ロックのビッグバンド・カヴァー
生前、クインシー・ジョーンズが絶賛する。「彼女の力強く官能的なボーカルは魅惑的で、魂を癒してくれる。才能と美しさは並外れている。彼女が歌うものは何でも、彼女は自分のものにしていて、一音一音に意味がある。一度聴けばわかる…彼女は本物だ」。この彼女とは、ミシシッピ州生まれで、ビルボードチャートで2度首位を獲得したボーカリスト、デボラ・シルヴァー(Deborah Silver)である。
Deborah Silver & Count Basie Orchestra『Basie Rocks!』(写真左)。2025年の作品。ちなみにパーソネルは、Deborah Silver (vo : main), Count Basie Orchestra。
そんなデボラ・シルヴァーが、ジャズ・ビッグバンドの老舗、カウント・ベイシー・オーケストラと組んで、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、スティング、エルトン・ジョン、ポリスといったロック界の巨匠たちの演奏を、自然なセンスと正統派ビッグバンド・アレンジで再解釈した、魅力的な企画盤。ローリング・ストーンズの名ドラマー、スティーヴ・ジョーダンがこの盤をプロデュースしている。
以下がトラックリスト。エルトン・ジョンの1973年のヒット曲「Benny & The Jets」のピアノ・シンコペーションはコール&レスポンスの様に響き、ビル・フリゼールのギター・ソロが魅力的な、スティーヴ・ミラー・バンドの定番曲「Fly Like An Eagle」。
カート・エリングの歌唱が素晴らしい、ソフト・セルの「Tainted Love」。トロンボーン・ショーティをフィーチャーした、スリー・ドッグ・ナイトのヒット曲「Joy to the World」。ボブ・シーガーの「Old Time Rock and Roll」は不思議とビッグバンド・サウンドに合う。
1.「Paint it back」 feat. Arturo Sandoval and Pedrito Martinez
2.「Benny & The Jets」
3.「Baby I love your Way」 feat. Peter Frampton
4.「Tainted Love」
feat. Kurt Elling (duet) w/ Steve Jordan (ds), John Clayton (b)
5.「Band On The Run」
6.「A Hard Days Night」 featuring: Monte Croft
7.「Joy To The World」 feat. Trombone Shorty (duet)
8.「Fly Like An Eagle」 feat. Bill Frisell
9.「Every Breath You Take」 feat. George Coleman
10.「Old Time Rock & Roll」
feat. Wycliffe Gordon and Herlin Riley (duet)
11.「Life’s Been Good」
feat. Scotty Barnhart of The Count Basie Orchestra
まず、デボラ・シルヴァーの歌唱が素晴らしい。現代の正統派ジャズ・ボーカル。ポップスでもロックでも無い。紛れも無い「ジャズ・ボーカル」といった雰囲気のシルヴァーの歌唱が全編に渡って、素晴らしい存在感を放っている。
そして、ビッグバンド・アレンジが素晴らしい。ロック&ポップス曲のジャズ・カヴァーは、曲の持つ印象的なフレーズを忠実に再現するあまり、ジャズのサウンドに乗ったイージー・リスニング・ミュージックになってしまう傾向が強いのだが、この盤は違う。
正統なビッグバンド・アレンジに乗った、あくまで、ジャズに力点を置いた、ロック&ポップス曲のカヴァーになっているところが素晴らしい。しかも、そんな演奏を担当するのが、ジャズ・ビッグバンドの老舗、カウント・ベイシー・オーケストラ。あくまで、ジャズ・アレンジされたロック&ポップス曲が、とにかく聴いていて楽しい。
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