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2024年11月20日 (水曜日)

グリーン後期の名盤『Visions』

ブルーノートのハウス・ギタリストだったグラント・グリーン。グリーンの活動後期は、ウエス・モンゴメリー同様、イージーリスニング・ジャズ志向のリーダー作をリリースしていた。

が、ウエスほど、というか、ウエスに全く及ばない人気の低さだった。ウエスは大手レーベルのヴァーヴ、グリーンは斜陽の中小レーベルのブルーノート、レーベルの営業力の差がそのまま人気の度合いに反映されたのかもしれない。

Grant Green『Visions』(写真左)。ブルーノートの4373番。1971年5月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Billy Wooten (vib), Emmanuel Riggins (el-p), Chuck Rainey (el-b), Idris Muhammad (ds), Ray Armando (conga), Harold Caldwell (ds, perc)。

『I Want to Hold Your Hand』(1965年3月の録音)辺りから、当時のポップス&ロックや、R&B、ソウルのヒット曲のカヴァーを十八番としていたグリーン。この曲でも、人気の米国ブラス・ロック・バンド、シカゴの1970年のヒット曲「Does Anybody Really Know What Time It Is?(いったい現実を把握している者はいるだろうか?)のカヴァーを冒頭に持ってきている。

と思いきや、3曲目には「Mozart Symphony #40 in G Minor, K550, 1st Movement」、モーツアルト「交響曲第40番ト短調K.550 第1楽章」のカヴァー。有名クラシック曲のカヴァーを、パッキパキ硬質なシングルトーンで、ファンクネスダダ漏れてやるのだから、これは珍カヴァーといえば珍カヴァー。しかし、アレンジを含め、演奏の出来は上々だから面白い。
 

Grant-greenvisions

 
4曲目「Love on a Two-Way Street」は、1968年のR&Bのヒット曲のカヴァー。6曲目には、カーペンターズの1970年のヒット曲「We've Only Just Begun(愛のプレリュード)」のカヴァー。7曲目「Never Can Say Goodbye」はグロリア・ゲイナーの1971年のヒット曲。と、かなりリアリタイムに近い、ポップス&ロックや、R&B、ソウルのヒット曲のカヴァーを収録している。リアルタイムに近いにも関わらず、カヴァー・アレンジはどの曲も良好。

バックのリズム隊は、のちのクロスオーバー&フュージョン・ジャズにおける、定番ミュージシャンが担当していて、従来の4ビートメインのリズム&ビートでは無く、8ビートメインのファンキーでソウルフルなリズム&ビートを叩き出している。このクロスオーバー&フュージョン志向のリズム隊が、グラント・グリーンの、パッキパキ硬質なシングルトーンでファンクネスダダ漏れのエレギの音を引き立て、大いに映えさせる。

改めて聴き直してみて、内容良好のイージーリスニング・ジャズ。グリーンのギターはシングル・トーンでありながら、音がとても太いので、バックのリズム隊のリズム&ビートに負けることなく、逆に、バックのリズム隊のリズム&ビートに乗って、それぞれの曲の持つ旋律をくっきり浮き立たせ、アドリブ・パフォーマンスに耳を傾けさせる。

この盤の録音の際に、ルディ・ヴァン・ゲルダーが「こんな凄いプレイをするグリーンはいまだかつて見たことがない…」と呟いたとか。まさにその通り、この盤での、特にカヴァー曲での、グリーンのギターは素晴らしい。

ジャズに馴染みのない、ポップス、ロック、R&B、ソウルの楽曲の旋律をいとも容易く弾きこなし、ポップな8ビートに違和感なく乗る、キレキレのリズム感は見事と言う他ない。カヴァー曲メインに「引く」ことなく、耳にしてほしいグリーンの活動後期の名盤である。
 
 

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