70年代ロンの「CTI流な純ジャズ」
CTIレーベルは、1970年代に、クロスオーバー&フュージョン・ジャズのブームを牽引したレーベル。しかし、そんなクロスオーバー&フュージョン・ジャズがメインのカタログ・ラインアップの中で、優れた内容の「コンテンポラリーな純ジャズ」なアルバム、いわゆる「CTI流な純ジャズ」盤が意外と多く存在する。そして、これが意外と良くて病みつきになる。
Ron Carter『All Blues』(写真左)。1973年10月24日、Van Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, piccolo-b), Joe Henderson (ts), Roland Hanna (p), Richard Tee (el-p), Billy Cobham (ds, perc)。ジョー・ヘンダーソンのテナー・サックスが1管フロントのカルテット編成。3曲目の「117 Special」だけ、ハナのピアノが、ティーのエレピに替わる。
CTIレーベルの盤である。このパーソネルを眺めると、どんな音が出てくるのか、凄く不安になる。これだけ、ハードバップ全盛期から、メインを走ってきた一流ジャズマンばかりである。まさか、この面子で、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズをやるんや無いやろうな、と心の中で慄きながら、レコードの針を盤に落としたのを覚えている。
これが、である。不思議なことに、コンテンポラリーな純ジャズが展開されているのだ。演奏全体の雰囲気が「ライトでソフトでスインギーな」コンテンポラリーな純ジャズ。1970年代の、独特のライト感、独特のポップ感を底に漂わせたコンテンポラリーな純ジャズ。
面白いのは、曲を追うごとに、この「純ジャズ」度合いが増えていくこと。曲が進むにつれ、硬派でライトな純ジャズ度合いが増強されていく。4曲目の「Rufus」などは、もうこれは純ジャズ。5曲目「All Blues」などは、イージーリスニング志向の純ジャズ風に始まるが、途中出てくるジョーヘンのテナーのモーダルなソロなどは、もはや完全な「純ジャズ」である。
バックで演奏のベースラインを司るロンのベースも、この盤では健闘している。もともと優れたベーシストなんだが、この時代では、ベースのピッチが合ってなかったり、ベース音をアンプで増幅した「ブヨンブヨン」とした音に違和感を感じたりして、ロンのベースは評判は良くなかった。
ただ、この盤ではピッチはまずまず合っていて、アンプ増幅の「ブヨンブヨン」といった音はかなり控えめで、ロンのベースの「本当」を、この盤では確認することが出来る。ソロも創造性溢れるものであり、速弾きのピチカートも見事である。ラストの「Will You Still Be Mine」でのロンのベース・ソロは、テクニックを駆使して鬼気迫るものがあって迫力十分。
3曲目だけが、ソフト&メロウを追求したクロスオーバー・ジャズな演奏になっているが、この曲では、若き日のリチャード・ティーのエレピがファンキーでメロウで印象に残る。このティーのエレピをバックに、ロンが骨太でテクニック抜群のベース・ソロで、メインの旋律を唄うように引き進めていく。圧巻である。
この盤を聴くと、ロンもやればできるやん、という気にさせてくれる。とはいえ、暫くは、ピッチが合ってなかったり、ブヨンブヨンとアンプ増幅されたベース音が耐えられなかったり、が時々あって、聴く方からすると思わず「眉をひそめたり」するのだが、1990年代には、その欠点が克服され、コンスタントに秀作をリリースするようになる。
そんな1990年代以降の秀作な内容を、この盤ではしっかりと展開している。ロンのポテンシャルの高さを改めて思い知る好盤です。
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