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2024年10月の記事

2024年10月31日 (木曜日)

「バップ・ピアノ」の不断の深化

1950年代から綿々と弾き継がれている「バップ・ピアノ」。70年以上も弾き継がれているので、もう発展性は無いのかと、思いきや、21世紀に入っても、不断の「深化」を続けている。そんな不断の「深化」の一翼をになっているピアノ・トリオが「ビル・チャーラップ・トリオ」。このトリオの新ライヴ盤がリリースされている。

Bill Charlap Trio『And Then Again』(写真左)。2023年9月9日、NYの「The Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。現代のバップ・ピアノの名手、ビル・チャーラップのレギュラー・トリオのライヴ録音。

チャーラップ・トリオのホーム・グラウンドである、ニューヨークのヴィレッジ・バンガード(ヴィレバガ)でのライヴ録音。チャーラップ・トリオは、ヴィレバガでのライヴ録音盤を多く残していて、それぞれの盤の内容にハズレが無い。この新作ライヴ盤もヴィレバガでのライヴなので、聴く前から期待満々である。

選曲はスタンダード曲がメイン。正攻法なアレンジで、気持ちよく、有名スタンダード曲中心に弾き進めていく。さすがに、長年連れ添ったレギュラー・トリオの3人、息のピッタリ合った、適度にリラックスしたホットなパフォーマンスが「ニクい」。まず破綻がない。オーソドックスな演奏なのだが、結構、小粋なやり取りをしている。
 

Bill-charlap-trioand-then-again

 
チャーラップのバップ・ピアノの見事さは「通常運転」。ピーターとケニーの「ワシントン」リズム隊は、表現力&テクニック上々、上質でオーソドックスなリズム&ビートを供給する。

従来からのバップなピアノ・トリオなんだが、まず、チャーラップのピアノのセンスが良い。旧来からのバップ・ピアノだが、紡ぎ出されるフレーズは、様々な工夫と変化があって、現代のバップ・ピアノとして、要所要所で、新しい響きが聴けるのは素晴らしい。バップ・ピアノもまだまだ「伸びしろ」があるんやなあ、と至極感心である。

ピーターとケニーの「ワシントン」リズム隊については、僕の大のお気に入りのリズム隊の一つで、オーソドックスな演奏なんだが、要所要所で、小粋な弾き回しと、阿吽の呼吸のインタープレイが見事で、今までに無い、堅実なリズム隊のリズム&ビートを聴かせてくれる。そして、チャーラップのバップ・ピアノに対して、ガッチリとタイミングばっちりのサポートが清々しい。

冒頭、ケニー・バロン「And Then Again」のバイタルなインタープレイに始まり、オーソドックスだが小粋なアレンジが見事にハマった、有名スタンダード曲「All The Things You Are」、続く「‘Round Midnight」など、現代で最高の「バップ・ピアノ・トリオ」の名演ライヴを追体験することが出来る好盤である。
 
 
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2024年10月30日 (水曜日)

お蔵入りに「成熟」を聴くJM

ショーターが、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ(以降、JMと略)の「新・音楽監督」として残したショーター流モード・ジャズは、モーガンのトラペット、ショーターのテナーの「2管フロント」時代と、トロンボーンのフラーを追加した「3管フロント」時代と、2つの時代に分けることが出来る。今回は「2管フロント」時代のお蔵入り盤のレビューである。

Art Blakey and The Jazz Messengers『The Witch Doctor』(写真左)。1961年3月14日の録音。1967年のリリース。ブルーノートの4258番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp, flh), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。モーガンのトラペット、ショーターのテナーが2管フロントのクインテット編成。

この1961年3月14日のセッションは、録音後、丸々、お蔵入りになっている。もともと1961年のJMはブルーノートを中心にかなりの量の録音を残している。お蔵入りになったのは、あまりの乱発になるのを防ぐ為だったのだろう。しかし、内容は一級品揃いで充実しているものばかり。お蔵入りにしっぱなしでは惜しいので、徐々に蔵出しイシューしていった。その一枚がこの盤である。
 

Art-blakey-and-the-jazz-messengersthe-wi

 
まだ3管フロントになる直前(約3ヶ月後に3管フロントになる)、2管フロントのショーター流モード・ジャズなJMである。内容はかなり充実していて、一言で言うと「2管フロントのショーター流モード・ジャズ」の成熟を聴くことが出来る好盤である。スタジオ録音後、即アルバム化された『A Night in Tunisia』が、1960年8月の録音なので、それより、7ヶ月も後なので、『A Night in Tunisia』と比較すると、やはり、「2管フロントのショーター流モード・ジャズ」は更に成熟度を増している。

特に、新・音楽監督でもあるショーターのテナーの迫力が凄い。分厚い切れ味の良いラウドな音で、本家本元のショーター流モード・ジャズのモーダル・フレーズを吹きまくっている。このショーターのテナーの吹きまくりが凄い。ショーターのテナーは意外に冷静沈着な風情のモーダル・ブロウが印象的なんだが、この盤ではエネルギッシュでバイタルでモーダルな吹きまくりが凄い。

ショーター流モード・ジャズに完全適応しているモーガンのトランペットももちろん素晴らしいパフォーマンスなのだが、それを凌駕するショーターのテナーがグイグイ前へ出てくる。クインテットのグループ・サウンズという面では、ちょっとショーターが前面に出過ぎたきらいがあるので、それがお蔵入りになった理由かもしれない。
 
 

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2024年10月29日 (火曜日)

インパルスのモーダルな「JM」

ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。

『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!)』(写真左)。1961年6月13, 14日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。モーガン、フラー、ショーターの3管フロントのセクステット編成。

1960年3月6日録音の『The Big Beat』から参加したウェイン・ショーター。ベニー・ゴルソンに代わる「新・音楽監督」として、辣腕を振るう。『Moanin'』で一世を風靡した、ファンキー・ジャズの旗手的存在だったジャズ・メッセンジャーズに、当時、ジャズ奏法の最先端だった「モード・ジャズ」を徐々に導入して行った。
 

Art-blakey-and-the-jazz-messengers1961-a

 
バリバリのファンキー・ジャズをやっていたJMが、いきなりモード・ジャズに転身する。ショーターは音楽監督として、徐々にモード・ジャズに対応する作戦に出る。まず、真っ先に、リーダーのブレイキーのドラムがモードに適応、ほどなく、トランペットのモーガンが適応し、フラーがそれに続く。そして、ベースのメリットが何とかモードに対応。しかし、ピアノのティモンズは時間がかかった。

しかし、『The Big Beat』から1年3ヶ月。ティモンズもしっかりモードに対応している。しかも、ブロック・コードを織り交ぜた、独特のモード奏法で、実に個性的なモーダルなパフォーマンスを展開している。この盤は、JMがモードに完全適応した姿を記録していて、演奏全体の雰囲気は、端正で整然として内容の濃い、JMならではのモード・ジャズを展開している。

この盤のセッションで、新・音楽監督のウェイン・ショーターが推進してきた、JM流のモード・ジャズは完成したイメージである。それぞれのメンバーの演奏は充実、完全にモードに適応。ただ、ティモンズのピアノだけが、ショーターのモードではなく、ティモンズ独自のモードで展開しているところが気になると言えば気になる。が、アルバム全体の印象は良好。
 
 

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2024年10月28日 (月曜日)

叙情的ジャズ・メッセンジャーズ

ジャズを本格的に聴き始めた頃から「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」はお気に入り。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのアルバムを聴き通すだけで、ジャズの演奏トレンド、演奏志向の歴史が判る。

ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズのそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。

逆に、それぞれの時代での「音楽監督」が表現するジャズの演奏トレンド、演奏志向に、ドラマーとして、ことごとく適応していった。ブレイキーのドラマーとして能力の高さを如実に表しているエピソードである。

Art Blakey and the Jazz Messengers『Like Someone in Love』(写真左)。1960年8月7日 (#3, 4, 6) と、8月14日(#1, 2, 5)の録音。リリースは1967年。ブルーノートの4245番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp, flh), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。LP時代は全5曲。6曲目はCDリイシュー時のボートラ。

ブルーノートの名盤、4049番『A Night In Tunisia』と、同日セッションの音源で構成されたアルバム。1960年に録音され『A Night In Tunisia』は、1961年5月に、ほぼリアルタイムでリリースされている。が、この盤は録音から7年経ってのリリース。裏『A Night In Tunisia』とも呼ばれるアルバムである。よって、アルバム評も『A Night In Tunisia』との比較がメインとなる。
 

Art-blakey-and-the-jazz-messengerslike-s

 
4049番『A Night In Tunisia』は、演奏全体の雰囲気が躍動的でバップ志向、それを前提にモーダルな演奏が展開される。4245番『Like Someone in Love』は、演奏全体の雰囲気が叙情的でリリカル、それを前提にモーダルな演奏が展開される。どちらもモード・ジャズの良好盤であるが、敢えて言うなら、『A Night In Tunisia』は「動」、『Like Someone in Love』は「静」。

新「音楽監督」のショーターが腕をふるう、叙情的なモーダルな演奏が実に心地良い。叙情的な、ゆったりしたテンポの演奏では、意外とモードは難物なんだが、この時代のジャズ・メッセンジャーズはこともなげに、粛々と、ミッドテンポ中心の叙情的でリリカルなモーダルな演奏を徹頭徹尾、繰り広げている。

タイトル曲の冒頭「Like Someone in Love」がこのアルバムの雰囲気を代表している。美しくドラマティックな展開のアレンジが秀逸。叙情的でリリカルなモード・ジャズが、意外とジャズ・メッセンジャーズの「別の側面」を聴いてりう様で実に良い。

熱くエネルギッシュでバップな演奏ばかりでは無い。こういった叙情的でリリカルなモード・ジャズもこともなげに、上質に演奏に仕立て上げるところは、この時代のジャズ・メッセンジャーズのポテンシャルの高さを物語る。

この『A Night In Tunisia』は、4049番『A Night In Tunisia』と併せて聴いて、その魅力は倍増する。「動」な演奏と「静」な演奏との対比も美しいし、「ショーターの考えるモード・ジャズ」が完成の域に達していることを確認できるのも、この盤のメリットだろう。
 
 

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2024年10月27日 (日曜日)

”暗黒時代の音” では無いですね

ホレス・シルヴァーと袂を分かって、ブレイキー単独となったメッセンジャーズ。ブルーノートに移籍してブレイクする前のアルバム群。以前のジャズ盤評論としては「ブレイク前のメッセンジャーズの暗黒時代」とされる時代のアルバム達。しかし、そうだろうか。僕はこのアルバムを実際に自分の耳で聴いて、この盤は決して「暗黒時代」の音では無い、と判断している。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Ritual』(写真)。1957年1月14日と2月11日、NYでの録音。Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Bill Hardiman (tp), Sam Dockery (p), Spanky DeBrest (b), Art Blakey (ds)。

ジャズ・メッセンジャーズに、若き日の「常に前進するアルト・サックス奏者、ジャキー・マクリーン」が参加している。フロントのトランペットにビル・ハードマン。ピアノとベースはマイナーな存在。クインテット編成なんだが、まず、このマイナーな存在のピアノとベースの存在が「暗黒時代」を想起させるのかもしれない。

しかし、実際の音を聴いてみると、意外とマイナーな存在のピアノとベースは健闘している。目を見張るようなテクニックを駆使してバリバリ弾きまくる訳ではないのだが、グループサウンド全体から見て、ピアノとベースの存在が邪魔になったり、耳障りになったりしている訳では無い。水準レベルのパフォーマンスで、リズム隊の必要最低限の仕事は堅実にやっている。少なくとも、ブレイキーのドラミングにちゃんと、ついていっている。
 

Art-blakey-the-jazz-messengersritual

 
ビル・ハードマンのトランペットがイマイチだ、なんて評価もあるが、イマイチで切り捨てるレベルでは無いと思う。このトランペットもしっかり水準レベルを維持していると思う。ブラウニーやモーガンの様に、ハイ・テクニックでバリバリ吹きまくるのでは無いが、出てくるトランペットの音は十分にブリリアントだし、少しヨレるところはあるが、ビ・バップなトランペットを水準レベルで吹き上げている。

逆に、この盤ではマクリーンが好調。マクリーンとブレイキーの相性がとても良い様で、ブレイキーのリズム&ビートの効果的なサポートと、マクリーンを鼓舞する様なドラミングが、マクリーンに響いて、マクリーンは独特なフレーズを紡ぎつつ、印象的なアルト・サックスを吹き上げる。

当然、ブレイキーのドラミングは良好。この盤を録音した時点で、既にブレイキーのドラミングの個性と特徴は確立されていて、ドラム・ソロなどを聴いていると、明らかに「これはブレイキー」と判るレベルに到達している。

まとめると、この盤はブレイキーとマクリーンを聴くべきアルバムである。が、残りの3人のパフォーマンスも水準レベルを維持していて、トータルとして、まずまずのハードバップなアルバムと僕は思う。何しか「メッセンジャーズの暗黒時代の演奏」と形容するのは、ちょっとこの演奏を担ったメンバーに対して、ちょっと失礼では無いかと思う。
 
 
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2024年10月25日 (金曜日)

ECM流クロスオーバーの名盤

レコード・コレクターズ 2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きしている。今回のアルバムは、実は初めて聴く「初聴き」盤である。

Barre Phillips『Three Day Moon』(写真左)。1978年3月の録音。ECM 1123番。ちなみにパーソネルは、Barre Phillips (b), Terje Rypdal (g, g-syn), Dieter Feichtner (syn), Trilok Gurtu (tabla, perc)。米国のジャズベーシスト、バレ・フィリップスがECMに録音した、ECM+JAPOで、通算4枚目のリーダー・アルバム。

このアルバムの印象はズバリ「プログレッシヴ・ロック(プログレ)とモード+フリー+スピリチュアル・ジャズとの融合」。リズム&ビートがはっきりしている演奏部分は「プログレ」。ボ〜っと聴いていたら「あれ、このプログレ、誰だっけ」と思ってしまうほど、プログレの要素が入っている。タブラの音が効果的、バイオリンの音の様なギター・シンセが、プログレ的な雰囲気を増幅する。
 

Barre-phillipsthree-day-moon  

 
リズム&ビートの供給が途絶えた途端、今度は、フリー・ジャズ志向、スピリチュアル・ジャズ志向に展開する。この展開は、ギターを担当するテリエ・リピダルの真骨頂で、リピダルのエレギ、ギター・シンセは、縦横無尽、変幻自在に浮遊し、突進し、拡散する。パーカッションのフリーな打ち込みがスピリチュアルな雰囲気を増幅する。

そして、フィリップスのベース音がフリーでスピリチュアルな展開を規律あるものに仕立て上げているのは立派だ。プログレ的な展開も、フリーでスピリチュアルな展開も、チェンジ・オブ・ペースを促したり、ブレイクを誘ったり、調性と無調のチェンジを指し示したり、さすがリーダー、フィリップスのベースが要所要所で「いい仕事」をしている。

タイトルが「Three Day Moon」=三日月。なんかどこか、ピンク・フロイドの名盤「Dark Side of The Moon」を想起したりして、これって、ECMレコード流のクロスオーバー・ジャズなのかしら、と直感的に感じてしまう。昔々、プログレ小僧だった僕としては、この盤の内容は全く違和感なく聴くことが出来ました。ECM流クロスオーバーの名盤だと思います。
 
 

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2024年10月24日 (木曜日)

ラヴァの『Quotation Marks』

今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴いている。

以前聴いたことがあって、今回聴き直しのアルバムもあれば、初めて聴くアルバムもある。どちらも「今の耳」で聴くので、意外と新鮮に感じるから面白い。

Enrico Rava『Quotation Marks』(写真左)。1973年12月、NYでの録音と1974年4月、ブエノスアイレスでの録音。JAPO 60010番。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp)は、NYとブエノスアイレス共通。以降は、録音地毎のパーソネルは以下の通り。

NY録音のパーソネル:Herb Bushler (b), Jack DeJohnette (ds), John Abercrombie (g), Warren Smith (marimba, perc), Ray Armando (perc), David Horowitz (p, syn), Jeanne Lee (vo)。

ブエノスアイレス録音のパーソネルは、Rodolfo Mederos (bandoneon), El Negro Gonzales (b), Nestor Astarita (ds), Ricardo Lew (g), El Chino Rossi (perc), Matias Pizarro (p), Finito Bingert, (ts, fl, perc)。

この盤の印象はズバリ「欧州系のモード・ジャズとアルゼンチンタンゴとの融合」。ラテン音楽との融合では表現が緩すぎる。雰囲気を正確に伝えるには「モード・ジャズとアルゼンチンタンゴとの融合」が一番ニュアンスが伝わりやすい。
 

Enrico-ravaquotation-marks

 
米国フュージョンで、ここまであからさまに「アルゼンチンタンゴ」との融合を図ったフュージョン・ジャズ盤は、このラヴァのアルバム以外は見当たらない。ラテン音楽という表現に逃げず、ズバリ「アルゼンチン・タンゴ」との融合にトライしたエンリコ・ラヴァは凄い。

しかも、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズ志向の音作りではなく、あくまで、ストイックで硬派なコンテンポラリー・ジャズ志向の音作りがメインなのは、ラヴァの矜持を感じる。

NY録音では女性ヴォーカルを起用し、ブエノスアイレス録音ではバンドネオンを起用。エキゾチックな雰囲気でラテン・サウンドど真ん中なアルゼンチンタンゴ。ジャンヌリーのスキャットが入る、モーダルなスピリチュアル・ジャズ、そして欧州風なリリカルでクールなジャズロック、アブストラクト&フリー・ジャズな展開まで、このすべてが効果的に融合されている。

ECMレコードの音志向とはちょっと異なる感じのEnrico Rava『Quotation Marks』。欧州モード・ミーツ・アルゼンチンタンゴな内容なので、ECMっぽくないなあ、と思っていたら、この盤、ECMの傍系レーベル「JAPO」(※) からのリリースでした。

※「JAPO」とは、アイヒャーがECMを興す以前に主催していたレーベル。制作ポリシーがECM以前なので、ECMとは雰囲気が全く異なる「こんなアルバムあったんや」レベルのアルバムも多々あります。このエンリコ盤は、JAPOでの録音なので、ECMとはちょっと音志向が異なる。JAPO時代の各タイトルはECMに引き継がれてリリーされている。
 
 

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2024年10月23日 (水曜日)

Wolfgang Dauner『Output』

今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集に「ECMレコーズ」があった。これは「創設者マンフレート・アイヒャーのコンセプトと55年の歴史の概説」と「今聴きたいECMアルバム45選」の2本立ての特集。特に、後半の「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入った。ということで、この45枚のアルバムについて、ブログ記事としてアップしようと思い立った。

Wolfgang Dauner『Output』(写真)。ECM 1006番。1970年9月15日, 10月1日, 「the Tonstudio」での録音。ちなみにパーソネルは、Wolfgang Dauner (p, Ringmodulator, Hohner Electra-Clavinet C), Fred Braceful (perc, vo), Eberhard Weber (b,cello, g)。

カタログ番号が「ECM 1006」なので、ECMレコードがアルバムをリリースし始めて、僅か6枚目の、ECMの初期も初期のアルバムである。実はこのジャケットにビビって、購入をずっと控えてきた「逸品」である(笑)。ジャケットの印象から、電子ノイズ満載の無調の現代音楽の垂れ流しではないのか、という間違った先入観が、さらに購入意欲を削いでいた。
 

Wolfgang-dauneroutput

 
実際に聴いてみると、意外とカッチリまとまった印象の即興演奏集で、電子楽器を積極活用した、しっかりとリズム&ビートに乗った即興演奏。ブレースフルのパーカションとウェーバーのベースが、演奏全体のリズム&ビートをしっかりとキープしているところがこのアルバムの「キモ」の部分。このパーカッションとベースの存在が、この盤の即興演奏を上質なものにしている。

演奏の旋律はダウナーのキーボード類が担っている訳だが、雰囲気としては、電子楽器を活用して、現代音楽風の響きとフレーズで即興演奏をかます、という感じで、フリーにアブストラクトに展開するが、リズム&ビートがしっかりしているので、散漫になったり冗長になったりするところは無い。電気楽器を活用しているが、電気楽器の偶然性を頼ること無く、電気楽器の音の特性をしっかりとコントロールしながらの前衛的演奏に、ダウナーの良質な「センス」を感じる。

いかにも欧州らしい、現代音楽志向の電子楽器を活用した、フリー&アバンギャルドがメインの即興演奏集、と形容できるかと思う。フリー&アバンギャルドがメインとは言いつつ、ジャズロック的な8ビートな旋律展開や、しっかりモーダルな旋律展開もあり、こういう即興演奏的な展開が、この盤を「ジャズ」のジャンルに留めているように思う。意外としっかりとした内容は、初期も初期の作品とはいえ、「さすがECM」である。
 
 

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2024年10月19日 (土曜日)

僕なりの超名盤研究・34

今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや3年。やっと第1巻の終わりである。

ジャズを本格的に聴き始めたのが1978年の春。フュージョン・ジャズの名盤の何枚かと、純ジャズのアルバム、MJQ『Pylamid』、 Herbie Hancock『Maiden Voyage』を聴かせてもらって、フュージョン・ジャズのアルバムも良かったが、特に、純ジャズの2枚については、いたく感動したのを覚えている。

そして、友人の家からの帰り道、久保田高司「モダン・ジャズ・レコード・コレクション」を買い求めて、ジャズ盤コレクションの道に足を踏み入れた。ハービー・ハンコックについては、FMレコパルの記事でその名前は知っていたので、まずはハンコックのアルバムの収集を始めた。

そこで、まず最初に手にしたのが、Herbie Hancockの『V.S.O.P.』。アコ・ハンコックとエレ・ハンコックの2つの側面をLP1枚ずつにまとめた名盤なのだが、僕はこの「アコースティックな純ジャズ」の演奏が実に気に入った。

このアコ・ハンコックのユニットは「V.S.O.P.」=「Very Special Onetime Performance」と命名された。ニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演の折、ハービー・ハンコックがマイルスの黄金クインテットを再現することで、マイルスのカムバックを促す予定が、直前で肝心のマイルスがドタキャン。仕方なく、フレディ・ハバードを迎えて結成したこのV.S.O.P.クインテット。本来一1回きりの結成のはずが、予想外の好評に継続して活動することになる。

V.S.O.P.『Tempest in the Colosseum』(写真)。邦題は『熱狂のコロシアム』。1977年7月23日、東京の田園コロシアムでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Wayne Shorter (ts, ss), Freddie Hubbard (tp), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。伝説の「V.S.O.P.」ユニットである。
 
Vsoptempest-in-the-colosseum  
 
V.S.O.P.名義のアルバムは、他に2枚、V.S.O.P.『The Quintet』(1977年7月録音)、V.S.O.P.『Live Under the Sky』(1979年7月26日、27日録音) があるが、この『Tempest in the Colosseum』の出来が一番良い。USAツアーの後の日本公演だけに、メンバーそれぞれの演奏もこなれて、十分なリハーサルを積んだ状態になっているようで、この日本公演のライヴ録音の内容は秀逸である。

ライヴアルバムとしての編集も良好で、この『Tempest in the Colosseum』が一番ライヴらしい、臨場感溢れる録音〜編集をしている。演奏自体も変に編集することなく、トニー・ウィリアムスの多彩なポリリズムが凄まじい長尺のドラムソロや、ロン・カーターのブヨンブヨンとしているが、高度なアプローチが素晴らしい長尺のベースソロも、しっかり余すことなく収録されているみたいで、ライヴそのものを追体験できる感じの内容が秀逸。

演奏自体も内容は非常に優れていて、この「V.S.O.P.」の演奏が、ノスタルジックな「昔の名前で出ています」風に、1960年代中盤〜後半の演奏をなぞった「懐メロ」な演奏になっていないところが良い。この演奏メンバー5人の強い矜持を感じる。当時として、モードの新しい響きがそこかしこに見え隠れし、この5人のメンバーは、マイルス後も鍛錬怠りなく、確実にモード・ジャズを深化させていたことを物語る。

収録されたどの曲も内容のある良い演奏だが、特にラストのハバード作「Red Clay」が格好良い。ジャズ・ロック風のテーマに対して、インプロビゼーション部になると、メンバー全員が「モード奏法」で襲いかかる。凄い迫力、凄いテンション、そして、印象あるフレーズの連発。

このライヴ盤は、1970年代後半の純ジャズが、どれだけ高度なレベルで維持されていたか、ということが如実に理解できる内容になっている。この「V.S.O.P.」ユニットが切っ掛けとなって、純ジャズが「復古」し始める。

この「V.S.O.P.」ユニットは、純ジャズ復古のムーブメントの「最初の第一歩」となった伝説にユニットである。このユニットの演奏には、現代につながる「新しい」モード・ジャズの要素が散りばめられている。名盤である。
 
 

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2024年10月18日 (金曜日)

僕なりの超名盤研究・33

小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで32枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは2枚。今回はキース・ジャレットの登場。

 Keith Jarrett『The Köln Concert』(写真左)。1975年1月24日、当時の西ドイツ、ケルンの「Opera House」でのライヴ録音。ECMレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p) のみ。そう、このライヴ盤は、キースのソロ・ピアノの記録であり、キースの生涯、最大のヒット・アルバムである(LP2枚組のボリュームにも関わらず、である)。

実は、この「ケルン・コンサート」のキースの弾き回しは、他のキースのソロ・ピアノの弾き回しと比べて、ちょっと異質である。「ケルン・コンサート」のパフォーマンスだけが、特別なニュアンスとテクニックで弾き回されている。明らかに、他のキースのソロ・ピアノとは違う。というか、この「ケルン・コンサート」だけが突出している。

キースの耽美的でリリカル、クラシック志向な流麗なフレーズの使用は他にもあるが、ここまで、徹底して、耽美的でリリカルなフレーズとクラシック志向な流麗なフレーズを多用したソロ・パフォーマンスは他に無い。何か、特別な事情があったのではないか、と常々思っていた。

このライヴ盤の研究が進み、他のソロ・ピアノとの比較が進むにつれ、この「ケルン・コンサート」での、ある事件が、この「特別なニュアンスとテクニックで弾き回された」パフォーマンスを生み出した、と解釈されるようになった。その事件とは、Wikipediaから要約させていただくと以下の様になる。

”ライヴに使用するピアノは、当初、キースの要望通り「ベーゼンドルファー290インペリアルコンサートグランドピアノ」を用意するはずだったのが、スタッフの混乱により、ベーゼンドルファーのピアノ(はるかに小さなベビーグランドピアノ)にすり替わってしまった。コンサート直前に間違いに気がついたが、交換にかける時間的余裕も無く、そもそも、外は悪天候で交換用のピアノを搬入することは叶わなかった。しかも、この小型ピアノは調律が満足ではなく、高音域はチープで薄く、低音域は弱く、ペダルは適切に機能しなかった。キースは、この劣悪な状態の小型ピアノを弾かざるを得ない状況に陥った”
 

Keith-jarrettthe-koln-concert

 
しかし、キースはこの劣悪な状態の小型ピアノでソロ・ピアノを敢行すると決意した後、途方もないテクニックと創造力を駆使して、素晴らしいパフォーマンスを実現する。その内容は、

”ジャレットは、演奏中にオスティナートや左手のリズムの揺れ方を使ってベース音を強くした効果を出し、キーボードの中央部分での演奏に集中した。アイヒャーは後に「おそらくジャレットがそのように演奏したのは、良いピアノではなかったからだろう。その音に惚れ込むことができなかったので、最大限に生かす別の方法を見つけたのだろう」と語っている” (Wikipediaから引用)

キースは、この劣悪な状態の小型ピアノを前提に、最高のパフォーマンスを発揮するにはどうしたら良いか、を考え、それを実現した、ということ。いわゆる「弘法筆を選ばず」である。キースが、この劣悪な状態の小型ピアノを使って、最高のパフォーマンスを実現したら、この「ケルン・コンサート」の音になったということで、その結果「特別なニュアンスとテクニックで弾き回された」パフォーマンスを生み出したと思われる。

加えて、このコンサートでのキースの体調は劣悪で、睡眠不足と背中の痛み、コンサート会場にギリギリに着いたので、食事のろくにしていなかった。そんな体調で、劣悪な状態の小型ピアノに向かって、途方もないテクニックと創造力を駆使して、最高のパフォーマンスを披露する。恐らく、キースは「ゾーンに入った」状態にあったのではなかろうか。とにかく紡ぎ出されるフレーズ、ニュアンスは、極上のものばかりである。キースも時々「歓喜の雄叫び、歓喜の唸り声」をあげている。

つまり、この「ケルン・コンサート」の特殊性は、劣悪な状態の小型ピアノと劣悪なキースの体調を前提にした、キースの途方もないテクニックと創造力の賜物、だと言える。当然、キースのソロ・ピアノの中でも、唯一無二、一期一会のパフォーマンスであり、奇跡のパフォーマンスの記録である。

「ケルン・コンサート」のパフォーマンスだけが、特別なニュアンスとテクニックで弾き回されているので、他のキースのソロ・ピアノ盤を聴くと、違和感を感じジャズ者の方々が多くいる。それは当然で、「ケルン・コンサート」が生み出された前提である「劣悪な状態の小型ピアノと劣悪なキースの体調」は、他のソロ・ピアノのパフォーマンスには無いからだ。

しかし、この「ケルン・コンサート」を聴いて判るのは、キース・ジャレットが、途方もないテクニックと創造力を持ち合わせた、不世出のジャズ・ピアニストだった、という事実である。ピアノという楽器を知り尽くし、そのピアノという楽器の能力を最大限に引き出し、自らイメージするフレーズを忠実に音に表現できる。キースはそんな「レジェンド級」のジャズ・ピアニストである。
 
 

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2024年10月17日 (木曜日)

僕なりの超名盤研究・32

この歳になると、なかなか「超名盤」について聴き直す機会が無いだけに、楽しみながらの聴き直しになっている。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで31枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは3枚。

Chick Corea『Return to Forever』(写真左)。1972年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (el-p), Joe Farrell (fl, ss), Stan Clarke (b), Airto Moreira (ds, perc), Flora Purim (vo, perc)。チック・コリアのリーダーの伝説的ジャズ・バンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー」のデビュー盤である。

マイルスのもとで、フェンダー・ローズをギュインギュイン言わせて、限りなくフリーに近いモーダルなフレーズをブイブイ言わせていたチック。マイルスの下を辞してからは、限りなくフリーに近いモードから、完全フリー&アブストラクトに走ったチック。

そんなチックが、ECMで録音したソロ・ピアノ・アルバムで、完全に音志向を変換。ソロ・ピアノで表現した、リリカルでメロディアスなユートピア志向な音を、バンド演奏に置き換えたのがこのアルバムである。

録音時点でのジャズの「演奏方式」や「演奏のトレンド」が的確に反映されている。モーダルなフレーズの嵐、フリーでアブストラクトな展開、スピリチュアル&ミステリアスな音の響き、エレクトリックな音作り、ロック・ビートの採用。
 

Return_to_forever_1

 
そして、従来からのジャズ演奏の定番である、バンド・メンバー全員による自由度の高いインタープレイ、よくアレンジされたユニゾン&ハーモニー、などなど、録音時点の、また、それまでのジャズの「良いところ」がしっかり反映されている。

そして、演奏全体を覆う、チック・コリアならではの、チック・コリア・オリジナルの音志向と個性「リリカルでメロディアスなユートピア・サウンド」。

この盤にはチックのサウンドと個性だけが反映されていて、このチックならではの音世界は、他のミュージシャンのアルバムには存在しない。そんな「唯一無二」な、チックだけが創造できるサウンドがこのアルバムに詰まっている。それが凄い。それがこのアルバムの凄いところ。この盤にはチックの音楽性の全てが反映されている。

加えて、演奏内容については、当時、マイルスが牽引していた「クロスオーバーなエレ・ジャズ」の完成形と言い切って良いくらいの、質の高い、内容の濃い、テクニックが伴い演奏全体が理路整然とした、エレクトリックなジャズ演奏の「極み」なパフォーマンスがこの盤に詰まっている。

フュージョン・ブームの先駆けとなった記念碑的名盤、と良く言われるが、それは違うだろう。この盤は、あくまで、マイルスやコルトレーンが追求してきたモダン・ジャズの、純ジャズの発展形であり、究極形の一つだと僕は思う。

この盤には、後のクロスオーバー&フュージョン・ジャズに聴かれる、聴衆にアピールするポップ&ファンクな要素は微塵も無い。それまでのモダン・ジャズが進化の過程で、新たに自家薬籠中のものとした「音の要素」を、理路整然としたコンテンポラリーなジャズとして昇華させた「最高の成果の一つ」である。
 
 

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2024年10月16日 (水曜日)

古澤良治郎 ”キジムナ” を聴く

まだまだ夏日が顔を出す、暖かいというか、蒸し暑い日が続く10月だが、真夏日以上という「酷暑」は去ったので、様々な類のジャズを聴く時間が増えた。特に、この10月は、何故だか判らないが、和フュージョンと合わせて、和ジャズの名盤・好盤を探索したり、聴き直したり。特に、学生時代から、若き社会人時代に聴きまくった盤を聴くことが多い。

古澤良治郎『キジムナ』(写真左)。1979年10月16~20日、東京、日本コロムビア第1スタジオでの録音。BETTER DAYSレーベルからのリリース。

ちなみにパーソネルは、古澤良治郎 (ds), 高橋知己 (ts, ss)、大口純一郎 (p), 廣木光一(g), 望月英明 (b) が、当時のレギュラー・クインテット。ここに、向井滋春 (tb), ペッカー (perc) らがゲスト参加している。

演奏全体の雰囲気は、メインストリーム志向のフュージョン・テイストな純ジャズ。もともと、リーダーでドラマーの古澤が、ジャンルの枠を超えて活動した、幅広い音楽センスの持ち主だったので、あまり、純ジャズとか、フュージョンとかに拘らず、当時、やりたい雰囲気のジャズをレギュラー・クインテットをメインに演奏した、という感じの「古澤印のコンテンポラリー・ジャズ」といったテイストだろうか。
 

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冒頭のボッサ・リズムに乗った「エミ(あなたへ)」の洗練された演奏が心地良い。洗練された古澤のリズム&ビートに乗って、高橋のサックスがいい音出して、大口のシンセが官能的フレーズを連発し、廣木のエレギのストロークがボッサなリズム&ビートを増幅する。この冒頭の1曲を聴いただけで、この盤は「隅におけない」と思わず構える。

2曲目のタイトル曲「キジムナ」は、望月の旋律を担う流麗なベース・ソロが素晴らしく、大口のリリカルのアコピが、静的なスピリチュアルな雰囲気を醸し出し、そこに、高橋のテナーとゲストの向井滋春のトロンボーンが、エモーショナルなソロを展開する。そんなフロントのパフォーマンスをガッチリ支える古澤のドラムは見事。

3曲目の「青い種族トゥアレグ」は、タイトでエモーショナルな古澤のドラムが大活躍する、「和製スピリチュアル・ジャズ」な名演。続く「ビーバー」は、和ジャズ独特の「乾いたファンクネス」漂う、ダンサフルでクール&ファンキーなグルーヴ満載のジャズ・ファンク。そして、ラストの「暖かな午後」は、コンテンポラリーで高速&爽快なカリプソ・チューン。

フュージョン全盛期における、我が国のコンテンポラリー・ジャズの名盤だと思います。久しぶりに聴き直したのですが、やっぱり「良い」。リリース当時、カセットにダビングして、折につけ、聴き流していたのを思い出しました。
 
 

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2024年10月15日 (火曜日)

ゼロ戦『アスファルト』を語る

フュージョン・ジャズ時代、そのアルバムの成り立ちが変わっている例として、高中正義『オン・ギター』をご紹介した(2024年10月10日 のブログ記事・左をクリック)。この『オン・ギター』は、ギター教則本の付属レコードとして発表されたものだった。

ゼロ戦『アスファルト』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、大谷和夫 (key), 長岡道夫 (b), 鈴木正夫 (ds), 佐野光利 (g), 菜花敦 (perc) 花野裕子 (vo)。バンド名が「ゼロ戦」。ユニークなバンド名なので、今でも記憶にある。なんせ、この「ゼロ戦」というバンド、そもそもが、オーディオ・システム・チェック・レコード向けに組まれた特殊プロジェクトである。

帯紙のキャッチが「録音、演奏技術の粋を集めた音高質を誇るアルバムついに完成 !!」。アルバムの頭に「オーディオ・コンポ・チェック・シリーズ」とある。そう、このアルバム、「いしだかつのり」を中心としたプロジェクト「ゼロ戦」の '76オーディオ・コンポ・チェック・レコード第一弾である。

この「ゼロ戦」のファースト盤は、友人が持っていた。「オーディオ・コンポ・チェック・シリーズ」だから。お前に貸すから、自前のオーディオ・システムをチェックしろ、と言う。学生時代、貧乏だったので、必要最低限のシステム・コンポだったが、この盤をかけてみたら良い音がした。そのまま、レコードを返すのは惜しいので、上等なカセットにダビングして返した。よって、この盤、フュージョン全盛期にリアルタイムで聴いている。
 

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オーディオ・システムのチェック用のアルバムとはいえ、内容は一級品。今回、CDで初めて復刻されたが、復刻のきっかけが「いわゆるクラブDJたちによって再評価が進んだ、レア・グルーヴ系フュージョン作品」の一部だったこと。確かに、この盤の音は、1976年当時に流行っていた、クロスオーバー&フュージョンとはちょっと違う、グルーヴ感豊かな、後のレア・グルーヴ志向の音をしていたように思う。

曲の冒頭から、タイトなドラム・ブレイク炸裂のジャズ・ファンク「サーキット」、叩きまくるドラム、ブンブン・ベースのラインが格好良いジャズ・ファンク「"スクランブル」、ミッド・テンポが心地よいフュージョン・チューン「スパニッシュ・フライ」、オーディオ・チェック用であろう、中盤のパーカッション・ブレイクが爽快な「ハンド・スラップ」、途中リズムがラテン調に変わる変則ラテン・フュージョンの「ペーパー・ドライバー」などなど。

サウンド的に、当時の和クロスオーバー&フュージョンとは一線を画した、ソフト&メロウとは全く無縁の、グルーヴ感溢れる強烈なサウンド。オーディオ・チェック用であろう、タイトで強靭なリズム&ビートが飛んだり跳ねたりのジャズ・ファンクがメインの音作りだが、ファンクネスが希薄な、乾いた切れ味の良いオフビートが、いかにも「和フュージョン」らしい。

「オーディオ・コンポ・チェック・レコード」ではあるが、単体のアルバムとして、十分に評価できる「和フュージョン」の好盤です。2017年にCDリイシューされた時はビックリしました。そして、今では、音楽のサブスク・サイトにも音源アップされているみたいで、良い時代になったもんです(笑)。
 
 

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2024年10月14日 (月曜日)

阿川の ”フュージョン・ボーカル”

フュージョン・ジャズの時代、インスト中心のアルバム作りが主流で、ボーカルがメインのアルバムは少なかった。ボーカル入りのアルバムはあったが、どちらかと言えば、ファンクネスな要素の彩りが欲しい時の「ソウル、R&B志向のボーカル」で、フュージョン・ジャズとして、「ボーカリストの歌を聴かせる」盤は希少だった。

阿川泰子『Lady September』(写真左)。1985年6~7月、東京での録音。ちなみにパーソネルは、バック・バンドとして、当時の阿川泰子のレギュラーバンドだった「松木恒秀グループ」、ブラジルから迎えたグループ「カメラータ・カリオカ」、吉田和雄率いる「スピック&スパン」が分担して担当している。

ボーカルはもちろん、阿川泰子。アレンジは野力奏一、吉田和雄、小林修が担当。このアルバムのメイン・コンセプトは「ノスタルジックなボサノバ」をメインとした、ブラジリアン・フュージョン。

バック・バンドの演奏は、フュージョン・ジャズど真ん中な演奏で、完璧フュージョンなバック・バンドのサポートを得て、阿川泰子が気持ちよさそうに、ボサノバ曲を唄い上げていく。

耽美的で流麗なシンセの前奏が、いかにも1980年代半ばの「フュージョン・ジャズ」という雰囲気がとても良い、アコギやベースを従えての、冒頭のイヴァン・リンスの「Velas(September)」が、このアルバム全体の雰囲気を代表している。
 

Lady-september

 
2曲目「When You Smiled At Me」は、8ビートな爽快感溢れるボサノバ&サンバなグルーヴが心地良いアップ系だが、ファンクネスはほとんど感じられない、それでいて、小気味の良いオフビートが、演奏全体の疾走感をさらに増幅させる。典型的な「和フュージョン」な音作りで耳に馴染む。

3曲目の「Voo Doo」は、どこかディスコ・フュージョンっぽいアレンジがユニーク。4曲目「If You Never Come To Me」は、スローなボサノバ曲で、アコギの伴奏が。アコギのソロが沁みる。8曲目の「I’m Waiting」でも、松木恒秀の印象的なアコギ・ソロが聴ける。この盤の伴奏、アコギの音色が実に印象的。

フュージョンど真ん中のバック・バンドの演奏だが、テクニックに優れ、内容は濃い。伴奏だけに耳を傾けても、十分にその伴奏テクニックを堪能できる優れもの。そこに、ライトな正統派ボーカルの阿川泰子がしっとりと力強く唄い上げていく。聴き応え良好。収録されたどの曲でも、阿川のボーカルが映えに映える。アレンジ担当の面々の面目躍如であろう。

阿川のライトなジャズ・ボーカルの質、バックバンドの演奏の質、そして、その二つを効果的に結びつけるアレンジの質。この「3つの質」がバッチリ揃った、フュージョン志向の「ボーカリストの歌を聴かせる」盤として、優秀なアルバムだと僕は評価してます。

バブル全盛時代にリリースされた、美人シンガーの「フュージョン・ボーカル」盤なので、何かと「色眼鏡」で見られるが、内容はしっかりとしている。ながらジャズに最適かな。いやいや、対峙してジックリ聴いても、聴き応えのある好盤です。
 
 

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2024年10月13日 (日曜日)

野呂一生のファースト・ソロ盤

我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。意外と超ストイックなバンドで、結成時(1976年)から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの第1期の活動の中で、10年以上、常にカシオペアはグループとしての活動を優先、ソロ活動は一切御法度という厳しい規律の上でバンド運営されていた。

1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を容認したが、そのソロ活動も各自のソロアルバムを制作するだけに留める厳しいもの。しかし、その最初のソロ活動の中で、当時の我が国のフュージョン事情をよく反映させた、優れたソロ・アルバムが各メンバーからリリースされたのだから「さあ大変」(笑)。

野呂一生『Sweet Sphere』(写真左)。1985年5月のリリース。カシオペアのギタリスト野呂一生のファースト・ソロ・アルバム。パトリース・ラッシェンをはじめ、ネイザン・イースト、ジョン・ロビンソン、ポウリーニョ・ダ・コスタ、シーウインド・ホーンズといった一流ミュージシャンが参加したLA録音作。

1985年3月、野呂はロスの「スタジオ・サウンド」でレコーディングを開始。コーディネーターとして松居和が全面協力。またエンジニアは『EYES OF THE MIND』(1980年)でエンジニアを務めたピーター・チェイキンが担当。アルバムの音全体の「キメ」については、野呂とチェイキンのコラボでバッチリ決まっている。
 
Sweet-sphere
 
レコーディング方式としては、野呂が独りで作ってきた多重録音のデモ・テープとスコア譜を基に、演奏については、参加ミュージシャンの技量に任せる方法をとっている。これが正解だったみたいで、アルバム全体の雰囲気が、ハリのある爽快感溢れる西海岸フュージョン志向の「和フュージョン」なサウンドに仕上がっている。これが実に心地良い。

「和フュージョン」と言っても、野呂が所属するカシオペア・サウンドを前提としているのでは無く、あくまで、野呂オリジナルの「少しラフで、スムースで、爽快感&疾走感溢れる」L.A.テイストな「和フュージョン」なのが良い。それでないと、わざわざ、LAまで出向いて、ソロ・アルバムを制作する意味が無い。

演奏全体の雰囲気は、カシオペアの時の様に、アドリブ・ソロを弾きまくる展開はかなり少なく、バンド演奏全体のアンサンブル重視なのも、ソロ・アルバムならではの面白い変化。米国フュージョンっぽい、ボーカル入り曲や女性コーラスをあしらった曲もあって、1980年代前半の米国フュージョン・シーンの音をダイレクトに反映している。

アルバムの内容は、極上の「1980年代前半のフュージョン・ジャズ」。ファンクネスが希薄で乾いているところが、いかにも「和フュージョン」のテイストで、このアルバムを通して聴くと、1980年代前半の米国フュージョン盤そのものとは思えない。しっかりと、野呂オリジナルの「和フュージョン」のテイストが織り込まれていて、これが実に効いている。1980年代の「和フュージョン」の傑作の一枚でしょう。好盤です。
 
 
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2024年10月12日 (土曜日)

「Jay&Kai」のColumbia好盤

ジャズの演奏で大切なものは色々あるが、リーダーのフロント楽器の特性に応じた「アレンジ」は特に重要な要素。そして、その「アレンジ」に適したリズム・セクションの手配。この「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合ったセッションは優れた結果になる。

J.J. Johnson and Kai Winding『Jay & Kai + 6: The Jay and Kai Trombone Octet』(写真左)。1956年4月の録音。ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson, Kai Winding (tb, arr), Hank Jones (p), Milt Hinton, Ray Brown (b), Osie Johnson (ds), Candido Camero (conga, bongo) and The Six Trombonists (Urbie Green, Bob Alexander, Eddie Bert, Jimmy Cleveland (tb), Tom Mitchell, Bart Varsalona (b-tb))。

3日前のブログで、「トロンボーンはスライドを出し入れして音程を出すので、とにかく演奏するのが難しい楽器。まず、カイのテクニックは抜群なので、その最低要件は満たしているが、そんなハイ・テクニックを持ってしても、その曲毎に、スタートするキーや、スライド幅を出来るだけ少なくする様なアレンジが非常に重要になる。」と書いた。

この盤は「Jay & Kai」のColumbiaリリースの好盤。楽曲のアレンジを、トロンボーンの名手二人「Jay & Kai」自らが担当している。これって「無敵」に近いことで、トロンボーンの演奏を熟知した名手二人が、それぞれのトロンボーンの特性を踏まえて、それぞれのトロンボーンが映えるアレンジを施すのだ。確かに、この盤のアレンジはバッチリはまっていて、「Jay & Kai」のトロンボーンが映えに映えている。
 

Jj-johnson-and-kai-windingjay-kai-6-the-

 
アレンジの「キモ」は、The Six Trombonistsの存在。この6人のトロンボーンが効果的にバッキングし、「Jay & Kai」のトロンボーンを前面に押し出し、引き立てる。このトロンボーンのユニゾン&ハーモニーのアレンジも「Jay & Kai」が担当している様で、さすが、トロンボーンをどうやったら、トロンボーンで引き立てることが出来るか、を熟知している名手二人のアレンジである。

そして、もう一つの「キモ」である「適したリズム・セクション」については、小粋で味のある伴奏上手のピアニスト、ハンク・ジョーンズのピアノが要所要所で効いている。

ハンクの趣味の良い流麗な、バップなバッキングのリズム&ビートの躍動感が、「Jay & Kai」のトロンボーンを支え、鼓舞する。「Jay & Kai」のトロンボーンの特性を見抜いた、見事なバッキング。ヒントンとブラウンのベースは堅実、ドラムとコンガ、ボンゴのリズム隊も堅実に、躍動感溢れるリズム&ビートを供給する。

トロンボーンがフロントを担うセッションにおいて重要なファクターである「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合った、「Jay & Kai」のセッションの記録。秋のこの季節にピッタリの、爽快でブリリアントなトロンボーンが主役の好盤です。
 
 
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2024年10月11日 (金曜日)

高中の名盤『Brasilian Skies』

ここヴァーチャル音楽喫茶「松和」では、「夏だ、海だ、高中だ」ではなく、「秋だ、爽快だ、高中だ」というキャッチが蔓延している(笑)。とにかく、この2〜3日前から、ググッと涼しくなった関東地方。涼しくなって、空気が爽快になって、高中正義のアルバムの聞き直しの続きである。

高中正義『Brasilian Skies』(写真左)。1978年のリリース。リオデジャネイロの「PolyGram Studios」と、ロスの「Westlake Studios」での録音。さすが、フュージョン・ジャズ全盛時代、エレギのインスト盤は受けに受け、セールスも好調だったと聞く。この高中のアルバムもその例に漏れず、ブラジルと米国での「海外録音」。

パーソネルについては、曲毎に様々なミュージシャンを招聘していて、のべ人数にすると30名以上にあるので、ここでは割愛する。主だったところでは、日本人ミュージッシャンとして、坂本龍一、高橋ゲタ夫、浜口茂外也の名前が目を引く。後は、米国西海岸系とブラジル系のフュージョンのミュージシャンで固められている。
 

Brasilian-skies  

 
我が国を代表するスーパー・ギタリスト高中正義の4枚目のソロアルバム。タイトルを見ると、聴く前は、ブラジリアン・ミュージック志向のギター・フュージョンで固められていると思っていたが、意外と様々な傾向の演奏がごった煮で入っている。

初めてブラジルで本場のミュージシャンとプレイした曲たちも素晴らしいが、面白いのは、サンバ・アレンジを施された「スターウォーズのテーマ」や、ジャズの有名なスタンダード曲「I Remenber Clifford(クリフォードの思い出)」、高中オリジナルのディスコ曲「DISCO "B"」、高中節満載のしっとりした「伊豆甘夏納豆売り」など、とにかくごった煮(笑)。

しかし、ごった煮ではあるが、高中のギターの音は明らかに「高中の音」で、ごった煮の収録曲の曲想の中で、この高中のギターの音で、しっかり筋を通していて、この盤は意外と一貫性があって、高中のギターの音だけを愛でることができる様にプロデュースされている。高中正義の初期の名盤の一枚だろう。聴き直してみて、この高中のギターの「爽快感」が堪らない。
 
 

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2024年10月10日 (木曜日)

異色の 高中正義 「オン・ギター」

この2〜3日、関東地方では気温がグッと下がって、昨日などは、11月中旬の陽気になって、ちょっと寒いくらい。慌てて、合物の服を出して、夏物のほとんどを衣替えである。これだけ涼しくなると、音楽を聴くのにも良い環境になって、夏には聴くのを憚られたハードなジャズやロックなども聴くことが出来る。

高中正義『オン・ギター』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), 石川清澄 (key), 細野晴臣, 高橋ゲタ夫 (b), 高橋ユキヒロ, Robert Bril (ds), ペッカー. 浜口茂外也 (perc)。イエロー・マジック・オーケストラから、細野晴臣と高橋ユキヒロが参加しているのが目を引く。

「夏だ、海だ、高中だ」と言われるくらい、高中のインスト作品って「夏向き」だと思うんだが、その演奏が持つ「切れ味の良い爽快感」がゆえ、僕は秋の真っ只中に、高中作品を聴くことが多い。今年の秋も、涼しくなってきたなあ、と思った瞬間から、「高中が聴きたい」となって、このアルバムをチョイスした。

このアルバム、ちょっとその成り立ちが変わっていて、高中正義のオリジナル作品として発表されたわけではなく、教則本の付属レコードとして発表されたもの。ちなみに、この「オン・ギター」は高中正義、「オン・・ベース」が後藤次利、「オン・ドラムス」が つのだひろ、だった。実は、僕はこの教則本の付属レコード・シリーズをリアルタイムで体験している(笑)。

教則本を読みつつ、この付属アルバムの演奏テクニックを聴いて、自分でも演奏してみる、ということだが、この『オン・ギター』に収録されている高中のギター・テクニックは、その水準が抜群に高くて、その様に弾きたくても弾けない(笑)。この教則本って、ギター初心者ではなく、ギター上級者向けだったんやな、と改めて思った次第。
 

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実は、この教則本の付属アルバム、単体のオリジナル作品としても、十分に楽しめる内容になっている。収録曲は以下全8曲。高中オリジナルは1曲のみ。あとは、ロック&ポップスの名曲のカヴァー。

1.「Breezin'」~ ジョージ・ベンソン
2.「Blue Curaçaõ」~ サディスティックス
3.「Just The Way You Are」~ ビリー・ジョエル
4.「Mambo Jambo」~ Pérez Prado
5.「Samba Pati」~ サンタナ
6.「Rainbow」~ オリジナル
7.「That's The Way Of The World」~ EW&F
8.「We're All Alone」~ ボズ・スギャッグス

冒頭「Breezin'」から、もう悶絶もの。高中のギターが素敵に爽快に響く。流麗でキャッチャーなフレーズ。3曲目の「Just The Way You Are(素顔のままで)」は原曲は印象的なバラード曲だが、ここでは、ファンキー・シャッフルなアレンジでカヴァる。原曲がテーマの旋律がしっかりしているので、ファンキーなアレンジにも耐えるのだから面白い。

エンディングの8曲目、ボズ・スキャッグスの名唱で誉高い「We're All Alone」。これは名演。高中の「泣きのギター」全開。思わすしみじみしてしまうくらいの「説得力」。この演奏こそ、秋の真っ只中で聴く「高中ギター」である。

ちょっと、その成り立ちが変わっているアルバムなので、ジャケ写とともに、ちょっと触手が伸びにくいのですが、内容は一級品。躊躇わず手にして良い秀作です。音楽のサブスクサイトにもアップされているみたいなので、今では意外と気軽に聴くことが出来る環境にあるみたいですね。
 
 

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2024年10月 9日 (水曜日)

「Kai」のトロンボーン名盤です

「Jay&Kai」のアルバムを聴いていて、改めて「トロンボーンの音色ってええなあ」と思った。もちろん、トロンボーンを吹く上でのテクニックが優れていることが前提なんだが...。

テクニックに優れたトロンボーンの音色って、ブリリアントで、エモーショナルで、ニュアンス豊かで、柔らかで優しい。そんなトロンボーンの音色が好きで、今でも時々、ジャズ・トロンボーンの好盤を引っ張り出してきては聴き直している。

Kai Winding『The Incredible Kai Winding Trombones』(写真左)。1960年11月, 12月の録音。「Jay&Kai」の「Kai」=カイ・ウィンディングのリーダー作。ジャズ・トロンボーンが大活躍。ジャズ・トロンボーンの名盤の一枚。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Kai Winding (tb), Jimmy Knepper, Johnny Messner, Ephie Resnick (tb-support), Paul Faulise, Dick Lieb, Tony Studd (b-tb), Bill Evans, Ross Tompkins (p), Ray Starling (mellophone), Bob Cranshaw, Ron Carter (b), Al Beldini, Sticks Evans (ds), Olatunji (congas)。

トロンボーンはスライドを出し入れして音程を出すので、とにかく演奏するのが難しい楽器。まず、カイのテクニックは抜群なので、その最低要件は満たしているが、そんなハイ・テクニックを持ってしても、その曲毎に、スタートするキーや、スライド幅を出来るだけ少なくする様なアレンジが非常に重要になる。
 

The-incredible-kai-winding-trombones

 
そして、トロンボーンの音の基本キーが低めなので、単独でのソロはインパクトが弱くなる懸念があって、サポートするトロンボーンやベース・トロンボーンを導入して、ユニゾン&ハーモニーの伴奏をアレンジして、フロントのトロンボーンのフレーズを引き立たせる工夫が重要になる。

加えて、トロンボーンの音色は「柔らかで優しい」ので、リズム&ビートがしっかりとしていないと、その「柔らかで優しい」音色のフレーズが冗長に流れてしまうきらいがある。そこで、伴奏上手のしっかりとしたリズム・セクションがバックに配したアレンジにすると、演奏全体がグッと締まる。

このトロンボーンがメインの演奏の「キモ」となる3つのアレンジのポイントを、この盤はしっかり押さえている。故に、カイ・ウィンディングのトロンボーンが圧倒的に引き立ち、メインのフロント・トロンボーンの音色とフレーズだけが印象に残る内容になっている。

そんな引き立った印象的なトロンボーンが、冒頭の「Speak Low」から「Lil Darlin」以降、有名スタンダード曲を「唄い上げて」いく。トロンボーンという楽器の「良いところ」がギッシリ詰まった、カイ・ウィンディングの名盤である。
 
 

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2024年10月 8日 (火曜日)

A&Mでの ”Jey & Kai” の復活

「A&Mレコード」が牽引役を担ったのが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。そのカラクリは「聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合」と考えると、A&Mの諸作は実に興味深く聴くことが出来る。

J. J. Johnson & Kai Winding『J&K: Stonebone』(写真左)。1969年9月の録音。1970年、日本限定のリリース。ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson, Kai Winding (tb), Herbie Hancock, Bob James, Ross Tompkins (key), George Benson (g), Ron Carter (b), Grady Tate (ds)。すべてのA&M / CTIリリースの中で最も希少な作品。

1950年代に活躍した、2人のトロンボーン・ユニット「Jey & Kai」を、約20年の時を経て、A&Mレコードのクリード・テイラーが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」にて復活させた、エレクトリックなソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク。

ルディ・スティーブンソンの「Dontcha Hear Me Callin' To Ya?」のエレ・ファンクなカヴァー。イージーリスニングなエレ・ジャズ風にアレンジされた、ジョー・ザヴィヌルの典型的なフュージョン曲「Recollections」。そして、ジョンソン作の魅力的な2曲「Musing」と「Mojo」の全4曲。
 

J-j-johnson-kai-windingjk-stonebone

 
聴き易さと判り易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合の中で、収録された曲の全てに、トロンボーン・ユニット「Jey & Kai」のトロンボーンの響きと音色が映える、素敵なアレンジが施されている。 バックの演奏トーンは、エレクトリックがメインではあるが、旧来のハードバップな8ビートを採用していて、基本的に耳に馴染む。

電子キーボードは「ハンコック」がメイン(「Recollections」ではボブ・ジェームスとロス・トンプキンスが加わる)。ファンキーなフレーズを弾き始めている様子がよく判る。ギター参加の若き日のジョージ・ベンソンが、ロックっぽいジャジーなフレーズを弾きまくっている。ロン・カーターのベース、グラディ・テイトのドラムのリズム隊は、エレ・ファンクな8ビートに難なく対応、エモーショナルでファンキーなリズム&ビートを叩き出している。

ジェイジェイとカイのトロンボーンはファンキー。肉声のボーカルの如く、トロンボーンを吹き上げる。ブリリアントでエッジが丸い、柔らかだが芯の入った音色。そう、ジェイジェイとカイのトロンボーンは、ロックやポップスのボーカルの様に、トロンボーンを響かせている。

明らかに、ジェイジェイとカイのトロンボーンのフレーズは、ロック&ポップスの様に、シンプルで分かり易いキャッチャーなフレーズになっている。そして、エレピ・ベース・ドラムのリズム&ビートが、従来のジャズ風の8ビートでは無く、ロック&ポップス風の8ビートなリズム&ビートになっている。

A&Mレコードの音作りの「キモ」である、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合、がとてもよく判る優秀盤です。1970年の初出以来、CDやストリーミングでの発売もなかったというレアな作品でしたが、今では、音楽のサブスク・サイトに音源がアップされていて、気軽に聴くことが出来る様になりました。
 
 

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2024年10月 7日 (月曜日)

60年代後半の「新しいジャズ」

1960年代半ば以降、ビートルズをはじめとするロック・ミュージックの台頭によって、ジャズのシェアは下降線を辿り始めた。一般聴衆は、聴き易く分かり易く適度な刺激のある「ロック&ポップス」を好んで聴くようになる。ジャズは「古い時代の音楽」として、その人気は徐々に衰え始めていた。

一方、ジャズは多様化の中で、ハードバップから派生した大衆志向なファンキー&ソウル・ジャズ、そして、ハードバップの反動から派生した難解なフリー・ジャズ、と両極端な深化を遂げつつあった。が、ファンキー&ソウル・ジャズは、ハードバップを基本としている為、8ビートを採用しても、全体のリズム&ビート自体が、ロック&ポップスと比べて「古い」。ましてや、フリー・ジャズは聴き手を選び、その聴き手は少数だった。

ジャズ界の一部は、これではいかん、と「新しいジャズ」の追求を始める。その一つが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合を前提とした「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」である。その牽引役を担ったのが「A&Mレコード」。

Soul Flutes『Trust In Me』(写真左)。1968年の作品。A&Mレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Herbie Mann, Hubert Laws (fl), ”Soul Flutes Ensemble & Piccolo” George Marge, Joel Kaye, Romeo Penque, Stan Webb (fl), Herbie Hancock (p, org,harpsichord), Paul Griffin (org), Bucky Pizzarelli, Eric Gale (g), Henry Watts (vib, marimba), Eric Gale, Herbie Hancock (kalimba), Ron Carter (b), Grady Tate (ds), Ray Barretto (perc), Don Sebesky (arr), Creed Taylor (prod)。プロデュースは「クリード・テイラー」。
 
Soul-flutestrust-in-me

 
おそらく、ジャズ・フルートの名手であるハービー・マンが、当時アトランティックと契約していた為、プロデューサーのクリード・テイラーは、ジャケットとライナーからマンの名前を完全に省き、ハービー・マンとヒューバート・ロウズ、この二人のフルートの名手と「Soul Flutes Ensemble & Piccolo」の4人を「Soul Flutes」という名義で、この『Trust In Me』をリリースしている。つまり、実質上のリーダーは「ハービー・マン」。

内容はグループ名の通り、フルートがメインの「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。シンプルでファンキーなフルートのアンサンブルが心地良い響き。マンとロウズのソウルフルなフルートの流麗な吹き回しが印象的。ドン・セベスキーのアレンジが実に効果的。ユルユルの心地良い響きが満載の、分かり易く聴き心地の良い、どこか官能的な「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。

哀愁感溢れるメロウなボサノバ曲「Bachianas Brasileiras」、マンとロウズが絶妙なユニゾン&ハーモニーを奏でる「Cigarettes & Coffee」など、南国を想起させる、流麗で官能的なアレンジ。S&Gのフォーク・ポップス「Scarborough Fair」、ハリー・ベラフォンテの「Day-O(バナナ・ボート)」など、当時流行のポップス曲も、優れたアレンジで、洒落て趣味の良いカヴァー演奏に仕立て上げられている。

旧来のハードバップ・ジャズとは、完全に一線を画した「新しいジャズ」の響き。こうやって、振り返って聴き直すと、このクリード・テイラーが目指した、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」は、それまでのジャズとは全く異なるものであることが判る。ジャズのマナーに則ったインストがメインの「新しいジャズ」。

聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合。それがこの「新しいジャズ」。これが、後のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの興隆に繋がっていく。
 
 

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2024年10月 6日 (日曜日)

ブラウニーのジャム・セッション

ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』と『Brown and Roach Incorporated』の直後、同一日、同一メンバーでのジャム・セッションの『Clifford Brown All Stars』と『Best Coast Jazz』は、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)にとって、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演の録音月間」の成果であった。

Clifford Brown『Jam Session』(写真)。1954年8月14日、ロスでのライヴ録音。1954年のリリース。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown, Maynard Ferguson, Clark Terry (tp), Herb Geller (as, tracks 1, 3 & 4), Harold Land (ts), Junior Mance (p, tracks 1, 3 & 4), Richie Powell (p, track 2), Keter Betts, George Morrow (b), Max Roach (ds), Dinah Washington (vo, track 2) 。

ブラウニーの短い活動期間の中、この怒涛の「名演の録音月間」である1954年8月。『Best Coast Jazz』は、名演の録音月間」でのライヴ録音である。演奏形式は、トランペット3管、アルト・サックス1管、テナー・サックス1管、そして、ピアノ・トリオのリズム隊。ゲストに1曲だけ、女性ボーカルが入る「ジャム・セッション」形式。

ブラウニーはジャム・セッションに強い。相当なテクニックと音の大きさで相手を圧倒しようとするのでは無く、相手の音をしっかり聴きつつ、相手の音に呼応し、相手の優れたパフォーマンスを引き出す様な、リードする様なパフォーマンスを繰り広げる。
 

Clifford-brownjam-session

 
よって、ブラウニーとジャム・セッションに勤しむフロント管は、皆、活き活きと優れたパフォーマンスを披露する。そんなブラウニーのジャム・セッションの「流儀」が脈々と感じ取れる、内容の濃いジャム・セッションの記録である。ちなみに、このライヴ盤の音源は、Dinah Washington『Dinah Jams』と、同一日、同一メンバーでのライヴ・セッション。

この盤では、ブラウニーのトランペットが絶好調なのはもちろん、トランペットのファーガソン、クラーク、そして、アルト・サックスのゲラー、テナー・サックスのランド、皆、ブラウニーの素晴らしいパフォーマンスに引きずられて、素晴らしいパフォーマンスを繰り広げている。

そして、このジャム・セッションは、米国ウエストコースと・ジャズのメンバーがメインでのジャム・セッションで、東海岸と比べると、どこかアレンジが整っていて、アドリブ展開のブロウ爽快感抜群なのが特徴。そんなどこか爽快なジャム・セッションの中で、ブラウニーは自由闊達にトランペットを吹きまくる。

ダイナ・ワシントンがボーカルを取る2曲目のスローバラード「Darn That Dream」も絶品。このライヴ盤は、ウエストコースト・ジャズ全盛期の、優れたジャム・セッションの記録。しかし、よくライヴ録音をし、よくアルバム・リリースしましたね。エマーシー・レコードのお手柄です。
 
 

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2024年10月 5日 (土曜日)

好盤 ”Clifford Brown All Stars”

関東地方はやっと涼しくなってきた。最高気温23〜25度の日もあれば、30度に届く日もあるが、連日35度前後という酷暑の毎日からすると、グッと涼しくなった。これだけ、涼しくなってきたら、連日、耳を傾けるジャズも、耳当りの良い爽やかなもの一辺倒から、熱気溢れるハードバップものに変わってくる。

『Clifford Brown All Stars』(写真)。1954年8月11日、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown (tp), Herb Geller, Joe Maini (as), Walter Benton (ts), Kenny Drew (p), Curtis Counce (b), Max Roach (ds)。1954年の録音だが、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)の急死後、1956年にEmArcyレーベルからリリースされた未発表音源。

ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』『Brown and Roach Incorporated』の直後、『Best Coast Jazz』と同一日、同一メンバーでのジャム・セッション。この後の『Best Coast Jazz』のライヴ録音を含め、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演の録音月間」である。
 

Clifford-brown-all-stars

 
当然、ブラウニーのトランペットのパフォーマンスは素晴らしいの一言に尽きる。何かに取り憑かれたかの様に、高速フレーズをいとも容易く吹きまくるブラウニーは迫力満点。これだけ高速なフレーズを連発しつつも、余裕ある雰囲気が伝わってくる。どれだけテクニックに優れ、どれだけ強力な肺活量なんだろう。とにかく「凄い」の一言に尽きる。疾走する「Caravan」、歌心溢れる「Autumn in New York」。この2曲だけでも、聴いていて惚れ惚れする。

米国ウエストコースト・ジャズにおける一流どころが集っているので、フロントを分担するアルト&テナー・サックスのパフォーマンスも、最高とは言えないまでも、そこそこ充実したブロウを披露している。厳しい評価をする向きもあるが、ブラウニーのパフォーマンスと比較すること自体、ちょっと乱暴な気がする。アルト&テナー、意外と健闘しています。

リズム・セクションは「充実&安定」の一言。ブラウニーのかっ飛ぶトランペットをしっかり支え、しっかりとリズム&ビートを供給していて立派。当時の米国ウエストコースト・ジャズにおけるハードバップなジャム・セッションの記録として、しっかりとした内容の好盤だと思います。
 
 

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2024年10月 4日 (金曜日)

Glassmenagerie名義のコブハム

ドラマー、トニー・ウィリアムスが率いる「ライフタイム」、クロスオーバー・エレギのレジェンド、ジョン・マクラフリンが率いる「マハヴィシュヌ・オーケストラ」。そして、ヴァイオリンを活かしたクロスオーバー・ジャズなんてことを書いていたら、ふとこのアルバムを思い出して、思わす再聴。

Billy Cobham's Glassmenagerie『Stratus』(写真左)。1981年3月18日、ロンドンでの録音。ちなみにパーソネルは、Billy Cobham (ds), Gil Goldstein (key), Tim Landers (el-b), Mike Stern (el-g), Michal Urbaniak (el-vln, Lyricon)。マイク・スターンのエレギとマイケル・ウルバニアクの電気バイオリンがフロントの、カルテット編成。

千手観音ドラマーのビリー・コブハムがリーダー。これは、トニー・ウィリアムスが率いる「ライフタイム」に通じる。電気バイオリンを活かしたエレ・ジャズ。これは、ジョン・マクラフリンが率いる「マハヴィシュヌ・オーケストラ」に通じる。しかし、このコブハム・バンドの音志向は「クロスオーバー・ファンク」。

ロンドンの録音とあって、ファンキーな音志向とは言え、この盤でのファンクネスは「乾いて粘りの無いシンプル」なファンクネス。1981年の録音なので、マハビシュヌの様に、1970年代の英国プログレとの融合は無い。

逆に、R&Bやソウルなど、ブラック・ファンクとの融合がそこかしこに感じられる。が、粘りが無い分、こってこてなファンクネスは感じられず、リズム&ビートは、コブハムの千手観音ドラミングがリードしていて、コンテンポラリーでジャジーなファンクネスが強く感じられるユニークなもの。
 

Billy-cobhams-glassmenageriestratus

 
演奏自体は「クロスオーバー・ファンク」だが、R&Bな要素のみならず、ロックな要素、フュージョンな要素、クラシックな要素もしっかり反映されていて、なかなか興味深い、コブハム・バンドならではの音世界はユニークであり、しっかりと聴き応えがある。

マイク・スターンのエレギは「ジャズっぽいが基本はロック」なエレギを弾きまくる。マイケル・ウルバニアクの電気バイオリンとリリコン(シンセ・サックス/ウインド・シンセサイザー)のフロントのフレーズが印象的。ギル・ゴールドスタインのキーボードは意外と正統派ジャズな音を出していて、フロントのエレギと電気バイオリン、そして、リリコンとの対比が面白い効果を生み出している。

コブハムの「千手観音ドラミング」は絶好調。というか、1970年代よりも、良い意味で落ち着きがあって、的確でブレの無い、爽快で乾いたファンキー・グルーヴを叩き出している。そして、ティム・ランダースのベースは、正統派クロスオーバー&フュージョン・ジャズなベースラインを供給して、このバンドの音の底をガッチリと支えている。

当時のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤として、コブハムの代表的好盤として、このアルバムのタイトルが上がることは無い。実際、僕は目にしたことが無い。以前、たまたま、コブハムのディスコグラフィーを整理していて、この盤の存在に気がついたくらいである。

しかし、中身は素性確かな、コブハムならではの「クロスオーバー・ファンク」な音世界がてんこ盛り。なかなか良い内容のアルバムだと思います。
 
 

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2024年10月 3日 (木曜日)

唯一無二な ”マハヴィシュヌの音”

ジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラは、マクラフリンがマハヴィシュヌを結成する前に所属していた、トニー・ウィリアムス率いるライフタイムと、よく一緒くたに語られるが、マハヴィシュヌとライフタイムは全く「音の志向」が異なる。

ライフタイムは、エレクトリックな「限りなく自由度の高い」モード・ジャズから、エレクトリックなフリー・ジャズ。ライフタイムの音の志向は「フリー」。片や、マハヴィシュヌは、ジャズとロックの融合からのジャズロック。そこにクラシックの要素や英国プログレッシヴ・ロックのテイストを取り入れた、マハヴィシュヌの音の志向は「クロスオーバー」。

Mahavishnu Orchestra『Visions of the Emerald Beyond』(写真)。邦題『エメラルドの幻影』。 1974年12月4日から12月14日まで、NYの「エレクトリック・レディ・スタジオ」で録音。その後、1974年12月16日から12月24日まで、ロンドンの「トライデント・スタジオ」でミックスダウンされている。

ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g, vo), Jean-Luc Ponty (vin, vo), Ralphe Armstrong (b, vo), Narada Michael Walden (perc, ds, vo, clavinet), Gayle Moran (key, vo)。ジャズ・エレギのイノベーター&レジェンド、ジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラの4枚目のアルバム。

今回の『Visions of the Emerald Beyond』を聴くと、マハヴィシュヌの音の志向である「クロスオーバー」を強く感じることができる。
 

Visions-of-the-emerald-beyond

 
この盤では、ジャン=リュック・ポンティのバイオリンが大々的にフィーチャーされている。このバイオリンを聴いていると、英国プログレのキング・クリムゾンのデヴィッド・クロスや、伊プログレのPFMのマウロ・パガーニのヴァイオリンを想起する。もともと、欧州ではジャズとプログレッシヴ・ロックとの境界が曖昧で「クロスオーバー」している。

マクラフリンのエレギだって、英国プログレや和蘭プログレ、伊プログレでのエレギのテイストに強烈な影響を与えているようで、欧州のエレクトリック・ジャズとプログレッシヴ・ロックとの境界が曖昧なのは、エレギもバイオリンと同じ。そういう意味で、マハヴィシュヌの音は「欧州プログレとのクロスオーバー」な傾向にあると僕は睨んでいる。

そういう考察抜きにも、この盤でのマハヴィシュヌの音世界は唯一無二。エレクトリック・ジャズのモーダルな展開をベースに、ジャズロックやプログレの要素を交えた音世界は迫力満点。訴求力抜群。

お得意の「インドの瞑想モード」で始まるジャズロックあり、トライブ感溢れるジャズロックあり、流麗なプログレ調ジャズロックあり、グルーヴ感抜群のジャズファンクあり。マハヴィシュヌのジャズロックをベースとした「クロスオーバー」な音世界が満載。

『エメラルドの幻影』。いかにも、当時の日本のCBSソニーらしい、気恥ずかしい、赤面ものの邦題である(笑)。クロスオーバー・ジャズの名盤につける雰囲気の邦題やないよね。ジャケのイラストは、既出のアルバムとの統一感があって良い感じなんですが,,,。まあ、邦題は横に置いておいて、中身の演奏を堪能したいと思います(笑)。
 
 

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2024年10月 2日 (水曜日)

向谷ならではのフュージョン盤

我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。結成時から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの活動の第1期の中、常にカシオペアはグループとしての活動を優先した為、1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を展開したが、そのソロ活動も各自のソロアルバムを制作するだけに留めている。

向谷実『Welcome To Minoru's Land』(写真左)。1985年の録音、1986年のリリース。ちなみにパーソネルは、向井実がただ一人。向谷が、YAMAHA KX88, YAMAHA DX7, TX816×2, RX11, QX1, グランド・ピアノ, ROLAND TR-707, SBX-80, KORG SUPER PERCUSSION,MINI MOOG,EMULATOR II などを担当し、一人多重録音で制作した、向谷のソロ・アルバム第一弾。

当時最新のシーケンサーとリズムマシンを組み合わせての一人多重録音のアルバム。これをクロスオーバー&フュージョン・ジャズの範疇の音楽と認識した良いか、という議論があったが、採用されたリズム&ビートは、打ち込みであれ、ジャズを基本としたものなので、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの範疇として、僕は取り扱っている。
 

Welcome-to-minorus-land

 
ややもすれば、カシオペア・サウンドの中で埋もれがちだった、向谷の持つ音楽性とキーボード・テクニックの高さ、そして、シンセサイザー及びシーケンサー、リズムマシンに対する理解度と応用力の高さが、音となって示された、ユニークなソロ・アルバム。当時の電気楽器は、デジタルに対応したばかりで音が薄く、無機質な音質傾向にあったが、その弱点を克服する多重録音のテクニックと、木琴やピアニカ等の楽器を活用し、アナログ的な温かみを感じさせる工夫は見事である。

カシオペアの音世界の雰囲気を漂わせつつ、カシオペア・サウンドよりもポップでシンプルで柔軟な音とフレーズで、向谷独自のサウンドを展開している。2曲目の「ASIA」では、東南アジアをメインとした各国の音をサンプリングして、多重録音で音のコラージュを聴かせてくれる。3曲目の「Take The SL Train」は、鉄道ファンである向谷の面目躍如的な名演で、SLの音をサンプリングして、走行時のレールのつなぎ目音をリズムの基本にした音作りには思わず「ニンマリ」。

サンバ・フュージョンの「Road Rhythm」、アンビエントな「Kakei」、向谷と二人の子供達の会話を交えた、ほんわかアットホームでポップなフュージョン曲「Family Land」。一人多重録音で、ポップでシンプルで柔軟な向谷独自のサウンドに彩られた演奏が聴いていて、とても楽しい。向谷ならではのユニークなクロスオーバー&フュージョンの好盤だと思います。
 
 

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2024年10月 1日 (火曜日)

これ、意外とグリーンの名盤かも

ブルーノート御用達、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギタリスト、グラント・グリーン。グリーンのリーダー作に「ハズレ」は無い。どのリーダー作も水準以上の出来で、特に、オルガン、ドラムとのトリオの演奏でのグリーンは、とりわけ「弾けている」。

Grant Green『Iron City』(写真左)。 1967年の録音、1972年のリリース。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), "Big" John Patton (Hammond B3 organ), Ben Dixon (ds)。グラント・グリーンが一番得意とする、オルガン、ドラムとのトリオ編成。コブルストーン・レーベルという、聞いたことがないレーベルからのリリース。

ジョン・パットンのオルガンって、実はラリー・ヤングじゃないのか、という議論もあるみたいだが、まず、リーダーのグラント・グリーンのギターについては絶好調。どころか、最高にグルーヴィーな、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを聴かせてくれる。そして、ディクソンの巧みなドラミングが、ギターとオルガンのリズム&ビートとガッチリと支える。
 

Grant-greeniron-city

 
冒頭のタイトル曲だけが、グラント・グリーンの自作曲で、残りはスタンダード曲。スタンダード曲中心なので、俗っぽい、イージリスニングっぽい雰囲気になるのか、と危惧するが、そうはならないところが、グラント・グリーンのリーダー作の優れたところ。まず、アレンジが良い。そして、その良質はアレンジに乗って弾きまくる、グラント・グリーンのギターが、これまたブルージーで、ファンキーで、ソウルフルで、ガッチリと純ジャズに軸足を残している。

ジョン・パットンとドラマーのベン・ディクソンとのインタープレイも聴きもの。アルバムの大半で、3人のアップテンポのグルーヴ感が、爽快感溢れ、猛烈な疾走感で駆け抜ける。グリーンの演奏はいつもより指が躍動的で、リラックスして聴き手を虜にする「ヴァンプやリードライン」を奏でるパットンのオルガンに乗って、ファンキーでソウルフルなソロを披露する。意外と、この盤、グラント・グリーンの絶好調を捉えた名盤ではないのか、とふと思ったりする。

録音年月日やパーソネルなど、未確定な要素をはらんでいるので、グラント・グリーンの名盤の一つとして挙げられることは無いが、意外とこの盤を評価する「グリーン者」の方々が、ネット上に結構いる。この『Iron City』、グラント・グリーンの絶好調を捉えた好盤として、もっともっと評価しても良いだろう。
 
 

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