのトランペット、モンカー3世のトロンボーン、と、フリー&アヴァンギャルドをやらせて一流、ハードバップ&モードをやらせても一流の申し分無いフロント3管なので、モードから入って、いきなりフリー&アヴァンギャルドに流れ込む展開も、安心して、彼らの音に身を任せることができる。リズム隊もラシッド・アリのパルシヴなドラミングが「肝」で安定感がある。

ソウル・ジャズみたいなタイトルだが、実は中身はフリー&アヴァンギャルドがメイン、という問題作で、ジャズ者の方々の間でも好き嫌いが分かれる思う。でも、不思議と聴き易いフリー&アヴァンギャルドで、これはフレーズのところどころにモーダルなフレーズやソウルフルなフレーズが見え隠れするからだろう。この辺りが、マクリーンのフリー&アヴァンギャルド・ジャズの面白いところ。

そう言えば、マクリーンのノリの良い、大衆に受けするソウル・ジャズなんて聴いたことがなかったなあ。ということで、この時代での、フリー&アヴァンギャルドがメインのソウル・ジャズ、というのはマクリーンの「必然」だったのだろう。
 
 

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2025年10月11日 (土曜日)

アーヴィンの初ブルーノート盤

ブッカー・アーヴィン(Booker Ervin)は、早逝のコルトレーン・スタイルのテキサス・テナーマン。モーダルでアグレッシブで自由度の高いテナーで、時々、フリーに走り、アヴァンギャルドに傾倒する。このフリー&アヴァンギャルドな展開も趣味が良く、耳触りでないので、意外とアーヴィンは、フリー&アヴァンギャルドなテナーマンとされることも多い。

Booker Ervin『The In Between』(写真左)。1968年1月12日の録音。ブルーノートの4283番。ちなみにパーソネルは、Booker Ervin (ts, fl), Richard Williams (tp), Bobby Few Jr. (p), Cevera Jeffries Jr. (b), Lenny McBrowne (ds)。1970年、39歳で急逝してしまう、幻の「ポスト・コルトレーン」最右翼のテナーマンの1人、ブッカー・アーヴィン生前のラスト作である。

ブッカー・アーヴィンは、フリー&アヴァンギャルド系のテナーマンという印象が強い。が、完全にフリー&アヴァンギャルドという訳では無く、伝統的なハードバップとモード・ジャズを基本にしつつ、アドリブ展開において、いきなりフリー&アヴァンギャルドに傾く、といった、モード・ジャズ時々フリー&アヴァンギャルドなジャズが真骨頂。ダンディズム溢れる豪快な吹きっぷりが爽快である。
 

Booker-ervinthe-in-between

 
アーヴィンのテナー・サックスは、テキサス・テナーをベースとした「コルトレーン・スタイル」。そんなスタイルで、モード・ジャズ時々フリー&アヴァンギャルドなジャズをやる。コルトレーンのフォロワーと思いきや、出てくる音は、すっと伸びたブロウはコルトレーンっぽいが、モーダルな吹き回し、アヴァンギャルドへの傾倒については、あまりコルトレーンっぽくは無い。

このブルーノート第一作で最終作となったアルバムでは、オーソドックスなブロウが魅力的。確かに、モーダルなブロウがメインで、限りなく自由度の高いブロウが得意ではあるが、ここでは、決して、フリー・ジャズの人では無い。意外と伝統の範囲内で、限りなく自由度を高めつつも、従来のジャズの枠の中に留まるブロウ。コルトレーンのそれよりもスッキリ見通しが良くて、整ったモーダルな吹奏は、当時、意外とアーヴィン以外、見当たらない。そういう音世界がこの盤の魅力である。

アーヴィンの個性とセンスが上手くまとまった、「ポスト・コルトレーン」的テナー、アーヴィン独特のモード・ジャズ時々フリー&アヴァンギャルドなジャズ。アーヴィンは、この盤の録音後、1970年8月末、腎臓病のため39歳で急逝する。この盤を聴く限り、アーヴィンの「ポスト・コルトレーン」なテナーは発展途上。まことに急逝が惜しまれるテナーマンであった。
 
 

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2025年10月10日 (金曜日)

クロスオーバーなビッグバンド

ジャケットの左上の小さな文字を見ると「Tosiyuki MIyama & New Hard Plays Chikara Ueda」とある。つまり、このアルバムは、日本を代表するビッグバンドである宮間利之&ニューハードが、作・編曲に 上田力氏を迎え、フュージョン・サウンドに挑戦した作品なのだ。僕としては、ジャズを本格的に聴き始めた頃の、懐かしいアルバムの1枚である。

宮間利之とニュー・ハード・オーケストラ『Big Stuff』(写真左)。1980年の作品。Electric Birdレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、ビッグバンドである「宮間利之とニューハード」に、清水靖晃(ts), 直居隆雄 (g), 山木秀夫 (ds), 神村英男 (cor), 納見義徳 (per) 等が参加。

ビッグバンド・サウンドのフュージョン化、などと、当時は評価されたが、今の耳で聴くと、クロスオーバー・ジャズ志向のコンテンポラリーなビッグバンド・サウンドだろうと思う。8ビートがメイン、電気楽器を前面に押し出した、エレ・ジャズ志向だが、ポップなロック風のグルーヴも見え隠れして、これ「クロスオーバー・ビッグバンドでしょ」と、聴いていて直感的に感じた。
 
冒頭「Samboogie」から、格好良く切れ味の良いギター・カッティングがカッ飛ぶ。熱気溢れるラテンなパーカッションが盛り上げるグルーヴ感の中、ニューハードのビッグバンド・サウンドが炸裂する。清水のテナーソロも躍動感溢れ、ダンディズム溢れる音色で魅了する。この冒頭の1曲だけで、この盤の雰囲気が決定付けられる。
 

Big-stuff

 
続くタイトル曲「Big Stuff」は、エレクトリックなビッグバンド・ブルース。小粋で映えるブレイクを重ねながら、ブルージーなベースラインが練り歩く。3曲目の「Sunset Vally」は、これぞ、ソフト&メロウな「フュージョン・ビッグバンド」な音世界。ダイナミックでパンチの効いたクロスオーバー・ビッグバンドなサウンドが魅力の「Mystery Cat」。

正統派ビッグバンドな響きの中、電気楽器が効果的に絡む「Walking Stone」。エレクトリックなビッグバンド・サウンドが効果的に響く、秀逸なサンバ・フュージョンな「Mas Quero Dancar (But Dancing)」。そして、魅力的な重厚ファンキー・ベースに、カッティング・ギターが絡む、バックにビッグバンド・サウンドが格好良く漂う「So Fine」。

ニューハードが放つ分厚く圧巻のビッグバンド・サウンドと、洗練されたクロスオーバー&フュージョン・サウンドの融合がバッチリ「はまった」、独特の、唯一無二の「クロスオーバー&フュージョン・ビッグバンド」の目眩く音世界。

DJ/クラブカルチャー・シーンで高く再評価されているアルバムの1枚で、当時の日本のクロスオーバー&フュージョン・ジャズのレベルの高さが窺い知れる好盤です。
 
 

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2025年10月 9日 (木曜日)

『Electro Keyboard Orchestra』

日本のクロスオーバー&フュージョンの好盤を漁っていると、これはいったいなんなんだ、と叫んでしまいそうな、ユニークだが内容の濃い実験的なセッションの成果に出くわすことがある。これは、8人のキーボード奏者が繰り広げる、エレなシンフォニー・ミュージック。集団名「エレクトロ・キーボード・オーケストラ」の唯一作である。シンセ20台を駆使した、一期一会の壮大な実験作品である。

『Electro Keyboard Orchestra』(写真左)。1975年4-5月の録音。ちなみにパーソネルは、佐藤允彦、八木正生、鈴木宏昌、大野雄二、羽田健太郎、市川秀男、大原繁仁、藤井貞泰 (syn), 矢島賢 (g), 岡沢章 (b), 村上秀一 (ds)。

ジャズ系ピアニスト8人がシンセサイザーを担当、バックに、ギター+ベース+ドラムのリズム隊が付く、という布陣。ちなみに不確かではあるが、使用機材は以下の通りと思われる。「コルグ700S :10台, コルグ800DV :10台, フェンダー・スーパー・シックス :10台, エレキ・ピアノ :1台, コルグ・オルガン :1台」。

これを初めて知った時は度肝を抜かれた。時は1975年、シンセサイザーが音楽の世界で、普通に採用され始めた頃。そんなにシンセのノウハウと実績が積み上がっていなかった時代の成果であるが、これが、ハイレベルな内容に仕上がっているから驚きである。曲の完成度やアレンジは良好、シンセを活用した実験作品でありながら、実験臭は全く感じ無い。
 

Electro-keyboard-orchestra 
 

8人のキーボード奏者は、当時のシンセサイザーを熟知している。結構速いテンポのフレーズも難なくこなす。複数台のシンセサイザーのユニゾン&ハーモニーもタイミングはバッチリ。上質のクロスオーバー・インストとして鑑賞することが可能。

シンセ・ミュージックで不得手な、リズム&ビートは、シンセのフレーズの癖を心得た、純国産の職人的リズム隊がガッチリとサポートしているので、全く問題が無い。特に、村上 "ポンタ" 秀一のドラミングが、全曲に渡って「効いている」。

選曲された曲自体も良い曲ばかりで、2曲目のカルロス・ガーネット作「Mother Of The Future」は、アナログ・シンセサイザーが紡ぎ出す、太くて重厚な、シンセ独特のグルーヴが魅力。3曲目の大野雄二作「Mayflower」は、ソフト&メロウなフュージョン志向のバラード曲で、安らぎ&癒やしを感じさせてくれる秀曲。続く「The Iron Side」は、米刑事ドラマ『鬼警部アイアンサイド』のテーマ曲のカヴァー。他の曲の演奏も上々で捨て曲が一曲も無い。

シンセを大々的に活用しているからといって、プログレッシヴ・ロック臭は希薄。どちらかといえば、クロスオーバー・ジャズのインストとして聴くと座りが良い。アナログ・シンセサイザー独特の太くて重厚でダイナミックな音色を最大限に活かした、めくるめく「エレクトロ・キーボード・オーケストラ」のパフォーマンス。シンセ・ミュージックの名盤の1枚です。
 
 

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2025年10月 8日 (水曜日)

Pat Metheny『MoonDial』です

パット・メセニーは、今年71歳。盟友ライル・メイズが2020年に亡くなって、パット・メセニー・グループの活動は停止した。ソロ活動のみに集中して現在に至る。2021年リリースの『Side-Eye NYC(V1.IV)』は、久しぶりに「PMGサウンドに通じるパット」らしい内容で、聴いていてワクワクした。

が、その後が続かない。どうしたのか、と思っていたら、2023年6月、突如、パットのフルアコ・エレギのソロ・パフォーマンスのコンピレーション盤『Dream Box』が出た。これは、コンピレーション盤なので、厳密に言えば「新作」とは言い難い。と思っていたら、2024年7月、純粋新作のソロ・アルバムがリリースされた。

Pat Metheny『MoonDial』(写真左)。2024年の作品。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g) のみ。このアルバムは、楽器製作者リンダ・マンザーが製作した、特注のナイロン弦バリトン・ギターを使用した、ソロ・ギター・アルバムである。

枯れた味わいの内省的なソロ・ギター・アルバムである。耽美的でリリカル、内省的で静謐なナイロン弦バリトン・ギターのソロ・パフォーマンスが、淡々と弾き継がれていく。内省的であるが故、静かな部屋で「ゆとり」や「癒し」を求める向きには良いが、ビートやグルーヴといった「音の刺激」を求める向きには、ちょっとしんどい内容。

この盤でのメセニーのソロ・パフォーマンスは、リズム&ビートが、ギターのフレーズに埋もれているので、即興演奏ではあるが、ジャジーな雰囲気、いわゆる、旧来のモダン・ジャズな雰囲気は皆無。
 

Pat-methenymoondial

 
例えて言えば、ECMレコードの「ニュー・ジャズ」の音世界。キースのソロ・ピアノ以上に、ジャズ感が希薄なので、この盤をジャズと捉えることについては、賛否両論だるう。

6曲のメセニー・オリジナル。スタンダード曲については、マット・デニス「Everything Happens to Me」〜レナード・バーンスタイン「Somewhere」のメドレーと、マット・デニス「Angel Eyes」。チック・コリア作「Youre Everything」のカヴァー、1950年代の映画『アパッチ』からのサントラ主題歌「My Love and I」に、ビートルズ「Here, There and Everywhere」のカヴァー、と選曲はバラエティーに富んでいて、聴いていて楽しい。

このアルバムに収録されたソロ・パフォーマンスは、どれもが素晴らしいが、特に、ビートルズの「Here, There and Everywhere」をカヴァーは、原曲の解釈、アレンジが秀逸で、パットの特注のナイロン弦バリトン・ギターが映えに映える、なかなかに素晴らしい出来に仕上がっている。

ここ2〜3作のメセニーのソロ・パフォーマンスは、基本的に「耽美的でリリカル、内省的で静謐」。純ジャズとは言いがたい内容ではある。即興演奏メインのニュー・ジャズ的雰囲気ではあるが、メセニーのソロ・パフォーマンスとしては申し分無い。

ダイナミックでフォーキーでワールドミュージック的なグループ・サウンドは「パット・メセニー・グループ」の担当なのだが、盟友ライル・メイズが2020年に亡くなって以降、ほぼ活動停止状態なのが不満。パット・メセニー・グループはどうなったのか。メセニーはまだまだ老け込む歳ではない。
 
 

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2025年10月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・301

現エストニアのタリンでのライヴ録音。タイトルは「イン・ロシア」だが、これは正確ではない。正確を期すなら「イン・USSR」もしくは「イン・エストニア」だろう。録音時は1974年。まだまだ冷戦真っ只中。どういう経緯で、当時のソヴィエトでのライヴ公演になったのだろうか。

Oscar Peterson Trio『Oscar Peterson In Russia』(写真左)。1974年11月17日、当時のソヴィエト連邦、現エストニアのタリンでのライヴ録音。パブロ・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Jake Hanna (ds)。

このライヴ盤を聴く限り、タリンの聴衆はモダン・ジャズをちゃんと理解して、有名スタンダード曲の時など、拍手が一層大きくなったり、ソロの展開の時もしっかりと聴き、ソロが終わると大きな拍手を送る。ソヴィエト占領下のタリンとはいえ、モダン・ジャズの理解は素晴らしいものがある。

ここでのピーターソンは、もともとのピーターソンの持つ実力を遺憾なく発揮している。この頃のピーターソンは、ベテランの域に達し、しかし米国のジャズは凋落の一途。ライヴによっては、独りよがりに、ハイ・テクニックの限りを尽くして、ピアノを勝手気ままに弾きまくって、顰蹙を買うこともしばしばだったが、ここでの、ソヴィエトでのピーターソンは違う。
 

Oscar-peterson-triooscar-peterson-in-rus

 
共産圏の聴衆に対して、アートとしてのモダン・ジャズを聴かせよう、と思ったのだろうか、このライヴ盤でのピーターソンは、実にアーティスティックで、実にジャジーで、弾き回しは、ダイナミズムはちょっと控えめに、適度に上品で端正、バリバリ勝手気ままに弾きまくること無く、「抑制の美」を身を持って示したような、上質でアーティステックなピーターソンのピアノがこのライヴ盤にてんこ盛り。

「抑制の美」を纏ったピーターソンは無敵である。気品漂う、小粋なフレーズを、ほど良く抑制、コントロールされたダイナミズムで、クラシックばりの途方もないテクニックで弾き回す。「これが、ジャズ・ピアノだ」と言わんばかりの上質でアーティスティックでジャジーな弾き回し。タリンの聴衆に対して、最高のジャズ・トリオのパフォーマンスのひとつを、誠実に格調高く弾き進めるピーターソン・トリオは立派だ。

選曲も共産圏の聴衆向けに、有名中の有名スタンダード曲や、ピアノ・トリオで映える小粋なスタンダード曲などが選曲されていて、聴いていて、とても楽しい。アレンジもいつになく優秀で、バックを司る、ペデルソンのぶんぶんアコベも良い音だして絶好調、ハナのドラミングもハードバップな堅実ドラミングで好調を維持。トリオ演奏として、水準以上を行く、1970年代のピーターソン・トリオの代表的演奏の一つがこのライヴ盤に記録されている。

面白いのはジャケット写真の「ピーターソンの服装」。定番の黒スーツではなく、カントリー調のデニム・ジャケットを纏ったラフな服装。クラシックではない、ジャズのピアノ演奏なんだと、デニム・ジャケットでアピールしたかったのだろうか。でも、意外と似合っている、と思っているのは僕だけだろうか。とにかく、このライヴ盤は好盤。ピーターソン者の方々は必聴でしょう。
 
 

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2025年10月 6日 (月曜日)

聴いて楽しいオルガン・ジャズ

このジョン・パットン盤については、一言で言うと「ポップで明るく聴き易い」オルガン・ジャズ。ラウンジ志向とまではいかないが、とにかく聴き易い。アーティスティックな刺激が少ない、と言っても良いか。そして、当時のトレンドだった、R&B志向のソウル・ジャズな「音の味付け」がなされている。

Big John Patton『That Certain Feeling』(写真左)。1968年3月8日の録音。ブルーノートの4281番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Junior Cook (ts), Jimmy Ponder (g), Clifford Jarvis (ds)。フロントがジュニア・クックの1管、ギター入りのオルガン・カルテットである。ベースはジョン・パットンのオルガンが代行している。

この盤から、プロデューサーが、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンから、フランシス・ウルフに代わっている。ジャズをアートとして捉え、硬派でメインストリーム志向のモダン・ジャズを標榜していたライオンから、その時代のトレンドを踏まえ、大衆受けする、判り易いモダン・ジャズを目指すウルフへの交代。
 

Big-john-pattonthat-certain-feeling

 
フロント1管、ギター入りのオルガン・カルテットだが、ギターが、これまでのグラント・グリーンからジミー・ポンダーに代わっている。パキパキ硬派なファンキー・ギターから、ポップでソウルフルな親し易いギターへの変更。これが、暖かく優しく判り易いポップなジョン・パットンのオルガンに、ばっちりフィットしているのだ。

演奏の基本は、ファンキー・ジャズ。ファンクネスが優しく、時にR&B志向のソウル・ジャズな「音の味付け」が効果的になされたファンキー・ジャズ。なので、どっぷりソウル・ジャズなオルガンと比べると、ジョン・パットンのオルガンは、ポップで軽快で暖かくてクール。そして、これがジョン・パットンのオルガンの個性であることに、このアルバムを全編、聴き終えて納得する。

大衆に訴求し、大衆にウケるオルガン・ジャズ。ジョン・パットンと新プロデューサーのウルフは、がっちり組んで、そんなオルガン・ジャズを目指した。その最初の成果がこのアルバムだろう。決して、ジャズ史に一石を投じるような、アーティスティックばりばりなアルバムでは無いが、聴き易く判り易い、聴いて楽しい、ファンキー&ソウルフルなオルガン・ジャズ盤として、気軽に聴くに適した好盤だと思う。
 
 

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2025年10月 5日 (日曜日)

ユッコとH ZETTRIOのコラボ

我が国の人気女性サックス奏者の一人、ユッコ・ミラーと、変幻自在の音楽性とステージングで、人気のピアノトリオバンド “H ZETTRIO(エイチ・ゼットリオ)”との完全コラボの企画盤。現代の和ジャズにおける、硬派でメインストリーム志向のコンテンポラリー・ジャズの最先端の音世界。和ジャズの「今」をビンビンに感じることの出来る好盤である。

ユッコ・ミラー feat. H ZETTRIO『LINK』(写真左)。2024年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (as), H ZETTRIO : H ZETT M (p, key), H ZETT NIRE (b), H ZETT KOU (ds)。

ユッコ・ミラーのアルト。サックスがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」。ユッコ・ミラーが「H ZETTRIOと一緒にアルバムを作りたい」という熱い想いが実現した、実に興味深いコラボレーション企画。

H ZETTRIO=「エイチゼットリオ」と読む。純日本のジャズ・ピアノ・トリオ。「大人も子どもも“笑って踊れる”」をテーマに掲げるピアノトリオ・バンドである。メンバー3名は、鼻を青・赤・銀に着色。ちなみにパーソネルは、H ZETT M (p:青鼻), H ZETT NIRE (b:赤鼻), H ZETT KOU (ds:銀鼻)。リアルな姓名は伏せられている。

メロディー・ラインがキャッチャーで流麗。演奏の雰囲気はポップでジャジー。ダンサフルで明朗なサウンド・トーン。とにかく聴き易い。加えて、このピアノ・トリオ、演奏のポテンシャルが高い。テクニックのレベルが高い。聴いていて、アドリブ・フレーズなど「流麗」の一言。ではあるが、演奏のテンションは高い。アグレッシブである。ポップでジャジーではあるが「攻めるピアノ・トリオ」である。
 

Feat-h-zettriolink 

 
ユッコ・ミラーは、我が国の実力派サックス奏者。エリック・マリエンサル、川嶋哲郎、河田健に師事。19歳でプロデビュー。 2016年9月、キングレコードからファーストアルバム「YUCCO MILLER」を発表し、メジャーデビュー。10万人を超えるチャンネル登録者数が今なお増え続け、「サックスYouTuber」としても爆発的な人気を誇る。

彼女の奏でる音楽スタイルは、ファンク&フュージョン、そして、コンテンポラリー・ジャズ。意外と硬派な一面が垣間見えるところが頼もしい。流麗なサックスで聴き易くはあるが、決してイージーリスニング・ジャズには走らない。カラフルでド派手なルックスだけで、決して「キワモノ」と思うなかれ。流麗かつ力強さがあるレベルの高いブロウ。聴き応え充分である。

そんなユッコ・ミラーとH ZETTRIOとが、がっちりタッグを組んで、和ジャズにおける硬派でメインストリーム志向の、素晴らしいコンテンポラリー・ジャズを展開する。決して、ソフト&メロウなフュージョンやジャズ・ファンクを想起してはならない。メインストリーム志向のジャズに軸足を置いているところが実に潔い。

収録されている全10曲のうち、半分の5曲をユッコ・ミラーが、残りの5曲をH ZETT Mが作曲、アレンジは全曲H ZETTRIOが担当。しかし、それぞれの曲毎の統一感は半端なく、ユッコ・ミラー + H ZETTRIO の演奏力の高さとアレンジ力の ”賜もの” だろう。ユッコ・ミラーとH ZETTRIOとが創り上げる、個性的でエキサイティングなグルーヴは聴き応えがある。

次作が期待出来るなあ、次作はあるかなあ、と思っていたら、今年の9月17日に、コラボ第2章『Dazz On』がリリースされた。いろいろ、バタバタしていて、なかなか入手に至らなかったが、昨日、やっと入手。今度はどんな音世界が展開されているのか、楽しみである。
 
 

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2025年10月 4日 (土曜日)

ブランフォードの『Belonging』

タイトルが『Belonging』。冒頭の曲が「Spiral Dance」。あれ、これって、キース・ジャレットの『Belonging』と同じじゃないか、と思って全曲見たら、キースの『Belonging』そのもの。そう、このアルバムは、キース・ジャレットの『Belonging』を再解釈した、ユニークな企画盤である。

Branford Marsalis Quartet『Belonging』(写真左)。2024年3月25–29日の録音。ちなみにパーソネルは、Branford Marsalis (sax), Joey Calderazzo (p), Eric Revis (b), Justin Faulkner (ds)。今年3月リリースのブランフォード・マルサリスの新作。ブランフォードのサックスがフロント1管の、いわゆる「ワンホーン・カルテット」編成。

ブランフォード・マルサリスのブルーノート・レコード移籍第一弾は、キース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットの名作『Belonging』を丸ごと再解釈に取り組んだアルバムになる。収録曲、曲順も同じ、演奏スル編成も、サックスがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」も同じ。キースの『Belonging』は、フロント1管のサックスが、ヤン・ガルバレクと、バリバリ欧州ジャズの透明度の高い、思い切り個性的なサックスだったので、その対比がどうなるか、興味津々である。
 

Branford-marsalis-quartetbelonging  

 
ブランフォードのサックスは、コルトレーン・スタイルとロリンズ・スタイルを足して2で割った様な、サックスの吹奏スタイルとしては、コルトレーン以前のオールド・スタイル寄りのサックス。この盤でも、ブランフォードのサックスを聴くと、途中のフレーズはテクニカルでコルトレーンの吹奏スタイルを踏襲しているが、吹き終える部分の音の伸びは、揺らぎのあるオールド・スタイル。つまり、ブラフォードのサックスの吹奏スタイルは「21世紀のネオ・オールド・スタイル」と言ってよい、モダンなもの。

キースのヨーロピアン・カルテットの名作『Belonging』の音世界を、ブランフォード・カルテットの個性で再構築していく。物真似、カヴァーの部分は全く無い。『Belonging』に収録された曲をベースに、ブランフォード・カルテットなりに解釈して、オリジナルな演奏を展開する。これが見事。ブランフォードの「21世紀のネオ・オールド・スタイル」なサックスが実に効果的で、キースのヨーロピアン・カルテットの『Belonging』の音世界を想起することは無い。

実はかなり久し振りにブランフォードのサックスを聴いたのだが、やっぱり、ブランフォードのサックスは良いなあ、と彼のサックスの良さを再認識した。特にこの「21世紀のネオ・オールド・スタイル」なサックスが、唯一無二で個性的で実に良い。ちょっとブランフォードの最近の諸作を聴き直さなければ....。この『Belonging』、好盤です。
 
 

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2025年10月 3日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・300

『Alligator Bogaloo』(1967年4月録音)、『Mr. Shing-A-Ling』(1967年10月録音)と、ブガルー、シンガリンの力を借りて展開した「ルーさんの考えるソウル・ジャズ」。この『Midnight Creeper』は、そんなブガルーや新がリンの音要素を取り込み、融合し、ルーさんオリジナルのソウル・ジャズの創造の「ほぼ完成形」が記録されている。

Lou Donaldson『Midnight Creeper』(写真左)。1968年3月15日の録音。ブルーノートの4280番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as) Blue Mitchell (tp), George Benson (g), Lonnie Smith (org), Leo Morris (ds)。ルー・ドナルドソン(以降 ”ルーさん”)の、ブルーノートへのカムバック〜ソウル・ジャズ転身の第3弾。

ファンクネスをソウルフルに転換し、R&Bな雰囲気をそこはかと無く取り入れた独自のグルーヴ感を自家薬籠のものとし、アレンジを含めて、ルーさんのグループ・サウンドとして昇華した、ルーさん独特のソウル・ジャズのテイストが、この盤に充満している。従来のルーさん独特の「アルト・サックスのファンクネス」はしっかり残っていて、アドリブ・フレーズを聴くと、直ぐに「ルーさんだ」と判る。
 

Lou-donaldsonmidnight-creeper

 
スローな曲、ちょっと速いテンポの曲が1曲ずつあるが、残りは同じテンポ、ミッド・テンポの曲が並ぶ。これが、アルバムとして連続して流れてくると、不思議とソウルフルなグルーヴ感が「だだ漏れて」くるのだから、この盤は、ソウル・ジャズ盤として、意外と「ヤバい」。思わず、どっぷりと、独特な「ユルユルなグルーヴ感」に浸かってしまう。

ロニー・スミスのオルガンの存在が効いている。アルト・サックスとトランペットのフロント2管だけだと、ちょっとエッジが立って、ゆるゆるのグルーブ感が、ちょっとトゲトゲしくなりそうなところを、ロニー・スミスの丸くて力感のあるオルガンが、そのトゲトゲ感を全く緩和して、ルーさん独特のグルーヴ感を支え、増幅する。ルーさん独特のグルーヴ感とロニー・スミスのオルガンの音色との相性が抜群である。

ジャズらしからぬジャケに惑わされてはならない。ルーさん独特の「ユルユルでソウルフルなグルーヴ感」が心地良く漂う、由緒正しき「ルーさんの考えるソウル・ジャズ」がこの盤に詰まっている。決して、イージーリスニング志向では無い、ガッツリと純ジャズしている、ルーさんのソウル・ジャズに、ルーさんのジャズマンとしての「矜持」感じる。極上のソウル・ジャズ。好盤です。
 
 
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2025年10月 2日 (木曜日)

チックの ”モントルー・ライヴ集”

僕はチック・コリアが大好きである。彼は、50年前、ジャズを本格的に聴き始める切っ掛けになったジャズ・ピアニスト。ジャズ・ピアノについては、チック・コリアが最初のアイドル。しかし、 2021年2月9日、惜しくも鬼籍に入ってしまった。悲しい。もう、チックの新作を聴くことが出来ない。と、思っていたら、幾つか、未発表のライヴ音源がリリースされるので、ちょっとだけ、寂しさが癒えている。

Chick Corea『The Montreux Years』(写真左)。2022年のリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。曲毎に収録年月日と収録時のパーソネルが異なるので、少なくとも、収録年と曲名とパーソネルは必須である。タイトル通り、収録されたライヴ音源は、どれもが「Montreux Jazz Festival」(毎年7月開催)での録音。

いかに、チックのアレンジ、リーダーシップ、演奏バリエーション&表現力が、いかに豊かなのかが、凄く良く判るライヴ音源の数々。どの演奏も、内容のある、テクニック豊かな、上質のコンテンポラリーな純ジャズであり、エレ・ジャズである。パーソネルが変わっても、チックの音世界は全く「ブレ」がないのが良く判る。様々な演奏バリエーションの中でも、チックの個性は全く陰ることは無い。

このライヴ盤、僕の様な、チック・コリアのマニア、いわゆる「チック者」にとっては、マスト・アイテム。ジャズ者初心者の方には、チック・コリア入門の1枚としてお勧め出来る。そして、ジャズ者ベテランの方には、このライヴ盤を聴いて、チックの才能と個性を再認識して欲しい。そんな、なかなかの優れもののライヴ音源集です。
 

Chick-coreathe-montreux-years
 

Tracks – 
1: Fingerprints (2001)
2: Bud Powell (2010)
3: Quartet No 2 [pt 1] (1988)
4: Interlude (2004)
5: Who’s Inside the Piano (1993)
6: Dignity (2001)
7: America [Continents pt 4] (2006)
8: New Waltz (1993)
9:Twinkle twinkle (1981)

Personnel –
Chick Corea New Trio [1, 6]
Chick Corea (p), Avishai Cohen (b), Jeff Ballard (ds)
Chick Corea Freedom Band [2]
Chick Corea (p), Kenny Garret (sax), Christian McBride (b), Roy Haynes (ds)
Chick Corea Akoustic Band [3]
Chick Corea (p), John Patitucci (b), Tom Brechtlein (ds)
Chick Corea Elektric Band [4]
Chick Corea (p), Frank Gambale (g),  Eric Marienthal (sax), John Patitucci (b),
Dave Weckl (ds)
Chick Corea Quartet [5, 8]
Chick Corea (p), Bob Berg (sax), John Patitucci (b), Gary Novak (ds)
Chick Corea & The Bavarian Chamber Philharmonic Orchestra [7]
Chick Corea (p), Tim Garland (sax, fl), Hans Glawischnig (b),
Marcus Gilmore (ds)Bavarian Chamber Philharmonic Orchestra: strings
Chick Corea Quartet [9]
Chick Corea (p), Joe Henderson(ts), Gary Peacock(b), Roy Haynes(ds)
 
 

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2025年10月 1日 (水曜日)

ミラーの未発表ソロ・ピアノ盤

マルグリュー・ミラーは、1955年8月、米国ミシシッピー州生まれ、2013年5月に脳卒中にて急逝。57歳だった。彼のピアノは、ラムゼイ・ルイス、そしてオスカー・ピーターソンの影響を受け、ダイナミックでスインギーな演奏と疾走感のある指回し、堅実かつ成熟した、ハード・バッパーなピアノ。フレーズはファンキーで流麗で力感溢れ、繊細な表現にも優れた、オールマイティーなパフォーマンスが特徴。

Mulgrew Miller『Solo in Barcelona』(写真左)。2004年2月2日、スペインのバルセロナでの録音。ちなみにパーソネルは、Mulgrew Miller (p) のみ。マルグリュー・ミラーのソロ・ピアノ盤である。ミラーのピアノの個性が如実に判る、優れた内容の未発表ソロ・ピアノ盤である。

マルグリュー・ミラーは、1980年代以降のポスト・バップ・シーンにおける最重要ピアニストの一人。1980年半ば以降の「純ジャズ復古」の時代の中では、ウィントン・マルサリス率いる「新伝承派」の括りに入っていたが、ミラーのピアノは、単純な1960年代のモード・ジャズの焼き直し、ステップアップでは無い。彼のオリジナリティーを織り込んだ、ミラー独自のモード・ジャズを自家薬籠中のものにしている。
 

Mulgrew-millersolo-in-barcelona 

 
このライヴ盤は、ミラーにとってはユニークな内容で、モーダルな演奏手法をほとんど使わずに、ハード・バッパーなパフォーマンスをメインに、ソロ・ピアノを弾き回している。ただし、音の重ね方とかフレーズの響きは、ハードバップ時代には全く無いもので、明らかに、ポスト・バップな、21世紀のネオ・ハードバップな響きがする。ファンキーな弾き回しなど、いかにも、ミラー自身がリラックスして楽しんで演奏する様子が伝わってくる。

ディジー・ガレスピーのバップ曲「Tour De Force」から始まり、アントニオ・カルロス・ジョビンのボッサ曲「O Grande Amor」、はたまた、エロール・ガーナーの名曲バラード「Misty」、そして、コール・ポーターの「I Love You」をはじめとする「It Never Entered My Mind」「Milestones」「Woody'n You」「Just Squeeze Me」などの有名スタンダード曲などを、途中、ミラーの自作曲を織り交ぜながら、小粋なアレンジで弾き進めていく。

全く小難しくなく、ジャズの良さ、楽しさがダイレクトに伝わってくるミラーの弾き回し。アレンジ良し、即興演奏の弾き回しが魅力的で、ファンキーな弾き回しなどは聴いていて楽しい。ミラーのピアノの良さが本当に良く判るソロ・ピアノ盤。難しいことを考えず、気軽に聴いてもらいたい、ピアノ・ソロ盤の名盤の1枚だと思います。
 
 

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