ジャズ喫茶で流したい・293『A New Conception』
ブルーノート・レーベルは懐の深い、硬派なレーベルである。必要最低限しか商業主義に走らない、これは、と感じた、その時その時のジャズのトレンド、ジャズのスタイルを分け隔て無く記録に残す。そして、ジャズマンの演奏志向を良く理解し、それを最優先に録音する。だからこそ、ブルーノートは今でも尊敬され、一目置かれるレーベルとして君臨しているのだ。
Sam Rivers『A New Conception』(写真左)。1966年10月11日の録音。ブルーノートの4249番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts, ss, fl), Hal Galper (p), Herbie Lewis (b), Steve Ellington (ds)。サム・リヴァースの3枚目のリーダー作。サム・リヴァースによる7曲のジャズ・スタンダード曲の解釈が収録されている異色盤。
新主流派、そして、フリー&スピリチュアル・ジャズの雄、サム・リヴァースが、スタンダード曲に挑んだ、ブルーノートの異色盤。しかし、ただの「スタンダード曲」への挑戦では無い。当時、サム・リヴァースが持っている、サックス&フルート吹奏のテクニックの全てを総動員して、スタンダード曲を解釈している。つまり「リヴァースが考えるスタンダード演奏」な内容なのだ。
冒頭の「When I Fall in Love」から、ラストの「"Secret Love」までを聴けば、それが良く判る。初めのテーマを吹奏するところは、ハードバップ、若しくは、イージーリスニング・ジャズ志向の、流麗でテーマに忠実な吹奏。これが、確かなテクニックで吹かれるので、テーマの魅力がダイレクトに伝わる。リヴァースの吹奏の歌心がビンビンに伝わる。
そして、アドリブ部に入ると、モードに展開する。リヴァース十八番の、成熟したモーダルな展開。自由度は高いが、吹き回しが流麗なので、とても耳に優しい。そして、時々、フリーにアブストラクトに展開する。バラード曲では、スピリチュアルな響きがとても魅力的、フリー&スピリチュアル・ジャズの雄、サム・リヴァースの面目躍如。
ハードバップで入って、モードに展開し、時々、フリーにアブストラクトに効果的に展開し、スローな曲調では、スピリチュアルな雰囲気全開。そして、どのスタイルで吹いても、底に流れる「歌心」。これが「リヴァースが考えるスタンダード演奏」である。
今の耳で聴いても、新しい響き。今の耳で聴いても、全く違和感は無い。今の、現代のジャズのスタンダード解釈は、この1966年のサム・リヴァースのリヴァースが考えるスタンダード演奏」と変わりが無い。リヴァースは自分の演奏志向と聴き手とのバランスを、しっかりと考えることの出来るジャズマンだったのだろう。
このリーダー作では、聴き手の立場に立って、スタンダード曲を解釈するリヴァースが透けて見える。そして、このリヴァースの企画にゴーサインを出した、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼。ブルーノート4249番、ブルーノート4200番台の名盤の1枚である。
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