ハンガリーの怪人ギターの好盤
Gabor Szabo =「ガボール・ザボ」と読む。不思議な響きの名前である。ハンガリーの怪人。ブダペストの生まれ。ジャズ、ポップ、ロック、ハンガリー音楽を融合させたスタイルがユニークな、ハンガリー系アメリカ人のギタリストである。国籍不明、ジャンル不明な、硬質でロックっぽい、ちょっと「ヘタウマ」なギターが個性。
1956年のハンガリー動乱の後、米国カリフォルニア州に移住、1958年から1960年までボストンのバークリー音楽大学で学び、その後チコ・ハミルトン楽団で活動。チコのバンドを脱退以降、インパルス・レコードと契約、リーダー作を数々リリースしていく。
Gabor Szabo『High Contrast』(写真左)。1970年12月と1971年2月の録音。ちなみにパーソネルは、ábor Szabó (g), Bobby Womack (g), Mark Levine (p), Wolfgang Melz, Phil Upchurch (b), Jim Keltner (ds), Felix "Flaco" Falcon (congas), Carmelo Garcia (tom-tom, Timbales), Rene Hall (string arr), The Shadow (a.k.a.Tommy LiPuma) (tambourine, perc, record producer)。
不思議な響きのギター全開。従来からの聴き馴れたジャズ・ギターの音色がしない。アドリブ展開やフレーズも従来のジャズ・ギターのそれでは無い。独特の展開、独特なフレーズ。マイナー調な響きがエキゾチックで、ジャジーっぽさが無い。どちらかと言えば、欧州の民俗音楽的な響きがする。
この『High Contrast』は、ザボのギターの個性が手に取るように判る。とにかく、ギターの音がユニークで、従前の純ジャズっぽさは全く無い。パッキパッキ硬質で欧州の民俗音楽的な響きは、どちらかと言えば、プログレッシヴ・ロック系のギターの音だったりする。しかし、これが結構、癖になる。
冒頭に、1976年にジョージ・ベンソンが大ヒットさせることになる「Breezin'」のオリジナル・バージョンが収録されている。これが結構、話題に鳴っているみたいだが、ベンソンの「Breezin'」の骨格の様な演奏が実に潔い。この印象的なフレーズを持った楽曲に漂う、欧州の民俗音楽的な響きが、ザボの演奏では色濃く、このオリジナル・バージョンもなかなかに聴き応えがある。
ラテン・テイストを醸しだすジャズ・ロックあり、ジャズ・ファンクあり、ソウルフルなフュージョンあり、バラエティーに富んだ内容だが、ザボの怪人ギターが一本筋を通していて、アルバム全体に統一感がある。そして、その統一感を確固たるものとし、この盤で、ザボのギターを映えに映えさせるプロデュースを、プロデューサー名人、トミー・リピューマがその力を存分に発揮している。
ザボの怪人ギターが相当に癖があるので、従来の純ジャズ・ギターが全て、というジャズ者の方々には、異端も異端、認めたくないギターだろうが、このギターの音色、フレーズも「ジャズ」である。ソウル・ギターの大御所ボビー・ウーマックとの共演も好要素として作用していて、良い感じ。この盤、硬派なクロスオーバー&フュージョンなアルバムとして、なかなか聴き応えのある内容です。
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