ジャズ喫茶で流したい・297
当時のブルーノートとして、大手リバティーの傘下に入り、純ジャズ度、モダン・ジャズ度を落とすこと無く、大衆受けする「売れる」ジャズ盤をリリースする、という範疇に入るアルバムではあるが、内容は濃く、純ジャズとしても、ファンキー・ジャズとしても、ラテン・ジャズとしても、ジャズロックとしても、大衆にしっかり訴求する正統派ジャズ・アルバムである。
Duke Pearson『The Right Touch』(写真左)。1967年9月13日の録音。ブルーノートの4267番。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp, flh), Garnett Brown (tb), James Spaulding, Jerry Dodgion (as, fl), Stanley Turrentine (ts), Duke Pearson (p, arr), Gene Taylor (b), Grady Tate (ds)。
デューク・ピアソンの10枚目のリーダー作。フロント5管、ピアノ・トリオがリズム・セクションのオクテット編成。デューク・ピアソンのアレンジが冴える、当時のブルーノート・オールスターズの大編成盤である。ピアニスト、作曲家、アレンジャーとしてのデューク・ピアソンの才能が最大限に発揮された1枚。プロデューサーは、フランシス・ウルフ。アルフレッド・ライオンでは無い。
冒頭の「Chili Peppers」は、ロンドンのクラブ・シーンでクラシックとなった名曲。ラテン・フレーバーが芳しいピアソンのピアノのリードで、バンド全体が、ダンサフルにジャズロックして、疾走する。ユニゾン&ハーモニーが印象的で、アレンジの優秀性を物語る。タレンタインのテナーは骨太でファンキー。フルートの音色はファンクネスを増幅する。グラディ・テイトのドラミングはファンクネスを撒き散らす。
続く「Make It Good」は、ピアソンのシンプルでシングル・タッチで「ライト・タッチ」な、個性的なピアノが心ゆくまで聴くことが出来る。演奏全体の落ち着いたアレンジが実に洒落ていて粋。
3曲目「My Love Waits (O Meu Amor Espera) 」は、ボサノバ・ジャズ志向のムード溢れる1曲。ピアソンのシンプルでシングル・タッチで「ライト・タッチ」なピアノ・ソロが抜群に良い雰囲気を醸し出している。ジーン・テイラーのベースが、演奏の「底」をがっちりキープしていて見事。
4曲目の「Los Malos Hombres」は、どこから切ってもラテン・ジャズ。見事なラテン調のアレンジで、演奏するジャズマンのテクニックと相まって、躍動感溢れる切れ味の良い、そして、ブルーノートらしい端正で完成度の高いラテン・ジャズが展開される。ハバードのトランペット大活躍。クラブ・ジャズでウケるのも納得の名演である。
5曲目「Scrap Iron」は、スローなブルース。泥臭くならず、どこか気品漂うところはアレンジの妙。ブルースと言えば「タレンタイン」。タレンタインのテナーが漆黒どっぷりファンキーに唄いまくる。そして、ラストの「Rotary」は、モーダルで即興性溢れる佳曲。フロント管の入れ替わり立ち替わりのアドリブが楽しい、スインギーな演奏。
全曲ピアソンの作曲&アレンジ。演奏はブルーノート・オールスターズ。リハーサルをしっかり積んだであろう、端正で破綻の無い、ダイナミックで躍動感溢れる演奏が素晴らしい。ブルーノート4200番台の名盤の1枚です。
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