ピエラヌンツィの ”地中海物語”
エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)。伊ジャズを代表する、欧州ジャズを代表するピアニストであるが、このところ、このピエラヌンツィのリーダー作が毎月の様にリリースされている。
これだけ多作なんで、マンネリしないのか、と思うのだが、ピエラヌンツィは様々な演奏編成にチャレンジし、様々な曲想の演奏を弾き分ける。とにかく、自らがマンネリに陥らない、そんな矜持が素晴らしい。
Enrico Pieranunzi『Racconti mediterranei』(写真左)。2003年の録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Marc Johnson (b), Gabriele Mirabassi (cl)。エンリコ・ピエラヌンツィのピアノ、マーク・ジョンソンのベース、ガブリエレ・ミラバッシのクラリネット、ドラムレスの変則トリオ編成。タイトルを日本語に訳すと「地中海物語」。
面白い響きと音の変則トリオ編成。ドラムレスなので、明確なリズム&ビートをリードする楽器がない。ピエラヌンツィのピアノとマーク・ジョンソンのベースが、リズム&ビートの供給を担う。
この編成で面白いのは、マーク・ジョンソンのベースが後方に引っ込んで、ピエラヌンツィのピアノとミラバッシのクラリネットが前へ出てくると、演奏全体の雰囲気は、クラシックの室内学的響きになる。そして、マーク・ジョンソンのベースが前面に出てくると、ジョンソンのベースがリズム&ビートの供給を担い、雰囲気はモダン・ジャズ演奏にと、ガラリと変わる。
この変則トリオ演奏が芳しい『地中海物語』、クラシックとモダン・ジャズとの融合が想起される内容。さすが欧州ジャズ、さすが伊ジャズ。クラシックの響きを宿したジャジーなインタープレイと、モダン・ジャズがベースのインタープレイとを見事に弾き分けている。
変則トリオな演奏であるが、そのメインとなるのは、ピエラヌンツィのピアノと、ミラバッシのクラリネットのデュオ演奏。このデュオの演奏、クラシックな香りのするソフトなインタープレイがメインだが、その緩急自在、変幻自在、硬軟自在な緻密な音の調和と融合と心地よい緊張感が、飛び抜けて素晴らしい。
そこに、マーク・ジョンソンのベースが絡むと、リズム&ビートが明確になって、ジャジーな雰囲気が濃厚になる。これが面白い。ジャジーなベースラインとビートの供給が効果的に作用して、ピエラヌンツィのピアノと、ミラバッシのクラリネットのデュオ演奏に、ジャジーな要素を注入する。
「クラシックとモダン・ジャズとの融合」といえば、米国ジャズには『モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)」が想起されるが、MJQよりも、クラシックな雰囲気の部分がクラシックらしい。欧州ジャズを代表する、ピエラヌンツィの「変則編成ジャズ」の傑作だと思う。
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