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2025年1月の記事

2025年1月31日 (金曜日)

ショーターの考える ”モード”『Speak No Evil』

久々に再開です。ブルーノートの、創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノートらしい内容、音、響き。そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」を順に聴き直していく企画。今日はその「第8位」。

Wayne Shorter『Speak No Evil』(写真左)。1964年12月の録音。ブルーノートの4194番。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Freddie Hubbard (tp), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Elvin Jones (ds)。当時、新主流派ジャズの先鋭メンバーの選りすぐりである。

今回、改めて聴き直したのだが、この盤は、ショーターが在籍したマイルスのディスコグラフィーに照らし合わせると、1964年9月録音の『Miles in Berlin』と1965年1月録音の『E.S.P.』の間の録音になる。

『Miles in Berlin』は、ショーターのマイルス・バンド・デビューの盤だが、ライヴ盤で収録された曲は、マイルスのモーダルなオリジナル曲とジャズ・スタンダード曲。マイルスのモーダルなオリジナル曲で、ショーターもモーダルに吹き進めるところもあるが、基本は、コードがメインのハードバップの域を出ていない。

『E.S.P.』は、完全モーダルなマイルス・オリジナルな盤で、マイルスの1960年代黄金のクインテットのスタジオ録音第一弾だが、ショーターのテナーは完全モーダルになってはいるが、自作曲は2作に留まる。ショーターの自作曲については、まだマイルスの完全な「信任」を得ていない。

しかし、このブルーノート盤『Speak No Evil』は、全曲がショーター・オリジナル。どの曲もモード・ジャズを前提とした「モーダルな曲」として完成度は高い。
 

Wayne-shorterspeak-no-evil  

 
そして、しっかりと聴き耳を立てて聴き込むと、マイルス・オリジナルの「モーダルな曲」とはちょっと内容・展開が異なる。つまり、マイルス・バンドでのショーター・オリジナルな曲は、マイルス・オリジナルに近づけるカスタマイズが入っている様に感じるのだ。

この盤に詰まっている、オリジナルLPの6曲は、完全ショーター・オリジナルな「モーダルな曲」。ということは、このブルーノート盤『Speak No Evil』は、ショーターの考えるモード・ジャズを具現化した、ショーター・オリジナルなモード曲とモード演奏が、がっつり詰まっていることになる。

面白いのはパーソネルで、ハバードのトランペットは「疑似マイルス」に他ならない。実際、マイルスの様にしか聴こえない(笑)。それだけハバードのトランペットのテクニックが優れている証ではあるが、没個性である。

そして、ドラムには、マイルス・バンド・オリジナルのトニー・ウイリアムスはいない。トニーのドラミングは、モーダルな演奏を引導するというよりは、フリーにフリーに誘導する様なドラミングを叩きまくる傾向にあって、ショーターの考えるモード・ジャズには合わないのだろう。やはり、ショーターの考えるモーダルな演奏に徹するには、エルビン・ジョーンズのポリリズミックなドラムが最適なのだろう。

ということで、当ブログでも、10年ほど前に書いているが「このアルバムでは、ショーターがマイルス・クインテットでやらせて貰えない、ショーターならではのジャズを思いっきりやっている。そりゃあまあ、黒魔術や西洋の民話などからインスパイアされた、幽玄で妖気を感じさせるようなジャズは、絶対にマイルスはやらんよな(笑)」である。

ショーターの考えるモード・ジャズはこの盤で完成されている。この後、ショーターは、マイルスの1960年代黄金のクインテットの音楽監督として、マイルス・オリジナルのモード曲とモード演奏の完成と、アコースティック・マイルスの最高地点の到達に貢献することとなる。この『Speak No Evil』は新主流派のショーターの最高作である。
 
 

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2025年1月30日 (木曜日)

楽しいハードバップな好盤 ”Go”

ハードバップな好盤って、ごまんとある。それだけ、ハードバップの時代は、ジャズというジャンルのパフォーマンスが、歴史上、一番、充実していた時代だった証でもある。しかし、本当に沢山の好盤があって、ジャズ初心者向けの好盤でありながら、当ブログにてご紹介し損ねている盤もまだまだある。

Paul Chambers『Go』(写真左)。1959年2月2, 3日、シカゴでの録音。Vee-Jayレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Chambers (b), Freddie Hubbard (tp), Cannonball Adderley (as), Wynton Kelly (p), Philly Joe Jones, Jimmy Cobb (ds)。当時のマイルス・バンドのリズム隊メンバーが集結した、素敵な内容のハードバップ盤。

バンド編成の基本は、ハバードのトランペット、キャノンボールのアルト・サックスの2管フロント。リズム隊に、ケリーのピアノ、ポルチェンのベース、そして、フィリージョーとコブが交代でドラムを担当するクインテット編成。ハバードのトランペットがコルトレーンに代われば、そのまま、マイルスのバックバンドになる。
 

Paul-chambersgo

 
ほぼ、マイルスのバックバンド的編成なのだが、これがまあ、モードの影の形もない、徹頭徹尾、コード・ベースのばりばりハードバップな演奏が統一している。モードの方が、アドリブの自由度は格段に上がるのだが、この盤のセッションでは、モードのアーティスティックな自由度よりも、コードのハードバップな演奏の楽しさを優先した、そんな感じのする、聴いて楽しい『Go』セッションの音である。

リーダーのポルチェンのベースも良い響きで、演奏全体の「底」をしっかりと支える。キャノンボールの饒舌で切れ味の良い疾走感溢れる吹き回し。テクニック溢れるハバードのペット。ケリーのハッピー・スイングなピアノ、そして、渋くキメるフィリジョー&コブのドラム。1950年代のハードバップ演奏の良いところがギッシリと詰まっている。

この『Go』のセッションって、アウトテイクが多くて、CDでのリイシュー時、オリジナルのLPの6曲に、なんと10曲ものボートラを追加して、CD2枚組としてリイシューしている。が、僕は、まずは、LP時代の6曲をしっかりと聴き込んでから、リイシューのボートラを聴いて欲しい、と思う。そうすると、オリジナル6曲の素晴らしさを実感する中で、ボートラの良さもしっかりと確認できると思うのだ。
 
 

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2025年1月29日 (水曜日)

WSQのソウル・カヴァー集

アルバム・ライブラリーで、「ウエザー・リポート」のアルバムを探していて、その隣に「ワールド・サキソフォン・カルテット(World Saxophone Quartet)」の名前があるのに気がついた。そうか、かなりご無沙汰していたなあ、と思いながら、ワールド・サキソフォン・カルテットのアルバムを聴いてみようと思った。

World Saxophone Quartet『Rhythm and Blues』(写真左)。1988年11月の録音。Elektra / Nonesuchからのリリース。ちなみにパーソネルは、Hamiet Bluiett (bs), Julius Hemphill (as), Oliver Lake (as), David Murray (ts)。

サックス奏者が4人だけのバンド、ワールド・サキソフォン・カルテット(以降WSQと略)のメジャーデビュー後、3枚目のアルバムになる。

WSQは、1977年に結成された、米国のジャズ・アンサンブル。4人編成(カルテット)、いわゆる「サックス四重奏団」である。実にユニークなカルテットで、その音楽性もユニーク。フリー・ジャズ、R&B、ファンク、南アフリカのジャズの要素等、を音楽に取り込んでいる。

このアルバムは、タイトルからも判る様に、ソウルとブルースの名曲6曲とオリジナル3曲を組み合わせた「WSQのソウル・カヴァー集」。基本的に、R&Bの有名スタンダード曲とハミィト・ブルーイット、ジュリアス・ヘンフィルの作曲した2作品をブラス・アンサンブルのみで演奏するという、とびきりユニークな演奏。
 

World-saxophone-quartetrhythm-and-blues

 
そして、このユニークな4重奏団は、モードとフリーを演奏の基本としている。オーネット・コールマンやアルバート・アイラーのフリー吹奏の「跡を継ぐもの」たちが、モードとフリーのジャズ吹奏でアンサンブル、ユニゾン&ハーモニーをやるのだ。ユニークの極み、唯一無二のサックスだけによる4重奏、それもモード&フリー。

テーマ部はしっかり譜面に落ちていると思われるが、アドリブ部に入ると、突如、モード&フリーな展開の4重奏に突入する。これがまたスリリング。しかも、このモード&フリーのアドリブが、意図的かつ厳格に制御され、しっかりとした「ディシプリン(規律)」が保たれている。見事な4重奏。どこか室内学的な響きがこれまたあユニーク。

冒頭、ハミエット・ブルーエットのバリサクが、オージェイズの「For the Love of Money」のリフを鳴らして、このユニークなサックス4重奏がスタートする。2曲目のマーヴィン・ゲイの「Let's Get It On」が、原曲のイメージを崩しつつ、スローダウンした素晴らしいモード&フリーのアンサンブルを聴かせる。

以降「I Heard That」「(Sittin' On) The Dock of the Bay」「Try a Little Tenderness」「Night Train」などの、ソウルのR&Bの名曲が、同様に原曲のイメージを崩しつつ、素晴らしいモード&フリーのアンサンブルで、グイグイ聴かせる。そして、その崩れたイメージの中に、スッと聴き慣れたフレーズがポッと出ては、素晴らしいモード&フリーのアンサンブルに消えていく。これが実にスリリングなのだ。

このユニークなサックスだけの4重奏団WSQの「ソウル・カヴァー集」。モード&フリーな展開のサックス4重奏。原曲を知らなくても楽しめる。原曲との違いを楽しむこともできる。これ名盤の類だと思います。
 
 

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2025年1月28日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・278

小粋なジャズ盤、探索の日々。なんだか、昨日から、ジャズ・オルガンが聴きたくなって、色々、アルバムを物色していたのだが、やはり、久々に聴くジャズ・オルガン、最初は、ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスのアルバムだろう。それも、有名盤ではない、いわゆる「隠れ好盤」の類のアルバムが良い。

 Jimmy Smith『Lonesome Road』(写真左)。1960年6月と1963年2月の2つのセッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、1960年6月が、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Quentin Warren (g), Sam Jones (b), Donald Bailey (ds)。1963年2月が、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Quentin Warren (g), Donald Bailey (ds)。

いつ聴いても見事なオルガンである。ダイナミズム溢れ、ダンディズム溢れ、歌心溢れ、テクニック優秀。ジャズ・オルガンの祖、と呼ばれるのも納得である。そんなジミー・スミスが、ファンクネス満載のソウルフルな「ソウル・ジャズ」に大接近したアルバムがこれである。
 

Jimmy-smithlonesome-road

 
ジミー・スミスのオルガンは、うるさいくらいにダイナミックで白熱の「切れ味抜群のオルガン」が、一つの大きな特徴なのだが、この盤ではしっかり抑制を効かせて、まことにソウルフルにオルガンを響かせる。そんな、こってこてソウルフルなオルガンで、小粋なスタンダード曲を、切れ味よく聴かせてくれる。

ヴィブラートを効かせたスインギーな演奏、足鍵盤フル稼働のバラード演奏など、他のジミー・スミスのアルバムではなかなか聴くことが出来ない、ちょっと違った「顔」をこの盤は効かせてくれる。クウェンティン・ウォーレンのギターも、ジミー・スミスのオルガンに相対して、バリバリ弾きまくって、その役割を全うしているし、やはり、タレンタインの漆黒テナーは、ジミー・スミスのオルガンによく似合う。

1980年代、ブルーノートが日本向けにリリースしたアウトテイク集だが、それぞれの曲の演奏について、どれもが最高のパフォーマンス。この盤をアウトテイク集と名付けるのは、ちょっと違和感がある。恐らくこの盤は、LPの収録時間制限に基づいてアルバムを作るが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが収録時間制限の中で、収録したいのに出来なかった、泣く泣く諦めた「優れた内容の演奏」の類だろう。
 
 

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2025年1月27日 (月曜日)

エリスとパスの素敵な掛け合い

コンコード・レコード(Concord Records)は、アメリカ合衆国のジャズ・レコード・レーベル。1973年にカール・ジェファーソンが良質なジャズ作品を送り出す事を目的にカリフォルニア=コンコードの地において創業。良質なジャズ作品を多く残している。

我が国では、日本のレコード会社との契約が上手くいかなったのか、日本盤として、コンコード・レコードのアルバムがリリースされた枚数はかなり少なかった思い出がある。今では、幾度か、有名盤がCDリイシューされ、音楽のサブスク・サイトにも、まずまずの数のアルバムがアップされている。

Herb Ellis & Joe Pass『Jazz/Concord』(写真左)。1974年の作品。コンコード・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Herb Ellis, Joe Pass (g), Ray Brown (b), Jake Hanna (ds)。記念すべきコンコード・レコードの第1作目。ハーブ・エリスとジョー・パスの二人のジャズ・ギターのヴァーチュオーゾに、レイ・ブラウンの職人ベースとジェイク・ハナの堅実ドラムが、リズム&ビートをしっかりある。
 

Herb-ellis-joe-passjazzconcord

 
ハーブ・エリスとジョー・パス、二人のギターの掛け合い、二人のギターのアドリブ・バトル、二人のギターのユニゾン&ハーモニー、絶妙である。テクニックは申し分なく、歌心も満載、熱気溢れる弾きまくり、この盤には、極上の1970年代のハードバップが詰まっている。

スタンダード曲「Shadow Of Your Smile」「Georgia」「Love For Sale」等、手垢の付いた「どスタンダード曲」を、名手二人のギターの、テクニック溢れる歌心溢れる弾きっぷりは素晴らしく、その響きは今の耳にも新鮮に響く。レイ・ブラウンの重低音ベースが、ブンブンと胴鳴りの唸りを響かせて、しっかりとリズム&ビートをキープする。ジェイク・ハナのドラミングは堅実で、リズム&キープを冷静にコントロールする。

この盤におけるハーブ・エリスとジョー・パスのパフォーマンスは素晴らしい。こんな素晴らしいハードバップなパフォーマンスが、1970年代に録音されていた事実に、改めて「頼もしく」思った。クロスオーバー&フュージョンの時代に、これだけ内容の濃いハードバップが「生きていた」。メインストリームな、いわゆる「純ジャズ」は、何時の時代でも意外と「力強い」。
 
 

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2025年1月26日 (日曜日)

ジャズテットの隠れた魅力

ジャズ盤コレクションを振り返りながら、小粋なジャズ盤をピックアップしては聴き直している。初心者向けのジャズ紹介本で、常に挙げられる「名盤」も良いが、何も、その「名盤」だけがジャズ盤ではない。ジャズ盤は世の中に「ごまん」とある。ジャズ紹介本に取り上げられない盤にも「名盤」に負けない内容の「小粋なジャズ盤」が沢山ある。これを探し当て、聴き込む。これが「当たり」であれば、それはもう至福の時である。

『The Jazztet and John Lewis』(写真左)。1960年12月20–21日、1961年1月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp), Benny Golson (ts), Tom McIntosh (tb), Cedar Walton (p), Tommy Williams (b), Albert Heath (ds), John Lewis (arr)。ジャズテットとしての3枚目のアルバムである。

ファンキー・ジャズの人気グループとして旗揚げした「ジャズテット」。1959年にトランペット奏者のアート・ファーマーとテナーサックス奏者のベニー・ゴルソンによって結成されたジャズ・セクステット。双頭リーダーのファーマーとゴルソンは変わることはないが、リズム・セクションを中心に、メンバーはコロコロ変わる。そして、そのバンド・サウンドもアレンジャーが変わると、そのアレンジャーの志向コロっと変わる。

このジャズテットとしての3枚目のアルバムは、室内楽ジャズの仕掛け人、ジョン・ルイスが、作曲家兼編曲家としてジャズテットと組んだ、いわゆる企画盤。ハードバップなアンサンブルを旨とするファンキー・ジャズが「売り」のジャズテットが、ルイスのアーティステックで室内楽ジャズ志向のアレンジを採用して、理知的でスマートなモダン・ジャズに変身しているのだから興味津々である。
 

The-jazztet-and-john-lewis

 
冒頭の「Bel」から、ジョン・ルイスの個性溢れるアレンジ全開である。まず、この曲、ジョン・ルイスが、このアルバムの為に直々に書き下ろしたもの。オープニングの、メロディアスで、クラクションのように機能する3管フロントのテーマの響き自体、すでに「ジョン・ルイス」の音世界である。

そして、びっくりするのが、3曲目の「Django」。このMJQの耽美的でブルージーな名曲名演を、レコード史上最も激しくスウィングする演奏で、ガンガンにすっ飛ばす。しかし、このアレンジは、ジャズテットの「ハイテクニックで疾走感溢れる、スインぎーなアンサンブル」という個性を、効果的に全面的にアピールするもので、ジャズテットの演奏力のずば抜けた高さを証明してみせる。

「ミラノ」や「ニューヨーク19」のような緩やかで牧歌的な曲とアレンジは、ゴルソンのテナーの、意外というか「暖かく息づくような音色」とファーマーのトランペットの「叙情的なスタイル」を引き出し、これらの曲には、バックに、穏やかでブルージーで印象的なハーモニーがふんだんに盛り込まれている。

ジョン・ルイスのアレンジによって、ジャズテットの新しい魅力が発掘された、そんなジャズテットのサード・アルバム。この盤では、ジャズテットは「単純なファンキー・ジャズなバンド」ではなく、様々なアレンジに完全対応する「能力の高いプロフェッショナルなバンド」だということが良く判る。ジャズテットのアーティスティックな隠れた魅力が出た好盤だと思う。
 
 

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2025年1月25日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・277

1980年代は「純ジャズ復古」の時代。1970年代後半からのフュージョン・ジャズの大ブームの後、その反動だったのか、1985年にEMI傘下で復活したジャズ・クラブ「ブルーノート」がニューヨークのタウンホールで開催した「ワン・ナイト・ウィズ・ブルーノート」をキッカケに、純ジャズ復古の大号令がかかった。

Dizzy Gillespie『New Faces』(写真左)。1985年の作品。GRPレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Dizzy Gillespie (tp), Branford Marsalis (ts, ss), Kenny Kirkland (p), Lonnie Plaxico, Lincoln Goines (b), Robby Ameen (ds), Steve Thornton (perc)。ブランフォード・マルサリス、ケニー・カークランド、ロニー・プラキシコ、録音当時のニュー・フェイスを迎えてのディジー・ガレスピー晩年の好盤。

ビ・バップの生みの親の一人である、ディジー・ガレスピー。そんなモダン・ジャズの巨人が新世代と共に創作したネオ・ハードバップな好盤。名匠デイヴ・グルーシンのプロデュース。明らかに、1950年代のビ・バップ、ハードバップとは雰囲気が違う、1980年代のネオ・ハードバップのパフォーマンスがこの盤に詰まっている。

純ジャズ復古のトレンドを受けて、フュージョン・ジャズがメインのGRPレーベルが、デイヴ・グルーシンのプロデュースで製作した「ネオ・ハードバップ」な内容なのだが、これがなかなか充実しているから面白い。演奏全体の基本は「モード」。そして、まず、巨匠ディジー・ガレスピーのトランペットが実にモダンな響き。音はベテランな雰囲気の余裕ある吹奏なのだが、出てくるフレーズが新しい。
 

Dizzy-gillespienew-faces

 
1950年代の手垢の付いたフレーズでは無い。そして、ブランフォードのテナーが効いている。明らかに新しい響きを湛えたモーダルなテナー。しかし、ガレスピーが、このブランフォードのテナーに相対して、互角なインタープレイを展開しているのにはビックリである。ビ・バップの創始者、レジェンド・ガレスピー恐るべし。

リズム・セクションでは、カークランドが、とても新鮮なモーダル・フレーズを連発しながら、新旧フロントを支え、鼓舞する。そして、プラキシコのブンブン唸るベースが、アメーンのドラムとソーントンのパーカッションが、インタープレイの底をしっかりと支える。

このプラキシコのベースがあってこそ、アメーンのドラムとソーントンのパーカッションがあってこそ、新旧フロントの極上のネオ・ハードバップなインタープレイが展開されるというもの。

今まで、ジャズ盤紹介に上がったのを見たことが無いアルバムですが、初めて聴いた時は思わずビックリ、極上の1980年代のネオ・ハードバップのパフォーマンスが展開されていて、思わず何回も聴き直した記憶がある。1980年代のGRPのネオ・ハードバップなんて、と聴かず嫌いで敬遠するなかれ。この盤、なかなかイケる内容のネオ・ハードバップ初期の好盤だと思います。
 
 

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シューアの魅力的なボーカル盤

いつの頃からか、ジャズ盤を聴きつつ、ハードなジャズ盤を聴き続けて、ちょっと疲れたなあ、と感じた時には、ジャズ・ボーカル盤で「耳休め」をすることが習慣になった。

実は、ジャズ盤を本格的に聴き始めてから5年くらいは、ジャズ・ボーカルが苦手だった。特に、オールド・スタイルの、独特の「コブシ」と「唸り」が苦手で、しばらくは遠ざけていた。が、それが「味」だと解釈したのと、伴奏に回った時のピアノをはじめとしたリズム隊の妙技に強い興味が湧いたのとで、ジャズ・ボーカルの苦手意識が無くなった。

Diane Schuur『Deedles』(写真左)。1984年の作品。GRPレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Diane Schuur (vo, p)。米国のボーカリスト兼ピアニストのダイアン・シューアが、プロデューサーのデイブ・グルーシンとレコーディングした2枚目のアルバム。シューアの弾き語りがメインで、シューアのボーカルの良さが堪能できる。

ダイアン・シューア(Diane Schuur)。 1953年12月、米国生まれ。現在71歳。シューアは未熟児網膜症のため、生まれつき目が見えなかった。しかし、絶対音感と明瞭な声のトーンの持ち主で、これを武器にボーカリストとして、頭角を現していった。1979年、米国スタン・ゲッツに認められて共演を果たしたことがきっかけでGRPと契約。GRPと契約して初めてのアルバムが、この『Deedles』。
 

Diane-schuurdeedles

 
シューアのボーカルはストレートで自然。力感溢れる声だが温かみがある。テクニック豊富なフレージングで、感情表現が豊か。スタンダード曲の唄い回しが見事なのは当然のこと、ポピュラーソングや当時のヒット曲のカヴァーの唄いっぷりが実に見事。ストレートで自然な唄い方が、ポピュラーソングや当時のヒット曲の持つ、キャッチーな旋律を引き立たせている。

特に、僕は2曲目の、ビリージョエルの名曲「New York State of Mind(ニューヨークの想い)」のシューアの歌唱に限りない魅力を感じる。もともと原曲の出来が抜群に良いのだが、その原曲の良さを、シューアは的確に把握し、テクニック豊富なフレージングで表現する。

情感がしっかりこもっているが、感情移入過多にはならず、ストレートにすっきりと、この名曲の意図するところをしっかりと唄い上げる。シューアのボーカルの良さが全面的に発揮されていて、見事な歌唱である。

1980年代のコンテンポラリー・ジャズの一翼を担ったGRPレコードからのリリースで、デジタル録音ながら、音の質はなかなかのもの。シューアのボーカルの特徴をしっかりと捉えていて、シューアの歌唱が素敵に魅力的に響いている。変なこだわり無く、リラックスして聴くことの出来る良質な女性ボーカル盤の一枚。好盤です。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

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2025年1月23日 (木曜日)

リピダルがプログレに接近した盤

Terje Rypdal『Descendre』(写真左)。ECMの1144番。1979年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g, key, fl), Palle Mikkelborg (tp, flh, key), Jon Christensen (ds, perc)。ノルウェー出身の「欧州の変態ギタリスト」、テリエ・リピダルのリーダー作である。編成はトリオだが、ベースレス、フロントがリピダルのエレギとミッケルボルグのトランペットの変則トリオ。

リピダルのエレギは、アタッチメントを駆使した浮遊感溢れる、切れ味の良いフリーなエレギで、ジャズロック寄りというよりは、プログレッシヴ・ロック寄りといった方が座りの良い、実に個性的なギターである。とても自由度の高い弾き回しで、モードからフリーに、アブストラクトにスピリチュアルに弾き上げる様は、空間に飛翔するビロードの如く、である。

そんな印象派バリバリのリピダルのギターがいきなりガーンと来るかと思いきや、まずは、ミッケルボルグのトランペットが先行して飛翔する。ミッケルボルグはデンマーク出身のトランペッター。出てくる音は、さしずめ、リピダルのエレギをトランペットに置き換えた様な、とても自由度の高い吹き回しで、モードからフリーに、アブストラクトにスピリチュアルに吹き上げる。
 

Terje-rypdaldescendre

 
全曲リピダルのオリジナル。エレギとトランペットがフロントだが、リズム&ビートは、ドラム&パーカッションが司り、音の雰囲気と広がりとテンポはエレピ&アコピがリードする。エレギとトランペットとエレピ&アコピ、そして、ドラム&パーカッションを多重録音でまとめて、統一した音世界を表現する。出てくる音は、たゆたうエレギとトランペット、インプロを耽美的に印象的にリードするエレピ&アコピ、そして、アクセントを付ける様に、効果的に出てくるドラム&パーカッション。

浮遊感溢れる自由度の高いフレーズが音空間を乱舞する。エレピ(シンセ)とトランペットが耽美的で印象的なフレーズを展開し、ドラム&パーカッションがリズム&ビートのアクセントを効果的に付加する。ジャジーなリズム&ビートのパフォーマンスがなければ、この盤の音世界はまるで、印象派志向のプログレッシヴ・ロック。そう、一言で言うと、この盤の音世界は「プログレッシヴ・ジャズ・ロック」。

典型的なECMレーベルのニュー・ジャズの音世界。演奏の基本が「即興演奏」メインに展開されているので、かろうじてジャズの範疇に軸足を留めてはいるが、この盤は、リピダルのエレギが、一番、プログレッシヴ・ロックに接近した音世界を捉えた秀作と言える。そして、この盤の音世界は絶対に「欧州的」。欧州のニュー・ジャズのリーダー的レーベル、ECMの面目躍如である。
 
 

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2025年1月22日 (水曜日)

”アーゴ&カデット” のアモンズ

アーゴ&カデット・レーベル(Argo & Cadet label)。1955年にチェス・レコード(Chess Records・ブルースやリズム・アンド・ブルースが主力)のジャズ部門としてアーゴ・レコードとして始まったアメリカのレーベル。アーゴ・レーベルは、英国の同様の名前のレーベルとの混同を避ける為、1965年にカデット・レーベルに名前を変更。カデット・レーベルは、アーティストがチェスに移籍した1974年頃にレコードのリリースを停止している。

アーゴ&カデット・レーベルは、ブルーノートやプレスティッジといったジャズ専門レーベルに比べ、かなりソウル色が強い。親レーベルのチェス・レコードが「リズム・アンド・ブルース主力」であったことが理由だろうが、ソウルフルな雰囲気濃厚なもの、ファンクネス濃厚なもの、どっぷりブルージーな歌心満点なもの、など、ちょっと癖の強い、他のレーベルにないファンキー&ソウルフル濃厚な盤が多くリリースされている。

Gene Ammons『Makes It Happen』(写真左)。1948年10月, 1949年2月, 1950年1,5月, 1951年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Gene Ammons, Tom Archia (ts), Matthew Gee (tb), Bill Massey, Jesse Miller (tp), Leo Blevins (g), Sonny Stitt (as), Charlie Bateman, Junior Mance (p), Christine Chatman (p,vo), Gene Wright, Leroy Jackson, Lowell Pointer (b), Ike Day, Teddy Stewart, Wesley Landers (ds), Mary Graham (vo)。
 

Gene-ammonsmakes-it-happen

 
それぞれの楽器で複数のジャズマンが交代で担当、アーゴ・レーベル設立以前の、古い5つのセッションの音源の寄せ集めである。しかし、リーダーであるジーン・アモンズのオールド・スタイルのテナーがとても個性的。どっぷりファンキーでソウルフル、そして、演歌の如くの歌心満点。そんな強烈に個性的なアモンズのテナーが、5つのセッションの演奏の寄せ集めに、一本、筋を通していて、このアルバムに一体感を与えている。

アモンズのビブラート過多のオールド・スタイルのテナー。昔は苦手だったが、今ではこれはこれで「アリ」だな、と思いながら、楽しんで聴いている。歌心満点というよりは「思い入れ過多」。この思い入れ過剰なテナーは夜聴くのが良い。豪快ではあるが、すっと力の抜けたリラクゼーション満点の吹きっぷり。これが癖になるか、ならないかで、アモンズのテナーの好き嫌いが分かれる。

アモンズのオールド・スタイルのテナーが良く判る、そして、アーゴ&カデット・レーベルの「音の特徴」が良く判る盤である。かなり癖のあるオールド・スタイルのテナーなので、コルトレーン・スタイルのテナーに慣れた耳には、かなり異質な響きかもしれない。しかし、このオールド・スタイルのテナーが、ジャズ・テナーの起源でもある。「温故知新」のノリで、アモンズのテナーにじっくり耳を傾けるのも一興かと。ジャズ盤鑑賞の醍醐味でもある。
 
 

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2025年1月21日 (火曜日)

強烈な疾走感と漲る音のパワー

カシオペア(CASIOPEA)。日本発のフュージョン・バンドの老舗中の老舗。デビューは今から約50年前の1977年。幾度かのメンバー変遷と2006年から2011年までの活動休止期間を経て、第1期〜第2期「CACIOPEA」、第3期「CASIOPEA 3rd」、第4期「CASIOPEA-P4」とバンド名をマイナーチェンジしつつ、現在も活動中である。

現在は、2022年にレギュラー・サポートメンバーであった神保の脱退を受けて、7月に後任の新ドラマー・今井義頼が正式メンバーで加入。それを機に、バンド名を「CASIOPEA-P4」に変更して活動中。

CASIOPEA-P4『RIGHT NOW』(写真左)。2024年7月のリリース。ちなみにパーソネルは、野呂一生 (g), 鳴瀬喜博 (b), 大高清美 (key), 今井義頼 (ds)。2022年の『NEW TOPICS』以来の、CASIOPEA-P4として2枚目のアルバム。ギターでリーダーの「野呂一生」は不変だが、他のメンバーは総入れ替え。フロント楽器がギターで、バックにリズム・セクションという編成は変わらないが、サウンド的には大きく変化している。

基本は「安定のカシオペア・サウンド」。但し、第1期〜第2期は「野呂一生のギター命」の、単独フロントっぽいサウンドだったが、第3期で、キーボードが大高に変わった辺りから、キーボードがフロントに躍り出て、キーボードのフロントに占める割合が、どんどん大きくなっている。しかも、サウンドの質がどんどん若返っている。そして、今回のアルバムである。

強烈な疾走感と漲る音のパワー。覇気溢れ、明るくポジティヴ。アクティヴな曲も緩やかなソフト&メロウな曲も、能動的な規律の下、フレーズの展開のイメージが研ぎ澄まされ、鋭く、ダイナミズムが溢れる。
 

Casiopeap4right-now

 
第1期〜第2期の頃より、音が分厚くなっている。キーボードが全面に出てきたお蔭だろう。まるで、1970年代のプログレッシヴ・ロック(略して「プログレ」)である。

そんなプログレの音世界の中、演奏テクニックば「バカテク」。それでいて、そんな「バカテク」が鼻につかない、耳に痛くない、心地良さを感じるレベルの「バカテク」。この心地良い「バカテク」が、CASIOPEA-P4の「強烈な疾走感と漲る音のパワー」に直結している。

良い意味で「現代のジャズ・ロック」と形容して良い、爽快かつパワフルなサウンドは実に良い。リズム・セクションとメロディー担当のフロントを行き来出来るキーボードの存在は、野呂一生のギターを明らかに若返らせている。

キーボードがバックに回った時の活き活きとした野呂のギター。そして、キーボードがメロディーを奏でる時の、野呂のギターの絶妙なバッキング。これが「CASIOPEA-P4」のサウンドである。

そして、この野呂のギターと大高のキーボードを、しっかりと支え、的確にサポートする鳴瀬のベースと今井のドラム。これがまた、新しいリズム隊のフレーズをリフを繰り広げるから堪らない。

カシオペアは「眠らない」。逆に、キーボードの前面進出によって、サウンド全体が若返り、サウンドの色が新しくなった。これは素晴らしい。カシオペア・サウンドがステップアップした、そんな感じがとても嬉しいアルバムである。
 
 

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2025年1月20日 (月曜日)

1970年代仕様 ”GJT” の最終盤

グレート・ジャズ・トリオ(The Great Jazz Trio・以降「GJT」と略)。ピアノのハンク・ジョーンズをリーダーとして、ベースにロン・カーター、ドラムにトニー・ウィリアムスのピアノ・トリオ。

1918年7月生まれで最年長のピアノのハンク・ジョーンズと、1945年12月生まれで最年少のトニー・ウィリアムスとの年齢差は「27歳」。真ん中のロン・カーターが1937年5月生まれだから、ハンクとの年齢差は「19歳」で、トニーとの年齢差は「8歳」。

年長の兄貴格のロンと弟格のトニー、その二人に君臨する父親格のハンクという図式になる。しかしながら、このGJT、発案は一番年下のトニー・ウィリアムス。マイルス・バンド出身、当時、ジャズ界で先進的なリズム&ビートの担い手であったロン&トニーと、モダンかつ典雅なタッチが個性のベテラン、ハンクのピアノの組合せが実に新鮮だった。

The Great Jazz Trio『The Great Tokyo Meeting』(写真左)。1978年7月31日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。1978年7月29日、田園コロシアム「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」での伝説のライブから2日後の東京でのスタジオ録音。

GJTのアルバムの中で、一番、リラックスした、一番、ジェントリーなパフォーマンスを記録した盤。6枚目のアルバムからして、もうGJTはやることが無くなったのだろう、と揶揄されることがほとんどの盤である。が、聴き直した時に、常に思うのが、そんなに酷評される盤なのかしら、である。
 

The-great-jazz-triothe-great-tokyo-meeti  

 
トニーの「ど派手」なドラミングが「ど派手」を封印して、シャープで切れ味の良い、タイトなドラミングになっているだけで、ロンのベースとハンクのピアノは変わらない。

トニーのドラミングの雰囲気に合わせて、ハンクがバップ・ピアノを硬軟自在に変化させ、ロンがモーダルなベースラインを供給する、というのが「GJT」の基本。

しかし、この盤では、トニーのシャープで切れ味の良い、タイトなドラミングにハンクがジャスト・フィットした、バップ・ピアノを弾き回し、ロンが以前と変わらず、モーダルなベースラインを供給する、と言った雰囲気。やることが無くなった、どころか、新しいGJTの提示ではないか、と僕は感じ続けている。

トニーのシャープで切れ味の良い、タイトなドラミングに、従来、典雅で黒いハンクのピアノが映えに映えているし、ロンのモーダルなベースラインも、タイトでソリッドな音色が新しいアクセントになっている。

僕はこの新しいGJTの提示を好意的に聴く。冒頭の「Pink Lady」からラストの「To Destiny」まで、実はGJTのメンバーの自作曲で占められているのも、このアルバムの特徴。なかなかの佳曲ばかりで、トニーのシャープで切れ味の良い、タイトなドラミングがリードする、新しいイメージのGJTにぴったりの楽曲ばかりである。

従来のトニーの「ど派手」なドラミングがリードする、ド派手なハードバップなGJTから、ガラッとイメージが変わったので、当時のジャズ者の方々は、GJTは過去のものになった、と感じたのでは無いだろうか。

実際、この盤はリリース当時、まったく「ウケなかった」。酷評につぐ酷評であったことを覚えているが、21世紀になった「今の耳」で聴くと、そんなに酷評される盤では無い様に思う。
 
 

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2025年1月19日 (日曜日)

デュークの ”ピアノ演奏” の企画盤

デューク・エリントン(Duke Ellington)は、偉大なバンド・リーダーとして、そして膨大な数の作曲家としてジャズ史に輝く「ジャズの最大の巨人」である。そして、作曲家とバンド・リーダーとして最高の評価をされているかたわら、デュークは「ピアニスト」としても、優れた才能の持ち主である。意外と未だにジャズ者の間でも認識が薄いのではないだろうか。

Duke Ellington『Piano In the Foreground』(写真)。1961年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Aaron Bell (b), Sam Woodyard (ds)。コロンビア・レーベルからのリリース。デュークのピアノ・トリオでの演奏。最初からピアノ演奏集として企画され録音された、いわゆる「企画盤」。

デュークのピアノは、ジャズ・ピアノの歴史の中でも、とびきり「個性的」。硬質でパーカッシヴなタッチ、バラードでの流麗でリリカルな弾き回し。独特なマイナーでブルージーな響き、そして、心地よく響き左手の低音。デュークの様なジャズ・ピアノは他に無い。ジャズの歴史の中で唯一無二である。
 

Duke-ellingtonpiano-in-the-foreground

 
スタンダード曲の解釈とアレンジも、とびきり「個性的」で、聴いていると最初は何の曲か判らないくらいだが、聴き進めるうちに、既にそれと判る、アーティスティックで大胆なアレンジ。例えば、ガーシュイン作曲の有名スタンダード曲「Summertime」は、デュークでしか出来ない大胆かつ個性的なアレンジで、デュークの十八番アレンジ手法「ジャングル」なアレンジをピアノ・トリオに応用して衝撃的。

ベースとドラムはリズム・キープに徹している。このデュークのピアノ・トリオ盤は、編成はトリオであっても、現代のインタープレイをメインとしたトリオとは違う、デュークのピアノのソロにリズム・キープが付く、という感じの、あくまでデュークのピアノだけを愛でる「企画盤」である。

現代まで、我が国のジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介で、デュークのピアノにスポットライトを当てた、デュークのピアノの個性と才能に特化した記事を僕は見たことが無い。デュークといえば「ビッグバンド」ときめつけている様で、これではデューク・エリントンの半分だけを紹介しているに過ぎない。デュークを理解するには、デュークのピアニストの側面にも「耳を向けて」もらう必要がある。
 
 

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2025年1月18日 (土曜日)

フリーなジャズオケの第一人者

ジャズ・オーケストラの演奏は、概ね端正で整然としたアンサンブルがメインの正統派なものが大多数。フロント楽器のアドリブ以外の部分は、スコアが整えられていて、破綻の無い演奏が良しとされる。しかし、そんな端正で整然としたジャズオケで、フリー&スピリチュアル、アブストラクトなジャズをやるものは無いのか、と思い立った時、出会ったのが「Sun Ra and his Arkestra」である。

Sun Ra and his Arkestra『Space Is the Place』(写真左)。 October , 1972年10月19–20日の録音。ちなみにパーソネルは、Sun Ra and His Astro Intergalactic Infinity Arkestra。訳すと「サン・ラと彼の宇宙銀河の無限オーケストラ」。ジャズの多様性とSFと古代神話の融合を実現したジャズ・オーケストラの秀作。

土星から降臨し、音楽を燃料に大宇宙を旅する宇宙音楽王(笑)である「サン・ラ(Sun Ra)」。米国の前衛ジャズ・ミュージシャン。彼はジャズオケ「アーケストラ」を主宰する。そして、このジャズオケで、フリー&スピリチュアル、アブストラクトなジャズをやる。

この盤はジャズを本格的に聴き始めて2年目くらいで、大学近くの「秘密の喫茶店」で聴かせてもらった。ママさんに、それこそ「フリー&スピリチュアル、アブストラクトなジャズをやるものは無いんですかね〜」と訊いたら、じゃあ、とこの盤をかけてくれた。

冒頭「Space Is The Place」が痛快な面白さ。出だしから、鳴り響くサイレンの様な、サンラ操るスペース・オルガンが唸りをあげる。テナーが先頭を練り歩き、他の楽器が追従する。力感溢れる女性ボーカルが出てきて、コーラスも被る。開始1分くらいで、フリーに傾き、皆が「我が道を行く」(笑)。必要最低限のルールの中で、フリー&スピリチュアル、アブストラクトな演奏が展開される。
 

Sun-ra-and-hisarkestraspace-is-the-place

 
ジャズオケのフリー&スピリチュアル、アブストラクトな演奏なので、基本的に迫力満点。それでいて、演奏の底の部分はユルユルで浮遊感が漂う。男性ボーカルが「Space Is The Place」を繰り返す。アルト・サックスの野生的な咆哮。カオスな展開が高揚し、ハンドクラップが入り、サックスの本能赴くままの咆哮。そして、女性のアグレッシブな叫び。

サンラ操るスペース・オルガンが唸りをあげると、新たな「フリー&スピリチュアル、アブストラクト」な演奏の始まり。鳴り響くオルガン、男性のハミング、そして、いつもの「Space Is The Place」を繰り返し、ラストは、スペース・オルガンと「Space Is The Place」だけが残る音空間。サン・ラ・アーケストラの面目躍如な「フリー&スピリチュアル、アブストラクト」なジャズオケ演奏。

2曲目「Images」は打って変わって、スタンダードなジャズオケ。一糸乱れぬ端正で破綻のないジャズオケ展開。そんな中で遊び心満点の展開が見え隠れして、とても親しみのあるスタンダードなジャズオケ演奏に仕上がっている。この演奏を聴くと、サン・ラのジャズオケは決して「ゲテモノ」でないことが判る。かなりの力量とテクニックを兼ね備えたジャズオケである。侮ってはならない。

3曲目以降は、再び、癖のある、サン・ラらしい「フリー&スピリチュアル、アブストラクト」なジャズオケ演奏が展開される。とにかく内容的にユニーク過ぎるジャズオケ演奏が唯一無二、サン・ラの面目躍如である。

ジャズ者一般万民向けのジャズオケ演奏ではないが、ジャズオケに興味があるジャズ者の方々には一度は耳にして欲しいジャズオケ盤。従来の端正なジャズオケ演奏の対極にある、「フリー&スピリチュアル、アブストラクト」なジャズオケの演奏がこの盤に詰まっている。
 
 

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2025年1月17日 (金曜日)

ポップで明るい「Q」サウンド

クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)。当代随一のジャズ・アレンジャー&コンダクター。優れたプロデューサーでもあった。愛称は「Q」。惜しくも、昨年(2024年)の11月3日に、91歳で鬼籍に入ってしまった。悲しい。僕の大のお気に入りのアレンジャー&コンダクターだっただけにショックは大きい。

で、ある。小粋なジャズ盤を探索している時、この「Q」のアルバムに久しぶりに出会した。10年ぶりくらいだろうか。久々にこの盤を聴いてみた。

Quincy Jones And His Orchestra『Quincy Plays for Pussycats』(写真左)。1959年3月、1961年2月、1964年11月、1965年3, 8月の5回のセッションの寄せ集め。マーキュリー・レーベルからのリリース。

ちなみに、5回のセッションはいずれも「ジャズ・オーケストラ」での録音なので、パーソネルについては多岐に渡るので、詳細は割愛する。主だったメンバーをピックアップすると、

Quincy Jones (arr, cond), Benny Bailey, Clark Terry ....(tp), Kai Winding ... (tb), Roland Kirk, James Moody, Jerome Richardson ... (as, ts, fl), Phil Woods, Zoot Sims ... (as), Al Cohn ... (ts), Frank Wess ...(ts, fl), Sahib Shihab (bs,fl), Lalo Schifrin ... (p), Kenny Burrell, Jim Hall ... (g), Milt Hinton (b), Sam Woodyard (ds), Other unidentified musicians。

まあ、ジャズオケの演奏なので、参加メンバー個々のパフォーマンスはあまり重要では無いので、パーソネルの詳細は追求しないが、要所要所に、人気ジャズマンが起用されていて、「Q」の人脈の広さと信頼度の高さが良く判る。
 

Quincy-jones-and-his-orchestraquincy-pla

 
この盤、ジャズオケの演奏で統一されていて、アレンジについては、5回のセッションの寄せ集めでありながら、しっかりとした統一感がある。いわゆる「クインシー節」が濃厚に入った、クインシー・アレンジで統一されていて、どの曲から聴いても、このジャズオケのアレンジは「Q」とすぐ判る。

しかも、この盤でのジャズオケの演奏は、どれもが「ポップで明るい」。1960年代当時にヒットしたポップス・ナンバーのジャズ・カヴァーのオン・パレードで、キャッチーで聴き易い、馴染みのあるフレーズが続々と出てくるから、楽しいことこの上ない。

出だしは、ピアノの音色が流麗に流れるムーディーな雰囲気で始まり、しばらくして、お馴染みのフレーズが出てきてホッとする、どっぷり「Q」サウンドに浸ったローリング・ストーンズのヒット曲「(I Can't Get No) Satisfaction」のカヴァー。

ギターとオルガンが大活躍、ホーン・セクションのシャウト炸裂の「元気ハツラツ」な、ジャズ・ロックの大ヒット曲「The "In" Crowd」のカヴァー。そして、あのバート・バカラックの「What's New Pussycat」をバカラック節を、小粋なアレンジで「Q」サウンドの世界にどっぷり浸からせる。

どスタンダード曲「Mack The Knife」は、これぞ「Q」サウンドという感じの、爽快な「Q」アレンジが施されていて、ホンキートンク調の演奏で始まり、ゴージャスなアレンジで豪快にスイングし、途中、魅力的なテナー・ソロが炸裂。とにかく「Q」アレンジのカヴァーがとっても格好良い。

ポップで明るいジャズオケ・サウンドなので、1960年代当時にヒットしたポップス・ナンバーのジャズ・カヴァーがメインな分、ちょっと俗っぽく、イージーリスニングな感じがするが、「Q」のアレンジが優れているので、決して、イージーリスニング音楽には留まっていない。上質のイージーリスニング志向のジャズオケ盤として、優れた内容の秀作でしょう。ながら聴きにも最適です。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2025年1月16日 (木曜日)

アーヴィンの端正で小粋な秀作

小粋なジャズ盤を探索している中で、ブッカー・アーヴィン(Booker Ervin)にぶち当たった。早逝のコルトレーン・スタイルのテキサス・テナー・マンなのだが、かなりしばらくの間、聴いていないのに気がついた。実は当ブログに、アーヴィンのリーダー作をそれなりにアップしていると思い込んでいたが、なんと「カテゴリー」にも、アーヴィンの名前が無かった。あれれ。

Booker Ervin『Structurally Sound』(写真左)。1966年12月14〜16日の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Ervin (ts), Charles Tolliver (tp), John Hicks (p), Red Mitchell (b), Lenny McBrowne (ds)。 Pacific Jazzからのリリース。いわゆる米国ウエストコースと・ジャズの範疇でのリリースだが、中身は、端正で聴かせるハードバップ。アーヴィンは1970年、NYで腎臓病のため39歳で亡くなっているが、この盤は、アーヴィンの最後期のリーダー作になる。

アーヴィンのテナー・サックスは、テキサス・テナーをベースとした「コルトレーン・スタイル」。フリージャズ基調のブロウという印象が強いが、意外とオーソドックスなブロウが多い。確かに、モーダルなブロウがメインで、限りなく自由度の高いブロウが得意ではあるが、決して、フリー・ジャズの人では無い。意外と伝統の範囲内で、限りなく自由度を高めつつも、従来のジャズの枠の中に留まるブロウ。
 

Booker-ervinstructurally-sound

 
この盤では、そんなアーヴィンのテナーが、一番、オーソドックスなブロウに寄った、端正でスムーズで聴き易いテナーでのパフォーマンスになっている。そして、そんなパフォーマンスに、テキサス・テナー志向な音を付加して、ダンディズム&力感溢れる、ジャジーなテナーに仕上げている。そんな端正で聴かせるテキサス・テナーで、「Dancing in the Dark」「Stolen Moments」「Take the "A" Train」「Shiny Stockings」など、お馴染みのスタンダード曲を吹き上げている。

モーダルなブロウがメイン、限りなく自由度の高いブロウは、短い曲の演奏の中、アドリブの一部に留まっているが、テキサス・テナー・スタイルのちょっと陽気でジャジーな吹奏は、ストレートな音色と相まって、スタンダード曲の中で映えに映える。米国ウエストコースト・ジャズの代表的レーベルでのリーダー作である。小粋なアレンジと聴かせるジャズがメインなので、フリージャズ基調のブロウは全く無い。これはこれで良い。

フロント管の相棒、チャールズ・トリヴァーも好調。色鮮やかで明るい色調のピアノのジョン・ヒックスも好調。堅実実直なレッド・ミッチェルのベースも好調。このリーダー作『Structurally Sound』は、オーソドックスなブロウに寄りに寄ったアーヴィンのテナーを捉えた「小粋な」秀作だと思う。
 
 

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2025年1月15日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 101 『Custom Taylored』

小粋なジャズ盤を探索していると、我が国のジャズ評論家の皆さんが、ほとんど扱わないジャズマンに出くわすことがよくある。米国のジャズ関連のサイトを見ると、米国ではまずまずの数のリーダー作を出して、人気のジャズマンなんだが、どうにも我が国では、そのジャズマンの名前を見ることがほとんどない。意外と我が国のジャズ本やジャズ雑誌で扱うジャズマンには「偏り」があるのかもしれない。

The Billy Taylor Trio『Custom Taylored』(写真左)。1960年3月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Billy Taylor (p), Henry Grimes (b), Ray Mosca (ds)。全曲、ピアニスト、ビリー・テイラー作の曲で固めた、トリオ作品。ベースとドラムの二人は、ビリー・テイラー専属のハウス・ジャズマン。

ビリー・テイラーは、知的で端正な黒人ピアニスト。黒くはあるが、ファンキー度合いは低い。クラシック・ピアノの様に端正な弾き回しの底に、そこはかとなく上品なファンクネスが漂う。その様子は、インテリジェンス溢れ、破綻のない、整った弾き回しに感じる。そう、ビリー・テイラーのピアノは、知的で端正な「ビ・バップなピアノ」なのだと思う。
 

The-billy-taylor-triocustom-taylored

 
冒頭の「Warming Up」は端正にスイングする、ミッド・テンポのバップ・チューン。端正な弾き回しと知的なアドリブ・ラインがビリー・テイラーの真骨頂。3曲目の「That’s Where It Is」は、上品なファンクネス漂う、ゴスペルチックな展開が実に魅力的。7曲目の「Don't Bug Me」は、アップテンポのブルース・チューン。崩れない破綻のない端正なブルース・フレーズは、力強いバップな雰囲気満載。

ベーシストのヘンリー・グライムスとドラマーのレイ・モスカは、堅実なリズム&ビートを供給し、ビリー・テイラーのピアノを堅実にサポートする。ビリー・テイラーのピアノが映えに映える。バックのリズム隊は、そんなテイラーのバップ・ピアノのリズム&ビートを支える。ハードバップなマナーをしっかりと備えた、1960年のビ・バップな演奏がこの盤に詰まっている。

ビリー・テイラーは、日本での人気はそれほど高くないが、米国では「売れっ子」ピアニストであった。この盤を聴くと、米国での人気は合点がいく。一言で言うと「ジャズ・ピアノとして魅力的」なのだ。我が国で人気がそれほどでないのは未だに理解できない。聴かず嫌いなのでは、とも思う。とにかく、ビリー・テイラーのピアノはもっと聴かれても良い、素性の良い、知的で端正なジャズ・ピアノである。
 
 

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2025年1月14日 (火曜日)

ヒースの「小粋な」ジャズ盤

小粋なジャズ盤を探し当てて、聴いてみて、これが「当たり」だった時、ジャズ盤蒐集をしていて良かったなあ、とつくづく思う。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のジャズ盤紹介記事を読んで、それに忠実にジャズ盤を聴き進めるのも良いが、意外と、紹介本や紹介記事に上がるジャズ盤は意外に似通ってくる。ジャズ盤の体験の幅を狭めることにもつながるので、最近では、紹介本や紹介記事を参考に、新しいジャズ盤を探すことはほぼ無くなった。

Jimmy Heath『On the Trail』(写真左)。1964年春の録音。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jimmy Heath (ts), Kenny Burrell (g), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Albert Heath (ds)。燻し銀なバップ・テナーのジミー・ヒースがリーダーのギター入りクインテット編成。バックに控えるは、ウィントン・ケリーのピアノ率いる、ポルチェンがベース、アルバートがドラムのハッピー・スインギーなリズム・セクション。

1964年の録音にも関わらず、この盤には、ハードバップ全盛の頃の、とても「ハードバップらしい」演奏がてんこ盛り。モードやファンキー、ラウンジ、当時、流行っていた純ジャズの演奏スタイルのどれにも影響されていない。ただただハードバップな演奏展開していて、そんな展開の中で、リーダーのジミー・ヒースは、とことん「バップ」なテナーを吹きまくっている。
 

Jimmy-heathon-the-trail

 
特にミッド〜アップ・テンポなハードバップ演奏が充実している。これは恐らく、リーダーのジミー・ヒースが、ミッド〜アップ・テンポのバップなテナーが得意だからだろう。冒頭のタイトル曲「On The Trail」は、ミッド・テンポのゆったりした演奏で、ジミー・ヒースの朗々ストレートなバップ・テナーが映える。

バラード曲の、3曲目「Vanity」、6曲目は「I Should Care」でも、時々、速吹きのフレーズが出てきて、やっぱり、ジミー・ヒースって、典型的な「バップ・テナー」なんだな、って再認識する。でも、これが小粋で、これが聴いていて、とても心地よいのだから、ジャズは面白い。何の変哲もない、正統派バップ・テナーなんだけど、ジミー・ヒースのテナーって、味があるしブルージー。そして、そんなジミー・ヒースのバップ・テナーって、典型的なハードバップな演奏の中だけで、最高に映えるのだから面白い。

ギターのケニー・バレルも好演。アーバンでファンキーなバレルが、ジャジーでバップなギターを弾きまくっている。さすがは「プロのジャズ職人」。ジミー・ヒースのテナーに合わせて、とてもバップなギターを弾いている。このフロントのテナーとギターを、これまた典型的ハードバップな、ハッピー・スインギーなリズム隊が支え鼓舞するのだから、堪らない。典型的なハードバップ盤として、意外とイケる、ジミー・ヒースの「小粋な」ジャズ盤である。
 
 

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2025年1月13日 (月曜日)

小粋な『Reunion Blues』です

何も、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介に上がってくる「名盤」と呼ばれるものだけ、聴いていれば良い、というものでは無い。

ジャズ盤の裾野は広い。色々漁っては聴いていると、これは、という盤に出会う。僕はこれを「小粋なジャズ盤」と名付けて、「小粋なジャズ盤」のボックスを作って、このボックスに盤に入れて、時々、引っ張り出して、繰り返し聴き直している。

Oscar Peterson Trio with Milt Jackson『Reunion Blues』(写真左)。1971年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Milt Jackson (vib), Ray Brown (b), Louis Hayes (ds)。 MPSレーベルからのリリース。MPSらしい人選。小粋な組み合わせのカルテット編成。

バカテクでドライブ感&スイング感が半端ない、バリバリ迫力満点なピアノを弾きまくるオスカー・ピーターソン。ジャズ・ヴァイブの神様、ブルージー&ファンキーなヴァイブが素晴らしいミルト・ジャクソン。この二人をフィーチャーした、圧倒的な弾き回しが凄まじいカルテット演奏である。

まず、予想通り、ピーターソンのピアノが疾走する。圧倒的迫力のドライブ感&スイング感が半端ないピアノ。そして、そんなピーターソンに対峙する、これまた圧倒的迫力のブルージー&ファンキーな雰囲気が半端ないヴァイブ。
 

Oscar-peterson-trio-with-milt-jacksonreu  

 
これは、そんな二人のバトルが繰り広げられるのか、と思いきや、2曲目以降、極上のハードバップが展開されるのだから面白い。

歌心満点のミルトのヴァイブを、ピーターソンのピアノが絶妙にサポートする。実はピーターソンは伴奏上手。あの「バカテクでドライブ感&スイング感が半端ない、バリバリ迫力満点なピアノ」がバックに回って、抑制の美を漂わせながら、実に小粋なバッキングを施す。これが実に良い、これが実に「粋」なのだ。

そして、そんなピーターソンとミルトのフロントに、レイ・ブラウンのブンブン・ベースと、ルイス・ヘイズの小粋なバップ・ドラムのリズム隊が、これまた絶妙なリズム&ビートをフロントに供給する。このリズム隊の小粋な妙技がこの盤の「隠れた聴きどころ」である。

この盤は、バックに回った時のピーターソンの抑制の美を伴った、凄みのあるバッキングと、そんなバッキングに乗った、ファンクネスを増幅したブルージーな弾き回しのミルト、そして、ミルト&ピーターソンのリズム&ビートを支える、ブラウンとヘイズの小粋なリズム隊、を聴いて楽しむ「小粋なジャズ盤」である。
 
 

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2025年1月12日 (日曜日)

ロイドのサイケデリック・ジャズ

CTIレーベルのアルバムをカタログ順に聴き直してみると、CTIレーベルは、今までジャズ雑誌などで語られていた「CTIレーベルは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの専門レーベル」というのは、ちょっと違うのでは無いか、と思い始める。

クロスオーバー&フュージョン・ジャズばかりではなく、コンテンポラリーな純ジャズもあれば、ECMレーベルばりのニュー・ジャズもある。無いのは、フリー&スピリチュアル・ジャズだけ。つまり、CTIレーベルは、1970年代のコンテンポラリー・ジャズにおける代表的レーベルでは無いのか、ということ。意外とCTIレーベルは奥が深い。

Charles Lloyd Quartet『Waves』(写真左)。1972年の作品。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl, alto-fl), Gábor Szabó, Tom Trujillo (g), Roger McGuinn (12-string g), Wolfgang Melz, Roberto Miranda (b), Woodrow Theus II (ds, perc), Mayuto Correa (perc)。

パーソネルを見渡すと面白い。ギタリストのガボール・ザボ、ドラマーのサンシップ・テウスなどの、ちょっと風変わりなジャズ・ミュージシャンと、バーズのギタリスト、ロジャー・マッギンやビーチ・ボーイズのメンバーなどのロックアーティストが参加している。どう見ても、このパーソネルでは、正当なクロスオーバー&フュージョン・ジャズや、コンテンポラリーな純ジャズは無理というもの。
 

Charles-lloyd-quartetwaves

 
しかし、1960年代後半、キース・ジャレット、ジャック・デジョネット、セシル・マクビーを擁したカルテットで、コンテンポラリーな純ジャズを展開、一世を風靡したテナー・マン、チャールズ・ロイドが、この盤では、サイケデリック&エキゾチックな「ニュー・ジャズ」の手を染めているとは思わなかった。

ビーチ・ボーイズのようなコーラス・ワークが出てきたり、トロピカルなウェスト・コースト・サウンドが出てきたり、プログレッシヴな展開のサイケデリックなジャズ・ロックが出てきたり。この盤の音世界は、従来のジャズとは全く異なる、1970年代独特の「ニュー・ジャズ」の範疇の音世界である。

出てくる音も、どの曲も色彩豊かなサウンドが主で、特にガボール・ザボのギター、チャールズ・ロイドのフルート、そして、パーカッション隊のバラエティーに富んだリズム&ビートが、サイケデリックな雰囲気を増幅させている。

このニュー・ジャズの音世界は、1970年代のECMレーベルのニュー・ジャズを理解するジャズ者の方々には「ウケる」と思うが、一般的には理解されることは少ないだろう。しかし、これもジャズで、特にこの手のサイケデリック&エキゾチックな「ニュー・ジャズ」は、1970年代のジャズ・シーンに集中している。

一般「ウケ」はしないが、意外とこの盤は、サイケデリック・ジャズの秀作の一枚。たまに引き出してきては、2度3度、繰り返し聴いている。
 
 

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2025年1月11日 (土曜日)

70年代ロンの「CTI流な純ジャズ」

CTIレーベルは、1970年代に、クロスオーバー&フュージョン・ジャズのブームを牽引したレーベル。しかし、そんなクロスオーバー&フュージョン・ジャズがメインのカタログ・ラインアップの中で、優れた内容の「コンテンポラリーな純ジャズ」なアルバム、いわゆる「CTI流な純ジャズ」盤が意外と多く存在する。そして、これが意外と良くて病みつきになる。

Ron Carter『All Blues』(写真左)。1973年10月24日、Van Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, piccolo-b), Joe Henderson (ts), Roland Hanna (p), Richard Tee (el-p), Billy Cobham (ds, perc)。ジョー・ヘンダーソンのテナー・サックスが1管フロントのカルテット編成。3曲目の「117 Special」だけ、ハナのピアノが、ティーのエレピに替わる。

CTIレーベルの盤である。このパーソネルを眺めると、どんな音が出てくるのか、凄く不安になる。これだけ、ハードバップ全盛期から、メインを走ってきた一流ジャズマンばかりである。まさか、この面子で、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズをやるんや無いやろうな、と心の中で慄きながら、レコードの針を盤に落としたのを覚えている。

これが、である。不思議なことに、コンテンポラリーな純ジャズが展開されているのだ。演奏全体の雰囲気が「ライトでソフトでスインギーな」コンテンポラリーな純ジャズ。1970年代の、独特のライト感、独特のポップ感を底に漂わせたコンテンポラリーな純ジャズ。

面白いのは、曲を追うごとに、この「純ジャズ」度合いが増えていくこと。曲が進むにつれ、硬派でライトな純ジャズ度合いが増強されていく。4曲目の「Rufus」などは、もうこれは純ジャズ。5曲目「All Blues」などは、イージーリスニング志向の純ジャズ風に始まるが、途中出てくるジョーヘンのテナーのモーダルなソロなどは、もはや完全な「純ジャズ」である。
 

Ron-carterall-blues  

 
バックで演奏のベースラインを司るロンのベースも、この盤では健闘している。もともと優れたベーシストなんだが、この時代では、ベースのピッチが合ってなかったり、ベース音をアンプで増幅した「ブヨンブヨン」とした音に違和感を感じたりして、ロンのベースは評判は良くなかった。

ただ、この盤ではピッチはまずまず合っていて、アンプ増幅の「ブヨンブヨン」といった音はかなり控えめで、ロンのベースの「本当」を、この盤では確認することが出来る。ソロも創造性溢れるものであり、速弾きのピチカートも見事である。ラストの「Will You Still Be Mine」でのロンのベース・ソロは、テクニックを駆使して鬼気迫るものがあって迫力十分。

3曲目だけが、ソフト&メロウを追求したクロスオーバー・ジャズな演奏になっているが、この曲では、若き日のリチャード・ティーのエレピがファンキーでメロウで印象に残る。このティーのエレピをバックに、ロンが骨太でテクニック抜群のベース・ソロで、メインの旋律を唄うように引き進めていく。圧巻である。

この盤を聴くと、ロンもやればできるやん、という気にさせてくれる。とはいえ、暫くは、ピッチが合ってなかったり、ブヨンブヨンとアンプ増幅されたベース音が耐えられなかったり、が時々あって、聴く方からすると思わず「眉をひそめたり」するのだが、1990年代には、その欠点が克服され、コンスタントに秀作をリリースするようになる。

そんな1990年代以降の秀作な内容を、この盤ではしっかりと展開している。ロンのポテンシャルの高さを改めて思い知る好盤です。
 
 

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2025年1月10日 (金曜日)

まさに裏『Return To Forever』

Airto Moreira『Free』(写真左)。1972年の作品。クロスオーバー&フュージョン・ジャズの老舗レーベルのCTIにおける、当時、人気のパーカッショニスト、アイアート・モレイラのリーダー作。聴けば判るが、チックの『Return to Forever』の裏版的内容の秀作。曲ごとにパーソネルが変わるので、曲ごとに内容を見ていきたい。

最初の曲は「Return To Forever」。イントロを聴けば、あれこれって、チックの「カモメ」か、と思うんだが、それより、音がちょっと軽め。オリジナルは少し重厚感があって、ちょっとおどろおどろしい雰囲気が漂うが、このモレイラ盤では少し軽快感が漂っていて、爽快な感じがする。曲自体、名曲なんで、このモレイラ盤の演奏もとても良好。

ちなみにパーソネルは、Airto Moreira (perc), Joe Farrell (ss, fl), Chick Corea (p), Stan Clarke, Ron Carter (b), バックにブラス・セクションが付く。

2曲目は「Flora´s Song」。女性ボーカリスト「フローラ・プリム」の作曲なので、てっきり彼女のボーカルがフィーチャーされているのかと思ったら、完全インスト曲でちょっと肩透かし。ギターがシタールの様に響く、エキゾチックでエスニックな演奏に耳を奪われる。

そして、なんとキース・ジャレットがピアノを弾いている。キースのちょっとアブストラクトなモーダルなピアノが出てくると、演奏全体がコンテンポラリーな純ジャズに変身する。

ちなみにパーソネルは、Airto Moreira (perc), Joe Farrell (fl, ss), Hubert Laws (fl), Keith Jarrett (p), Ron Carter (b), Jay Berliner (g)。バックにブラス・セクションが付く。

3曲目「Free」はモレイラの作で、ブラジリアン・ミュージック志向のアーシーなクロスオーバー・ジャズの演奏が実に新しい響きに満ちている。50年以上前の録音だが、古さは全く感じない。
 

Airto-moreirafree

 
どころか、今の耳に新しいクロスオーバー・ジャズとして響くから面白い。モレイラの多彩で躍動感溢れるパーカションが大々的にフィーチャーされている。ブラジリアン&アフリカンなパーカッションとギターの響きが芳しい。

ちなみにパーソネルは、Airto Moreira (perc), Hubert Laws (fl), Ron Carter (b), Flora Purim (vo)。

4曲目は「Lucky Southern」。作曲は何とキース・ジャレット。出てくるピアノを聴けば、このピアノは確実に「キース」。アーシーでフォーキーなフレーズもこれは明らかに「キース」。2分半ほどの小曲だが、明らかにキースと判るピアノが実に良い。ギターは若き日のジョージ・ベンソンが担当。

ちなみにパーソネルは、Airto Moreira (perc), Joe Farrell (fl, ss), Hubert Laws (fl), Keith Jarrett (p), Ron Carter (b), George Benson (g)。

ラストの「Creek」はモレイラの作。ファレルのソプラノ・サックスが軽妙にモーダルなフレーズを吹き上げていく。この演奏はクロスオーバー・ジャズではなく、完璧にコンテンポラリーなジャズ。パーカッションが効果的に扱われていてい、演奏全体の雰囲気はブラジリアンな純ジャズと言って良いかも、と思う。弾けるパーカッション、情緒豊かなエレピの音。説得力のあるアコースティック・ピアノの調べ。

ちなみにパーソネルは、Airto Moreira (perc), Joe Farrell (ss, fl), Chick Corea (p), Ron Carter (b), Nelson Ayers (p)。

全体を通して、チックの「カモメ」をベースにした「裏カモメ」の様な内容がとても充実した、70年代のクロスオーバーな純ジャズの秀作として良い内容でしょう。
 
 

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2025年1月 9日 (木曜日)

CTI屈指のボサノバ・ジャズ盤

冬に聴く「ボサノバ・ジャズ」も意外と「オツなもの」である。エアコンで暖めた部屋で、ゆったりとした気分で、ボサノバ・ジャズを聴く。ボサノバ・ジャズの爽やかさと暖かさが、暖かい冬の部屋の雰囲気にフィットして具合が良い。特に、そんな部屋の中で作業をしながらの「ながら聴き」が、実に心地良い。

Tamba 4『Samba Blim』(写真)。1968年の作品。ちなみにパーソネルは、Luiz Eca (p), Bebeto (fl), Dorio (g, b), Ohara (ds, per)。ブラジルのジャズ・ボッサ・グループ「タンバ 4」の1968年作。全身のピアノ・トリオ(タンバ・トリオ)にフルートを加え、カルテットとなった「タンバ 4」のCTI第2弾。

有名な『We and the Sea(二人と海)』に次ぐ作品。『二人と海』では、ダイナミックなアンサンブルが特徴で、ちょっと仰々しさが玉に瑕だったが、この盤では、ブラジル・ミュージックの雰囲気が色濃い本来のスタイルに、米国のイージーリスニング・ジャズ志向のアレンジを適用して、ポップ度とイージーリスニング度を増強している。
 

Tamba-4samba-blim

 
とても聴きやすく、クセのない、洗練されたボサノバ・ジャズに仕上がっているところが評価ポイントで、フルート1本をフロント管とした「フルート・カルテット」が良い方向に作用している。フルートとピアノの絡みが実に印象的で、そのフルートとピアノの絶妙な絡みが、米国のイージーリスニング・ジャズ志向のアレンジの適用で更に映えている。

冒頭のタイトル曲「Samba Blim」は軽やかでちょっと小粋なサンバ曲。フルートがいい音出してます。2曲目は、ミシェル・ルグランの「Watch What Happens」。名画「シェルブールの雨傘」の挿入歌。ストリングス入りのとてもCTIのイージーリスニング・ジャズらしいアレンジが印象的。フルートとピアノの絡みが良い。

以降、サンバ・チューン、ボサノバ・チューンが、素敵な「フルート・カルテット」で印象的に紬あげられていく。バックのストリングスもTamba 4の演奏の引き立て役に徹したアレンジで好感が持てる。CTIレーベルでは、秀逸な内容のインスト物のボサノバ・ジャズ盤が結構あるが、そんな中で屈指の出来のボサノバ・ジャズ盤だと思う。
 
 

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2025年1月 8日 (水曜日)

アストラッドの70年代の傑作

CTIレーベルのアルバムは、イージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン・ジャズが多いが、ハードバップ期からのベテラン・ジャズマンを重用して、CTIオリジナルなエレ・ジャズに、純ジャズ志向の音をアクセントに置いて、ジャジーな雰囲気を増幅するアレンジが得意。

Astrud Gilberto & Stanley Turrentine『Gilberto With Turrentine』(写真左)。ちなみにパーソネルは、以下の通り。どうも、当時のクロスオーバー&フュージョンのアルバムは、登場人物が多くて困る。

Astrud Gilberto (vo), Stanley Turrentine (ts), Eumir Deodato (el-p, arr, cond), Emanuel Green, George Marge, Hubert Laws, Romeo Penque (fl), Gene Bertoncini, Sivuca (g), Sam Brown, Bob Mann (el-g), Toots Thielemans (harmonica), Ron Carter, Russell George (b), Denny Seiwell, Dom Um Romão, João Palma (ds), Airto Moreira (perc), with strings。

「ボサノバの歌姫」アストラッド・ジルベルトが、デオダートの素晴らしいアレンジとジャズオケをバックに唄い上げたアルバム。彼女のポップで囁く様な、アンニュイでウォームな歌声は健在。このアストラッドの歌声と、ダンディズム溢れるファンキー・テナーの雄、スタンリー・タレンタインとの共演。この組み合わせ、明らかに『ゲッツ/ジルベルト』を想起させる。
 

Astrud-gilberto-stanley-turrentinegilber

 
が、この盤、「ボサノバの歌姫」アストラッドのアルバムだが、ボサノヴァの往年の名曲は採用されていない。というか、純粋なボサノヴァ曲は皆無で、当時のポップスのヒット曲やバカラック・チューンをカヴァーしている。

もちろん、アレンジは、ボサノヴァやサンバに通じるブラジル音楽志向のアレンジを採用している。しかし、これが絶妙なアレンジで、どの曲もボサノヴァの名曲に聴こえたりするのだから、デオダートのアレンジ、秀逸である。

当時のポップスのヒット曲も、ボサノヴァ風のアレンジに乗って、軽妙で洒脱なカヴァーに仕上がっていて、アストラッドのポップで囁く様な、アンニュイでウォームな歌声が、さらに映える様になっている。アストラッドの歌声の特性を十分に活かした、デオダートのアレンジが冴え渡っている。

そんな軽妙で洒脱なボーカルに相対して、タレンタインのファンキー・テナーが炸裂する。タレンタインのテナーが出てくると、演奏の音の雰囲気がガラッと「ジャジー」に変わる。どっぷりファンクネスに浸ったボサノヴァ志向のアレンジがユニークで心地良い。

アストラッドのポップで囁く様な、アンニュイでウォームな歌声を活かしつつ、タレンタインのファンキー・テナーでジャジーな雰囲気を増幅する。そういう観点では、この盤はボサノヴァ・ジャズの名盤『ゲッツ/ジルベルト』を凌駕する出来だと僕は評価している。1970年代のイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの傑作の一枚でしょう。
 
 

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2025年1月 7日 (火曜日)

ロウズを心ゆくまで愛でる盤

CTIレーベルのアルバムを聴き直している。CTIレコードは、クロスオーバー&フュージョンの代表的レーベル。イージーリスニング・ジャズ志向のエレ・ジャズが多く、特に「ソフト&メロウ」な音の味付けがなされたフュージョン盤は、硬派なジャズ者の方々から毛嫌いされている(笑)。

だが、今の耳で聴き直しても、その内容、演奏テクやアレンジ、は充実している。1970年代を代表するジャズのスタイル、クロスオーバー&フュージョンの良いところが満載である。

Hubert Laws『The Chicago Theme』(写真左)。1975年1-4月の録音。ちなみにパーソネルは、以下の通り。どうも、当時のクロスオーバー&フュージョンのアルバムは、登場人物が多くて困る。

Hubert Laws (fl, arr), Randy Brecker (tp), Michael Brecker (ts), David Sanborn (as), Bob James (key, arr, cond), Don Grolnick (p, clavinet), Joe Beck, George Benson, Eric Gale, Richie Resnicoff, Phil Upchurch (g), Doug Bascomb, Ron Carter (ac-b), Stanley Clarke (el-b), Steve Gadd, Andrew Smith (ds), Ralph MacDonald (perc)。バックにストリングスが入る。

リーダーは、フルート奏者のヒューバート・ロウズ。ジャズ・フルート奏者として頭角を現したのが、1960年代半ば。活躍したジャンルとしては、イージーリスニング志向のファンキー・ジャズ。いわゆる1970年代のクロスオーバー&フュージョン・ジャズに直結した音作りをしていて、純ジャズ者、ハードバップ至上主義のジャズ者の方々からは、全く注目されない存在。
 

Hubert-lawsthe-chicago-theme

 
しかし、ロウズのフルートはかなりのレベルで、ジャズ・フルート奏者の中では上位の、歴代のジャズ・フルート奏者の中ではベスト3の中に位置するくらいの「ジャズ・フルートのバーチュオーゾ」である。

そんなロウズが、ボブ・ジェームスのアレンジに乗って、クロスオーバー&フュージョン志向のCTIサウンドに包まれて、極上のファンキー&ソウルフルなフルートを吹き続ける。ロウズのフルートは、クラシック仕込みでテクニックは上々、歌心は抜群、ウォームで芯のあるファンキー&ソウルフルなフルート。

加えて、この盤では、バックのリズム隊が結構強力で、タイトでファンクネス漂うリズム&ビートが実に心地良い。そんなリズム隊とロウズのファンキー&ソウルフルなフルートが絡みまくって、こってこてファンクに、キメにキメる「I Had A Dram」。フィリー・ソウルの名曲、スタイリスティックスの「You Make Me Feel Brand New」や、マリア・マルダーのヒット曲「Midnight At The Oasis」のカヴァーが格好良い。

そして、ベタなジャズ・カヴァーで失笑を買いがちな、クラシックの有名曲「Goin' Home」、いわゆるドヴォルザークの「家路」であるが、これがまあ、ボブ・ジェームスの秀逸なアレンジで、思いっきりソウルフルなジャズ・ファンク曲にカヴァーされている。これだけ、思いっきりソウルフルなジャズ・ファンク曲にアレンジされた、ドヴォルザークの「家路」は聴いたことが無い。

ストリングスのバックも耳につかず、良いアレンジを施されて良好。CTIレーベルのアルバムの中でもちょっと地味な存在ですが、ロウズのフルートを心ゆくまで愛でるには最適なアルバムの一枚です。ロウズのみならず、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの佳作です。
 
 

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2025年1月 6日 (月曜日)

ハッピー・スイングなライヴ盤

ニューヨークはグリニッチ・ヴィレッジのジャズクラブ「Smalls Jazz Club」は、お馴染みの大御所から若手有望株まで、様々なミュージシャンが、夜毎ホットで多彩な演奏を繰り広げている、現代の名門ジャズ・クラブ。

2005年の再オープン後、2007年、ジャズ・ピアニストのスパイク・ウィルナーが音楽監督を務め、同クラブでのライヴ音源をアーカイブ化~CDリリースするために「Smalls Live」レーベルを設立、この「Smalls Jazz Club」でのライヴ音源を次々にリリースしている。

Harold Mabern『Live at Smalls』(写真左)。2012年6月22–23日、NYの「Smalls Jazz Club」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Harold Mabern (p), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds)。多弁でR&B志向の「現代のファンキー・ピアニスト」のレジェンド、ハロルド・メイバーンのピアノ・トリオでのライヴ録音盤。

メイバーンのピアノは、ブルージーでゴスペルチックな和音の響きが特徴。その特徴を前提にバップなピアノをダイナミックに弾きこなす。米国ルーツ・ミュージックの響きがノスタルジックに響く。高速速弾きの演奏から、情感豊かなバラード演奏まで、幅広くバリバリと弾きこなす、高度なテクニシャンでもある。

メイバーンのピアノは、とにかく音数が多い。ブロックコードの応酬から、付帯音をあしらった、音数の多いテーマの装飾。バックのファンズワーズのドラミングは、「おかず多用」のファンキーなドラミング。
 

Harold-mabernlive-at-smalls

 
そして、音数の多いピアノとドラムが弾き進めるフレーズの「間」を埋める様な、ウェーバーのウォーキング・ベース。しかし、この音数の多さが、このトリオの演奏の、雰囲気良好な爽快感、疾走感につながるのだから、ジャズ演奏は面白い。

冒頭の「Alone Together」の導入部、最初の2分間のピアノ・ソロを聴けば、メイバーンのピアノの特徴が良く判る。手数の多い、装飾音の多い、それでいて、嫌味にならず耳障りにならない、高速バップなピアノ。

とにかく、メイバーンのピアノは「ご機嫌な」ピアノ。ゴスペルチックなハッピー・スインガー。そんなメイバーンのピアノがラストの「Afro Blue」まで、爽快感を振り撒いて疾走する。

特に5曲目「Boogie For Al McShann」から、続く「Sesame Street」(人気子供番組の曲で有名)の流れは聴きもの。ブギウギ調のピアノソロをガンガンに弾きまくり、「Sesame Street」をむっちゃ格好良い4ビート・ジャズに仕立て上げて、これまたガンガンに、ゴスペルチックでハッピー・スインギーなピアノで「キメまくる」。

良いライブ盤です。メイバーンは1936年3月生まれで、このライヴ演奏時は76歳。これだけの大ベテランの年齢なら、バップなフレーズにノスタルジックな雰囲気が漂いそうなものだが、このライヴ盤演奏では古さは全く感じない。

どころか、新しい響きに満ちている。アレンジが優れているのだろう。とにかく、メイバーンのライヴ・パフォーマンスは聴いていてとても楽しい。ハッピー・スインガーの面目躍如である。
 
 

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2025年1月 5日 (日曜日)

ECMニュー・シリーズの一枚

ECMレコードには幾つかの「傍系」シリーズが存在する。その一つが「ECMニュー・シリーズ」。西洋クラシック音楽の作品を収録するために1984年に創設。現代作曲家の作品をメインにリリース。多くのリリースにおいて、ECMのジャズとクラシック音楽への志向が組み合わされている。

Steve Reich Ensemble『Reich: Music for 18 Musicians』(写真左)。1978年の録音。邦題「18人の音楽家のための音楽」。ECMニュー・シリーズにてのリリース。スティーヴ・ライヒが1974年から1976年にかけて作曲したミニマル・ミュージックの作品。演奏者はタイトル通り18名で、18のパートに分かれている。

現代作曲家、スティーヴ・ライヒの作曲。スコア上では演奏時間は約55分。しかし、反復の回数が多ければ1時間を超える。「反復」演奏が基本だが、その「反復」の中で、旋律のパターンの変化、新しい演奏モチーフの開始などは、ヴィブラフォン奏者はの聴覚による合図、第1クラリネット奏者の視覚による合図(キュー)を全プレイヤーに送ることで行われる。

指揮者無しの「アンサンブル」で演奏される。ミニマル・ミュージック(音の動きを最小限に抑え、パターン化した音型を反復させる音楽)の「反復」が基本となっており、旋律のパターンやセクションの交換と変化、フェードアウトの開始、新しい演奏モチーフの開始は、プレイヤーの合図(キュー)によって行われる。
 

Steve-reich-ensemblereich-music-for-18-m

 
ECMニュー・シリーズの中では「クラシック部門」にあるが、クラシックの様な、完全に譜面通りの演奏ではなく、「反復」の展開は柔軟に行われるので、ある程度の自由度が与えたれた現代音楽で、厳密に言うと「クラシック」とは特性が異なる。

この盤を演奏を聴いていると、1970年代より活躍した、欧州のテクノ・ミュージック、テクノ・ロックのタンジェリン・ドリームやクラフト・ワークの演奏を想起する。タンジェリン・ドリームやクラフト・ワークの演奏展開は、この「ミニマル・ミュージック」を応用していて、そういう観点で、スティーブ・ライヒの現代音楽に通じるものがあると感じる。

このスティーヴ・ライヒの現代音楽の響きは、クラシック音楽の基本の上に成り立ち、進化していて、いかにも「欧州」らしい音に満ちている。キューによる旋律のパターンやセクションの交換と変化は、どこかクロスオーバー・ジャズの即興展開に通じるものがあって、聴いていて実に心地良い。
 
 

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2025年1月 4日 (土曜日)

ムーディーなピーターソンも良し

ジャズ盤を鑑賞する。有名盤や人気の名盤を聴き漁るのも良いが、あまり知られていない、内容充実の「小粋な」ジャズ盤を探して見つけて聴くのも良いものだ。聴いていて、ジャズの「粋」を感じ、ジャズの「心憎い」ところを感じる。そんな「小粋な」ジャズ盤を聴くのも、ジャズ盤鑑賞の醍醐味の一つである。

Oscar Peterson『Pastel Moods』(写真左)。1952年1月26日と1954年4月27日の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Irving Ashby (g), Herb Ellis (g), Ray Brown (b)ギターは2人のギタリストを使い分けていて、1952年1月26日の録音に Irving Ashby (g)、1954年4月27日の録音に Herb Ellis (g)。

超絶技巧、超スインギーなピアニスト、オスカー・ピーターソンのリーダー作。さぞかし、いつもの様にバリバリと超スインギーに弾きまくるんだろうなあ、と思いきや、タイトルとジャケを見ると、これって、ムーディーな雰囲気の内容なのかしらん、と訝しく思う。聴いてみると、あらら、ピーターソンがムーディーな、ラウンジ風のイージーリスニング志向のピアノを弾いているではないか。
 

Oscar-petersonpastel-moods

 
このラウンジ風のイージーリスニング志向のピーターソンのピアノが実に良い。もともと、とてつもなくテクニックに秀でたピアニストである。ムーディーにウォームに、しっかりとしたピアノを弾くのもお手のもの。この盤は、ピーターソンのピアニストとしての懐の深さ、引き出しの多さを強く感じる。

ドラムレス、代わりにギターが入る、ピアノ=ベース=ギターのオールド・スタイルのピアノ・トリオ。これが、この「ラウンジ風のイージーリスニング志向のピアノ」をさらに引き立てる。アシュリーもエリスも、これまたムーディーでウォームなギターで、ピーターソンのピアノに彩りを添える。硬質硬派なレイ・ブラウンのベースを、アクセントとアレンジに効果的に活かしている。

まるで、米国ウエストコースト・ジャズを聴く様な、と思いつつ、録音場所を見てみると、なるほど「ロサンゼルス」での録音である。ロスでの録音なので「ラウンジ風のイージーリスニング志向のピアノ」になったのではないだろうが、この盤では、ピーターソンのピアノは、「聴かせる、聴いて楽しむ」ウエストコースト・ジャズ志向のアレンジとプロデュースで、ムーディーでウォームなピアノに変身している。しかし、これもまた「乙なもの」である。
 
 

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2025年1月 1日 (水曜日)

今年もよろしくお願いします

明けましておめでとうございます。今年も「ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログ」をよろしくお願いします。

今年もジャズをメインに、70年代ロック、70年代Jポップを聴き直していきます。そうそう、新盤も新リイシュー盤も見逃さずに聴いていこうと思ってます。

記事のアップの再開は、明後日、1月4日を予定していますので、よろしくお願いします。

それでは、今年もよろしくお願いします。
  
 
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