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2025年4月 9日 (水曜日)

スタンダーズの飽くなき深化

キース・ジャレット(Keith Jarrett)。1945年5月生まれ。今年の5月で80歳になる。2020年10月、米『ニューヨークタイムズ』紙が、2度の脳卒中を起こし、音楽活動の復帰が困難な状況にあることを報じた。現在では、片手でしか演奏できず、本格的な復帰はほぼ絶望的とのこと。

キースのスタンダーズについては、ECMからリリースするアルバムは、ほとんどがライヴ盤だったことを振り返ると、スタンダーズの最後のライヴ盤のリリースが、2013年5月にリリースされた『Somewhere』(2013年5月31日のブログ参照)。2009年7月11日、スイスのルチェルンにて行われた公演を収録した最新ライヴ音源で、この盤以降、新しい年での新作は出ていない。

Keith Jarrett Trio『Up for It』(写真左)。2002年7月16日、フランスのジュアン=レ=パンで開催されたジャズ・ア・ジュアン・フェスティバルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。2002年7月に行われたスタンダード・トリオの欧州ツアー中に録音されたもの。

スタンダーズのアルバムの中で、今のところ直近のライヴ録音である『Somewhere』(2009年7月11日の録音)の一枚前、現時点でのスタンダーズのディスコグラフィーの「ラス前」のアルバムになる。

この盤の収録曲が、これまでのスタンダードらしからぬ選曲である。ほぼ全曲、「ど」がつくほどの有名スタンダード曲ばかり。しかも、この日のスタンダーズ、それぞれの「ど」スタンダード曲のアレンジが、シンプルで判り易いアレンジを採用していて、それぞれの曲がイントロから何となく判って、主旋律は「そのもの」ずばり。
 

Keith-jarrett-trioup-for-it  

 
1. If I Were a Bell (Frank Loesser)
2. Butch & Butch (Oliver Nelson)
3. My Funny Valentine
(Richard Rodgers, Lorenz Hart)
4. Scrapple from the Apple (Charlie Parker)
5. Someday My Prince Will Come
(Frank Churchill, Larry Morey)
6. Two Degrees East, Three Degrees West
(John Lewis)
7. Autumn Leaves"/"Up for It
(Joseph Kosma, Jacques Prévert/Keith Jarrett)
 
しかし、それでいて、他のジャズマンのアレンジでは絶対に聴くことのできない、スタンダーズ独特、キース独特の音の重ね方、音の展開で演奏されるのが素晴らしい。聴いていて、すぐに「これって、スタンダーズやね」と判るくらい、独特のアレンジ。だけど、それぞれの曲がイントロから何となく判って、主旋律は「そのもの」ずばり。スタンダード曲の新しいアレンジのバリエーションを聴かせてもらったイメージ。

「If I Were a Bell」「My Funny Valentine」「Someday My Prince Will Come」など、お馴染みのスタンダード曲を、温故知新、それぞれのスタンダード曲の持つ美しい旋律はシンプルに活かし、アドリブ部に入ると、スタンダーズとして、新しい響きにチャレンジする。2002年、結成19年目にして、さらに深化し続けるスタンダーズには頭が下がる思いだ。

フランスで行われた雨の屋外コンサートでのライヴ録音で、メンバーそれぞれが個人的な体調の問題を抱え、雨の中での会場へのアプローチも辛く、演奏前のディナーは雨の中、短時間でのサウンド・チェック等々、コンディションは最悪だったらしいが、演奏自体は、2002年度の「スタンダーズの深化バージョン」の密度の濃い演奏が繰り広げられている。
 
 

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