叙情的ジャズ・メッセンジャーズ
ジャズを本格的に聴き始めた頃から「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」はお気に入り。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのアルバムを聴き通すだけで、ジャズの演奏トレンド、演奏志向の歴史が判る。
ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズのそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。
逆に、それぞれの時代での「音楽監督」が表現するジャズの演奏トレンド、演奏志向に、ドラマーとして、ことごとく適応していった。ブレイキーのドラマーとして能力の高さを如実に表しているエピソードである。
Art Blakey and the Jazz Messengers『Like Someone in Love』(写真左)。1960年8月7日 (#3, 4, 6) と、8月14日(#1, 2, 5)の録音。リリースは1967年。ブルーノートの4245番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp, flh), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。LP時代は全5曲。6曲目はCDリイシュー時のボートラ。
ブルーノートの名盤、4049番『A Night In Tunisia』と、同日セッションの音源で構成されたアルバム。1960年に録音され『A Night In Tunisia』は、1961年5月に、ほぼリアルタイムでリリースされている。が、この盤は録音から7年経ってのリリース。裏『A Night In Tunisia』とも呼ばれるアルバムである。よって、アルバム評も『A Night In Tunisia』との比較がメインとなる。
4049番『A Night In Tunisia』は、演奏全体の雰囲気が躍動的でバップ志向、それを前提にモーダルな演奏が展開される。4245番『Like Someone in Love』は、演奏全体の雰囲気が叙情的でリリカル、それを前提にモーダルな演奏が展開される。どちらもモード・ジャズの良好盤であるが、敢えて言うなら、『A Night In Tunisia』は「動」、『Like Someone in Love』は「静」。
新「音楽監督」のショーターが腕をふるう、叙情的なモーダルな演奏が実に心地良い。叙情的な、ゆったりしたテンポの演奏では、意外とモードは難物なんだが、この時代のジャズ・メッセンジャーズはこともなげに、粛々と、ミッドテンポ中心の叙情的でリリカルなモーダルな演奏を徹頭徹尾、繰り広げている。
タイトル曲の冒頭「Like Someone in Love」がこのアルバムの雰囲気を代表している。美しくドラマティックな展開のアレンジが秀逸。叙情的でリリカルなモード・ジャズが、意外とジャズ・メッセンジャーズの「別の側面」を聴いてりう様で実に良い。
熱くエネルギッシュでバップな演奏ばかりでは無い。こういった叙情的でリリカルなモード・ジャズもこともなげに、上質に演奏に仕立て上げるところは、この時代のジャズ・メッセンジャーズのポテンシャルの高さを物語る。
この『A Night In Tunisia』は、4049番『A Night In Tunisia』と併せて聴いて、その魅力は倍増する。「動」な演奏と「静」な演奏との対比も美しいし、「ショーターの考えるモード・ジャズ」が完成の域に達していることを確認できるのも、この盤のメリットだろう。
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