E. アレキサンダーは疾走する
2000年以降の比較的新しい時代のジャズも好んで聴いている。新しくその才能を開花させた新人のアルバムもあれば、20世紀にデビューして、21世紀になっても、なお活躍しているベテランのアルバムもある。ジャズ先進国の21世紀のジャズもあれば、ジャズ新興国のオリジナリティー溢れるジャズもある。
僕が感心するのは、それらのアルバムは、決して、20世紀を振り返って、懐古趣味に走るのではなく、21世紀のその録音時点での「新しい何か」を反映させていること。ジャズは進化の頂点を迎えて久しいが、まだまだ「深化の」のりしろはあるということで、今更ながら、ジャズの懐の深さを感じて感心することしきりである。
Eric Alexander『Chicago To New York』(写真左)。2025年の作品。ちなみにパーソネルは、Eric Alexander (sax), Mike LeDonne (p), Dennis Carroll (b), George Fludas (ds)。今年57歳になる、ベテラン人気サックス奏者、エリック・アレキサンダーの新作になる。編成は、アレキサンダーのテナー1管の、いわゆる「ワンホーン・カルテット」。
冒頭、「Afro Blue」や「Wise One」などコルトレーンゆかりのナンバーでスタートする。アレキサンダーのテナーは「シーツ・オブ・サウンド」で疾走する。しかし、ここで「何だ、コルトレーンの物真似か」と思ってはならない。アレキサンダーの「シーツ・オブ・サウンド」は、コルトレーンのそれを深化させ、テクニックはさらに高度に、そして、フレーズの音は、アレキサンダーのオリジナル。
つまり、コルトレーンの編み出した「シーツ・オブ・サウンド」を、普遍的なテナー・サックスの奏法として捉え、自らのオリジナリティーを添加した、そんな内容の演奏なのだ。これが素晴らしい。このアレキサンダー・オリジナルな「シーツ・オブ・サウンド」がこの盤にてんこ盛り。疾走感と爽快感が印象的。モーダルなネオ・ハードバップである。
我が国のポニーキャニオンやアルファ、ヴィーナスといったレーベルからリーダー作をリリースしているんで、日本のレコード会社が金をかけて祭り上げた、平凡なテナー・サックス奏者と誤解して敬遠するジャズ者ベテランの方もいるみたいだが、どうして、まず、この2005年の新作を聴いて欲しい。コルトレーンから始まり、コルトレーンを深化させ、自らのオリジナティーを添加した見事な吹奏がここにある。好盤である。
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