クロスオーバーなドラミングです
演奏の「音」を決める重要要素の一つを担っているのが「ドラム」。意外と認識されていないが、ドラミングの音が、その演奏全体の「ジャンル」や「志向」を決定づける大きな要素になっている。
そんなャズ/フュージョンにおける「ドラム」にスポットを当てて、楽曲評論をする。レコード・コレクターズ 2025年2月号の特集は「この曲のドラムを聴け! ジャズ/フュージョン編」。これは実に興味深い特集。
Alphonse Mouzon『Mind Transplant』(写真左)。1974年12月、ロサンゼルスでの録音。翌年1975年のリリース。
ちなみにパーソネルは、Alphonse Mouzon (ds, vo, syn, el-p, org, arr, cond), Jerry Peters (el-p, org), Tommy Bolin, Lee Ritenour (g), Jay Graydon (g, voice bag on "Snow Bound", programming), Henry Davis (el-b)。アルフォンス・ムゾーンの初リーダー作になる。
クロスオーバー&フュージョン・ジャズは、8ビート主体のリズム&ビートがメインなので、4ビートの様に、おかずの入れ方や間の取り方などの個性を織り込むことが難しい。フィルインやポリリズムなど、叩き方のテクニックとグルーヴにその個性を求める傾向が強く、逆に、ドラミングの雰囲気によって、その楽曲の「音の傾向」や「音の志向」が決定付けられることが多い。
リーダーのアルフォンス・ムゾーンはドラマー。ウェザー・リポート、ラリー・コリエルとの活動でも知られる、ジャズ・ロック、クロスオーバー・ジャズにおける屈指のドラマー。ムゾーンのドラミングは、ハイハットの使い方が印象的な、ドコドコ叩きまくるビリー・コブハムと同類の「千手観音ドラミング」。コブハムよりグルーヴ感が濃い。
そんなドラミングが冒頭のタイトル曲「Mind Transplant」の出だしから炸裂する。グルーヴ感濃厚の「千手観音ドラミング」。ジャジーなビート感より、ロックなビート感が強く漂い、アルバム全体の演奏の印象は、ジャズロックというよりは、明らかに「クロスオーバー・ジャズ」である。電気楽器を活用して、ジャズとロックの融合、クロスオーバーな音世界。そんな音世界を、ムザーンのドラミングが濃厚にしている。
英国ハードロックの雄、ディープ・パープルのギタリストを務めた、トミー・ボーリンの参加が効いた、明確にロック・テイストな、クロスオーバー・ファンクな「Happiness Is Loving You」や、ムザーン自身のヴォーカルが意外とイケる「Some Of The Things」など、クロスオーバー・ジャズな音志向な中でも、少しロックに軸足を移した楽曲がなかなかユニークで格好良い。
ジャジーなグルーヴは仄かに残しつつ、基本はロックに少し軸足を移した、ジャズとロックの「クロスオーバーなジャズ」の佳作と言える。そして、このアルバムの音志向を色濃くしているのが、リーダーのムザーンの「千手観音ドラミング」である。
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