小洒落たファンキー・ジャズ
ファンキー・アルト・サックスのレジェンド、キャノンボール・アダレイについては、どうも我が国では人気がイマイチ。「ファンクの商人」なんて酷いあだ名をつけられて、ファンキー・ジャズやジャズ・ファンクをベースに、商業主義に走ったジャズマンの烙印を押されている。酷い話である。
ファンキー・ジャズ&ジャズ・ファンクは俗っぽくて、芸術としてのジャズでは無い、との評価で、しかも、キャノンボールのリーダー作は、米国ではそのセールスは好調だったのだが、この「売れる」ジャズをやるキャノンボールはけしからん、という論理である。
キャノンボールの名誉の為に言っておくと、生涯、彼のリーダー作は水準以上で、ほぼ駄作が無い。内容的にもしっかりしたファンキー・ジャズ、ジャズファンクのリーダー作が目白押しなんだが、我が国では、1960年代から70年代にかけてのリーダー作については、評論の対象に上がることがほとんど無い。
当然、我が国のレコード会社が国内リリースに踏み切ることもなく、21世紀になって、音楽のおサブスク・サイトで音源がアップされる様になって、やっと我々のレベルでも、1960年代から70年代にかけてのキャノンボールのリーダー作を鑑賞できる様になった。自分の耳で、キャノンボールのリーダー作を評価できるようになった。喜ばしいことである。
Cannonball Adderley Quintet『Plus』(写真左)。1961年5月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Wynton Kelly (p, tracks 2–5), Victor Feldman (p tracks 1,6, vib), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。
キャノンボール兄弟がフロント2管、フェルドマンのヴァイブが一部フロント参加、ピアノについては、ケリーとフェルドマンが分担する変則セクステット(6人編成)。
冒頭の「Arriving Soon」から、小粋なファンキー・ジャズ全開。キャノンボールのアルトも、ナットのトランペットも適度に抑制が効いた、小粋なブロウが好感度良好。
2曲目の「Well You Needn't」は、ファンクネス強調のモンク・ミュージック。フェルドマンのヴァイブがお洒落にアドリブをかまし、キャノンボール兄弟のユニゾン&ハーモニーがファンクネスを増幅する。とてもお洒落でファンキーなモンク・ミュージック。いい感じだ。
この小粋で小洒落たファンキー・ジャズに貢献しているのが、フェルドマンとケリーのピアノの存在。フェルドマンのピアノは、西海岸出身らしく、小洒落て乾いたファンクネスを忍ばせたピアノ、ケリーのピアノは、ハッピースイングで、洒落たファンクネスを湛えたピアノ。二人のピアノが、このキャノンボールのファンキー・ジャズを小粋で小洒落たものにしている。
5曲目の「Star Eyes」などは、そんな小粋で小洒落たファンキー・ジャズが全開。ここまでくると、小粋で小洒落た、というより、ファンクネス全開の大ファンキー・ジャズ大会。それでも、フェルドマンのお洒落な響きのヴァイブが良いアクセントになっていて、通り一辺倒の、ありきたりなファンキー・ジャズにはなっていない。
良好な内容のファンキー・ジャズ。フェルドマンとケリーの存在によって、いつものどっぷりファンキーなジャズを、小粋で小洒落たファンキー・ジャズに変身させているところが、この盤の聴きどころだろう。選曲も良い。キャノンボールの秀作の一枚。
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