« バップ・ギタリストなベンソン | トップページ | ボサノバ曲の米国西海岸ジャズ化 »

2024年8月14日 (水曜日)

純ジャズ・ボーカルのベンソン

2ヶ月ほど前になるだろうか。ネットのジャズの新盤情報を覗いていて、こんな文章が目に飛び込んできた。

「ジャズ・ギタリストそしてシンガーのジョージ・ベンソンが全盛期に録音していながら、長きにわたり発表されてこなっかた幻のアルバムが遂に35年の時を経て現代の技術でリマスターを施した公式作品となって登場!」

ジョージ・ベンソンは「唄って弾きまくる」ギタリスト兼ボーカリストの、いわゆる「ジャズ二刀流」のレジェンド・ジャズマン。ギタリストの側面は、ウエス直系、ウエス後継の壮絶技巧なギターの弾き回しが特徴。ボーカリストの側面は、ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカルが特徴。

常々、ベンソンの「ブラコン志向のソウルフルな、クロスオーバー&フュージョン志向のボーカル」も良いが、正統派な純ジャズ志向のボーカルを披露してくれないかなあ、と思っていた。

純ジャズ志向の正統派なボーカルは絶対にベンソンに合う。そして、歴代の純ジャズ志向ボーカリストのレジェンド達、フランク・シナトラやメル・トーメ、果てはナット・キング・コールらと肩を並べるだけの力量がベンソンに備わっていると睨んでいたからだ。

George Benson『Dreams Do Come True: When George Benson Meets Robert Farnon feat. The Robert Farnon Orchestra』(写真左)。1989年の制作。「唄って弾きまくるギタリスト兼ボーカリスト」のレジェンド、ジョージ・ベンソンとロバート・ファーノンが率いるオーケストラとのコラボレート。しかし、なぜか「お蔵入り」になって、長きにわたり未発表だった「発掘音源」。
 

George-benson-dreams-do-come-true

 
内容は、20世紀のポップ・スタンダードを取り上げたアルバム。有名スタンダード曲の「Autumn Leaves」「At Last」「My Romance」など、いわゆる、アメリカン・スタンダードな楽曲、そして、ビートルズの「Yesterday」やレオン・ラッセルの「A Song For You」、ポール・モーリア楽団の「Love Is Blue(恋はみずいろ)」といったポップ・クラシックを選曲している。

これらの楽曲が、ロバート・ファーノンのアレンジと、ファーノンと彼が率いるオーケストラの演奏によって、見事な「コンテンポラリーなジャズ・ボーカル曲」として、華麗な変身をとげている。

そして、ベンソンがこれらの楽曲を、ポップでジャジーな「正統派ボーカル」で、見事に唄い上げている。特に、ポップ・クラシックのリメイクが良い。しっかりとコンテンポラリーな純ジャズな雰囲気をしていて、ポップ・クラシックのスタンダード化に成功している。

ジャジーな雰囲気をさらに盛り上げてくれるのが、ベンソンのギター・ワーク。短いものではあるが、ベンソンのジャズ・ギターの弾きまくりが実に良いアクセントになっている。

オーケストラだけだと、どうしても甘さが前面に出て、耳にもたれるケースが多々あるのだが、このベンソンの正統派ジャズ・ギターの弾き回しが、そんなオーケストラの甘さを排除し、見事にジャジーな雰囲気をアルバム全体に振り撒いている。

「最近になってベンソンのアーカイヴで発見されるまで、長らく行方不明となってしまっていた音源がレコーディングから35年の時を経て、ついに正式にリリース」なのだが、どうして、行方不明のまま放置されたのかなあ。

しかし、発掘リリースされて良かった。この盤は、ベンソンのジャズ・ボーカルの名盤として評価して良い。素直に発掘リリースされたこと喜びたい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« バップ・ギタリストなベンソン | トップページ | ボサノバ曲の米国西海岸ジャズ化 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« バップ・ギタリストなベンソン | トップページ | ボサノバ曲の米国西海岸ジャズ化 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー