純ジャズ・ボーカルのベンソン
2ヶ月ほど前になるだろうか。ネットのジャズの新盤情報を覗いていて、こんな文章が目に飛び込んできた。
「ジャズ・ギタリストそしてシンガーのジョージ・ベンソンが全盛期に録音していながら、長きにわたり発表されてこなっかた幻のアルバムが遂に35年の時を経て現代の技術でリマスターを施した公式作品となって登場!」
ジョージ・ベンソンは「唄って弾きまくる」ギタリスト兼ボーカリストの、いわゆる「ジャズ二刀流」のレジェンド・ジャズマン。ギタリストの側面は、ウエス直系、ウエス後継の壮絶技巧なギターの弾き回しが特徴。ボーカリストの側面は、ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカルが特徴。
常々、ベンソンの「ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカル」も良いが、正統派な純ジャズ志向のボーカルを披露してくれないかなあ、と思っていた。
純ジャズ志向の正統派なボーカルは絶対にベンソンに合う。そして、歴代の純ジャズ志向ボーカリストのレジェンド達、フランク・シナトラやメル・トーメ、果てはナット・キング・コールらと肩を並べるだけの力量がベンソンに備わっていると睨んでいたからだ。
George Benson『Dreams Do Come True: When George Benson Meets Robert Farnon feat. The Robert Farnon Orchestra』(写真左)。1989年の制作。「唄って弾きまくるギタリスト兼ボーカリスト」のレジェンド、ジョージ・ベンソンとロバート・ファーノンが率いるオーケストラとのコラボレート。しかし、なぜか「お蔵入り」になって、長きにわたり未発表だった「発掘音源」。
内容は、20世紀のポップ・スタンダードを取り上げたアルバム。有名スタンダード曲の「Autumn Leaves」「At Last」「My Romance」など、いわゆる、アメリカン・スタンダードな楽曲、そして、ビートルズの「Yesterday」やレオン・ラッセルの「A Song For You」、ポール・モーリア楽団の「Love Is Blue(恋はみずいろ)」といったポップ・クラシックを選曲している。
これらの楽曲が、ロバート・ファーノンのアレンジと、ファーノンと彼が率いるオーケストラの演奏によって、見事な「コンテンポラリーなジャズ・ボーカル曲」として、華麗な変身をとげている。
そして、ベンソンがこれらの楽曲を、ポップでジャジーな「正統派ボーカル」で、見事に唄い上げている。特に、ポップ・クラシックのリメイクが良い。しっかりとコンテンポラリーな純ジャズな雰囲気をしていて、ポップ・クラシックのスタンダード化に成功している。
ジャジーな雰囲気をさらに盛り上げてくれるのが、ベンソンのギター・ワーク。短いものではあるが、ベンソンのジャズ・ギターの弾きまくりが実に良いアクセントになっている。
オーケストラだけだと、どうしても甘さが前面に出て、耳にもたれるケースが多々あるのだが、このベンソンの正統派ジャズ・ギターの弾き回しが、そんなオーケストラの甘さを排除し、見事にジャジーな雰囲気をアルバム全体に振り撒いている。
「最近になってベンソンのアーカイヴで発見されるまで、長らく行方不明となってしまっていた音源がレコーディングから35年の時を経て、ついに正式にリリース」なのだが、どうして、行方不明のまま放置されたのかなあ。
しかし、発掘リリースされて良かった。この盤は、ベンソンのジャズ・ボーカルの名盤として評価して良い。素直に発掘リリースされたこと喜びたい。
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