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2024年11月 9日 (土曜日)

この盤が第1位とは意外である

「レコード・コレクターズ 2024年11月号」に珍しくジャズの特集が載った。「ブルー・ノート・ベスト100」。

ブルーノート・レーベルは、1939年にアルフレッド・ライオンによって始められたジャズ・レーベル。1950〜60年代のハード・バップを中心としながらも幅広いスタイルのジャズのアルバムを多数リリース。「1950〜60年代のジャズの変遷を知るなら、ブルーノートを聴けば良い」と言われるくらい、ジャズ史の中で、超重要なレーベルである。

そんなブルーノートの、創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」が掲載されている。今回、この「ベスト100」を指針として、ここヴァーチャル音楽喫茶「松和」で、順に聴き直してみようと思い立った。100枚相手の聴き直し。一年位、かかるかな。結果は右下のカテゴリー欄に「Blue Noteの100枚」としてアーカイブしていくので、よろしくお願いします。

Eric Dolphy『Out to Lunch』(写真左)。1964年2月25日の録音。ブルーノートの4163番。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (b-cl, fl, as), Freddie Hubbard (tp). Bobby Hutcherson (vib), Richard Davis (b), Tony Williams (ds)。当時、先進的な、先鋭的なジャズを牽引していた精鋭クインテットである。

この盤が「ブルーノート100」の1位に選ばれている。うむむ、どこに焦点を当てるか、によるが、よりによってこの盤か、との想いが頭をよぎる。この盤は、一言で言うと「難解盤」。1位だといって、決して、初心者向けの盤では無い。ジャズの歴史と様々な奏法を聴いてきた、中級から上級向け。なんせ、聴き心地の良いものではない。

リーダーのエリック・ドルフィーのアルト・サックスは、ジャズの伝統に根ざした「前衛志向」。決して、前衛ではないし、フリージャズのリーダーでも無い。ジャズの伝統に根ざした、限りなく自由でユニークなアルト・サックス。マイルスが「コードからの解放」を示唆し、モード奏法を導入して、ジャズの即興演奏の自由度を飛躍的に高めた。そのベクトルの先の、ちょっと外れたところに、ドルフィーはいる。
 

Eric-dolphyout-to-lunch

 
この盤のドルフィーは、完全に「ドルフィー流のモード・ジャズ」。一定のルールと規律に基づいた、ジャズの伝統の枠内で、最大の自由を追求した様な演奏。だが、その自由度溢れるフレーズはドルフィー独特なもの。しかし、その「独特」なフレーズの凸凹と揺らぎが「癖になる」。癖になればドルフィー大好きだし、嫌になればドルフィー嫌いになるほどの強烈な個性。

演奏メンバーそれぞれ、このドルフィー独特の自由度溢れるモーダルなフレーズを踏襲する。まず、モーダルな先鋭的ヴァイブが個性のハッチャーソン。ドルフィー独特のフレーズの雰囲気を踏襲しつつ、ハッチャーソンの個性を踏まえたフレーズを叩きまくる。ドルフィー志向のハッチャーソンのヴァイブといった風情がユニーク。

トランペットのハバードは、テクニックが超優秀が故、ドルフィーのフレーズの「優れた物真似」志向で、「こんな感じでどう」という感じで、ドルフィーのコピー志向のモーダルなフレーズを吹く。創造性と独創性に欠ける嫌いがあるが、バカテクが故の仕業なので仕方がない。ピアノレスなので、このフロント3人のフレーズ展開の自由度はかなり高い。

リチャード・デイヴィスのベースと、トニー・ウイリアムスのドラムは、フリー&アブストラクトにも完全対応する、優れものなリズム隊なので、ドルフィーの、ジャズの伝統に根ざした「前衛志向」の演奏については、全く問題なく対応する。

しかし、このドルフィーの『Out to Lunch』が、「ブルーノート100」の第1位だったのには、ちょっと戸惑った。ジャズ者初心者にはちょっと荷が重いこの盤。確かにジャズ者ベテランからすると、聴いて面白い盤ではあるんだが。でも、やっぱり趣味性が高いかなあ。ジャケットもシュールで、マニアからするとたまらない逸品。とにかく、ブルーノートの名盤の一枚ではある。
 
 

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コメント

ジャズ初心者です。聴き始めて20年ちょっとです。
レココレよりもずっとわかりやすい解説ありがとうございます。参考になりました。

この盤は、高校生の頃(1975年)に購入。よく聴いた一枚でひじょうに思い入れがあるんですが、1位はたしかに違うかなと思います。
読んでないんですが、たしか得点集計ですよね。
評者の多くがセレクトした結果なんじゃないかと。
ちなみにドルフィのベスト1は、やっぱりラスト・デイトでしょうかね。

Floaterさん。

私も評者それぞれの得点集計の結果だと思っています。確かに名盤ですが、ブルーノートを代表する、となると、ちょっと違うかな、と感じています。
それと、ドルフィーのベスト、私も『ラスト・デイト』だと思います。この盤のドルフィーはピカイチですね。長年の愛聴盤の一枚です。

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