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2024年11月 2日 (土曜日)

「元曲」の良さで盤の魅力倍増

米国ウエストコースト・ジャズは「聴かせる」ジャズである。優れたアレンジをしっかり踏まえ、聴き味の良い、流麗な弾き回しとアンサンブル。クールで小粋なアドリブ・パフォーマンス、切れ味よく端正なリズム&ビート。このウエストコースト・ジャズは、例えば、優れたフレーズを持つミュージカル曲やドラマの挿入曲を「元曲」にジャズをすれば、その個性と特徴がさらに輝きを増す。

『Shelly Manne & His Men Play Peter Gunn』(写真左)。January 19 & 20, 1959年1月19, 20日の録音。ちなみにパーソネルは、Shelly Manne (ds), Conte Candoli (tp), Herb Geller (as), Victor Feldman (vib, marimba), Russ Freeman (p), Monty Budwig (b), Henry Mancini (arr)。

「Peter Gun」とは、アメリカの古いTV番組で、1958年から61年にかけて毎週月曜日の夜9時から放送されていた「探偵もの」のドラマ。ドラマの挿入音楽は有名なヘンリー・マンシーニが担当、内容は立派なジャズ・ベースな楽曲だったそうで、その楽曲を、シェリー・マン率いるヒズ・メンが、ウエストコースト・ジャズとしてカヴァーする企画盤がこの盤である。
 

Shelly-manne-his-men-play-peter-gunn

 
もともとマンシーニの作曲&編曲の「元曲」が、ジャズ志向の佳曲ばかりで、ジャズ志向の佳曲を、当時流行していたウエストコースト・ジャズ流のアレンジで、マンシーニ自身が再アレンジして、良好な内容のハードバップっぽい演奏に仕上げている。元曲の良さを活かしつつ、ウエストコースト・ジャズのアレンジの個性が、元曲の良さをさらに引き出している様な演奏は聴き応えがある。否、元曲を知らなくても大丈夫。純粋にウエストコースト・ジャズの好演として聴いても全く違和感は無い。

マンの、様々なニュアンスのリズム&ビートを叩き出しながら、しっかりフロントを引き立て、クールに鼓舞する、「聴かせる」ウエストコースト・ジャズに最適なドラミングは相変わらず。トランペットがコンテ・カンドリ、アルト・サックスがハーブ・ゲラー、ヴァイブがヴィクター・フェルドマン。その3人のフロントの演奏が、マンのドラミングに乗り、鼓舞されて、なかなか充実した、ウエストコースト・ジャズらしからぬ、ホットなアドリブを展開している。

「元曲」の良さがそうさせるのだろう。ウエストコースト・ジャズの個性と特徴はしっかり踏まえつつ、いつになく、ウエストコースト・ジャズらしからぬ、ちょっとホットな演奏は聴き応え十分。クールで端正で流麗、聴き心地の良いユニゾン&ハーモニーはそのままに、少し「熱い」インプロビゼーションを繰り広げる。モダン・ジャズの好盤です。
 
 

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