トリオ・タペストリーの3枚目
酷暑の夏、命を守るための「引き籠り」が長く続く。締め切った、エアコンの効いた部屋は、意外と雑音が少ない。外は酷暑であるが故、静的でスピリチュアルな、硬質で透明度の高い「ECMサウンド」で涼を取りたくなる。21世紀に入っても、西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」は健在で、ここ10年の間に、ECMサウンドは、更なる高みを目指して「深化」している。
Joe Lovano, Marilyn Crispell, Carmen Castaldi - Trio Tapestry『Our Daily Bread』(写真左)。2022年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Lovano (ts, tarogato, gongs), Marilyn Crispell (p), Carmen Castaldi (ds)。ジョー・ロバーノのテナーがフロント1管、ベースレスのトリオ「Trio Tapestry」。ジョー・ロヴァーノのトリオ・タペストリーの3枚目のアルバム。2023年11月12日のブログ記事の追記である。
広々とした、奥行きのある、叙情的で神秘的なサウンド・スペース。静的でスピリチュアルなフレーズの展開。限りなく自由度の高い、フリー一歩手前の、漂うが如く、広がりのある幽玄で静的なビートを伴った即興演奏の数々。今までのECMサウンドの中に「ありそうで無い」、どこか典雅な、欧州ジャズ・スピリットに満ちたパフォーマンス。
ロバーノの静的でスピリチュアルなテナーが実に魅力的。ベースが無い分、ロバーノのテナーの浮遊感が際立つ。浮遊感の中に、確固たる「芯となる」音の豊かな広がりと奥行きのあるテナーのフレーズがしっかりと「そこにある」。決してテクニックに走らない、高度なテクニックに裏打ちされた、スローなスピリチュアルなフレーズが美しい。
クリスペルの硬質で広がりのあるタッチが特徴の、耽美的で透明度の高い、精神性の高いピアノ。シンバルの響きを活かした、印象的で静的な、変幻自在で澄んだ、リズム&ビートを供給するカスタルディのトラム。この独特の個性を伴ったリズム・セクションが、ロバーノのスピリチュアルなテナーを引き立て、印象的なものにしている。ロバーノのテナーの本質をしっかりと踏まえた、ロバーノにピッタリと寄り添うリズム・セクション。
21世紀の「深化」したECMサウンドが、この盤に詰まっている。21世紀の、神秘的で精神性の高い、静的なスピリチュアル・ジャズの好盤の一つ。チャーリー・ヘイデンに捧げた、6曲目の「One for Charlie」における、ロバーノのテナー・ソロは美しさの極み。現代のニュー・ジャズの「美しい音」「スピリチュアルな展開」が、この盤に溢れている。
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