オーネットの考える ”フリー”『The Empty Foxhole』
オーネットのフリー・ジャズについては、僕は「それまでのジャズで、やってはいけないこと」を演奏に反映する、そして「ジャズはそもそも即興演奏を旨とする音楽だから、どんな演奏方式でも、どんな奏法でも、どんなリズム&ビートでもいいじゃないか」という演奏志向を、「フリー」というキーワードで追求している、と解釈しているんだが、このアルバムでは「どんなリズム&ビートでもいいじゃないか」をメインに追求している様に聴こえる。
Ornette Coleman『The Empty Foxhole』(写真左)。1966年9月9日の録音。ブルーノートの4246番。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as :tracks 1, 5, 6, tp :tracks 2, 4), vln :tracks 3), Charlie Haden (b), Denardo Coleman (ds)。フリー・ジャズの奇才、オーネット・コールマンのピアノレス・トリオ。オーネットがマルチ演奏者となって、アルト・サックスに加えて、トランペットとヴァイオリンも演奏している。
オーネットのブルーノート・レーベルの第2作目。このアルバムは、名ライヴ盤『At the "Golden Circle" Stockholm』に続く、ブルーノート・レーベルでの初のスタジオ録音になる。
つまりは「あれをやっちゃ駄目、これをやっちゃ駄目は、ジャズの自由度を狭める。なんでもかんでもやってみよう、というのが、真のジャズである」というのがオーネットの考え方なんだろうが、この番では、なんと、当時10歳の息子デナード・コールマンをドラマーに採用するという「暴挙=自由(フリー)」に出ている。
どう考えたって、弱冠10歳のドラマーが、感動を呼ぶ、まともなリズム&ビートを供給出来るとは思えない。しかし、オーネットは考えている。この盤での、リズム&ビートはジャズベースの哲人、チャーリー・ヘイデンに全面的に委ねている。ヘイデンの奏でるリズム&ビートを拠りどころに、オーネットは「今まで通りのパフォーマンス」を現出している。
どうして、当時10歳の素人の息子デナード・コールマンをドラマーに採用したのか。オーネットの心の中が全く判らない。音楽として、聴き手の人達にちょっと失礼であろう。「それまでのジャズで、やってはいけないこと」の1つとして、ドラマーを素人から採用したのであれば、これはちょっとジョークが過ぎるのではないだろうか。
聴いていて明らかにドラミングに違和感がある。明らかに素人が自由気ままにドラムを叩いている。多少は勉強し練習したんだろうが、どう聴いても、プロのドラミングとは言い難い。オーネットは、ドラムのリズム&ビートは、実は素人が自由に叩いた方が、真の「フリー・ジャズ」に近づく、と考えたのだろうか。
しかし、名ライヴ盤『At the "Golden Circle" Stockholm』での、盟友レギュラー・ベーシストのデヴィッド・アイゼンソンはこれに賛同せず、セッション・メンバーから降りている。
もちろん、オーネットの吹奏は申し分無い。しかし、ヴァイオリンの「スクラッチのようなやり方」での弾き方は、どうにもワンパターンで飽きる。これも、素人が自由に弾いた方が、真の「フリー・ジャズ」に近づく、と考えたのだろうか。
この盤は、オーネットの吹奏とヘイデンの類い希なタイム感覚を有した「哲人ベース」によって、辛うじて及第点を獲得したアルバムだと思う。しかし、ブルーノートの総帥プロデューサーのライオンが、よくこの演奏を許したものだ、と思ったら、この盤のプロデュースは、ライオン引退後の「フランシス・ウルフ」だった。ウルフのプロデュース感覚を疑ってしまった。
このオーネットの「自分の息子はまだ音楽のルールやクリシェに縛られておらず、ピュアでフリーな演奏ができると考えた」のであれば、セッションのメンバー全員が素人でやれば、真の「フリー・ジャズ」に近づく、ということになる。これはどうなんだろう。僕は音楽家としてのオーネットをこの盤を聴いて、初めてその感覚を疑ってしまった。
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