”ハードバップのジョーヘン” です
ジャズには、録音した時点では、即アルバム化してリリースされずに「お蔵入り」する音源が多々ある。そして、そんな「お蔵入り」音源が、後年、20〜30年経って、組織的に「発掘」され、リリースされることが、これまた「まま」ある。
そして、この発掘音源はどれもが、発掘のし甲斐のある、興味深い内容を持つものが多いから、絶対に無視できない。
Joe Henderson『Four』(写真)。1968年4月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。邦題は「フォア!~ライヴ・アット・レフト・バンク」。メリーランド州のボルチモアの「レフト・バンク」でのライヴ録音。1994年リリースのヴァーブ・レコードの発掘盤。
ウネウネ・モードの「モードの申し子」ジョー・ヘンダーソン(以降「ジョーヘン」と略)とライヴ音源である。バックのリズム・セクションに、ウィントン・ケリーのピアノ、ポール・チェンバースのベース、ジミー・コブのドラム。ジョーヘンのワンホーン・カルテットである。
ケリー、ポルチェン、コブのリズム隊はハードバップ期の最高のリズム隊の一つ。しかし、このライヴ録音は1968年。モード・ジャズが成熟期の第一段階に差し掛かった頃。こってこてハードバップなリズム隊に、ウネウネ・モードの「モードの申し子」ジョーヘンがワンホーン・フロント。どんなライヴ演奏になるのか興味津々である。
聴くとこれがまあ、無理のない、自然に流れる様なハードバップな演奏が繰り広げられているのだから面白い。ジョーヘンは、モーダルな展開もするにはするが、バックのリズム隊が流れる様に自然なハードバップ志向のリズム&ビートを供給するもんだから、ジョーヘンも自然にハードバップな吹き回しで応酬している。これが実に良い雰囲気なのだから面白い。
ジョーヘンのハードバップな吹き回しについても、1950年代を席巻したハードバップ全盛期のフレーズをなぞったりはしない。モード・ジャズを自家薬籠中のものとした後の、新しい響きのハードバップな吹き回しになっている。これが、この盤のハードバップな演奏を新鮮な印象のものにしている。そこに、時々、ジョーヘン仕様のモーダルな吹き回しが入って、新鮮な印象をさらに印象的なものにしている。
リズム隊については、ケリー、ポルチェン、コブ、それぞれ、なかなか内容の濃い演奏を繰り広げている。とりわけ、ケリーのピアノが絶好調。1968年といえば、ケリーが鬼籍に入る3年前。しかも時代は、モード・ジャズが成熟期の第一段階に差し掛かった頃。
ケリーのハードバップなピアノはもう古い、と思いきや、溌剌とケリー節を弾きまくっている。ケリーのピアノは、健康優良児的なファンキーで明るいタッチ。しかし、その奥に見え隠れするブルージーな哀愁感が堪らないのだが、これが明快にバンバン出てくる。ケリー晩期のベスト・プレイかもしれない。
1968年4月のライヴ録音ながら、リリースは1994年。典型的な発掘音源であるが、この優れた興味深い内容は、発掘のし甲斐のある「発掘音源」だったと思う。こういう発掘音源はウエルカム。ハードバップのジョーヘン、意外と聴き応えがある。
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