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2025年4月25日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・282

米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターと言えば「チェット・ベイカー(Chet Baker)」。

これまでのジャズ盤紹介本では、ボーカリストとしてのチェットをクローズアップしているものが大多数なので、チェット・ベイカーと言えば「ボーカリスト」と認識しているジャズ者の方々は多いと思われる。

しかも、1980年代まで、我が国のジャズ・シーンは、米国西海岸(ウエストコースト)ジャズをほとんど横に置いて、東海岸ジャズばかりを褒めそやし、東海岸ジャズばかりを愛でてきた。そのおかげで、米国ウエストコースト・ジャズの情報が圧倒的に不足していたので、チェットのトランペットのパフォーマンスを評価しようにも評価できなかった。

Chet Baker & Stan Getz『West Coast Live』(写真左)。1953年6月12日(The Haig, Hollywood)と1954年8月17日(Tiffany Club, Los Angeles)でのライヴ録音。パシフィック・レーベルから、1997年のリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

【1953/06/12 Disc One and 1954/08/17, Disk Two tracks 1-4】= Chet Baker (tp), Stan Getz (ts), Carson Smith (b), Larry Bunker (ds) 。チェットのトランペットとゲッツのテナーがフロント2管のピアノレスのカルテット編成。

【1954/08/17, Disc Two tracks 5-7】= Chet Baker (tp), Stan Getz (ts), Russ Freeman (p), Carson Smith (b), Shelly Manne (ds) 。チェットのトランペットとゲッツのテナーがフロント2管の、フリーマンのピアノ入り、オーソドックスなクインテット編成。

全20曲中、17曲がピアノレスのカルテット編成。3曲のみ、ピアノ入りのオーソドックスなクインテット編成。ほとんどがピアノレスのカルテット編成なので、ピアノのコード弾きによる規制が無い分、17曲のピアノレスのカルテット編成の演奏の方が、フロント管の自由度が圧倒的に高い。
 

Chet-bakerstan-getzwest-coast-live

 
このライヴ盤は、チェットのトランペットが聴きもの。チェットのトランペッターとしての優秀性がとてもよく判る。ゲッツはジェリー・マリガンの代役で急きょ参加したそうだが、そのせいか、ちょっと大人しめで、チェットを常に立てるような吹奏は、彼の特質である「クールなテナー」がちょっと裏目に出ている様にも感じる。

CD2枚組、全編2時間のライヴ演奏。全編に渡って、チェットのトランペットが素晴らしい。破綻なく流麗な吹き回し、ウォームでクールな芯のある音色、アドリブ・フレーズにしっかり宿る歌心。

中音域を中心に吹きまくるチェットのトランペットは魅力満載。力強くバイタルな吹きっぷりのチェットは格好良い。

どの曲でも、チェットはイマージネーション溢れるアドリブ・フレーズを叩き出す。このライヴの録音は1953〜54年。ウエストコースト・ジャズの最大の特徴、聴き手を意識した、小粋で秀逸なアレンジについては、まだ発展途上。

このライヴでは、パーソネルに名を連ねる有望ジャズマンが、自らのイメージで、自らのパフォーマンスをアレンジしている。これが素晴らしい。

このライヴ盤を聴いていると、チェットは、米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターだったことが良く判る。ウエストコースト・ジャズが発展途上の時期、西海岸のジャズマン達の資質に才能による、優れたインタープレイとソロ・パフォーマンスがこのライヴ盤に記録されている。

しかし、この優れたライヴ音源が、録音後、44年もお蔵入りになっていたとは信じ難い。それでも、1997年によくリリースされたと思う。

1954年時点で、ウエストコースト・ジャズは、これだけ優秀なパフォーマンスを展開していた、ということが良く判る。
 
 

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