« 楽しいハードバップな好盤 ”Go” | トップページ | ジミー・スミスの「ブルース集」 »

2025年1月31日 (金曜日)

ショーターの考える ”モード”『Speak No Evil』

久々に再開です。ブルーノートの、創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノートらしい内容、音、響き。そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」を順に聴き直していく企画。今日はその「第8位」。

Wayne Shorter『Speak No Evil』(写真左)。1964年12月の録音。ブルーノートの4194番。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Freddie Hubbard (tp), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Elvin Jones (ds)。当時、新主流派ジャズの先鋭メンバーの選りすぐりである。

今回、改めて聴き直したのだが、この盤は、ショーターが在籍したマイルスのディスコグラフィーに照らし合わせると、1964年9月録音の『Miles in Berlin』と1965年1月録音の『E.S.P.』の間の録音になる。

『Miles in Berlin』は、ショーターのマイルス・バンド・デビューの盤だが、ライヴ盤で収録された曲は、マイルスのモーダルなオリジナル曲とジャズ・スタンダード曲。マイルスのモーダルなオリジナル曲で、ショーターもモーダルに吹き進めるところもあるが、基本は、コードがメインのハードバップの域を出ていない。

『E.S.P.』は、完全モーダルなマイルス・オリジナルな盤で、マイルスの1960年代黄金のクインテットのスタジオ録音第一弾だが、ショーターのテナーは完全モーダルになってはいるが、自作曲は2作に留まる。ショーターの自作曲については、まだマイルスの完全な「信任」を得ていない。

しかし、このブルーノート盤『Speak No Evil』は、全曲がショーター・オリジナル。どの曲もモード・ジャズを前提とした「モーダルな曲」として完成度は高い。
 

Wayne-shorterspeak-no-evil  

 
そして、しっかりと聴き耳を立てて聴き込むと、マイルス・オリジナルの「モーダルな曲」とはちょっと内容・展開が異なる。つまり、マイルス・バンドでのショーター・オリジナルな曲は、マイルス・オリジナルに近づけるカスタマイズが入っている様に感じるのだ。

この盤に詰まっている、オリジナルLPの6曲は、完全ショーター・オリジナルな「モーダルな曲」。ということは、このブルーノート盤『Speak No Evil』は、ショーターの考えるモード・ジャズを具現化した、ショーター・オリジナルなモード曲とモード演奏が、がっつり詰まっていることになる。

面白いのはパーソネルで、ハバードのトランペットは「疑似マイルス」に他ならない。実際、マイルスの様にしか聴こえない(笑)。それだけハバードのトランペットのテクニックが優れている証ではあるが、没個性である。

そして、ドラムには、マイルス・バンド・オリジナルのトニー・ウイリアムスはいない。トニーのドラミングは、モーダルな演奏を引導するというよりは、フリーにフリーに誘導する様なドラミングを叩きまくる傾向にあって、ショーターの考えるモード・ジャズには合わないのだろう。やはり、ショーターの考えるモーダルな演奏に徹するには、エルビン・ジョーンズのポリリズミックなドラムが最適なのだろう。

ということで、当ブログでも、10年ほど前に書いているが「このアルバムでは、ショーターがマイルス・クインテットでやらせて貰えない、ショーターならではのジャズを思いっきりやっている。そりゃあまあ、黒魔術や西洋の民話などからインスパイアされた、幽玄で妖気を感じさせるようなジャズは、絶対にマイルスはやらんよな(笑)」である。

ショーターの考えるモード・ジャズはこの盤で完成されている。この後、ショーターは、マイルスの1960年代黄金のクインテットの音楽監督として、マイルス・オリジナルのモード曲とモード演奏の完成と、アコースティック・マイルスの最高地点の到達に貢献することとなる。この『Speak No Evil』は新主流派のショーターの最高作である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました! 

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

« 楽しいハードバップな好盤 ”Go” | トップページ | ジミー・スミスの「ブルース集」 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 楽しいハードバップな好盤 ”Go” | トップページ | ジミー・スミスの「ブルース集」 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー