ECMサウンドのモード・ジャズ『Shimri』
月刊誌レココレの2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この特集のアルバム・セレクトが興味深く、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きをしている。どの盤にも新しい発見があって、実に楽しい。今回のアルバムは初めて聴く「初聴き」盤。
Arild Andersen『Shimri』(写真左)。1976年10月、オスロの「Talent Studios」での録音。ECMの1082番。ちなみにパーソネルは、Arild Andersen (b), Juhani Aaltonen (ts, ss, fl, perc), Lars Jansson (p), Pål Thowsen (ds)。ノルウェーのジャズ・ベーシスト兼作曲家アリルド・アンダーセンの2枚目のアルバムである。
典型的なECMサウンド。耽美的でリリカル、静的スピリチュアルな展開、力強くブリリアントな管の響き、切れ味良く透明度の高いリズム隊のリズム&ビート。リーダーのアンダーセンがノルウェー出身、サックス担当のアールトネンはフィンランド出身、ピアノ担当のヤンソンはスウェーデン出身、ドラム担当のトーセンはノルウェー出身。カルテットのメンバー全員が北欧出身だが、北欧ジャズ独特の響きとフレーズは希薄。
ゆったりとしたミッド・テンポの演奏がメイン。演奏される展開はモーダル。演奏の雰囲気、響きはECM流のヨーロピアンな純ジャズ。そう、この盤の演奏は「欧州的なモーダルな純ジャズ」。ピアノのヤンソンのモーダルなアドリブ・フレーズは、どこか米国的。しかし、音の響きは「欧州的」。この盤の音世界は、米国的なモーダルな純ジャズを、ECMレーベルというフィルダーを通して、ECMサウンドを纏った「欧州的な響きのするモーダルな純ジャズ」に変換したが如くの音世界。
アンダーセンのベースは力感溢れる、しっかり「胴鳴り」のする、骨太なアコースティック・ベース。モーダルな演奏のベース・ラインをしっかりと押さえ、フロント楽器がアドリブ・フレーズを奏でる時は、しっかりと展開の底を支え、時に自らが前面に出て、印象的で骨太なアドリブ・ソロを聴かせる。ピッチもしっかりあって破綻が無い、いかにも「欧州ジャズ」的なアコベの音。聴き味抜群なベース音。
ECMレーベルのアルバムについては、即興演奏をメインとした、伝統的なジャズとはかけ離れた「ニュー・ジャズ」なアルバムが多数あるが、この盤は違う。この盤は、典型的なECMサウンドの中での欧州的なモード・ジャズ。静的でリリカルでクールで透明度溢れるモード・ジャズ。この盤では、ECMレーベルの中では、ちょっと異質な、伝統的なジャズが展開されている。とても興味深く、ECMとしてユニークな盤だと僕は思う。
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