セシルなフリー・ジャズの提示『Unit Structures』
レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノート創立の1939年以降、ジャズの潮流が変わりつつある1968年までにリリースされたアルバムから、ブルーノートらしい「内容と音と響き」、そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」を順に聴き直していく企画。今日はその「第16位」。
Cecil Taylor『Unit Structures』(写真左)。1966年5月19日の録音。ブルーノートの4237番。ちなみにパーソネルは、Cecil Taylor (p, bells), Eddie Gale (tp), Jimmy Lyons (as), Ken McIntyre (as, oboe, b-cl), Henry Grimes (b), Alan Silva (b), Andrew Cyrille (ds)。リーダーのセシル・テイラーのピアノをメインに、トランペット1本、アルト・サックス2本、ベース2本、ドラム1セットの変則セプテット。
ジャズにおける演奏ジャンルは「フリー・ジャズ」。フリー・ジャズというからには、自由に吹きまくる、自由に弾きまくる、自由に叩きまくる、というイメージがあるが、演奏楽器全てが自由にやりまくると、一般的な「音楽」では無くなる。無調の音が集まった塊りとしか解釈できず、音楽として成立しない。フリー・ジャズには、必ず、「必要最低限の決め事」があり、その「必要最低限の決め事」を守りながら、ある一定の法則に則って演奏を繰り広げる。
フリー・ジャズには、3つのトレンドがあると思っていて、いずれにも「必要最低限の決め事」は、どのトレンドにもあるのだが...。一つは、コルトレーンなフリー・ジャズ。出だしはハードバップ、即興演奏の部分に入ると、感情の赴くまま、ひらめきのまあ、自由に吹きまくる。しかし、リズム・セクションは、必要最低限のリズム&ビートを供給する。
もう一つは、オーネット・コールマンなフリー・ジャズ。これは、従来のジャズで「やってはいけないことをやる」をメインに演奏する。つまり、従来のジャズの規則・決め事からの自由。
そして、セシル・テイラーなフリー・ジャズ。ジャズの「肝」の一つである、リズム&ビートを基本として、その上に限りなく、極限までに限りなく自由度を追求した展開。しかし、「無調」には逸脱しない。必要最低限の「調性」を保持した、時にモーダルに、時に無調に、時に現代クラシック風にアブストラクトに弾きまくる。そして、「間」を上手く使う。思いつきでは無い、しっかり計算されて「間」。この「間」が即興演奏のフリー度をさらに加速させる。
このアルバムには、そんなセシル・テイラーなフリー・ジャズがてんこ盛り。全編聴き通すと、もうセシル・テイラーなフリー。ジャズでお腹いっぱいになる。このアルバムにて、セシル・テイラーなフリー・ジャズの全容が明らかになる。そして、フリー・ジャズの「第3のベクトル」を提示し、欧州という支持基盤を得て、セシル・テイラーなフリー・ジャズは、メジャーな存在として、さらなる飛躍を遂げることとなる。
このアルバムの様な、フリー・ジャズの新しい3つ目の演奏トレンドをしっかり記録し、アルバムとしてリリースする。ヴァーヴやキャピトルなどの様な大手レーベルの、売らんが為のジャズでは無く、純粋に優れたジャズを漏れなく記録し、積極的に世に出すという矜持を、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオン率いるブルーノート・レーベルは強く持っていた。そういうところが、21世紀の今でもブルーノートは尊敬され、一目置かれるレーベルであり続けている。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2024.08.24 更新
・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。
・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
記事をアップ。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から14年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

« ”サーマン健在” を実感する好盤 | トップページ | ブルーノートのハッチャーソン『Happenings』 »


コメント