マンのドラミングが映える好盤
これまで我が国では、米国のウエストコースト・ジャズについては、正当に評価されてない様に感じる。大人しい、熱気がない、印象が薄い、など、東海岸ジャズとの比較に中で、東海岸ジャズの長所と「反対の特徴」を、西海岸ジャズの欠点として捉えて、低い評価を与えられている傾向が強い。しかし、その「反対の特徴」を、西海岸ジャズの長所として捉えれば、正当な評価につながっていくのだから面白い。
Shelly Manne and His Men『More Swinging Sounds』(写真左)。1956年7, 8月の録音。ちなみにパーソネルは、Shelly Manne (ds), Stu Williamson (tp, valve-tb), Charlie Mariano (as), Russ Freeman (p), Leroy Vinnegar (b)。ネコのイラスト・ジャケが印象的な、シェリー・マン主宰の「Shelly Manne and His Men」シリーズのVol.5。
1956年の録音。米国ウエストコースト・ジャズの全盛期の入り口、アルバム全体にウエストコースト・ジャズの良いところがギッシリ詰まった好盤。西海岸独特の、切れ味良く、端正で流麗なスイング感がたまらない。その魅力的で爽快なスイング感は、リーダーのシェリー・マンのドラミングが推進エンジンになっている。そして、そんなマンのドラミングの「底」を、レロイ・ヴィネガーの味わい深い、オーソドックスなベースがしっかりと支えている。
この西海岸独特の雰囲気は、この盤で唯一のスタンダード曲、チャーリー・パーカー作のミュージシャンズ・チューンの「Moose the Mooche」を聴けば良く判る。西海岸独特の洒落たアレンジで、このビ・バップの名曲を「聴かせる」ジャズに仕立て上げている。ウォームで軽快スインギーなリズム&ビートに乗って、流麗なアドリブ・フレーズを奏でるフロント2管。
ステュ・ウィリアムソンのトランペットの好演が光る。東海岸の様に熱気溢れる、迫力満点なブロウでは無いが、テクニックに優れ、流麗なフレーズは、これはこれで、優れたジャズ・トランペット。そして、マリアーノのアルト・サックスも健闘している。スチュのトランペットの向こうを張って、素敵なフロント2管を形成している。
リーダーのマンのドラミングが一番の聴きもの。テクニック抜群、様々なニュアンスのリズム&ビートを叩き出しながら、しっかりフロント2管を引き立て、クールに鼓舞する。「聴かせる」ウエストコースト・ジャズに最適なドラミング。優れた「モダン・ジャズ」がここにもある。ジャズの裾野の広さ、ジャズの深化、をバリバリに感じる、ウエストコースト・ジャズの好盤の一枚である。
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