マントラの『Bop Doo-Wopp』
純ジャズやニュー・ジャズ、硬派でメインストリームなジャズを聴き続けたら、ふと「耳休め」をしたくなる。メインストリームなジャズの合間に聴く「耳休め」ジャズは、僕の場合、クロスオーバー&フュージョン・ジャズか、もしくは、ジャズ・ボーカル。
今回はジャズ・ボーカル。しかし、僕のジャズ・ボーカルの嗜好はちょっと変わっている。本格的なジャズ・ボーカルはちょっと苦手。ポップでクロスオーバーでフュージョンなジャズ・ボーカルがお気に入り。硬派なジャズ・ボーカル者の方々であれば「眉をひそめる」んだろうが、好きなものは仕方がない。で、今回は「マンハッタン・トランスファー(以降、マントラと略)」。
The Manhattan Transfer『Bop Doo-Wopp』(写真左)。ライヴ部は1983年11月、スタジオ部は1983年12月、1984年10月の録音。
ちなみにパーソネルは、Cheryl Bentyne, Tim Hauser, Alan Paul, Janis Siegel (vo) = The Manhattan Transfer。バックバンドは、Yaron Gershovsky (key, cond), Jon Mayer (ac-p), Tom Kellock (syn), Ira Newborn, Wayne Johnson (g), Alex Blake, Andy Muson (b), Jim Nelson, Art Rodriguez (ds), Don Roberts (woodwinds)。
マントラの9枚目のアルバム。1984年末にアトランティック・レコードからのリリース。収録曲10曲のうち6曲はライヴ演奏。
6曲のライヴ演奏のうち、「Route 66」「Jeannine」「How High the Moon」「Heart's Desire」「That's The Way It Goes」は、1983年11月に日本の中野サンプラザで行われたライヴ録音。チラッと日本語が飛び出したりもするところが面白い。そして、「The Duke of Dubuque」は、 PBSの「 Evening at Pops」シリーズのためのライヴ録音。
「My Cat Fell in the Well (Well! Well! Well!)」「Baby Come Back to Me (The Morse Code of Love)」「Safronia B」「Unchained Melody」の4曲はスタジオ録音。
ライヴ部は、成熟したマントラの歌唱がダイレクトに堪能できる。スインギーで疾走感のある素敵なボーカル。独特の響きで魅了するユニゾン&ハーモニー。ライヴだけに4人のコーラスに馬力がある。豪快に唄い、すっ飛ばすマントラ。ポップでバップでエネルギッシュでクール。ジャズ・コーラス・グループとして成熟の極み。
スタジオ部は、精緻に積み上げられた、完成度の高いマントラの歌唱が堪能できる。マントラのコーラスの特性がしっかりと映える、インテリジェンス溢れるアレンジ。「Baby Come Back to Me」や、テンポの速い「Unchained Melody」など、陽気なドゥーワップ的作風の楽曲が印象的。
ライヴ音源とスタジオ録音音源がミックスされた、摩訶不思議なアルバムだが、ライヴ部も、スタジオ部も、マントラの歌唱&コーラスをベースとして、統一感がある。
ライヴ音源とスタジオ音源とが混在しているが、混在してるが故の「散漫な」雰囲気は、僕には感じられない。ダイナミズム溢れる、精緻に積み上げられた、成熟したマントラの歌唱が映えに映える。それが、このライヴ&スタジオ録音の混在盤の良いところだろう。
ライヴ音源とスタジオ音源の両面から、マントラの音楽性、マントラのパフォーマンスの特徴を体感できる、ユニークな内容のアルバムである。
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