コーエンの新盤『Vibe Provider』
現代のジャズ、今のジャズも面白い。ジャズは年々「深化」している。1920年代から1970年代にかけて、ジャズは新しい演奏スタイルや演奏トレンドが出現して、ジャズは「進化」していた。が、1980年代以降、純ジャズ復古の時代以降、過去の演奏スタイルや演奏トレンドを振り返り、深化させるムーヴメントがメインとなり、ジャズは「進化」から「深化」に転身した。
Emmet Cohen『Vibe Provider』(写真左)。2024年1月2-3日、NYのSear Sound録音。ちなみにパーソネルは、Emmet Cohen (p), Philip Norris (b), Kyle Poole (ds on Tracks 1-4, 8), Joe Farnsworth (ds on Tracks 5, 6, 7, 9), Tivon Pennicott (ts on Tracks 3, 4, 9), Bruce Harris (tp on Tracks 3, 4, 9), Frank Lacy (tb on Tracks 3, 9), Cecily Petrarca (koshkah on Track 3)。
エメット・コーエンは、1990年、米国フロリダ州マイアミの生まれ。今年33歳のバリバリ若手のジャズ・ピアニストである。クラシック音楽にも造詣が深く、コーエンのピアノを聴いていると、確かにクラシックの影響が垣間見える。2011年に初リーダー作『In the Element』をリリース。以降、1年に1枚のペースでコンスタントにリーダー作をリリースしている。
ピアノでジャズの歴史を駆け巡る男、現代のジャズ・ピアニストの代表格の一人、エメット・コーエンの12枚目のリーダー作。エメット・コーエンについては、数年前から、僕のお気に入りのピアニストの仲間入りを果たしていて、この新盤については、腰を据えて、じっくりと聴かせてもらった。まず感じたのは、収録された曲がどれも良い。コーエンのオリジナルと「Surrey with Fringe on Top」「Time on My Hands」などのスタンダード曲を、「ジャズの歴史を駆け巡る」個性で弾きまくる。
それぞれの曲におけるコーエンのピアノのスタイルについては、コーエンの最大の個性である「ジャズの歴史を駆け巡る」スタイル。ラグタイム〜ストライド〜デキシーランドなどの「オールド・スタイルなピアノ」から、ガーランドの風のブロック・コードからモダン・ジャズとしてのバップ&モードまで、メインストリームなジャズの凡そのスタイルをさりげなく織り込んで、耽美的でクリアなピアノを弾きまくっている。
また、この盤では、リリカルで耽美的なピアノ表現に磨きがかかっていて、どこかキース・ジャレットやエンリコ・ピエラヌンツィを想起させる響きが、そこかしこに感じられる。が、コーエンのリリカルで耽美的なピアノ表現には、バップな要素が見え隠れしていて、決して、キースやエンリコのコピーになっていないところが「ニクい」ところ。
ピアノ・トリオを基本とした演奏と、トランペットとテナー・サックスがフロント2管のクインテットを基本とした演奏とが混在しているが、トリオもクインテットも、どちらの演奏も優秀。トリオの場合は、フロントを張るコーエンのピアノと玄人好みの通なリズム・セクションが楽しめるし、クインテットでは、伴奏に回った時の、コーエンのピアノをメインとした「伴奏上手」なリズム・セクションを楽しめる。
トータルの演奏時間が43分とCDの時代としては短いが、これってLPの時代と同じようなトータル時間で、飽きたり疲れたりする前、耳が元気なうちに全体の演奏を聴き終えることができるので、これはこれでアリかなとも思っている。録音についても、各楽器について、適度な音量、躍動感あふれるクリアな音質で録れていて申し分ない。「曲が良し、演奏が良し、録音も良し」の「三方よし」のコーエンの新盤です。
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