唯一のコルトレーン盤が第2位
「レコード・コレクターズ 2024年11月号」に掲載された「ブルーノート・ベスト100」。この「ブルーノート・ベスト100」は、創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった、1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」が掲載されている。
John Coltrane『Blue Train』(写真左)。ブルーノートの1577番。1957年9月15日の録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Kenny Drew (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。テナーの聖人コルトレーンがブルーノートに残した唯一のリーダー作である。
この盤は「ブルーノート・ベスト100」の第2位。ふむむ、『Blue Train』が第2位かぁ。1950年代後半のコルトレーンは筋金入りのジャンキー。ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、大のジャンキー嫌い。しかし、コルトレーンのアルバムは録音したい。この盤の録音時期は、コルトレーンが、約5年間在籍したマイルス・デイビスの元を離れて独立、自分の名前でジャズ・シーンでの歩みを開始した時期。
この盤は、リアルタイムでは、この盤が2枚目のリーダー作。この時、コルトレーンはプレスティッジと契約中。プレスティッジから初リーダー作をリリースしたが、ライオンの要請に従い、なんとかブルーノートからリリースの流れらしい。従って、このブルーノート版には、"courtesy of Prestige Records" とクレジットされている。
しかも、この盤、プロデュースはライオンだが、メンバー選びや選曲などはコルトレーンに一任されている。つまり、この盤はブルーノートらしさが希薄な盤と言える。つまり、どのレーベルでリリースしてもこの内容になった、ということ。しかし、ジャケのデザイン、ルディ・ヴァン・ゲルダーの手になる「ブルノート・サウンド」による録音。この2つのブルーノートならではの要素が、この盤をブルーノート・レーベルの名盤の一枚、に留めている。
加えて、この盤については、評論のほとんどが「コルトレーンは素晴らしい」の一点張りだが、この盤は、演奏に参加したメンバー全員が素晴らしい演奏をしている。ブルーノートはリハーサルにもギャラを払う。記録によると、ブルーノートは2〜3日間のリハーサルを積んで、本録音に望んでいる。当然、演奏内容は素晴らしい。これもブルーノートならでは、である。
演奏も素晴らしい。曲も素晴らしい。しかし、この盤はアレンジが秀逸。アレンジャーのクレジットがないので、恐らく、2〜3日間のリハーサルの中でのヘッド・アレンジだと思うが、どの曲も、このアレンジが素晴らしい。この優れたアレンジの則って、しっかりリハーサルを積んだ、端正でメロディアスでファンキーで骨太の演奏が「ブルーノートらしさ」をこの盤に付加している。
それぞれのメンバーの演奏の素晴らしさ、曲毎の作りの素晴らしさについては、既に様々なところで語り尽くされているので、ここでは書かない。コルトレーンだけではない、演奏メンバー全員が素晴らしい。アレンジも良い、ジャケも良い、録音も良い。モダン・ジャズの、ハードバップのアルバムとして、全ての面で、切り口で素晴らしい、コルトレーンの、というよりは、ハードバップの名盤、と言った方が座りが良い。
もっと他に、ブルーノートらしさが滴り落ちるような名盤があったようにも思うが、我が国のジャズ・シーンは、コルトレーン信奉者がまだまだ多いとみえる。ブルーノートらしさが少し希薄な、ブルーノートに一枚だけ残した、コルトレーンのこの盤が、「ブルーノート・ベスト100」の第2位である。少しだけ違和感を感じる。
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