ピアノ・トリオの代表的名盤 109
ジョージ・ケイブルス(George Cables)。1944年11月生まれ。今年で81歳になるベテラン・ピアニスト。ブレイキーやロリンズ、デックスなどのサイドメンを務める。僕は、復帰後のアート・ペッパーとの共演で、彼の名とプレイを知った。
彼のピアノは、適度に硬質のタッチで、適度に多弁なインプロビゼーションが特徴。適度に硬質ではあるが、マッコイ・タイナーの様にガーンゴーンと叩く様な硬質さでは無い。「しなやかな硬質さ」と表現したら良いだろうか。そして、シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無いが、モーダル・ジャズほど間を活かすことは無い。
マイルスとコルトレーンが創り上げたジャズのスタイルを、適度に聴き易く、適度にスローダウンした個性。しなやかな硬質さを持ったタッチで、適度に多弁なインプロビゼーションは、聴いていて、実に端正であり、実に「雅」であり「粋」である。とにかく、聴いていて楽しい、「メインストリーム・ジャズ」をバッチリ感じさせてくれるピアノである。
ふと、ジョージ・ケイブルスが聴きたくなった、と、今までにアップした「ケイブルス評」を再掲した訳だが、とにかく、ケイブルスのピアノは絶品。ちょうどそこに、昨年11月にリリースされた、ケイブルスのリーダー作があることに気がついた。
George Cables『I Hear Echoes』(写真左)。2024年1月30日と5月2日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、George Cables (p), Essiet Essiet (b), Jerome Jennings (da)。ケイブルスのピアノを愛でるに最適なトリオ編成。ケイブルスのピアノの個性と特徴が手に取るように判る内容になっている。
まず、第一印象は「若い」。今年81歳になるケイブルスだが、冒頭の自作曲「Echo of a Scream」からして、ケイブルスのタッチは若く瑞々しく躍動的。とても80歳のピアノとは思えない。
先に再掲した「適度に硬質ではあるが、マッコイ・タイナーの様にガーンゴーンと叩く様な硬質さでは無い。「しなやかな硬質さ」と表現したら良いだろうか。そして、シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無い」というケイブルスの個性が、とても良く判るパフォーマンスになっている。
3曲目の、これもケイブルスの自作曲「Morning Song」ケイブルスでは、緩急自在、変幻自在、困難自在な、実にフレキシブルな弾き回しに惚れ惚れする。基本はバップ・ピアノだが、ケイブルスはバップにも、モードにも対応する柔軟性を持っている。この曲では、「シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無いが、モーダル・ジャズほど間を活かすことは無い」独特の密度を持ったケイブルスの弾き回しの個性を感じることが出来る。
4曲目の有名スタンダード曲「Prelude to a Kiss」でのバラードな弾き回しは絶品。端正であり、実に「雅」であり「粋」なバラードな弾き回しには、思わず、じっくりと耳を傾けてしまう。タッチは明確で硬質なんだが、フレーズにロマンティシズム溢れ、流麗で印象的なアドリブ・フレーズの弾き回しは「さすが」と唸ってしまう。
他のどの曲もケイブルスのピアノの個性と特徴に溢れている。バックのリズム隊、エシエット・エシエットのソリッドで堅実なベースと、ジェローム・ジェニングスのポリリズミックで、変幻自在でありながら、堅実にリズム&ビートを叩き出し供給するドラムが、そんなケイブルスを絶妙にサポートし、絶妙に寄り添い、絶妙に鼓舞する。あまり、耳にしたことのないリズム隊の二人だが、二人のサポートはこれまた絶品。
いやはや、80歳のバップ・ピアノとは思えない、80歳のモーダルなイマジネーションとは思えない、ケイブルスの決して「古くない」、「今」のケイブルスの新鮮なフレーズと、躍動感溢れる弾き回しが、とても印象的。今年81歳を迎えてなお「新しい」、今なお深化するケイブルスが素敵である。この盤、謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」にアップさせていただきたい。好盤です。
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