Steps『PARADOX』は良い
1980年代以降の「早逝の伝説のテナー・マン」、マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)。1970年代、兄弟で結成した「ブレッカー・ブラザーズ」で頭角を現し、ステップス・アヘッドで共同リーダーとして大活躍。
1987年、初のソロ・アルバムをリリース。以降、ソロとして活躍したが、2005年、血液疾患である骨髄異形成症候群(MDS)と診断され、懸命の治療にも関わらず、2006年6月23日、カーネギー・ホールでハンコックと演奏が最後の公の場となり、2007年1月13日、57歳で逝去している。
そんなマイケル・ブレッカーのリーダー作の聴き直しも、あと3枚を残すのみとなった。今日は、ステップス・アヘッド時代の一枚。
Steps『PARADOX』(写真左)。1981年9月17-20日のライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Mike Minieri (vib), Michael Brecker (ts), Don Grolnick (p), Eddie Gomez (b) ,Peter Erskine (ds)。マイク・マイニエリとマイケル・ブレッカーが共同リーダーの「ステップス」(後に「ステップス・アヘッド」と改名)の3作目のアルバム。
1981年9月、彼らのホームグラウンドだった、ニューヨークのライヴハウス「セブンス・アベニュー・サウス」でのライヴ録音。日本コロンビアのBetter Daysレーベルからのリリース。内容としては、当時のフュージョン畑の名うてのミュージシャンが集結、驚愕のパフォーマンスを披露した、初のオリジナル・ライヴ盤『Smokin' in the Pit』の、コンテンポラリーな純ジャズ志向を踏襲したもの。
決して、フュージョン・ジャズではないし、クロスオーバー・ジャズでも無い。明快にコンテンポラリーな純ジャズが展開される。まず、マイケル・ブレッカーのテナーが良い。溌剌とマイケル独自のモーダルなフレーズを吹きまくっている。
そして、ドン・グロルニックのアコースティック・ピアノの弾きっぷりが見事。フュージョンの人と思っていたグロルニックが、こんなに純ジャズ風なアグレッシヴなピアノを弾くなんて。びっくりである。
エディ・ゴメスのアコーステッィク・ベースも良い味を出している。8ビートのスインギーなウォーキング・ベースを弾きこなし、純ジャズ志向のアドリブ・フレーズを弾き出す。
ピーター・アースキンのドラムも見事。ガッドの完全縦乗りビートに、少し水平スインギーなイメージを織り込んだ、8ビートのスインギーなポリリズム。この盤のステップスのグルーヴは、このアースキンのドラムに依るところが大きい。
マイニエリのヴァイブも忘れてはなるまい。フュージョン・ジャズでは、似た様なフレーズを繰り返し弾いて、お茶を濁していた印象があるのだが、この盤では、ステップスでは違う。コンテンポラリーな純ジャズ志向のフレーズを、マイニエリ独特の個性を反映して、弾きまくっている。やればできる、そう言いたくなるような、極上のマイニエリのヴァイブ。
新しいトーン、新しいリズム&ビートが聴いて取れる。ネオ・ハードバップの範疇なのだろうが、1950年代から1960年代のハードバップ、モード・ジャズのトーンを全く踏襲していないところが、このステップスの唯一無二、個性的なところ。逆に、8ビートのスインギーなグルーヴは、当時、流行のピークだったフュージョン・ジャズを経由した、新しい「成果」。
こんな「新しいトーン、新しいリズム&ビート」な、コンテンポラリーな純ジャズを録音したレーベルが、我が国の日本コロンビアのBetter Daysレーベルだったという事実に、思わず、日本人として胸を張りたくなる。録音も優秀。フュージョン畑の連中がやるコンテンポラリーな純ジャズなんてと敬遠するなかれ。現代のネオ・ハードバップに通じる、優れた内容のコンテンポラリーな純ジャズが、この盤にしっかり記録されている。
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