リピダルがプログレに接近した盤
Terje Rypdal『Descendre』(写真左)。ECMの1144番。1979年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g, key, fl), Palle Mikkelborg (tp, flh, key), Jon Christensen (ds, perc)。ノルウェー出身の「欧州の変態ギタリスト」、テリエ・リピダルのリーダー作である。編成はトリオだが、ベースレス、フロントがリピダルのエレギとミッケルボルグのトランペットの変則トリオ。
リピダルのエレギは、アタッチメントを駆使した浮遊感溢れる、切れ味の良いフリーなエレギで、ジャズロック寄りというよりは、プログレッシヴ・ロック寄りといった方が座りの良い、実に個性的なギターである。とても自由度の高い弾き回しで、モードからフリーに、アブストラクトにスピリチュアルに弾き上げる様は、空間に飛翔するビロードの如く、である。
そんな印象派バリバリのリピダルのギターがいきなりガーンと来るかと思いきや、まずは、ミッケルボルグのトランペットが先行して飛翔する。ミッケルボルグはデンマーク出身のトランペッター。出てくる音は、さしずめ、リピダルのエレギをトランペットに置き換えた様な、とても自由度の高い吹き回しで、モードからフリーに、アブストラクトにスピリチュアルに吹き上げる。
全曲リピダルのオリジナル。エレギとトランペットがフロントだが、リズム&ビートは、ドラム&パーカッションが司り、音の雰囲気と広がりとテンポはエレピ&アコピがリードする。エレギとトランペットとエレピ&アコピ、そして、ドラム&パーカッションを多重録音でまとめて、統一した音世界を表現する。出てくる音は、たゆたうエレギとトランペット、インプロを耽美的に印象的にリードするエレピ&アコピ、そして、アクセントを付ける様に、効果的に出てくるドラム&パーカッション。
浮遊感溢れる自由度の高いフレーズが音空間を乱舞する。エレピ(シンセ)とトランペットが耽美的で印象的なフレーズを展開し、ドラム&パーカッションがリズム&ビートのアクセントを効果的に付加する。ジャジーなリズム&ビートのパフォーマンスがなければ、この盤の音世界はまるで、印象派志向のプログレッシヴ・ロック。そう、一言で言うと、この盤の音世界は「プログレッシヴ・ジャズ・ロック」。
典型的なECMレーベルのニュー・ジャズの音世界。演奏の基本が「即興演奏」メインに展開されているので、かろうじてジャズの範疇に軸足を留めてはいるが、この盤は、リピダルのエレギが、一番、プログレッシヴ・ロックに接近した音世界を捉えた秀作と言える。そして、この盤の音世界は絶対に「欧州的」。欧州のニュー・ジャズのリーダー的レーベル、ECMの面目躍如である。
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