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2025年1月15日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 101 『Custom Taylored』

小粋なジャズ盤を探索していると、我が国のジャズ評論家の皆さんが、ほとんど扱わないジャズマンに出くわすことがよくある。米国のジャズ関連のサイトを見ると、米国ではまずまずの数のリーダー作を出して、人気のジャズマンなんだが、どうにも我が国では、そのジャズマンの名前を見ることがほとんどない。意外と我が国のジャズ本やジャズ雑誌で扱うジャズマンには「偏り」があるのかもしれない。

The Billy Taylor Trio『Custom Taylored』(写真左)。1960年3月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Billy Taylor (p), Henry Grimes (b), Ray Mosca (ds)。全曲、ピアニスト、ビリー・テイラー作の曲で固めた、トリオ作品。ベースとドラムの二人は、ビリー・テイラー専属のハウス・ジャズマン。

ビリー・テイラーは、知的で端正な黒人ピアニスト。黒くはあるが、ファンキー度合いは低い。クラシック・ピアノの様に端正な弾き回しの底に、そこはかとなく上品なファンクネスが漂う。その様子は、インテリジェンス溢れ、破綻のない、整った弾き回しに感じる。そう、ビリー・テイラーのピアノは、知的で端正な「ビ・バップなピアノ」なのだと思う。
 

The-billy-taylor-triocustom-taylored

 
冒頭の「Warming Up」は端正にスイングする、ミッド・テンポのバップ・チューン。端正な弾き回しと知的なアドリブ・ラインがビリー・テイラーの真骨頂。3曲目の「That’s Where It Is」は、上品なファンクネス漂う、ゴスペルチックな展開が実に魅力的。7曲目の「Don't Bug Me」は、アップテンポのブルース・チューン。崩れない破綻のない端正なブルース・フレーズは、力強いバップな雰囲気満載。

ベーシストのヘンリー・グライムスとドラマーのレイ・モスカは、堅実なリズム&ビートを供給し、ビリー・テイラーのピアノを堅実にサポートする。ビリー・テイラーのピアノが映えに映える。バックのリズム隊は、そんなテイラーのバップ・ピアノのリズム&ビートを支える。ハードバップなマナーをしっかりと備えた、1960年のビ・バップな演奏がこの盤に詰まっている。

ビリー・テイラーは、日本での人気はそれほど高くないが、米国では「売れっ子」ピアニストであった。この盤を聴くと、米国での人気は合点がいく。一言で言うと「ジャズ・ピアノとして魅力的」なのだ。我が国で人気がそれほどでないのは未だに理解できない。聴かず嫌いなのでは、とも思う。とにかく、ビリー・テイラーのピアノはもっと聴かれても良い、素性の良い、知的で端正なジャズ・ピアノである。
 
 

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コメント

ビリー・テイラーのアルバムは1枚だけone for funというのを持ってます。
クールな感じで聴きやすいですけど何で日本で人気ないんですかね?癖がなくて面白くないと思われてるんですかね。

Billy Taylor 大好きです。私的にベスト演奏と思っている"Sunny" はシングル板しかなく、LPで収録されたものはなかったと記憶しておりますが、どこかで音源入手できますか?

Camp4さん。
音楽のサブスクサイトの、『I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free』というタイトルのベスト盤に「Sunny」が入ってますね。

tony さん。
クラシック・ピアノのマナーがベースにあるということ、端正で破綻がないこと、テクニックが優秀なこと。この3つの個性のうち、一つでも持ったジャズ・ピアニストは、我が国の評論家筋にウケが悪いですね。偏った見方だと思いますが、評論って主観の世界なんで、仕方が無いな、と思う様にしています。

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