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2024年10月13日 (日曜日)

野呂一生のファースト・ソロ盤

我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。意外と超ストイックなバンドで、結成時(1976年)から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの第1期の活動の中で、10年以上、常にカシオペアはグループとしての活動を優先、ソロ活動は一切御法度という厳しい規律の上でバンド運営されていた。

1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を容認したが、そのソロ活動も各自のソロアルバムを制作するだけに留める厳しいもの。しかし、その最初のソロ活動の中で、当時の我が国のフュージョン事情をよく反映させた、優れたソロ・アルバムが各メンバーからリリースされたのだから「さあ大変」(笑)。

野呂一生『Sweet Sphere』(写真左)。1985年5月のリリース。カシオペアのギタリスト野呂一生のファースト・ソロ・アルバム。パトリース・ラッシェンをはじめ、ネイザン・イースト、ジョン・ロビンソン、ポウリーニョ・ダ・コスタ、シーウインド・ホーンズといった一流ミュージシャンが参加したLA録音作。

1985年3月、野呂はロスの「スタジオ・サウンド」でレコーディングを開始。コーディネーターとして松居和が全面協力。またエンジニアは『EYES OF THE MIND』(1980年)でエンジニアを務めたピーター・チェイキンが担当。アルバムの音全体の「キメ」については、野呂とチェイキンのコラボでバッチリ決まっている。
 
Sweet-sphere
 
レコーディング方式としては、野呂が独りで作ってきた多重録音のデモ・テープとスコア譜を基に、演奏については、参加ミュージシャンの技量に任せる方法をとっている。これが正解だったみたいで、アルバム全体の雰囲気が、ハリのある爽快感溢れる西海岸フュージョン志向の「和フュージョン」なサウンドに仕上がっている。これが実に心地良い。

「和フュージョン」と言っても、野呂が所属するカシオペア・サウンドを前提としているのでは無く、あくまで、野呂オリジナルの「少しラフで、スムースで、爽快感&疾走感溢れる」L.A.テイストな「和フュージョン」なのが良い。それでないと、わざわざ、LAまで出向いて、ソロ・アルバムを制作する意味が無い。

演奏全体の雰囲気は、カシオペアの時の様に、アドリブ・ソロを弾きまくる展開はかなり少なく、バンド演奏全体のアンサンブル重視なのも、ソロ・アルバムならではの面白い変化。米国フュージョンっぽい、ボーカル入り曲や女性コーラスをあしらった曲もあって、1980年代前半の米国フュージョン・シーンの音をダイレクトに反映している。

アルバムの内容は、極上の「1980年代前半のフュージョン・ジャズ」。ファンクネスが希薄で乾いているところが、いかにも「和フュージョン」のテイストで、このアルバムを通して聴くと、1980年代前半の米国フュージョン盤そのものとは思えない。しっかりと、野呂オリジナルの「和フュージョン」のテイストが織り込まれていて、これが実に効いている。1980年代の「和フュージョン」の傑作の一枚でしょう。好盤です。
 
 
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