ジョシュアの歌伴サックス盤
ジャズ・サックス奏者の中堅の代表格、ジョシュア・レッドマンの16枚目のリーダー作。ブルーノート・レコードでの初リーダー作。そして、新進気鋭のガブリエル・カヴァッサがリード・ボーカルを務める、ボーカルをメインに起用した初めての作品である。
Joshua Redman『where are we』(写真左)。2023念9月15日の録音。ブルーノートからのリリース。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (sax), Nicholas Payton (tp),Peter Bernstein, Kurt Rosenwinkel (g), Joel Ross (vib), Aaron Parks (p), Joe Sanders (b), Brian Blade (ds), Gabrielle Cavassa (vo),
ボーカルをメインにして、サックスが伴奏に回るという作品は、ジャズ・レジェンド、ジャズ・ジャイアントの間によくあるパターン。例えば、Abbey Lincoln『That's Him!』。ソニー・ロリンズのテナーが素敵な歌伴を提供。そして、『John Coltrane & Johnny Hartman』。魅力的な男性ボーカリスト、ジョニー・ハートマンのバックで、ジョン・コルトレーンが素敵な歌伴を提供している。
で、今回は、ジョシュア・レッドマンが、魅力的な女性ボーカリスト、ガブリエル・カヴァッサのバックで、素敵な歌伴を提供している。これが、先のロリンズやコルトレーンの歌伴に勝るとも劣らない、素晴らしい歌伴サックスを吹きまくっているから、聴き応え満点。
収録曲を見渡すと「After Minneapolis (face toward mo[u]rning)」(Woody Guthrie), 「Streets of Philadelphia」(Bruce Springsteen), 「Chicago Blues」(Count Basie), 「By the Time I Get to Phoenix」(Jimmy Webb), 「Alabama」(John Coltrane)、括弧内は作曲者。この盤は、定番のジャズ・スタンダード曲もあれば、ロック曲もあったりするカヴァーものであることが判る。
しかも、これは解説を読んで判ったんだが、全ての曲は米国の地名に由来するものが選ばれている。つまり、米国の地名にまつわる、様々な曲を並べた、組み合わせることで米国における何かを表現したコンセプト・アルバムとも解釈できるアルバムでもある。
ジョシュア・レッドマンがインタヴューに応えているが「様々な側面からアメリカを、アメリカの理想を体験するアルバムなんだ。(中略)アメリカだけについてではなくて、いろんな意味で時間を超越した人間のテーマである愛、喪失、希望、傷心、思い出、忘却、旅立ち、帰還と、アメリカに実際に存在する場所のあらゆるプリズムをフィルターに通しているんだ」。
簡単にまとめると「コンセプチュアルなスタンダード曲集であると同時に、アメリカが抱えるあらゆる側面へのトリビュート・アルバム」とも言える。ただ、答えのない抽象的なコンセプトなので、それはあまり気にしなくても良いのでは、とも思う。
ガブリエル・カヴァッサのボーカルは、あまりジャズっぽく無いのが良い。バックの演奏については、そもそも、バックのメンバーは「ブルーノート・オールスターズ」の様相を呈していて、悪かろう筈が無い。それぞれがその事典でのベストに近いパフォーマンスを発揮していると、僕は聴いた。
こういったコンセプチュアルな側面がジャズ盤に必要かどうかは別に議論するとして、このアルバムの演奏内容としては、上質の歌伴演奏を提供していて立派な内容だと思う。コンセプチュアルなアルバムという点では、このボーカル入りというフォーマットは、聴き手への訴求という点で成功していると思う。秀作です。
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