夏はボサノバ・ジャズ・その33
1962年、ボサノバ・ジャズのブレイクの年である。ズート・シムズの『ニュー・ビート・ボサノヴァ Vol.1』や、スタン・ゲッツの『ジャズ・サンバ』、クインシー・ジョーンズの『ビッグバンド・ボサノヴァ』など、ジャズとボサノヴァが融合した好盤がリリースされた。当然、セールスは好調だったようで、この1962年からしばらくの間、ジャズ界は「猫も杓子も」ボサノバ・ジャズに走った。
Gene Ammons『Bad! Bossa Nova』(写真左)。1962年9月9日の録音。Prestigeレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gene Ammons (ts), Kenny Burrell, Bucky Pizzarelli (g), Hank Jones (p), Norman Edge (b), Oliver Jackson (ds), Al Hayes (bongos)。アモンズのテナー、バレルとピザレリのギター、ハンク・ジョーンズのピアノがメインのボンゴ入りリズム隊、総勢7人のセプテット編成。
オールド・スタイルのテナーマン、ジーン・アモンズが流行に乗って、ボサノバ・ジャズに手を染めたアルバム。と思うが、聴いてみると、様子がちょっと違う。全編、ボサノバ・ジャズで溢れているかと思いきや、「Ca' Purange (Jungle Soul)」や「Cae, Cae」は、ボサノバ曲、いわゆるブラジリアン・チューンなんだが、他は渋めのスタンダード曲とアモンズの自作曲。ボサノバどっぷりのジャズ盤では無い。
しかし、である。リズム&ビートの雰囲気は、明らかにボサノバ&サンバのリズム&ビートをジャズ向けに借用していて、ボサノバ曲のみならず、渋めのスタンダード曲にも、アモンズの自作曲にも、そんなジャズ向けに借用した、ボサノバ&サンバのリズム&ビートを適用している。アルバム全体にはボサノバ・ジャズ的雰囲気での「統一感」があって、ボサノバ・ジャズ志向のトータル・アルバムとして、しっかりと訴求する。
そして、そんなジャズ向けに借用した、ボサノバ&サンバのリズム&ビートに乗った、アモンズのテナーがとっても良い音を出している。暖かいトーンの吹奏で、明るく切れ味良く歌心満点。アルバム全体を覆うブラジリアン・ミュージックの雰囲気に乗って、そんなアモンズのテナーが大らかに鳴り響く。ほんといい音な、オールド・スタイルのテナーが、ボサノバ&サンバのリズム&ビートにばっちりフィットしている。これが、このアモンズのボサノバ・ジャズ盤の一番の聴きどころ。
アモンズのディスコグラフィーの中でも、特に重要な位置付けのリーダー作ではないんですが、とても良い雰囲気の「アモンズ流のボサノバ・ジャズ盤」として捉えて良いかと思います。とにかく聴き心地が良い。バックの演奏も良好で、凡百なボサノバ・ジャズ盤にありがちな、チープで俗っぽいところは無い。ボサノバの雰囲気を漂わせつつ、ファンキーな要素も忍ばせたアモンズ節が心地良い、隠れ好盤だと思います。
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