新鮮なエレギの音の響きである
今から振り返ると、21世紀に入って、ジャズ・ギターの有望株が意外と出てきて、現在も活躍しているギタリストが多いなあ、と改めて感心している今日この頃である。
ギラッド・ヘクセルマン、ジュリアン・ラージ、カート・ローゼンウィンケル、オズ・ノイ、マイク・モレノ、ジョナサン・クライスバーグ等々、個性的で、テクニック優秀で、メインストリーム志向なギタリストばかりで、彼らのどのリーダー作も聴き応え十分なものばかり。
Oz Noy『HA!』(写真左)。2005年の作品。ちなみにパーソネルは、Oz Noy (g), George Whitty (org), Shai Bahar (syn), Will Lee (b), James Genus (ac-b), Anton Fig, Keith Carlock (ds)。7曲目「Downside Up」にのみ、ゲストで、Mike Stern が参加している。
Oz Noy(オズ・ノイ)は、1972年4月25日、イスラエルのテルアビブ近郊にて生まれ育ったギタリスト。現在NY在住の現在53歳。もはや中堅〜ベテランに差し掛かる、とても個性的な、エレギがメインのギタリストである。
この『HA!』は、オズ・ノイの初リーダー作(スタジオ録音)である。エレギがメインのジャズ・ギター。雰囲気的には、メインストリーム志向のコンテンポラリーな純ジャズ・ギター。様々なアタッチメントやエフェクターを駆使して、バラエティーに富んだ音色を弾き分ける。まず、このアタッチメントやエフェクターの積極的活用がオズ・ノイの個性。
アタッチメントやエフェクターの積極的活用については、ギターのテクニック自体がプアだと、アタッチメントやエフェクターの効果が上手く現れないことが多いのだが、オズ・ノイについては、テクニックについては全く問題が無い。よって、アタッチメントやエフェクターの効果がダイレクトにギターの音色に反映されるので、まず、このアルバムで感じるのは、ギターの音色の「潤沢な豊かさ」である。
演奏される曲の持つ曲想とオズ・ノイの解釈によって、曲毎にギターの音色を最適の音色に変えていく。これが、実に聴いていて楽しい。オズ・ノイのギターのフレーズについてはシンプルでストレート。捻れたところほとんど無い。このシンプルでストレートなフレーズが、アタッチメントやエフェクターの積極的活用について「トゥー・マッチ」にならずに、アタッチメントやエフェクターの効果が素直に乗っているのに感心する。
フレーズの響きと流れは、米国および欧州ジャズにおけるジャズ・ギターのフレーズとは一線を画している。オズ・ノイはイスラエルのテルアビブ。そのイスラエルな響きが、オズ・ノイのギター・フレーズに宿っている。
このアタッチメントやエフェクターの積極的活用とイスラエルな響きが、如実に現れている演奏が、8曲目の「Blue Monk」。ジャズの奇人、セロニアス・モンクの独特のスイング感を持つ「素敵に捻れた」名曲だが、この曲の持つ不思議なハーモニーとフレーズを、オズ・ノイの独特の解釈で、ブルージーに弾き進める。オズ・ノイのギターの個性が溢れている。
ジャズを基本に、ロックやブルース、ファンクの音要素を融合し、アタッチメントやエフェクターの積極的活用による、新しい音の響きを獲得した「NYアンダーグラウンド的なギター・サウンド」。そんな新鮮なギター・サウンドが醸し出す、21世紀の「新たなジャズ・ロックの響き」も新鮮さに満ちている。とにかく、ジャズ・ギターとして、ジャズ・ロックのギターとして、新しいエレギの音の響きの出現である。
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