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2025年4月の記事

2025年4月30日 (水曜日)

ピエラヌンツィの ”地中海物語”

エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)。伊ジャズを代表する、欧州ジャズを代表するピアニストであるが、このところ、このピエラヌンツィのリーダー作が毎月の様にリリースされている。

これだけ多作なんで、マンネリしないのか、と思うのだが、ピエラヌンツィは様々な演奏編成にチャレンジし、様々な曲想の演奏を弾き分ける。とにかく、自らがマンネリに陥らない、そんな矜持が素晴らしい。

Enrico Pieranunzi『Racconti mediterranei』(写真左)。2003年の録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Marc Johnson (b), Gabriele Mirabassi (cl)。エンリコ・ピエラヌンツィのピアノ、マーク・ジョンソンのベース、ガブリエレ・ミラバッシのクラリネット、ドラムレスの変則トリオ編成。タイトルを日本語に訳すと「地中海物語」。

面白い響きと音の変則トリオ編成。ドラムレスなので、明確なリズム&ビートをリードする楽器がない。ピエラヌンツィのピアノとマーク・ジョンソンのベースが、リズム&ビートの供給を担う。

この編成で面白いのは、マーク・ジョンソンのベースが後方に引っ込んで、ピエラヌンツィのピアノとミラバッシのクラリネットが前へ出てくると、演奏全体の雰囲気は、クラシックの室内学的響きになる。そして、マーク・ジョンソンのベースが前面に出てくると、ジョンソンのベースがリズム&ビートの供給を担い、雰囲気はモダン・ジャズ演奏にと、ガラリと変わる。
 

Enrico-pieranunziracconti-mediterranei

 
この変則トリオ演奏が芳しい『地中海物語』、クラシックとモダン・ジャズとの融合が想起される内容。さすが欧州ジャズ、さすが伊ジャズ。クラシックの響きを宿したジャジーなインタープレイと、モダン・ジャズがベースのインタープレイとを見事に弾き分けている。

変則トリオな演奏であるが、そのメインとなるのは、ピエラヌンツィのピアノと、ミラバッシのクラリネットのデュオ演奏。このデュオの演奏、クラシックな香りのするソフトなインタープレイがメインだが、その緩急自在、変幻自在、硬軟自在な緻密な音の調和と融合と心地よい緊張感が、飛び抜けて素晴らしい。

そこに、マーク・ジョンソンのベースが絡むと、リズム&ビートが明確になって、ジャジーな雰囲気が濃厚になる。これが面白い。ジャジーなベースラインとビートの供給が効果的に作用して、ピエラヌンツィのピアノと、ミラバッシのクラリネットのデュオ演奏に、ジャジーな要素を注入する。

「クラシックとモダン・ジャズとの融合」といえば、米国ジャズには『モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)」が想起されるが、MJQよりも、クラシックな雰囲気の部分がクラシックらしい。欧州ジャズを代表する、ピエラヌンツィの「変則編成ジャズ」の傑作だと思う。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
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東日本大震災から14年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2025年4月29日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・283

グラント・グリーン(Grant Green)。1979年1月31日、NYで、ジョージ・ベンソンのブリージン・ラウンジでの演奏会に出席していた際、車内で心臓発作を起こし倒れ、そのまま、帰らぬ人となった。43歳であった。

しかし、グリーンの逝去時の1979年から、ブルーノートの「お蔵入り」音源から、グリーンの未発表音源のリリースが始まる。なんと、1979年から2006年まで、全部で10枚もの未発表音源リーダー作が、発掘リリースされている。

Grant Green『Matador』(写真左)。1964年5月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Elvin Jones (ds)。録音当時は「お蔵入り」未リリース。1979年、日本のキングレコードからブルーノートの未発表音源として、発掘リリースされた。

独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターが、ハードバップ&ファンキー&ソウルなジャズとして成熟した、絶妙なバップ・ギターが堪能できる逸品である。

まず、パーソネルを見て「唸る」。当時のコルトレーンの伝説のカルテットからピアノのマッコイ・タイナー、ドラムのエルヴィン・ジョーンズを借りてきている。そして、ベースには、柔軟な職人ベーシスト、ボブ・クランショウが座る。

このリズム・セクションの存在感が凄い。そして、このリズム・セクションをバックに、グリーンのギターがワン・フロントのカルテット編成。これ、どんな演奏になってるのか、聴く前から不安になる(笑)。
 

Grant-greenmatador

 
冒頭のタイトル曲、グリーンのオリジナル曲「Matador」から、そんな不安は杞憂に終わる。11分弱の長尺の演奏だが、これがまあ、凄まじい内容で、グリーンのギターの個性が、クッキリてんこ盛り。魅惑的な反復フレーズ、熱気溢れるミッドテンポなアドリブ展開。

独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターに相対する様に、タイナーの流麗でダイナミックなピアノが後に続く。そして、バッキングに徹するエルヴィンのポリリズミックなドラミングは、演奏のファンキー度合いを増幅し、クランショウの堅実ベースが、演奏の「底」をガッチリと支えている。

この冒頭の「Matador」の演奏だけでも、うへっ、これは凄いなんだが、続く2曲目の「My Favorite Things」の演奏はこれまた凄い。コルトレーンの十八番の名曲だが、このグリーンの「My Favorite Things」を聴いていると、ハードバップ&ファンキー&ソウル・ジャズとして聴いた時、コルトレーンの演奏より、このグリーンの演奏の方が、曲想を良く掴んでいて優れている、と感じるくらいに凄い。

以上の2曲だけでも、この盤は名盤だと思うし、3曲目「Green Jeans」から「Bedouin」、CDのみのボートラ、ラストの「Wives and Lovers」まで、グリーンの成熟したギターの個性を、最優先に楽しむべき演奏が詰まっている。

当時のコルトレーンの伝説のカルテットからピアノのマッコイ・タイナー、ドラムのエルヴィン・ジョーンズを借りてきているからといって、当盤とコルトレーンの諸作と比較するのは「野暮」というものだろう。

ワン・フロント楽器の志向が全く異なるのだから、比較しても仕方がない。もしかしたら、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、そんな「野暮」な比較を嫌ったが故の「お蔵入り」だったのかもしれない。

ジャケはウォーホールのイラスト。これがまた良い。この盤、グラント・グリーンの「ハードバップ&ファンキー&ソウルなジャズとして成熟」を心ゆくまで単横できる名盤と言って良いだろう。
 
 

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2025年4月28日 (月曜日)

グラント・グリーンの白鳥の歌

独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギタリスト、グラント・グリーン。彼の活動後期は、イージーリスニング・ジャズ志向のリーダー作をリリースしている。

それぞれ内容のあるイージーリスニング・ジャズ志向のリーダー作だったと思うが、一般にはウケが悪かった。そして、1979年1月31日、NYで、ジョージ・ベンソンのブリージン・ラウンジでの演奏会に出席していた際、車内で心臓発作を起こし倒れ、そのまま、帰らぬ人となった。43歳であった。

Grant Green『The Main Attraction』(写真左)。1976年3月19日の録音。1976年のリリース。CTI/Kudoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Grant Green (g), Burt Collins, Jon Faddis (tp), Sam Burtis (tb), Hubert Laws (fl), Michael Brecker, Joe Farrell (ts), Ronnie Cuber (bs), Don Grolnick (el-p, clavinet), Steve Khan (rhythm-g), Will Lee (el-b), Andy Newmark (ds), Carlos Charles (conga, perc), Sue Evans (perc), Dave Matthews (arr, cond)。

パーソネルを見渡せば、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ畑の名うてのミュージシャンがズラリ。実に豪華な面々で、出てくる音は、典型的な「CTIサウンド」。そう、このグラント・グリーンのリーダー作は、CTIからのリリース。プロデューサーは、クリード・テイラー、アレンジ&指揮はディヴ・マシューズ。

CTIサウンドに乗ったグラント・グリーンのパッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギター。これがCTIサウンドに実に良く合う。まるで、ウエス・モンゴメリーのCTI盤を聴くが如く、ジョージ・ベンソンのCTI盤を聴くが如く、格別上等のクロスオーバー&フュージョン志向の硬派な純ジャズ・ギターを聴くことが出来る。
 

Grant-greenthe-main-attraction

 
演奏の雰囲気は、ジャズ・ファンク+ソウル・ジャズ。フュージョン・ジャズ志向のソフト&メロウなバックの演奏に乗って、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターが、ソウルフルに唄いまくる。ソフト&メロウなバック演奏と、パッキパキ硬派でこってこてファンキーなグリーンのギターとの対比が良好。

1曲目のタイトル曲「The Main Attraction」のイントロのブラス・セクションのユニゾン&ハーモニーからして、ソウルそして、R&B志向のこってこてファンキーな響き。そして、出てくるメインの演奏は、適度にユルユルのR&B志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク。この1曲だけで20分弱の大作なのだが、ユルユルのR&B志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクだが、だれることなく、腰が揺れるが如く、足踏みをするが如く、極上のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクが展開される。

2曲目の「Future Feature」は、モータウンが入った、完璧硬派なソウル・ジャズ。R&B志向のブラス・セクションのユニゾン&ハーモニーが実に重厚ファンキー。ヒューバート・ロウズのフルートもファンキー&ソウルフル。スティーヴ・カーンのリズム・ギターのカッティングもファンク濃厚、そこに、思い切りソウルフルな、独特のシングルトーンでパッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターが唄いまくる。

ラストの3曲目「Creature」は、フェンダー・ローズの音とファンキーなフルートの音がソウルフル、そこに、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターが絡む。どっぷりソウルフルでR&Bでスローな展開はクセになる。

実は、この『The Main Attraction』が、グラント・グリーンのメジャー・リリースにおける遺作になる。体調が優れなかったので仕方がないが、このCTI/Kudoレーベルでのアルバム制作をどんどん推し進めて欲しかった。それほど、このジャズ・ファンク+ソウル・ジャズをベースにした典型的な「CTIサウンド」に、グリーンのギターは合う。しかし、このアルバムのリリースの2年ほど後に、グリーンは帰らぬ人になってしまう。実に惜しい早逝であった。
 
 

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2025年4月27日 (日曜日)

様々な曲想を自由に弾くタイナー

ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。迫力満点のモーダル・ピアノのレジェンド、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)。

コルトレーン・ジャズの精神性の継承者として、1970年代は、コルトレーン・ジャズを基にした、タイナー流のモード&スピリチュアル・ジャズを展開して、コルトレーン信者のジャズ者の方々を中心に絶大なる支持を得た。

しかし、コルトレーン・ジャズの精神性を踏襲し継承したモード&スピリチュアル・ジャズは1970年代まで。1980年代は、コルトレーン・ジャズの影響下から離脱、ピアノのスタイルと奏法はそのままに、タイナー・オリジナルの志向で、モード&スピリチュアル・ジャズを展開する。

McCoy Tyner『What's New?』(写真左)。1987年7月24 25日、米国フロリダ州フォートローダーデールでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Avery Sharpe (b), Louis Hayes (ds)。リーダーがピアノのタイナー、シャープのベース、ヘイズのドラム、この時期のレギュラー・トリオの快演の記録。

フュージョン全盛期にも、エレピにほとんど手を出さなかったタイナー。ここでも、アコースティック・ピアノ一本のトリオ演奏で、コルトレーン・ジャズの呪縛から解き放たれたかの如く、自由で爽快な、タイナー流のバップ・ピアノをガンガンに弾きまくっている。

レギュラー・ピアノ・トリオでのライヴ・パフォーマンスなので、和気藹々、適度にリラックスした雰囲気で、タイナー流のバップ・ピアノを、楽しそうに弾きまくっているタイナーは魅力満載。
 

Mccoy-tynerwhats-new  

 
冒頭の「Señor Carlos」は、ラテン・ジャズがベースだが、タイナー・オリジナルの志向のモード&スピリチュアルの典型的な演奏に早替わり。イントロ部のピアノはスピリチュアル・モード満載。そこに、ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手でアドリブ展開。タイナー流バップ・ピアノが疾走する。

4曲目「Port Au Blues」はブルース演奏。それでも、タイナー・オリジナルの志向のモード&スピリチュアルの典型的な演奏でのブルースは、音の重ね方、響きがユニークで、フレーズはモード。実に尖ったタイナー流のブルース解釈。ベースの創造的なソロも聴き応えがある。

そして、5曲目の「Island Birdie」は、タイナーには珍しい、アーシーでゴスペルチックな演奏。途中、カリプソにも展開して、モード奏法全開。ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手がアーシーな雰囲気を増幅する。こんなにアーシーなタイナーはあまり聴いたことがないが、すごく良い。ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手は、アーシーなバップ・ピアノ全開。

「Lover man」「What's New?」といった、超有名スタンダード曲でも、タイナー・オリジナルの志向で、モード&スピリチュアル・ジャズ全開で、ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。迫力満点のモーダル・ピアノで、スピリチュアルに弾きまくる。スローなバラードチックな展開も、モーダルで流麗な手捌きで、印象的に弾き進める。

1980年代のタイナーについては、「1970年代の様に、コルトレーン・ジャズの精神性から決別し、スランプな状態に陥り、やや不遇な印象」といった評論も見えるが、それは聴き手側が「コルトレーン・ジャズの精神性の呪縛」から解放されていない、一方的な解釈だろう。

本当に楽しそうに、曲毎に、様々なイメージで弾きまくるタイナーは、ジャズ・ピアニストとして実に魅力的。1980年代には、コルトレーン・ジャズの呪縛から解き放たれたかの如く、自由で爽快な、タイナー流のバップ・ピアノをガンガンに弾きまくっている。
 
 

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2025年4月26日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 111

迫力満点のモーダル・ピアノのレジェンド、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)は、一度確立したスタイルや奏法は滅多に変えないタイプ。コルトレーンの下で確立したスタイル、ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。タイナーは生涯、このスタイルと奏法を変えることは無かったように思う。

しかし、コルトレーン・ジャズの精神性を踏襲し継承したモード・ジャズは1970年代まで。1980年代は、コルトレーン・ジャズの影響下から離れ、タイナーのピアノのスタイルと奏法はそのままに、タイナー・オリジナルの志向で、モード・ジャズを展開している。

McCoy Tyner『Bon Voyage』(写真左)。1987年7月9日の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Avery Sharpe (el-b track 1, ac-b other track), Louis Hayes (ds)。タイムレス・レーベルからリリース。力強いタイナーのピアノ・トリオ演奏を満喫できるアルバムである。
 

Mccoy-tynerbon-voyage

 
ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。タイナーのスタイル・奏法が心ゆくまで堪能できるトリオ演奏である。モーダルな展開が基本ではあるが、タイナーのピアノの底には、しっかりと「バップ・ピアノ」があることが確認出来る。爽快感抜群のタイナー十八番の「ガーン、ゴーンなハンマー奏法」での、1980年代のタイナー流のモード・ピアノ。

レパートリーは至ってシンプルで、5曲の古き良きスタンダード曲を挟み、魅力的なラテン調のタイトル曲「Bon Voyage」と「Blues For Max」が収録されている。そして、その中間に「Jazz Walk」というオリジナル曲がある。どの曲でも、余裕あるエネルギッシュな弾き回しは、聴いていて爽快である。

バップ・ピアノ志向のタイナー・オリジナルのモード・ピアノ。もうコルトレーン・ジャズの面影は全く無い。タイナーも自らの志向をベースに、ガーン、ゴーンとダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手で、のびのび、気持ちよく、タイナー・オリジナルなモード・ピアノを弾きまくる。地味な存在ではあるが「ピアノ・トリオの代表的名盤」としても良い内容の濃さ。好リーダー作です。
 
 

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2025年4月25日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・282

米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターと言えば「チェット・ベイカー(Chet Baker)」。

これまでのジャズ盤紹介本では、ボーカリストとしてのチェットをクローズアップしているものが大多数なので、チェット・ベイカーと言えば「ボーカリスト」と認識しているジャズ者の方々は多いと思われる。

しかも、1980年代まで、我が国のジャズ・シーンは、米国西海岸(ウエストコースト)ジャズをほとんど横に置いて、東海岸ジャズばかりを褒めそやし、東海岸ジャズばかりを愛でてきた。そのおかげで、米国ウエストコースト・ジャズの情報が圧倒的に不足していたので、チェットのトランペットのパフォーマンスを評価しようにも評価できなかった。

Chet Baker & Stan Getz『West Coast Live』(写真左)。1953年6月12日(The Haig, Hollywood)と1954年8月17日(Tiffany Club, Los Angeles)でのライヴ録音。パシフィック・レーベルから、1997年のリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

【1953/06/12 Disc One and 1954/08/17, Disk Two tracks 1-4】= Chet Baker (tp), Stan Getz (ts), Carson Smith (b), Larry Bunker (ds) 。チェットのトランペットとゲッツのテナーがフロント2管のピアノレスのカルテット編成。

【1954/08/17, Disc Two tracks 5-7】= Chet Baker (tp), Stan Getz (ts), Russ Freeman (p), Carson Smith (b), Shelly Manne (ds) 。チェットのトランペットとゲッツのテナーがフロント2管の、フリーマンのピアノ入り、オーソドックスなクインテット編成。

全20曲中、17曲がピアノレスのカルテット編成。3曲のみ、ピアノ入りのオーソドックスなクインテット編成。ほとんどがピアノレスのカルテット編成なので、ピアノのコード弾きによる規制が無い分、17曲のピアノレスのカルテット編成の演奏の方が、フロント管の自由度が圧倒的に高い。
 

Chet-bakerstan-getzwest-coast-live

 
このライヴ盤は、チェットのトランペットが聴きもの。チェットのトランペッターとしての優秀性がとてもよく判る。ゲッツはジェリー・マリガンの代役で急きょ参加したそうだが、そのせいか、ちょっと大人しめで、チェットを常に立てるような吹奏は、彼の特質である「クールなテナー」がちょっと裏目に出ている様にも感じる。

CD2枚組、全編2時間のライヴ演奏。全編に渡って、チェットのトランペットが素晴らしい。破綻なく流麗な吹き回し、ウォームでクールな芯のある音色、アドリブ・フレーズにしっかり宿る歌心。

中音域を中心に吹きまくるチェットのトランペットは魅力満載。力強くバイタルな吹きっぷりのチェットは格好良い。

どの曲でも、チェットはイマージネーション溢れるアドリブ・フレーズを叩き出す。このライヴの録音は1953〜54年。ウエストコースト・ジャズの最大の特徴、聴き手を意識した、小粋で秀逸なアレンジについては、まだ発展途上。

このライヴでは、パーソネルに名を連ねる有望ジャズマンが、自らのイメージで、自らのパフォーマンスをアレンジしている。これが素晴らしい。

このライヴ盤を聴いていると、チェットは、米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターだったことが良く判る。ウエストコースト・ジャズが発展途上の時期、西海岸のジャズマン達の資質に才能による、優れたインタープレイとソロ・パフォーマンスがこのライヴ盤に記録されている。

しかし、この優れたライヴ音源が、録音後、44年もお蔵入りになっていたとは信じ難い。それでも、1997年によくリリースされたと思う。

1954年時点で、ウエストコースト・ジャズは、これだけ優秀なパフォーマンスを展開していた、ということが良く判る。
 
 

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2025年4月24日 (木曜日)

ゴスペル風味のガーランドです。

「ピアノ職人」レッド・ガーランド。1950年代は、マイルス・デイヴィスの黄金のクインテットのピアニストとして、人気ピアニストとなり、ブロックコードと流麗なシングル・トーンが得意技の「クールなバップ・ピアノ」で、トリオ作をメインに好盤を連発。一流ジャズ・ピアニストとして、ジャズ・ピアニストのスタイリストの一人として、ジャズ史にその名前を残している。

しかし、ガーランドは、モードやフリーなど、ジャズの演奏トレンドには目もくれず、ブロックコードと流麗なシングル・トーンが武器の「バップ・ピアノ」を変わらず演奏し続けたため、1960年代の諸作については、「マンネリの極致」等と揶揄され、1960年代以降のガーランドのリーダー作には、聴くべきものがない、という、心無い評論まで現れた。

Red Garland『Halleloo-Y'-All』(写真左)。1960年7月15日の録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p, org), Sam Jones (b), Art Taylor (ds)。ガーランドお得意のトリオ演奏である。が、この盤で興味深いのは、ガーランドがオルガンを弾いている。

ガーランドの奏法は、ブロックコードと流麗なシングル・トーンが得意技の「クールなバップ・ピアノ」で統一されているので誤解され易いが、リーダー作毎に「テーマ」を持っていて、その「テーマ」に合わせて、変幻自在、硬軟自在、緩急自在と様々なニュアンスで、楽曲を弾き分け流ので、ちゃんと聴くと、全く飽きがこない。
 

Red-garlandhallelooyall

 
この『Halleloo-Y'-All』のテーマは、収録された楽曲を聴く限り「ゴスペル&ブルース」が想起される。冒頭の「Revelation Blues」はゴスペル風味。2曲目の「I'll Never Be Free」は、ゴスペル風味+ブルース調。3曲目「Everytime I Feel The Spirit」は、正にゴスペルの有名曲をハードバップでガンガンやる。そして、オーラスの5曲目「Back Slidin'」は、ガーランド節満載の「ガーランズ・ブルース」。

そして、4曲目「Halleloo-y' All」こそが、究極のゴスペル調な演奏。なんと、「ピアノ職人」レッド・ガーランドがオルガンを弾いている。このオルガンが良い味だしている。ガーランドの右手シングルトーンっぽい、端正で流れるようなオルガンがテーマとアドリブの旋律をゴスペル風バップっぽく弾き回していく。お得意のブロックコードがビート感を増幅して、ガーランドのピアノの個性をそのままに、ガーランドならではのオルガンが印象的。

この「ゴスペル&ブルース」な好盤のガーランドを、ベースのサム・ジョーンズとドラムのテイラーがガッチリサポートしている。ベースとドラム、どちらも「職人的」パフォーマンスを旨とする二人が、「ゴスペル&ブルース」なリズム&ビートを叩き出して、ガーランドの「ゴスペル&ブルース」な雰囲気を効果的に増幅している。

以前から、1960年代のガーランドのリーダー作については、聴くべきものがない、と言われてきたが、とんでもない。ガーランドはスタイル固定で、アルバム毎の「テーマ」に則って、ニュアンスを弾き分けていくタイプのピアニスト。その個性が、1960年代以降のリーダー作にも溢れている。少なくとも、僕は、1960年代以降のガーランドも、楽しんで聴いている。
 
 

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2025年4月23日 (水曜日)

マントラの『Bop Doo-Wopp』

純ジャズやニュー・ジャズ、硬派でメインストリームなジャズを聴き続けたら、ふと「耳休め」をしたくなる。メインストリームなジャズの合間に聴く「耳休め」ジャズは、僕の場合、クロスオーバー&フュージョン・ジャズか、もしくは、ジャズ・ボーカル。

今回はジャズ・ボーカル。しかし、僕のジャズ・ボーカルの嗜好はちょっと変わっている。本格的なジャズ・ボーカルはちょっと苦手。ポップでクロスオーバーでフュージョンなジャズ・ボーカルがお気に入り。硬派なジャズ・ボーカル者の方々であれば「眉をひそめる」んだろうが、好きなものは仕方がない。で、今回は「マンハッタン・トランスファー(以降、マントラと略)」。

The Manhattan Transfer『Bop Doo-Wopp』(写真左)。ライヴ部は1983年11月、スタジオ部は1983年12月、1984年10月の録音。

ちなみにパーソネルは、Cheryl Bentyne, Tim Hauser, Alan Paul, Janis Siegel (vo) = The Manhattan Transfer。バックバンドは、Yaron Gershovsky (key, cond), Jon Mayer (ac-p), Tom Kellock (syn), Ira Newborn, Wayne Johnson (g), Alex Blake, Andy Muson (b), Jim Nelson, Art Rodriguez (ds), Don Roberts (woodwinds)。

マントラの9枚目のアルバム。1984年末にアトランティック・レコードからのリリース。収録曲10曲のうち6曲はライヴ演奏。

6曲のライヴ演奏のうち、「Route 66」「Jeannine」「How High the Moon」「Heart's Desire」「That's The Way It Goes」は、1983年11月に日本の中野サンプラザで行われたライヴ録音。チラッと日本語が飛び出したりもするところが面白い。そして、「The Duke of Dubuque」は、 PBSの「 Evening at Pops」シリーズのためのライヴ録音。
 

The-manhattan-transferbop-doowopp  

 
「My Cat Fell in the Well (Well! Well! Well!)」「Baby Come Back to Me (The Morse Code of Love)」「Safronia B」「Unchained Melody」の4曲はスタジオ録音。

ライヴ部は、成熟したマントラの歌唱がダイレクトに堪能できる。スインギーで疾走感のある素敵なボーカル。独特の響きで魅了するユニゾン&ハーモニー。ライヴだけに4人のコーラスに馬力がある。豪快に唄い、すっ飛ばすマントラ。ポップでバップでエネルギッシュでクール。ジャズ・コーラス・グループとして成熟の極み。

スタジオ部は、精緻に積み上げられた、完成度の高いマントラの歌唱が堪能できる。マントラのコーラスの特性がしっかりと映える、インテリジェンス溢れるアレンジ。「Baby Come Back to Me」や、テンポの速い「Unchained Melody」など、陽気なドゥーワップ的作風の楽曲が印象的。

ライヴ音源とスタジオ録音音源がミックスされた、摩訶不思議なアルバムだが、ライヴ部も、スタジオ部も、マントラの歌唱&コーラスをベースとして、統一感がある。

ライヴ音源とスタジオ音源とが混在しているが、混在してるが故の「散漫な」雰囲気は、僕には感じられない。ダイナミズム溢れる、精緻に積み上げられた、成熟したマントラの歌唱が映えに映える。それが、このライヴ&スタジオ録音の混在盤の良いところだろう。

ライヴ音源とスタジオ音源の両面から、マントラの音楽性、マントラのパフォーマンスの特徴を体感できる、ユニークな内容のアルバムである。
 
 

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2025年4月22日 (火曜日)

ガーランドのソロピアノ・その2

ガーランドのピアノは、自らの弾き回しのテクニックによるドライブ感、スイング感の醸成に加え、バックのリズム隊のベースとドラムによる、そのドライブ感とスイング感の増幅が「キモ」になっている。つまり、ガーランドのピアノはトリオ演奏によって、最大限に映えるのである。

では、そんなガーランドのピアノがソロで演奏したらどんなピアノになるのか。その答えの様なアルバムが2枚ある。一枚は昨日ご紹介した、『Red Alone』(1960年4月2日の録音)。もう一枚が、今日ご紹介する『Alone with the Blues』。タイトルから判る、こちらは「ブルース・ナンバー集」。『Red Alone』と同一録音日。

Red Garland『Alone with the Blues』(写真左)。1960年4月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p) のみ。プレスティッジの「Moodsvilleシリーズ」のvol.10。「Moodsville」は、1950年代の終盤にプレスティッジが始めた、恋愛中にカップルに向けてムーディーな音楽を提供しようと作ったシリーズなのだが、この盤の別ジャケからして、明らかに「ムーディー路線」(写真右)。
 

Red-garlandalone-with-the-blues

 
ブロックコードと流麗なシングル・トーンが得意技のレッド・ガーランド。「ピアノ職人」ガーランドにはブルースがよく似合う。そんなキャッチが思い浮かぶほど、ソロピアノでガーランドが弾きまくるブルース曲は「クールで典雅」。洒落ていて粋なブルースをソロピアノでやるから堪らない。お得意のブロックコードが、魅力的なブルージーなビートを叩き出す。

右手のシングルトーンはキビキビとして、ブルースのメロディー・ラインを「クールに典雅」に聴かせてくれる。泥臭くない、重くない、それでいて、小粋なブルース・フィーリングは、そこはかとなく織り込まれ、バップな弾き回しで、ジャジーな雰囲気が増幅される。ジャズ・ピアニストがソロで奏でるブルース曲。ガーランドのそれは極上のパフォーマンス。

トリオ盤ばかりが注目されるガーランドであるが、彼のピアノの本質を感じ取ろうとするなら、やはり、ソロピアノ盤を聴くべきだろう。昨日ご紹介した『Red Alone』と、今回ご紹介の『Alone with the Blues』の、プレスティッジの「Moodsvilleシリーズ」の2枚が、その要求にバッチリ応えてくれる。好盤である。
 
 

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2025年4月21日 (月曜日)

ガーランドのソロピアノ・その1

ブロックコードと流麗なシングル・トーンが得意技のレッド・ガーランド。ラウンジ・ピアノとか、イージーリスニング・ピアノと揶揄されることがあるが、どうして、ドライブ感、スイング感溢れる弾き回しは、どう聴いたって、極上のハードバップ・ピアノである。

ガーランドのピアノは、弾き回しのテクニックによるドライブ感、スイング感の醸成に加えて、ベースとドラムによる、そのドライブ感とスイング感の増幅が「キモ」になっていて、そういうことから、ガーランドのピアノはトリオ演奏によって、最大限に映えるのである。

では、そんなガーランドのピアノがソロで演奏したらどんなピアノになるのか。その答えの様なアルバムが2枚ある。

Red Garland『Red Alone』。1960年4月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Red garland (p)。レッド・ガーランドのソロ・パフォーマンスを記録した、プレスティッジの「Moodsvilleシリーズ」のvol.3。「Moodsville」は、1950年代の終盤にプレスティッジが始めた、恋愛中にカップルに向けてムーディーな音楽を提供しようと作ったシリーズである。

収録された曲名を眺めていると、もしかしたら、このガーランドのソロ・アルバムって、「バラード」をメインとしたものかしら、と思いながら、聴き始めると「ビンゴ」。「Moodsville」という、レーベルの音志向が大いに影響していると思うが、ガーランドのソロ演奏の題材としては、意外と最適かもしれない。
 

Red-garlandred-alone

 
バラード演奏だからといって、ドライブ感、スイング感は大切な要素。冒頭の「When Your Lover Has Gone」でを聴くと、演奏の始めから半ばくらいまでは、ドライブ感、スイング感を醸し出すのに、少し手探りな感じがある。

が、徐々にこの曲に合った「ドライブ感、スイング感を醸し出し方」を会得していって、後半は、そこはかとなくクールに漂うドライブ感、スイング感が素敵なバラード演奏に仕上がっている。

このドライブ感、スイング感を醸し出し方については、ガーランドのピアノの個性である「ブロックコードと流麗なシングル・トーン」の弾き回しから、テクニックよろしく、上品でクールなドライブ感、スイング感を醸し出してくるから「ニクい」。ガーランドのピアノのテクニックの高さを再認識する。やはりガーランドは「ピアノ職人」だ。

このバラード州のソロ・アルバムを聴いていると、ラウンジ・ピアノとか、イージーリスニング・ピアノとは全く違う、ガーランドのピアノはやはり「バップ・ピアノ」が基本だと再認識する。

この盤のガーランドのソロの底に漂う「上品でクールなドライブ感、スイング感」は、バップ・ピアノでないと出ないだろう。この盤にはガーランドのピアノの本質がバッチリと記録されている。
 
 

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2025年4月20日 (日曜日)

これもチェットのボーカル名盤

チェット・ベイカーを一躍、ジャズ・ボーカリストのスターにした名盤『Chet Baker Sings』(2025年4月17日のブログ参照)から、およそ30年後の1985年に録音された「アゲイン」盤。名盤『Chet Baker Sings』にかけて『Chet Baker Sings Again』。

Chet Baker『Chet Baker Sings Again』(写真左)。1985年10月2, 8日、オランダでの録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (tp, vo), Michel Graillier (p), Ricardo del Fra (b), John Engels (ds)。オランダのTimelessからリリースされた、孤高の無頼漢な男性ボーカリスト&トランペッター、チェット・ベイカーのボーカル盤である。

ジャズでもロックでも「アゲイン」盤は、本家本元盤に比べると内容が落ちる、のが定説だが、この「アゲイン」盤は違う。内容も「My funny Valentine」の再演も含め、名盤『Chet Baker Sings』の内容に比べて全く遜色ない、『Sings Again』のタイトルに恥じない名盤だと思う。

まず、元々本業のトランペットが溌剌としている。チェットは、1929年生まれなので、この「アゲイン」盤の録音当時は56歳。若い頃、麻薬をガンガンにやっていたので、かなり体にはガタがきていたと思われるが(実際、この盤の録音の2年半後、謎の転落死を遂げている)、溌剌と流麗に「安心・安定」のトランペットを吹いている。まず、これが良い。
 

Chet-bakerchet-baker-sings-again

 
そして、チェットの看板「唯一無二の中性的な男性ボーカル」が健在。アンニュイ感が漂うところが良いのだが、意外と溌剌として、気持ちが高揚している様な、意外と芯の入ったしっかりしたボーカルで、「ポジティヴなアンニュイ感」がユニーク。それでも、チェットのボーカルの個性はしっかり「ある」ので、これも良い。

収録された8曲は、どれもが、チェットのフェイバリット・ソングばかりで、それまでに幾度も他のアルバムで録音されている。が、「アゲイン」盤の本家本元『Chet Baker Sings』の収録曲とは2曲しかダブっていないのだが、この「アゲイン」盤にのみ収録された、本家本元盤とダブっていない曲についても、これはこれで聴き応えがある。

冒頭の「All of You」から、「Pacific Jazz」時代に戻ったような、それでいて味わい深い、溌剌としたトランペットと、溌剌アンニュイ中性ボーカルがグッと迫ってくる。2曲目「Body and Soul」は、ミディアムテンポで演奏される、ポジティヴなアンニュイ感が楽しめるボーカルがとても良い。

軽めのアニメっぽいイラストのジャケットが、どうにもジャズらしくなくて、リリース当時は敬遠していたが、21世紀に入って、ダウンロード音源で初聴きして、その内容の良さにビックリしたのを覚えている。この「アゲイン」盤、チェット・ベイカーの名盤として良いと思う。
 
 

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2025年4月19日 (土曜日)

Steve Howe『Guitarscape』

英国はジャズとロックとの境界が曖昧。もっと正確にいうと、英国は「クロスオーバー&フュージョン・ジャズとプログレッシヴ・ロックとの境界が曖昧」。ロック畑のミュージシャンが、クロスオーバー&フュージョン・ジャズに走ったり、クロスオーバー&フュージョン・ジャズのミュージシャンがロックに走ったりする。

そんな2つのジャンルを股にかけるギタリストの一人に「ステーヴ・ハウ(Steve Howe)」がいる。英国プログレッシヴ・ロックの雄、イエスと、英国プレグレのスーパーバンド、エイジアの人気ギタリストである。超絶技巧なテクニックと歌心溢れる印象的なフレーズ、エレ&アコの両刀使い。僕の大好きなロック・ギタリストの一人である。

Steve Howe『Guitarscape』(写真左)。2024年の作品。ちなみにパーソネルは、Steve Howe (g, key), Dylan Howe (ds, perc)。この盤では、ハウは、ギタリスト本業のアコ、エレ、スティール、ベースギターに加え、キーボードを担当しているところが目新しい。そして、息子のディラン・ハウがドラムで参加している。

スティーヴ・ハウのソロ・アルバムといえば、1975年のソロデビュー作『Beginnings』や1979年の続編『The Steve Howe Album』が浮かぶが、ハウはソロ・アルバムを重ねる度に、様々なスタイルをブレンドして、ハウのギターの個性を深化させている。

しかし、ハウの基本的な独特の個性は、しっかりと演奏の底に存在している。もともと、ロック界の中では独特の、唯一無二は個性を誇っているギタリストである。どのソロ・アルバムでも、これってハウ? って判るくらい、演奏の底に、ハウの基本的な独特の個性が横たわっている。

この『Guitarscape』には、ロックからアコースティック、クラシックまで、様々な音楽スタイルを網羅した、14曲のインスト・トラックが収録され、どれも紛れもない「スティーヴ・ハウ・サウンド」を奏でている。
 

Steve-howeguitarscape

 
ハウは、ギター・マスターよろしく、アコ、エレ、スティール、ベースギターに加え、キーボードも担当し、新しいキーボード、ノベーション・サミットを手に入れている。この新しいキーボードが、ハウに好影響を与えている様で、ハウは新たな作曲手法を用いて、幅広い音の風景を描き出している。

これが、この『Guitarscape』の音世界の「キモ」になっている。今回、ハウはキーボード奏者として、自分独自のキーボード構成、ハウ独特の少し変わったコード進行や構成を作り出している。そして、そのキーボードで作り出した、ハウ独特の少し変わったコード進行や構成をギターに置き換えたりして、新しいイメージの「ハウ・サウンド」の創造に成功している。

「Hail Storm」の脈打つようなシンセ・パターンから「Spring Board」のスローなロックまで、幅広い音の風景を描き出している。「Distillations」では、彼のアコースティックな演奏が際立ち、「Steel Breeze」ではスティール・ギターで楽園の島を想起させる。

ハウの持つ特有の「演奏のバリエーションと色彩」を全面的に使いこなし、特徴的なエ&アコ、そしてスティールのギターの音色と、キーボードの新しい響きをミックスした、チャレンジブルな演奏は、実に魅力的。

音のイメージ的には、まさに「プログレッシヴ・ロックとクロスオーバー&フュージョンの融合」的なイメージで、そのイメージの中で、ハウの独特の個性が映えに映える。

クロスオーバー&フュージョン・ジャズとプログレッシヴ・ロック、そんな2つのジャンルを股にかける、伝説的ギタリスト「ステーヴ・ハウ」。これまで、ソロで魅力的な「プログレッシヴ・ロックとクロスオーバー&フュージョンの融合」的なアルバムをリリースし続けているが、我が国ではほとんど注目されることはない。再評価を望みたい。
 
 

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2025年4月18日 (金曜日)

Argoレーベルのビッグバンド盤

こってこてファンクネス漂う、ソウル・ジャズ、ジャズロックを聴きたくなって選盤に迷ったら、アーゴ&カデットの諸作を選盤すれば良い。それほどまでに、アーゴ&カデットのアルバムの制作志向は「ファンキー・ソウル・ジャズロック」で統一されている。が、正統派な、純ジャズどまん中のアルバムもしっかりと出している。

Chubby Jackson『Chubby's Back』(写真左)。1957年3月31日の録音。Argoレーベルからのリリース。

ちなみにパーソネルは、Chubby Jackson’s Big Band = Chubby Jackson (b), Howard Davis, Sandy Mosse, Vito Price (reeds), Bill Calkins (bs), Bill Harris, Tommy Shepard (tb), Don Geraci, Don Jacoby, Joe Silria (tp), Cy Touff (b-tp), Remo Biondi (g), Marty Rubenstein (p), Don Lamond (ds)。

このビッグバンド・リーダーのチャビー・ジャクソンは、1918年10月、NY生まれのベーシスト。1930年代からルイ・アームストロング、ウディ・ハーマン、レイモンド・スコットらの下で、ベーシストとしてビッグバンドのベース・ラインを支え、スタジオ・ミュージシャンとしても活躍したベース職人である。実は僕はこのビッグバンド盤を聴くまで、数年前まで、チャビー・ジャクソンの名前を知らなかった。
 

Chubby-jacksonchubbys-back

 
このビッグバンド盤は、チャビーが39歳の時にレコーディングした、チャビーの初リーダー作。39歳の初リーダー作はちょっと遅めな感じがするが、チャビーはベーシストなのと、ビッグバンドに長年、所属していたこともあって、リーダー作の制作については、なかなかそのチャンスがなかったのだるう。

で、このビッグバンドのサウンドだが、洗練された素性の良いビッグバンド・サウンドで、テンポも良くスイング感抜群、リズム&ビートも溌剌としていて、アンサンブルは良好、ユニゾン&ハーモニーは心地良い。

ビッグバンドの様な教科書の様なサウンドである。ビッグバンドのパーソネルを見渡すと、知っている名前は、ほとんどいないのだが、それぞれの楽器の演奏のレベルは押し並べて高い。改めて調べてみたら、ハーマン楽団の旧知のメンバーを中心に名手を揃えている、とのこと。納得である。

モダン・ビッグ・バンドの醍醐味を満喫できる、好ビッグバンド盤だと思う。こんなに内容良好なビッグバンド盤が、アーゴ&カデット・レーベルからリリースされているとは。見つけた時は半信半疑だったのだが、実際に聴いてみて「目から鱗」。聴いて楽しいビッグバンド・サウンド。好盤です。
 
 

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2025年4月17日 (木曜日)

チェットのボーカル名盤の一枚

米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターと言えば「チェット・ベイカー(Chet Baker)」。但し、ジャズ盤紹介本ではボーカリストとしてのチェットをクローズアップしているものが大多数。チェット・ベイカーと言えば「ボーカリスト」と認識しているジャズ者の方々も多いのではないだろうか。

『Chet Baker Sings』(写真)。1954年2月15日の録音。Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (vo, tp), Russ Freeman (p, celesta), Carson Smith, Joe Mondragon (b), Bob Neel (ds)。ラス・フリーマン率いるリズム・セクションをバックに、チェットがボーカルをメインに唄いまくる。チェット初のボーカル盤。

このアルバムが発売されるまで、チェットはほぼ楽器演奏のみを行っていた。母親は彼の歌声を気に入り、長年もっと歌ってほしいと頼んでいた (Wikipediaより)。ということで、チェットは、母親の要請を受けて、初のボーカル盤を録音している。なるほど、母親はチェットのボーカルの優秀性と個性を見抜いていた訳である。ただし、プロデューサーのディック・ボックは懐疑的だったそうだ(恐らく「中性的なボーカル」が好きではなかったのだろう...)。
 

Chet-baker-sings

 
チェットのボーカルは、男性ボーカルらしからぬもの。ヘタな女性ヴォーカルより、ずっと繊細で何処か退廃的な臭いが感じられる「中性的なボーカル」はチェットのボーカルの独特の個性。ジャズ・ヴォーカルにつきものの大胆なフェイクは使わず、メロディーをストレートに歌い上げるシンプルなスタイル。そして、まろやかな声で、耳元で囁くように、それでいて芯のあるボーカル。これが「癖になる」。

そんなチェットのボーカルが映えに映えるのが、チェットの代表的歌唱で有名な「My Funny Valentine」。この曲、チェットの歌唱ばかりが評価されるが、バックのラス・フリーマンのピアノ伴奏も見事。この見事なフリーマンの見事な歌伴に乗ってこそ、チェットの個性的なボーカルが映えに映える。チェットのボーカルとフリーマンの歌伴との「化学反応」が、チェットの「My Funny Valentine」の歌唱を最高のものにしている。

チェットの「中性的なボーカル」は、男性ボーカルではない、とする向きもあるが、それは「声色」についての好みの問題だろう。ただし、チェットのボーカルについては、テクニック・音程・歌心など、ボーカリストとして必要な資質・能力は高いものを保持していて、それを踏まえての「中性的なボーカル」なので、ボーカリストとしての力量は「一流」だと評価できる。まず、この盤では、チェットのボーカリストとしての優秀性をしっかりと確認したい。
 
 

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ピアノ・トリオの代表的名盤 110

レッド・ガーランド(Red Garland)のピアノは、心無いジャズ者の方々から、ラウンジ・ピアノとか、イージーリスニング・ピアノと揶揄されることがある。確かに、シンプルで聴きやすいピアノではある。しかも、その演奏スタイルは、メジャー・デビュー以降、全く同じスタイルで演奏される。「金太郎飴ピアノ」とも揶揄されるくらいである。

しかし、同じスタイルでブレることなく弾き続けているが、多くの彼のリーダー作を聴き通しても、飽きが来ることはない。演奏する曲想に従って、弾き方やニュアンスを効果的に変えているのだ。逆に、弾き方やニュアンスを変えても、ガーランドのピアノの個性の大本は変わらない様に工夫している。目立たないが、これぞ「職人芸」である。

Red Garland Trio『Red Garland at the Prelude』(写真左)。1959年10月2日、NYの「The Prelude Club」でのライヴ録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Jimmy Rowser (b), Charles "Specs" Wright (ds)。シンプルな燻銀ピアニスト、レッド・ガーランドの唯一のライヴ盤。

このライヴ盤のガーランドのピアノを聴けば、ラウンジ・ピアノとか、イージーリスニング・ピアノという印象はすっ飛んでしまうだろう。このライヴ盤を聴くと判るが、ガーランドのピアノは、筋金入りの「バップ・ピアノ」である。ブロックコードを駆使して、強烈なドライブ感とスイング感を醸し出し、シングルトーンな右手は、テクニックよろしくバップなフレーズを振り撒いている。
 

Red-garland-triored-garland-at-the-prelu

 
そして、ライヴなので、様々なイメージの曲、例えば、ブルース、歌もの、スタンダード、バラード、バップ。ガーランドはそれぞれの曲のイメージによって、演奏のニュアンスをしっかりと変えている。ブロックコードとシングルトーンを駆使するところは変わらないので、聴き逃しがちなのだが、ガーランドは、曲のイメージによって、緩急自在、変幻自在、硬軟自在に弾き分けている。

ブロックコードとシングルトーンを駆使するところは全く変わらないのに、アルバムを通じて、全く飽きが来ないのが「その証拠」である。なんだか手品にかかったみたいなガードランドの「弾き分け」である。

ジミー・ロウサーのベース、スペックス・ライトのドラムによるリズム隊は、リズム・キープに徹していて、決して、インタープレイを仕掛けて、ガーランドに絡むことは無い。故に、このライヴ演奏では、ガーランドのピアノだけが映えに映える様にプロデュースされている。

アルバムのジャケットも、やっつけジャケットが多いプレスティッジだが、このアルバム・ジャケは、プレスティッジらしからぬ、趣味とセンスの良い良好なジャケ。ガーランドのNYの「The Prelude Club」でのライヴ演奏が聴こえてきそうな、優れもののジャケットを纏って、このライヴ盤はガーランドの代表作の筆頭として良いだろう。ピアノ・トリオの代表的名盤の一枚でもある。
 
 

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2025年4月15日 (火曜日)

90年代ジョンスコの名盤の一枚

ジョン・スコフィールド(John Scofield・以降「ジョンスコ」)は、爽快に捻れ、爽快にディストーションする、良い意味での「変態ギタリスト」。米国ジャズでは、もう一人、浮遊感を全面に押し出しつつ、捻れまくる、飛びまくる、良い意味での「変態ギタリスト」がいる。ビル・フリゼールである。

John Scofield『Grace Under Pressure』(写真左)。1991年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Bill Frisell (el-g, ac-g), Charlie Haden (b), Joey Baron (ds)。Horn Section (Tracks 3, 5–6, 8 & 10) = Jim Pugh (tb), Randy Brecker (flh), John Clark (French horn)。 ジョンスコとフリゼールのツイン・ギター編成により録音されたアルバム。

ジョンスコとフリゼール、良い意味での「捻れ変態ギター」の共演である。この二人の共演は、Marc Johnson's Bass Desires『Bass Desires』(1985年5月録音)、Marc Johnson's Bass Desires『Second Sight』(1987年3月の録音)の2枚のベーシスト、マーク・ジョンソンのリーダー作の2枚で共演している。今回の『Grace Under Pressure』では3回目の共演になる。

今回の共演は、ジョンスコのリーダー作での共演。同じ「捻れ変態ギター」のカテゴリーの二人だが、その音の個性は少しずつ異なる。このアルバムでは、ジョンスコのリーダー作であるが故、フリゼールの捻れギターは、ジョンスコの捻れギターの音に極力寄せて、ジョンスコのギターの個性を前面に押し出す様なトーンで、ジョンスコの捻れギターに寄り添っている。
 

John-scofieldgrace-under-pressure

 
ジョンスコは「メインストリームな純ジャズ志向」の音に、強めのディストーションをかけて、ジョンスコの捻れギターの個性を増幅している。フリゼールはジョンスコのトーンに寄せつつ、自らの個性をコンパクトにしながらも、しっかりとフリゼール流の捻れギターを表現している。そして、その二人の捻れギターの音による、極上のインタープレイとアンサンブル、そしてソロ。

特に、タイトル曲「Grace Under Pressure」が堪らなく素晴らしい。その他の曲も、もジョンスコとフリゼールの極上のインタープレイとアンサンブル、そしてソロによる、素晴らしい「2ギター・アルバム」を展開している。拮抗し寄り添う、二人の良い意味での「捻れ変態ギター」の共演。これは名演、これは名盤。

元々は、パット・メセニーとの共演アルバムになるはずだったらしいが、メセニーのスケジュールの関係等でキャンセルになってしまった「いわくつきの作品」。それでも、ジョンスコは「2ギター・アルバムのコンセプトを実現したい」ということで、フリゼールに声をかけ、実現に至ったのが、このアルバム。

「いわくつきの作品」ではあったが、結果、これだけの優れた内容の「2ギター・アルバム」を残せたのだから、何が幸いするか判らない。とにかく、この盤は、1990年代ジョンスコの名盤の一枚だろう。
 
 

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2025年4月14日 (月曜日)

ジョンスコの原点回帰と音の深化

ジョン・スコフィールド(John Scofield・以降「ジョンスコ」)のリーダー作の「聴き直し〜落穂拾い」も、いよいよ1990年代に入る。1978年の『John Scofield』(Trio)でデビューして以降、1970年代で個性を確立し、1980年代でスタイルを確立した ジョンスコ。次の1990年代は、スタイルの「深化」の時代。

John Scofield『Meant to Be』(写真左)。邦題「心象」。1990年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Joe Lovano (ts, alto-cl), Marc Johnson (b), Bill Stewart (ds)。ジョンスコのギター、ロヴァーノのテナーがフロントの、キーボードレスのカルテット編成。

ジョンスコは、最初は「メンストリーム志向のエレ・ジャズ」から入って「ジョンスコ流ジャズ・ロック」、そして、1980年代前半〜中盤は「ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンク」にスタイルを変化させている。そして、1980年代後半は「原点回帰」。メインストリームな純ジャズ志向に戻りつつある雰囲気濃厚。
 

John-scofieldmeant-to-be

 
この1990年12月に録音された当盤のジョンスコは、メインストリームな純ジャズ志向に戻ってはいるが、そのメインストリームな純ジャズ志向を「深化」させている。決して、デビュー当時の「メンストリーム志向のエレ・ジャズ」では無い。そんなスタイルを個性そのままに「深化」させている。

冒頭の「Big Fan」を聴くと、それがよく判る。確かに原点回帰の「メインストリームな純ジャズ志向」の演奏なのだが、1970年代のデビューの頃に比べて、歌心が溢れ、「捻れ」が素直にシンプルになり、耽美的な響きが付加されている様に感じる。音が流麗で艶やかになり、そんな深化した「メインストリームな純ジャズ志向」の音を前面に駆使しつつ、ノリよし、曲よし、演奏よし、の3拍子そろった好パフォーマンスを展開する。

そんなスタイルの深化を追求するジョンスコを、強力なリズム隊ががっちりサポートし、がっちり引き立てる。ジョンスコのフロントの相棒、ロヴァーノのテナーもジョンスコのスタイルの「深化」に呼応した小粋なフレーズを連発。バンド全体がほどよくリラックスして、メインストリームな純ジャズ志向に戻り、その志向を「深化」させていく。ジョンスコ・サウンドの成熟が感じられる好盤である。
 
 

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2025年4月13日 (日曜日)

ブラウニーの ”Jams 2” を聴く

1981年からの「発掘調査」で発見された、クリフォード・ブラウン(以下、ブラウニー)の未発表演奏は、2枚のLP盤『More Study In Brown』と『Jams 2』として発売された。今回のブログ記事は『Jams 2』について、である。

Clifford Brown『Jams 2』(写真左)。日本フォノグラムからのリリース。録音日と曲目、パーソネルは以下の通り。

1954年8月11日、 L.Aでの録音。Track1「Coronado」で、ちなみにパーソネルは、Clifford Brow (tp), Walter Benton, Walter Benton (ts), Herb Geller, Joe Maini jr. (as), Kenny Drew (p), Curtis Counce (b), Max Roach (ds)。

1954年8月14日、LAでの録音。Track2「Introduction」、Track3「I'll Remember April」、Track4「Crazy He Calls Me」で、ちなみにパーソネルは、Clifford Brown (tp), Clark Terry, Maynard Ferguson (tp), Harold Land (ts), Herb Geller (as), Junior Mance, Richie Powell (p), George Morrow, Keter Betts (b), Max Roach (ds), Dinah Washington (vo)。

1954年8月11日、 L.Aでの録音は、正式盤としては、Clifford Brown『Best Coast Jazz』。ここからがちょっとややこしいのだが、ブラウニーの急逝後、この『Best Coast Jazz』の未発表音源を収録した出したLPが『Clifford Brown All Stars』。この『Clifford Brown All Stars』の未発表音源集から、さらに漏れた未発表音源が、この盤のTrack1「Coronado」。
 

Clifford-brownjams-2

 
この未発表の発掘音源でも、ブラウニーのトランペットのパフォーマンスは素晴らしいの一言に尽きる。他のジャズマンのパフォーマンスを完全に凌駕する、ブラウニーのトランペットのテクニックと歌心。素晴らしい内容であるに関わらず、18分の長尺演奏なので、他のアルバムに収録できなかったのだろう。

1954年8月14日、LAでの録音は、正式盤としては、Clifford Brown『Jam Session』。この『Jam Session』の未発表の発掘音源が、この盤のTrack2「Introduction」、Track3「I'll Remember April」、Track4「Crazy He Calls Me」。この未発表の発掘音源については、正式盤の採用された音源と比べて、その内容は同等、もしくはそれ以上の内容である。

Track2「Introduction」は、ボブ・シャッドによるイントロダクションで、Track3「I'll Remember April」、Track4「Crazy He Calls Me」は、ダイナ・ワシントンのボーカル入り。特に、Track3「I'll Remember April」は、収録時間11分強の長尺セッションで迫力あるパフォーマンスが展開されていて見事。

ブラウニーの短い活動期間の中、怒涛の「名演の録音月間」である1954年8月。この1981年からの「発掘調査」で発見された未発表音源も、そんな「名演の録音月間」1958年8月の中のセッションの一部。ウエストコースト・ジャズ全盛期の、ブラウニー全盛期の優れたジャム・セッションの記録。この未発表音源集も、ブラウニーのパフォーマンスを愛でる中で、外せない好盤である。
 
 

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2025年4月12日 (土曜日)

”More Study In Brown” を聴く

このところ、やっと春らしい気温の日が続くようになった。陽も長くなった。気持ちも開放的になる。気持ちが開放的になると、管楽器がフロントのハードバップが聴きたくなる。それも、バリバリ吹きまくるやつだ。そう想いを回らせていたら、クリフォード・ブラウン(以下「ブラウニー」)が聴きたくなった。

Clifford Brown & Max Roach『More Study In Brown』(写真左)。日本フォノグラムからのリリース。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown (tp), Sonny Rollins (ts, tracks: A1 to A4), Harold Land (ts, tracks: B1 to B4), Richie Powell (p), George Morrow (b), Max Roach (ds)。

CDでの1曲目「I'll Remember April」と3曲目「Flossie Lou」が 1956年2月17日の録音。2曲目の「Junior's Arrival」が 1956年1月4日の録音。(以上『Clifford Brown and Max Roach at Basin Street』の未発表音源)。

4曲目「Mildama」と6曲目「These Foolish Things」が 1954年8月6日の録音、5曲目「Jordu」が 1954年8月3日の録音。(以上『Brown and Roach Incorporated』の未発表音源)。

7曲目「Lands End」が 1955年2月23日の録音。8曲目「The Blues Walk」が 1955年2月24日の録音(以上『Study In Brown』の未発表音源』)。

1曲目「I'll Remember April」、2曲目の「Junior's Arrival」、3曲目「Flossie Lou」、4曲目「Mildama」のテナーが、ソニー・ロリンズ。5曲目「Jordu」、6曲目「These Foolish Things」、7曲目「Lands End」、8曲目「The Blues Walk」のテナーがハロルド・ランド。
 

Clifford-brown-max-roachmore-study-in-br

 
1981年からの「発掘調査」で発見されたブラウニーの未発表演奏は、2枚のLP盤『More Study In Brown』と『Jams 2』として発売された。今回のブログ記事は『More Study In Brown』について、である。

この『More Study In Brown』は、ブラウニーの名盤『Study In Brown』(1955年2月23–25日の録音)と『Clifford Brown and Max Roach at Basin Street』(1956年1月4日、2月16ー17日の録音)そして『Brown and Roach Incorporated』(1954年8月2, 3, 5 & 6日の録音)からの未発表音源を集めたもの。

それぞれの名盤の未発表音源だが、その内容は、正式採用された音源と同等、もしくはそれ以上の内容なのが凄い。とにかく、主役のブラウニーのトランペットは申し分ない。正式採用された音源と同等の素晴らしさ。ローチのドラムもブラウニーと同様に素晴らしい。

特に素晴らしいのがテナーの二人。ランドとロリンズだが、この二人のパフォーマンスは、正式採用された音源よりも溌剌として、イマージネーション豊かなアドリブを繰り広げている。正式採用されなかったのが不思議なくらいの素晴らしいテナー。

とりわけ、ロリンズが凄い。今まで、ブラウニーとの共演ではロリンズは萎縮しているかの様な、慎重なテナーを聴かせていたが、この未発表音源では、そんな慎重なロリンズはいない。溌剌と豪快に、ブラウニーを凌駕するが如くのテナーを吹き上げている。

LPの収録時間の関係上、やむなく未発表音源となったのだろうが、どこかブラウニーのトランペットだけを前面に押し出す、ブラウニーのトランペットだけを目立たせるのを第一目的として、正式盤の選曲をしたのでは無いだろうか、と穿った見方を僕はしている。それほど、この未発表音源のランドとロリンズは、ブラウニーのトランペットに肉迫している。
 
 

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2025年4月11日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・281

我が国のTrioレコードが企画した「ヘレン・メリル Presents シリーズ」の中の一枚。このシリーズは、ピアニストが、一人の作曲家の作品集を演奏、LP時代のラストに、ヘレン・メリルのボーカルが1曲入るという構成。そのピアニストの一人が「ローランド・ハナ」。

Roland Hanna『Plays The Music of Alec Wilder』(写真)。1978年の録音。ちなみにパーソネルは、Roland Hanna (p), Helen Merrill (vo)。ラストの「The Sounds Around The House」にのみ、ヘレン・メリルのボーカルが入る。

典雅な「総合力で勝負するタイプ」のジャズ・ピアニスト、ローランド・ハナが、ニューヨークのため息、人気女性ボーカリスト、ヘレン・メリルのプロデュースでアレック・ワイルダーの書いたスタンダードをソロで弾きまくったソング・ブック。

このハナのソロ・ピアノ盤、とても良く出来ていると思う。女性ボーカリスト、ヘレン・メリルがプロデュースをしている異色盤だが、この盤を全編聴き通してみて、ヘレン・メリルのプロデュースはとても的を得ていると感じる。ハナの個性の一面がしっかりと前面に押し出され、ハナの硬質で高テクニックで弾きまくる様が明確に記録されている。

ハードなバップ・ピアノ。バド・パウエルの如く、深く硬質で尖ったタッチで、テクニックよろしく、端正に典雅にバリバリと弾きまくる。しかし、パウエルより軽快で洒脱で流麗。
 

Roland-hannaplays-the-music-of-alec-wild

 
そんなハナのピアノの個性の中で「端正で洒脱、流麗で典雅な弾き回し」というところをクローズアップして、プロデュースしているようで、気品ある、ハナの個性の代表的な一面が、このソロ・ピアノ盤に満載である。

冒頭、ハナが大好きだ、という「The Starlighter」から、気品ある「端正で洒脱、流麗で典雅な弾き回し」が炸裂して、ハナは元々クラシック・ピアノの素養が下地にあると言われるのだが、それも納得の弾きっぷり。

この弾きっぷりが、8曲目「That’s My Girl」まで続くのだが、決して弛まないし、決してマンネリに陥らない。「総合力で勝負するタイプ」のピアノにスト、ローランド・ハナの面目躍如、緩急自在・変幻自在・硬軟自在な引き回しで、決して聴き手を飽きさせない。

そして、ラストの9曲目「The Sounds Around The House」に、この曲だけ、ニューヨークのため息、ヘレン・メリルのボーカルが入るのだが、心地良い中低音の聴かせ方、優しく丁寧な歌唱で、これが絶品。そして、バックに伴奏上手なハナのピアノが、メリルのボーカルにそっと寄り添う。

「ビバップからクラシックまで自由自在に弾きこなすピアノの魔術師」、ローランド・ハナの個性の代表的な一面が、良い形で記録された、ソロ・ピアノ盤の名盤の一枚だと僕は思う。ジャズ喫茶の昼下がりに、そっと流したいハナの名演である。
 
 

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2025年4月10日 (木曜日)

ローランド・ハナの初リーダー作

ローランド・ハナ(Roland Hanna)は米国デトロイト出身。1932年生まれ、2002年11月に70歳で鬼籍に入っている。ハードバップ期の活動初期には、若手ジャズ・ピアニストとして活躍していたはずなのだが、リーダー作は2作しかない。

1966年から1974年まで、サド・ジョーンズ/メル・ルイス・オーケストラの正メンバー(ピアニスト)となり、知名度が格段に上がり、1970年代以降、リーダー作を量産。「総合力で勝負するタイプ」のジャズ・ピアニストの1人。

Roland Hanna『Destry Rides Again』(写真左)。1959年4月16, 17日の録音。ちなみにパーソネルは、Roland Hanna (p), George Duvivier (b), Roy Burns (ds), Kenny Burrell (g, tracks 2, 3, 7 & 8) 。ハロルド・ローマの舞台ミュージカル「デストリー・ライズ・アゲイン」から選曲した、ローランド・ハナの初リーダー作である。

ジャズの世界では、そのジャズマンの個性・特徴を知るには「初リーダー作を聴け」というのだが、このハナの初リーダー作にも、ハナのピアノの個性と特徴が満載。
 

Roland-hannadestry-rides-again

 
ハナのピアノは、一言でいうと「ハードなバップ・ピアノ」。バド・パウエルの如く、深く硬質で尖ったタッチで、テクニックよろしく、端正にバリバリと弾きまくる。しかし、パウエルより軽快で洒脱で流麗。

そんなハナのピアノの個性と特徴を最大限に活かしているのが、この初リーダー作の選曲。軽快で洒脱で流麗な「ハードなバップ・ピアノ」が、ハロルド・ローマの舞台ミュージカル「デストリー・ライズ・アゲイン」からの曲で映えに映える。そう、ミュージカル曲を選んできているところが、この盤をハナにとって特別なものにしている。

全8曲中、1曲目「I Know Your Kind」4曲目「That Ring on the Finger」5曲目「Once Knew a Fella」6曲目「Anyone Would Love You」が、ハナ=デュヴィヴィエ=バーンズのトリオ演奏。

2曲目「Fair Warning」3曲目「Rose Lovejoy of Paradise Alley」7曲目「I Say Hello」8曲目「Hoop de Dingle」は、ギターのケニー・バレルが入ったカルテット演奏。このハナと同じ「デトロイト組」のバレルのギターが良い味を出していて、聴き応えがある。

以前のハナのアルバムの帯紙に「ビバップからクラシックまで自由自在に弾きこなすピアノの魔術師、ローランド・ハナ」とあった記憶があるが、そんなハナのピアノの個性と特徴が、この初リーダー作に散りばめられている。
 
 

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2025年4月 9日 (水曜日)

スタンダーズの飽くなき深化

キース・ジャレット(Keith Jarrett)。1945年5月生まれ。今年の5月で80歳になる。2020年10月、米『ニューヨークタイムズ』紙が、2度の脳卒中を起こし、音楽活動の復帰が困難な状況にあることを報じた。現在では、片手でしか演奏できず、本格的な復帰はほぼ絶望的とのこと。

キースのスタンダーズについては、ECMからリリースするアルバムは、ほとんどがライヴ盤だったことを振り返ると、スタンダーズの最後のライヴ盤のリリースが、2013年5月にリリースされた『Somewhere』(2013年5月31日のブログ参照)。2009年7月11日、スイスのルチェルンにて行われた公演を収録した最新ライヴ音源で、この盤以降、新しい年での新作は出ていない。

Keith Jarrett Trio『Up for It』(写真左)。2002年7月16日、フランスのジュアン=レ=パンで開催されたジャズ・ア・ジュアン・フェスティバルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。2002年7月に行われたスタンダード・トリオの欧州ツアー中に録音されたもの。

スタンダーズのアルバムの中で、今のところ直近のライヴ録音である『Somewhere』(2009年7月11日の録音)の一枚前、現時点でのスタンダーズのディスコグラフィーの「ラス前」のアルバムになる。

この盤の収録曲が、これまでのスタンダードらしからぬ選曲である。ほぼ全曲、「ど」がつくほどの有名スタンダード曲ばかり。しかも、この日のスタンダーズ、それぞれの「ど」スタンダード曲のアレンジが、シンプルで判り易いアレンジを採用していて、それぞれの曲がイントロから何となく判って、主旋律は「そのもの」ずばり。
 

Keith-jarrett-trioup-for-it  

 
1. If I Were a Bell (Frank Loesser)
2. Butch & Butch (Oliver Nelson)
3. My Funny Valentine
(Richard Rodgers, Lorenz Hart)
4. Scrapple from the Apple (Charlie Parker)
5. Someday My Prince Will Come
(Frank Churchill, Larry Morey)
6. Two Degrees East, Three Degrees West
(John Lewis)
7. Autumn Leaves"/"Up for It
(Joseph Kosma, Jacques Prévert/Keith Jarrett)
 
しかし、それでいて、他のジャズマンのアレンジでは絶対に聴くことのできない、スタンダーズ独特、キース独特の音の重ね方、音の展開で演奏されるのが素晴らしい。聴いていて、すぐに「これって、スタンダーズやね」と判るくらい、独特のアレンジ。だけど、それぞれの曲がイントロから何となく判って、主旋律は「そのもの」ずばり。スタンダード曲の新しいアレンジのバリエーションを聴かせてもらったイメージ。

「If I Were a Bell」「My Funny Valentine」「Someday My Prince Will Come」など、お馴染みのスタンダード曲を、温故知新、それぞれのスタンダード曲の持つ美しい旋律はシンプルに活かし、アドリブ部に入ると、スタンダーズとして、新しい響きにチャレンジする。2002年、結成19年目にして、さらに深化し続けるスタンダーズには頭が下がる思いだ。

フランスで行われた雨の屋外コンサートでのライヴ録音で、メンバーそれぞれが個人的な体調の問題を抱え、雨の中での会場へのアプローチも辛く、演奏前のディナーは雨の中、短時間でのサウンド・チェック等々、コンディションは最悪だったらしいが、演奏自体は、2002年度の「スタンダーズの深化バージョン」の密度の濃い演奏が繰り広げられている。
 
 

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2025年4月 8日 (火曜日)

「スタンダーズ」の安定の好盤

キース・ジャレットは、2018年に2度の脳卒中を発症して以降、療養生活を続けており、ピアノ演奏への復帰は難しいとされている。以前のように弾けなくとも、とにかく元気でさえいてくれれば……と思っている。

お気に入りのジャズ・ピアニストについては、キースは絶対に外せない訳で、キースのアルバムについては、ほぼ全部、聴いている。当ブログでも、キースのアルバムに関する記事についても、順次アップしてきて、残るは10枚程度。今年中にはコンプリートできるかな。

Keith Jarrett Trio『The Out-Of-Towners』(写真左)。2001年7月28日、ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場でのライヴ録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。2001年夏の「スタンダード・トリオ」ヨーロッパツアー中に録音されたライブ盤。

1996年、キースは慢性疲労症候群と診断され、同年の秋以降の活動予定を全てキャンセルして自宅での療養を余儀なくされる。2年の闘病の後、1998年に復活。このライヴ盤は、復活後3年経った頃の録音で、慢性疲労症候群の影響は全く無くなり、療養前のキースが戻っている。

病気療養後のキースのピアノは明らかに変わった(良い意味で)。アドリブ展開については、変にこねくり回さずにシンプルで判り易い展開に変わっている。
 

Keith-jarrett-triothe-outoftowners

 
スタンダード曲の解釈については、変にアレンジせずにシンプルになり、スタンダード曲の持つ個性をストレートに押し出している。そして、大きな声で唸らなくなっている。これは良い。3者3様の演奏に耳を集中させることが出来る。

このライヴ盤でも、その傾向は変わらない。病気療養前、自らを体力的にも精神的にも削りに削って、鬼気迫る、テンションMax、切れ味抜群、限りなく耽美的で、息が詰まる様な、限りなくテクニカルなピアノを限界まで弾ききっていたキースが、療養後、自らを追い込むことはせず、自ら浮かんだイメージを信じて、そのままに、フレーズは捻らない。シンプルにそのままにフレーズは展開される。

アドリブ展開はシンプルそのもの。アレンジやアドリブが、ストレートでシンプルになればなるほど、スタンダード曲の良さがポッカリと浮かび上がってくるから不思議。キースの弾くスタンダード曲の旋律が、以前よりもはっきり判る様にアレンジやアドリブがシンプルなものに変わっているのが判る。

ベースのピーコック、ドラムのデジョネットのソロ・パートの長さが増えたなあ、とも感じる。ピーコックの現代音楽的な、硬質な変則ビートで変幻自在、緩急自在なベースラインが見事。捻れて浮遊するベースライン。ピーコックのベースの個性がはっきり判る。デジョネットの究極な「ポリリズミックなドラミング」も素晴らしい。ダイナミズム溢れる、即興要素満載の変幻自在なドラミングは凄い。

キースのピアノの音が美しい。ピーコックのベースの音がソリッド。デジョネットのドラムの音がポリリズミック。このトリオの出す音は、このキースの「スタンダーズ」トリオでしか出せない音。そんな「スタンダーズ」トリオしか出せない音が、このライヴ盤に詰まっている。安心して聞き込むことの出来る、キースの「スタンダーズ」トリオの安定の好盤である。
 
 

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2025年4月 7日 (月曜日)

バレルとレイニーの2本のギター

ジャズ・ギターといえば、僕にとってのアイドルは、モダン・ジャズ・ギターで言うと、ウエス・モンゴメリー、ケニー・バレル、グラント・グリーン。ニュー・ジャズ・ギターで言うと、パット・メセニー、渡辺香津美、ジョン・スコフィールドに、ジョン・アバークロンビー。最近、ケニー・バレルのリーダー作をせっせと聴き直しているところ。

Kenny Burrell, Jimmy Raney『Two Guitars』(写真左)。1957年3月5日の録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell, Jimmy Raney (g), Donald Byrd (tp), Jackie McLean (as), Mal Waldron (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。

ケニー・バレル(写真右)とジミー・レイニーの2本のギターに、ドナルド・バードのトランペットとジャキー・マクリーンのアルト・サックスがフロント2管。マル・ウォルドロンのピアノに、ダグ・ワトキンスのベース、アート・テイラーのドラムのリズム・セクション。総勢7人のセプテット編成。

やっつけセッションが多いプレスティッジにしては、とても整った企画盤。優れたハードバップなクインテットをバックに、二人のギタリストが、それぞれの個性を振り撒き弾きまくる。そして、この7人編成のメンバー全員が、当時、一流のジャズマンばかりが大集合。当然、出てくる音は「一流のハードバップ」。特に、バックを司るクインテットの好演は聴き逃せない。
 

Kenny-burrell-jimmy-raneytwo-guitars

 
タイトルが「Two Guitars」という割に、バードのトランペットにも、マクリーンのアルト・サックスにも、ソロ・パートをしっかりと与えていて、しかも、この二人のパフォーマンスが好調ときた。マルのピアノは、マルのピアノの個性をガンガンに振り撒き、ワトキンスは重量ベースをブンブン唸らせ、テイラーのドラムは小粋にリズム&ビートを叩き出す。

大きくフィーチャされた二人のギタリスト、バレルとレイニー、スタイルの違う二人の共演は、もちろん申し分ない。ブルージーなバレルとメロディアスなレイニー。双方、持ち味を活かして、ぶつかることなく、しっかりと相手の音を聴きながら、それぞれの個性的なギターをガンガンに弾きまくる。ハードバップ・ギターの良いところがてんこ盛り、という印象。

6曲目のワトキンス作「This Way」では、二人のギターの掛け合いが楽しめる「ギター・バトル」を堪能することが出来る。ギター・バトルとはいえ、丁々発止と渡り合うというよりは、和気藹々に絡み合うって感じで、これが実に良い雰囲気。ほんとにこの二人は、このジャム・セッションを楽しんでるなあ、という温かい感じがこの盤の良いところの一つ。

やっつけ録音、やっつけ編集の得意なレーベル、プレスティッジにしては、ほどよくプロデュースされ、かっちりまとまった内容にはちょっとびっくり。おそらく、録音メンバーそれぞれが、しっかりとした矜持を保ちつつ、バレルやバード辺りがリーダーシップをとりながら、バンド全体でセルフ・プロデュースした結果ではないか、と僕は想像している。
 
 

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2025年4月 6日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・280

米国ジャズの拠点は、ニューヨーク、ロスアンゼルスだけで無い。デトロイト、シカゴ、フィラデルフィアも米国ジャズの拠点として有名である。デトロイトもシカゴもフィラデルフィアも、後にニューヨークに進出して有名になったジャズメンの若かりし頃の活動拠点として有名である。

Kenny Burrell『Jazzmen Detroit』(写真左)。1956年4月30日、Hackensack, N.Yでの録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Pepper Adams (bs), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Kenny Clarke (ds)。

リーダー格のケニー・バレル(写真右)のギターと、ペッパー・アダムスのバリトン・サックス(バリサク)がフロント、トミー・フラナガン(トミフラ)のピアノ、ポール・チェンバース(ポルチェン)のベース、ケニー・クラークのドラムがリズム隊のクインテット編成。

タイトルが「デトロイトのジャズマン達」。バレルとフラナガンはデトロイト生まれ、デトロイト育ち。アダムスはミシガン州ハイランドパーク(デトロイトの飛地)生まれ。チェンバースはピッツバーグ生まれのデトロイト育ち。

クラークだけがピッツバーグ出身。クインテットの5人中、4人がデトロイト出身と言って良い。クラークだけがデトロイトとは縁が無いが、まあ「誤差範囲」か(笑)。
 

Kenny-burrelljazzmen-detroit

 
デトロイトのジャズは「アーバンでブルージーな」ジャズ。フロントのバレル、アダムス共に、録音当時、20歳半ばの若きジャズマン。二人の共通の個性、後の「アーバンでブルージーでアーシー」な個性が、この盤に既に溢れている。

基本はハードバップだが、ニューヨークのものとも、ウエストコーストのものとも雰囲気が異なる。この二人のフロントが牽引する「都会的なブルース・フィーリング」が芳しい。デトロイト・ジャズならではの雰囲気。

加えて、トミフラのピアノが「エレガントでソフィスティケイト」。加えて、伴奏上手なトミフラの面目躍如、流麗でジャジーでどこかアーシーな弾き回しが、フロントの「デトロイト・ジャズ」な雰囲気に彩りを添える。

そして、ポルチェンのベースとクラークのドラムのリズムが、小粋で、こてこてジャジー。このリズム・セクションの醸し出すビートが、デトロイト・ジャズの「肝」の部分をしっかりと担っている。

アダムスのバリサクが一番元気。続いて、バレルのギターがいつになく躍動感があって、溌剌としたアーバンでブルージーな雰囲気を振り撒いて好調。バンド全体のまとまりが絶妙で、トミフラ=ポルチェン=クラークのリズム・セクションの洒脱なパフォーマンスが、演奏全体を引き締め、演奏全体を盛り立てる。良きジャズ、良きハードバップである。
 
 

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2025年4月 5日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 109

ジョージ・ケイブルス(George Cables)。1944年11月生まれ。今年で81歳になるベテラン・ピアニスト。ブレイキーやロリンズ、デックスなどのサイドメンを務める。僕は、復帰後のアート・ペッパーとの共演で、彼の名とプレイを知った。

彼のピアノは、適度に硬質のタッチで、適度に多弁なインプロビゼーションが特徴。適度に硬質ではあるが、マッコイ・タイナーの様にガーンゴーンと叩く様な硬質さでは無い。「しなやかな硬質さ」と表現したら良いだろうか。そして、シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無いが、モーダル・ジャズほど間を活かすことは無い。

マイルスとコルトレーンが創り上げたジャズのスタイルを、適度に聴き易く、適度にスローダウンした個性。しなやかな硬質さを持ったタッチで、適度に多弁なインプロビゼーションは、聴いていて、実に端正であり、実に「雅」であり「粋」である。とにかく、聴いていて楽しい、「メインストリーム・ジャズ」をバッチリ感じさせてくれるピアノである。

ふと、ジョージ・ケイブルスが聴きたくなった、と、今までにアップした「ケイブルス評」を再掲した訳だが、とにかく、ケイブルスのピアノは絶品。ちょうどそこに、昨年11月にリリースされた、ケイブルスのリーダー作があることに気がついた。

George Cables『I Hear Echoes』(写真左)。2024年1月30日と5月2日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、George Cables (p), Essiet Essiet (b), Jerome Jennings (da)。ケイブルスのピアノを愛でるに最適なトリオ編成。ケイブルスのピアノの個性と特徴が手に取るように判る内容になっている。

まず、第一印象は「若い」。今年81歳になるケイブルスだが、冒頭の自作曲「Echo of a Scream」からして、ケイブルスのタッチは若く瑞々しく躍動的。とても80歳のピアノとは思えない。
 

George-cablesi-hear-echoes_20250405201401

 
先に再掲した「適度に硬質ではあるが、マッコイ・タイナーの様にガーンゴーンと叩く様な硬質さでは無い。「しなやかな硬質さ」と表現したら良いだろうか。そして、シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無い」というケイブルスの個性が、とても良く判るパフォーマンスになっている。

3曲目の、これもケイブルスの自作曲「Morning Song」ケイブルスでは、緩急自在、変幻自在、困難自在な、実にフレキシブルな弾き回しに惚れ惚れする。基本はバップ・ピアノだが、ケイブルスはバップにも、モードにも対応する柔軟性を持っている。この曲では、「シーツ・オブ・サウンドほど多弁では無いが、モーダル・ジャズほど間を活かすことは無い」独特の密度を持ったケイブルスの弾き回しの個性を感じることが出来る。

4曲目の有名スタンダード曲「Prelude to a Kiss」でのバラードな弾き回しは絶品。端正であり、実に「雅」であり「粋」なバラードな弾き回しには、思わず、じっくりと耳を傾けてしまう。タッチは明確で硬質なんだが、フレーズにロマンティシズム溢れ、流麗で印象的なアドリブ・フレーズの弾き回しは「さすが」と唸ってしまう。

他のどの曲もケイブルスのピアノの個性と特徴に溢れている。バックのリズム隊、エシエット・エシエットのソリッドで堅実なベースと、ジェローム・ジェニングスのポリリズミックで、変幻自在でありながら、堅実にリズム&ビートを叩き出し供給するドラムが、そんなケイブルスを絶妙にサポートし、絶妙に寄り添い、絶妙に鼓舞する。あまり、耳にしたことのないリズム隊の二人だが、二人のサポートはこれまた絶品。

いやはや、80歳のバップ・ピアノとは思えない、80歳のモーダルなイマジネーションとは思えない、ケイブルスの決して「古くない」、「今」のケイブルスの新鮮なフレーズと、躍動感溢れる弾き回しが、とても印象的。今年81歳を迎えてなお「新しい」、今なお深化するケイブルスが素敵である。この盤、謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」にアップさせていただきたい。好盤です。
 
 

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2025年4月 4日 (金曜日)

Yellowjackets『Fasten Up』

やっと晴れた。昨日までの3日間、冷たい雨の日々で、精神的にも暗くなりがちだった。でも、やっと晴れた。気温も最高気温18度と「春」である。「春」になると、フュージョン・ジャズを聴く回数が多くなる。暖かい気候が気分を開放的にさせて、フュージョン・ジャズの8ビートが心地良く心に響くからだろう。

Yellowjackets『Fasten Up』(写真左)。2024年6月24-26日、Hollywoodでの録音。今年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Bob Mintzer (ts, EWI), Russell Ferrante(p, key), Dane Alderson (el-b, MIDI sequencing), Will Kennedy (ds), ゲストに、Raul Midon (vo, g)。

フュージョン・グループの老舗、結成以来、44年経った今でもトップ・グループの一つとして活躍中のイエロージャケッツ。歴史的にメンバー・チェンジは経験しているが、今のバンド・メンバーは最低10年以上、演奏し続けている、団結力の強いバンドである。

唯一不変なのは創設メンバーであるキーボード奏者のラッセル・フェランテ。サックス奏者のボブ・ミンツァーは35年ほどの長期メンバー。ドラマーのウィル・ケネディは、1987年から1999年までバンドで演奏し、2010年に再加入で通算26年在籍。ベーシストのデイン・アンダーソンは10年間バンドに在籍。

そんなフュージョン・グループの老舗、結成以来、44年経った今でもトップ・グループの一つとして活躍中のイエロージャケッツの2025年新作。27枚目のスタジオ・アルバム。
 

Yellowjacketsfasten-up

 
ラッセル・フェランテ、ボブ・ミンツァー、デイン・アルダーソン、ウィル・ケネディの鉄壁のカルテットで、現代の最前線のフュージョン・ジャズなサウンドを聴かせてくれる。

全11曲が収録されているが、カバー曲が1曲、バンドメンバーの作曲が10曲である。カヴァー曲もオリジナル曲も出来は上々で、イエロージャケッツならではのスマートなアレンジが施され、アルバム全体の統一感が素晴らしい。

やはり、ベン・タッカー作「Comin' Home Baby」のカヴァーが目を引く。ジャズ・フルート奏者、ハービー・マンの演奏で大ヒットしたラテン・ジャズの名曲である。これが、まあ、現代の最前線の、イエロージャケッツらしい、フュージョン・ジャズなアレンジで、アクティブにスマートにヒップに聴かせてくれる。

「The Lion」は、ラテン風のミッドテンポの曲で、強力なメロディーが印象的。ミドンの明るく高揚感のあるボーカルは一聴の価値あり。ミンツァー作「Swingmeister General」は、そのタイトル通り、スウィング感たっぷりのストレートなジャズ・ナンバー。ミンツァーのパワフル・テナーが印象的。「November 8th」などの曲で聴くことの出来るフェランテのアコピが良い雰囲気。

このイエロージャケッツの新作は、良い選曲、スマートなアレンジ、エモーショナルでテクニカルでインプレッシヴなパフォーマンスで固められた、現代のコンテンポラリー・ジャズ&フュージョン・ジャズの秀作です。21世紀に入って四半世紀。フュージョン・ジャズの飽く無き深化を感じます。
 
 

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2025年4月 3日 (木曜日)

BNらしい ”バードランドの夜”

レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノート創立の1939年以降、ジャズの潮流が変わりつつある1968年までにリリースされたアルバムから、ブルーノートらしい「内容と音と響き」、そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」を順に聴き直していく企画。今日はその「第21位」。

Art Blakey『A Night at Birdland vol.1』(写真)。邦題『バードランドの夜』。1954年2月21日、NYのジャズクラブ、バードランドでのライヴ録音。パーソネルは、Clifford Brown (tp), Lou Donaldson (as), Horace Silver (p), Curly Russell (b), Art Blakey (ds)。クリフォード・ブラウンのトランペット、ルー・ドナルドソンのアルト・サックスがフロント2管、シルヴァー=ラッセル=ブレイキーのリズム隊、併せて、クインテット編成。

ここで先に一言。この盤については、どのジャズ盤紹介本でも「ジャズの代表的な演奏トレンドであるハードバップの始まりを記録した盤」としている。いわゆる「ハード・バップ誕生の瞬間」を記録した歴史的名盤と評価されている。が、売り文句としては実にキャッチーな表現だが、この盤が記録したライヴ・パフォーマンスを境目に、ハードバップが一気に展開されていった訳ではない。

録音当時、この盤の様なハードバップな演奏が、NYの様々なライヴ・スポットで、演奏され始めていたのだろう。そんな、ビ・バップからハードバップへの「演奏トレンド」の進化を、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンはいち早く感じ取り、いち早く記録に留めたい、と思ったのだろう。そして、その企みは「大成功」。

まず、この盤、ライヴ盤というところが素晴らしい。スタジオ録音だと、何度か録り直しをして完成度を高めることができるので、どうしても「作り出した」感がつきまとう。しかし、ライヴ盤は違う。演奏の「一発録り」なので、臨場感が半端無く、やり直しができないので、この記録された音がその場で演奏された音そのもの、というリアリティーと説得力がある。
 

Art-blakeya-night-at-birdland-vol1  

 
しかし、このライヴ音源、どう聴いても、パッと集まってパッと演奏する、いわゆるジャム・セッション的な演奏では無い。演奏の完成度がとても高い。スタジオ録音に匹敵する完成度の高さ。

ブルーノートはスタジオ録音の場合、リハーサルを十分積むことを義務付けていて、しかもそのリハーサルにもギャラを払う、という徹底ぶり。そうやって、演奏の完成度の高さを担保しているのだが、この『バードランドの夜』も、ライヴではあるが、事前にリハーサル的なライヴを積み上げた結果である様に思う。

恐らく、バンドとしても、ブルーノートとしても、満を持してのライヴ録音だっただろう。録音隊のルディ・ヴァン・ゲルダーも、相当、気合を入れてのライヴ録音に感じる。ダイナミックレンジも申し分なく、楽器の音の生々しさも申し分無い。バードランドの会場の臨場感、空間の広がりも感じる絶妙な録音。音の響きは「ブルーノート・オリジナル」。

ビ・バップからハードバップへの「演奏トレンド」の進化を、スタジオ録音ではなくライヴ録音とし、臨場感とリアリティーと説得力を獲得(ブルーノートらしい内容)。そして、リハーサルを積んだ後の完成度の高い演奏を捉え(ブルーノートらしい音)、ルディ・ヴァン・ゲルダー本気のブルーノート・オリジナル」な音で記録する(ブルーノートらしい響き)。

このライヴ盤は、ブルーノートらしい「内容と音と響き」が、最高の形で整っている、モダン・ジャズの名盤の一枚である。そういう意味で、レココレ誌のブルーノート盤「ベスト100」の「21位」というのはいかがなものか。僕は、このライヴ盤は「第1位」でも良いと思っているし、せめて、ベスト10には必ず入る名盤と評価している。
 
 

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2025年4月 2日 (水曜日)

マイナーな存在の貴重な記録

レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノート創立の1939年以降、ジャズの潮流が変わりつつある1968年までにリリースされたアルバムから、ブルーノートらしい「内容と音と響き」、そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」を順に聴き直していく企画。今日はその「第20位」。

ハービー・ニコルス(Herbie Nichols)は、米国東海岸のジャズ・ピアニスト。1919年1月3日生まれ、1963年4月12日、44歳、白血病にて逝去。活動期間は1952年から1958年の6年間と圧倒的に短い。リーダー作は、10インチ盤で2枚。12インチ盤ではたったの2枚。

ニコルスの絶対ユニークな個性は、ブルーノートからリリースされた、10インチ盤で2枚、12インチ盤の1枚のみ。ラストの12インチ盤「Love, Gloom, Cash, Love」は、ポップなアレンジが施されて、ニコルスの絶対ユニークな個性は薄れていた。

『Herbie Nichols Trio』(写真左)。1955年8月、1956年4月の録音。ちなみにパーソネルは、1955年8月の録音は、Herbie Nichols (p), Al McKibbon (b), Max Roach (ds)。1956年4月の録音は、Herbie Nichols (p), Teddy Kotick (b), Max Roach (ds)。

ブルーノートらしい「内容と音と響き」という切り口で、このアルバムを聴き直してみると、意外とブルーノートらしさは希薄である。ただし、ニコルスの絶対ユニークな個性はしっかり記録されている。

音の響きは、まるで「セロニアス・モンク」。そのフレーズのノリはモンクと同じく「スクエア」で、ところどころ不協和音を配した、ちょっと前衛的な響きのする個性的なピアノ。ニコルスは、ピアノの鍵盤を叩き、弾く様に弾く。ピアノという楽器の打楽器的要素の部分をフレーズの真ん中に置いている。これもモンクと同じ。
 

Herbie_nichols_trio_1

 
しかし、ニコルスのそれは、平易で判り易い。モンクの様に「思索的、哲学的」な、機微に富んだフレーズではなく、モンクのフレーズを研究し、テクニックを駆使して、モンクのフレーズを再現しつつ、ニコルスの考える個性を織り込んだ、ニコルス流の「リトル・モンク」的なピアノである。ちなみに、ニコルスは、モンクの研究家だったとも聞く。

ちなみに、この盤は、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが、ニコルスの才能を発掘〜着目して、ライオンの肝入りで録音した盤では無いらしい。

ニコルスが、ライオンに、ブルーノートでの自身のリーダー作の録音をしつこく懇願し、遂にライオンが折れて実現したリーダー作らしい。ライオンが素晴らしい仕事をした訳では無く、ニコルスの粘り勝ちの果ての歴史的成果である。そういった背景が、このアルバムには、「意外とブルーノートらしさが希薄」な理由だと推察している。
 
ただ、自発的、積極的では無いにしても、このニコルスの個性を、ニコルスに懇願された結果かもしれないが、ちゃんとブルーノートのアルバムとして制作し、リリースしたところは、やはり、ブルーノートのジャズ・レーベルとしての矜持を強く感じる所以。但し、この盤にブルーノートらしい「内容と音と響き」が濃厚、とは思えない。

ニコルスの個性を動機はともあれ、ブルーノートが記録して世に出した、という事実については、大いに評価できるが、盤の内容については二の次。事実、ブルーノートの総帥であるライオンも、ニコルスの新たなリーダー作を録音することは無かった。

よって、ブルーノートの「ベスト100」の中で「第20位」というのは大いに疑問を感じる。ランキングの「番外つけ出し」として捉えるべきユニークなアルバムだと僕は思う。
 
 

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2025年4月 1日 (火曜日)

トニーの考えるモード&フリー

このアルバムは、若い頃に聴いた時には、フリー・ジャズだと感じた。年を経て、10年くらい前に聴き直した時には、これは、フリー・ジャズだけではない、と感じた。加えて、モード・ジャズがしっかりとある、と感じた。

この様に「ジャズを聴く耳」も、時代と共に、年齢と共に成熟していく。いわゆる「耳が良くなって」くることを強く感じる今日この頃である。

Tony Williams『Spring』(写真左)。1965年8月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Tony (Anthony) Williams (ds), Wayne Shorter (ts, 1, 3, 5), Sam Rivers (ts, 1, 3-5), Herbie Hancock (p, 3-5), Gary Peacock (b, 1 & 3-5)。テナー・サックス2本がフロントの、ハンコック=ピーコック=トニーのリズム隊のクインテット編成。

このトニー・ウィリアムスの2枚目のリーダー作には、当時のマイルス・クインテットの3人、トニー、ハンコック、ショーターがパーソネルに名を連ねる。マイルスは別格なので置いておいて、ベースのロンがいない。代わりにピーコックが入っている。

録音時期の1965年といえば、マイルス・バンドの下に、待望のウェイン・ショーターが加入、遂に、1960年代のマイルス黄金のクインテットが成立した年で、マイルスのモーダルな名盤『E.S.P.』の録音が1965年の1月。そして、このトニーの『Spring』の録音が、1965年の8月、『E.S.P.』の7ヶ月後の録音である。

マイルスのモーダルな1960年代の黄金のクインテットの音楽監督は「ウェイン・ショーター」。しかし、このトニーがリーダーの『Spring』のモーダルな音は、ショーターが参加しているにも関わらず、「ショーターのモード」では無い。
 

Tony-williamsspring

 
「ショーターのモード」は、フレーズが捻れに捻れ、音が流麗に飛びまくる。モードこれに極まれり、といった雰囲気の、完璧にモード奏法を組み入れたものだが、このトニーのアルバムのモードはそれでは無い。

テナーのフレーズが流麗でストレートでシンプル。捻れは無い。シャープで切れ込む様なトニーのドラミングがしっかりと印象に残る、これは「トニーの考えるモード」だろう。ピーコックのベースのモーダルなフレーズも、流麗でストレートでソリッド。「トニーの考えるモード」に合致するベース・ワーク。

そして、興味深いのはショーターのテナー。「トニーの考えるモード」に則ったテナーを、リヴァースと一緒に吹きまくる。リヴァースは明らかに「トニーの考えるモード」にぴったりのモードで、フレーズが流麗でストレートでシンプル。「トニーの考えるモード」そのものなリヴァースのテナー。

そして、このアルバムには「トニーの考えるモード」に加えて、「トニーの考えるフリー」が展開される。「トニーの考えるフリー」は、「トニーの考えるモード」の延長線上にあるイメージ。「トニーの考えるモード」の自由度をどんどん高めていって、ついにはモードの決め事が無くなる直前のイメージが「トニーの考えるフリー」だと感じる。

あくまで、伝統のモダン・ジャズのイメージを残しつつ、「トニーの考えるモード」の自由度をどんどん高めていって、ついにはモードの決め事が無くなる直前のイメージで、楽器相互のインタープレイを展開する。それまでにない、新しいイメージのフリー・ジャズ。それが「トニーの考えるフリー」であり、それがこの盤に詰まっている。

当時のジャズとしては、相当に尖った、相当に実験的な内容で、商用ジャズとは全く無縁。しかし、ブルーノート・レーベルは、何のためらいも無く、この「トニーの考えるモード」&「トニーの考えるフリー」がてんこ盛りのアルバムを制作し、リリースしている。そこがブルーノートたる所以であり、そこがブルーノートに一目置く所以なのだ。
 
 

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